落花供覧
ふわりと携えるのは、桜の香り。
少なからずの桜の花は、昨夜の雨にて落ちてしまった。
それを供覧することが、此度の宴。
「……しかし、落ち行く花というのも、また趣があるものぞ」
少しばかり寄っているかのようなそぶりを見せ、殿がしみじみとつぶやく。
「しかるに、これを落花供覧と称して、毎年行うものはいかがでしょうか」
「詫び寂びの心は、平和な世だからこそ持つことができよう。いいだろう。この世が、この砂賀家領に住まう人々が弥栄続くことを願い、これを来年もしよう」
筆頭家老として、その役回りを拝命したわたしは、以後、つつがなく落花供覧が行われることを願いつつ、一つの書をしたためる。
これにより、後代の人々も引き続き行うことができるだろう。