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30.カッター新技


「カッターで戦う謎の女子高生って君か〜鎖まで切ってしまうなんてやるぅ〜」


「君だね、道中に客引きを置いてたのは」


「ばれた?ここにいるってことは、ナナシ君達全員切り倒して来たってことだよね。ヤバ」


 確かに影森さんのカッターが少し刃こぼれてるように見える。


 部活はないのに彼女の視線がなかったのは彼ら顔無しが邪魔をしていたというわけか。


 そして、顔無し達はナナシって呼ばれているのか。今更だから名無しで通すけど。


「お姫様、大丈夫かい?」


「あら私を殺しにきた?」


「光ちゃんにお薬を入れたのは許せないけど、守ってくれたのは感謝しよう」


 良かった、流さんへの敵意はないみたいだ。そして影森さんは僕の方を見る。


「光ちゃん危ないことはメッ!だけど……惚れ惚れするほどかっこよかった」


 そう言い残し、再びタートスへ向き合う。


 いや君のかっこよさには勝てないよ影森さん。


「いや〜美人だね〜抹殺対象じゃなきゃ連絡先聞いてるわ〜」


「そりゃどうも。まあどちらにせよお断りだけれどもね!」


 影森さんはカッターの刃を二段階まで出した。そこからは速い。


 神速の動きでタートスへ近づいていく。


「うお!速ぇ!」


 彼も鎖をぶつけようと操るも、彼女の速さは捉えることができず。


 針の穴を潜るように彼女は華麗に避けながら接近する。


 そして刃を首に立て


「!?」

 

 られなかった。


「俺も頭隠すのは速いんだ」


 彼女の刃は首ではなく甲羅へ当たった。


 彼の首は神速で振るわれるカッターよりも速く甲羅の中に戻ったのだ。


 その堅さでカッターの一段目が砕けた。


「そんな!影森さんのカッターが!」


「私の銃が効かないのよ、カッターじゃ当然……と言いたいけれど王子様のスピードを見切れるとはね」


 影森さんは落ち着いていた。その速さを保ち距離を取る、そして二段目のカッターの刃を折り取り、投げつける。


 彼の腕を狙うも。


「手足も早いよ〜ほれほれ」


 銃弾よりも早い刃の遠投も、彼には当たらなかった。


「そんな文具でなかなかやるけど、この甲羅には勝てないよ」


 タートスは再び甲羅だけになり、高速回転の突撃を影森さんに仕掛ける。


 影森さんは横に飛び避けるも。


「車並みにも動けるよ!」


 急に方向転換を仕掛けてきた。真っ直ぐの突撃だけでなく自由に方向も変えられる。スピードは勿論変わらない。


 彼女には反撃の手はない。逃げるしかない。


「ほらほら〜なんかやらないとヤバイよ〜」


「口の減らない亀さんだ」


 影森は急に動きを止め甲羅の進撃に立ち塞がる。


 このままだと激突は必死。


 どうしたんだ影森さん!?


「諦めたね!貰ったっ……てっあっ!?」


 彼女の目の前まで迫る甲羅はいきなり上へ飛び上がった。


 彼の下から爆発が起こったのだ。


 今この場で火器を使えるのは彼女しかいない。


「流さんいつの間に……」


「軽く地雷仕掛けて見たわ。腹の部分の耐久性の弱さにかけてみたわ」


 地雷って軽く設置できるものなの……?


 確かに甲羅の裏、亀の腹なら表よりは柔らかいイメージだが。


 それにしても何も言葉を交わさず誘導するなんてこの二人案外気が合っているのかな?


 甲羅は衝撃で裏返されている。これは効果あったか。


「びっくりした〜!腹狙って来るなんてね!でも残念甲羅は全部頑丈なのよ」


 甲羅から彼の声がする。そして手足と頭、尻尾を出し起き上がった。ダメージはほとんど通っていないようにみえる。


「ダメだったようだね」


「そうね……下手に動くと鎖が飛んでくるし。貴方は接近できてもカッターじゃ通用しないし」


「いや……手はあるよ」


「へ〜流石にカッター以外の武器は持ってるようね」


「いやカッターさ」


「期待して損した」


「見くびらないでくれ。確実に甲羅はなんとかなる。だけどさっきのように接近はできない」


「なら話は早いわ。援護はするから行きなさい王子様」


「頼むよお姫様」


 彼女達は何かを話し合っているようだ。彼を倒せる突破口があるのか。でもタートスはそれを許さない。


「なんかやる気?めんどくさいな〜じゃあこうしよう」


 再び甲羅の中に入る。これで彼は完全防御状態だ。そして鎖の発射口が全門開いた。


「鎖は一門に一つとは限らな〜い。さっきの二倍の鎖だよ〜」


 一つの口から2つの鎖が伸びる。それが二人を襲う。


 影森さんはそれをよけながらタートスへ接近する。しかし先程の神速は使わない。


 彼女ならば神速を使えば二倍の鎖をすり抜けるように接近できるはずなのに。


「どうしてなんだ影森さん?」


「さっきのスピードじゃ奥の手を使う時に力が入りにくいらしいわ」


「へ?」


 流さんが僕の疑問に答えてくれた。でも奥の手って何をする気なんだ?


 流さんも詳しくは聞いていないらしい。


 でも影森さんを信頼して聞かないのだろう。


 敵に一矢報いてくれる信頼。


「さっ私も仕事しましょうか」


 流さんはカオナシの使った小銃を拾い上げた。それも二つも。


「任せなさいな!派手に援護してやるわ!」


 彼女も影森さんの後へ続く。そして、壁のように影森さんの道を塞ぐ鎖へ


「うおぉぉぉぉぉ!!」


 膝スライディングしながら、両手の小銃を連射し迎撃する。派手に弾をばらまくように見えるが彼女の銃弾は一発たりとも外れない。全弾近づく鎖をせき止めている。


「今よおぉぉぉぉ!!」


「すまない!決めてくる!」


「すげぇワイルドなお嬢ちゃんだな!こっちのイケメン女子はなにする気かな?何をしようとも!」


 もう鎖は武器として効果がないとタートスは鎖をすべて甲羅から切り離した。


 そして再び、甲羅の高速回転を始める。いや、さっきの回転以上だ。空気を巻き込み一見竜巻かと思うくらいに。


「鋼鉄の回転は崩せないよ!」


「はぁぁぁぁ」


 そのままタートスは突撃。


 影森さんはカッターを三段階まで伸ばした。


 そのままカッターを持つ手を思い切り引く。


 そして間合いに入った所で、カッターで甲羅へ刺突した。


 カッターナイフがぶつかった程度で鳴ってはならない轟音が聞こえた。


 カッターではなく槍で突いたかと思うくらいの衝撃が走った。


 甲羅の動きが止まった。


 一瞬静寂が訪れる。


 その静寂を崩すように、砕けた


 パキッ


「ああ!」


「…………」


 カッターの刃が、粉々に。


 そして同時に


「ぐっ……が……やるね……!」


 バキバキと音をならし、彼の甲羅が全て砕け散った。


 亀はアイデンティティーの甲羅を失った。そこにいるのは亀の顔と手足、鎧を接続するためだけに改造されたボディを持つ不自然な改造人間だけだ。


「影森流のカッターナイフ突きさ。刃は砕けるが鉄だろうがダイヤモンドだろうが壊せる」


「すげぇめちゃくちゃ……でも俺の負けかな?」


 肉体にもかなりのダメージを受けながらもタートスは飄々と話す。


「仕上げはお姫様♪」


「了解♪」


「げ……どっから?。てか今の俺にオーバーキルじゃね?」


 流さんは自分の奥の手、ロケットランチャーを担いでいた。


 影森さんの攻撃の最中に準備したのだ。


「確実に仕留める準備が必要じゃなくって?」


「自分に返って来たね……どうも」


 ロケットに火が灯る。生身同然の改造人間に向けて突撃する。


 この日一番の爆炎がコンビニ駐車場に上がった。


 断末魔もタートスの死体も確認出来なくなった。

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