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ノモンハン前夜 満州事情(一部加筆)

ノモンハン事件の前夜、各国の兵力等の話です。





1939年5月上旬、我が皇国は平和そのものであるが、周辺に目を向ければ満州国ではソ連外蒙国境での小競り合いが頻発しており、そして中国では未だ国民党軍と共産党軍との内戦が混迷の度を深めているなど、予断を許さない状況だ。


一時は延安に追い詰めて包囲して、ドイツやアメリカの軍事支援もあって中国共産党もいよいよ年貢の納め時かと思いきや、共産党シンパの暗躍の結果、各地で武装蜂起や中華民国軍部隊の寝返りが相次いだりと、そうは問屋が卸さないという事態に悪化している。


中国は広い。結局、部分的に制圧したといっても都市などの点と、それらを繋ぐ線でしか確保できていないのが実態で、大規模部隊ならまだしもゲリラ戦を行う様な便意兵などはひとたび民衆という海に入り込んでしまえばもうどこに居るのかわからないのだ。


だがしかし、正規軍である筈の中華民国の部隊の離反が相次ぐというのは、余程蒋介石は人望が無いのか、或いは元々将兵達に共産党シンパが多かったのか。


実際の所はわからないが、中国が不安定なままというのは我が皇国にとってもあまり良い事では無いし、共産主義者を送り込んで来られても迷惑な話だ。


結局のところは共産主義の総本山であるソ連を共産主義から解放し、ロシアに戻す以外ないのではないか。



小競り合いが続く満州国とソ連、外蒙との国境地帯であるが、ソ連の軍備増強著しく、いまや極東地区の国境の向こうのソ連軍は三十個師団を優に超え、軍用機、戦車に至ってはそれぞれ二千五百を超えていても不思議ではないという認識だ。



これに更に外蒙赤軍が二万程度加わるが、どうも伝わってくる情報では外蒙では未だ粛清が吹き荒れているらしく、将兵の士気が低いとも聞く。


その為か、上級指揮官は勿論の事、小隊指揮官に至る迄の殆どはソ連軍人が配置されているらしく、そこに政治将校まで加わるとなると、本来精強な筈の遊牧民の誇り高き戦士たちの士気が一向に上がらぬというのも分からぬでもない。


そして、意思疎通をどうしているのか想像もできないが、外蒙赤軍はソ連の指導と装備供与の元編成された戦車を有する機械化部隊を持つが、戦車長は全てソ連軍人であるらしい。


外蒙赤軍の特色として、騎兵を主とし、技能兵として機械化兵や工兵、通信兵などがいるが、歩兵は居ないとの事だ。これは、伝統的にそういうものであるという話であるが、その蒙古兵の伝統を受け継ぐ騎兵に至る迄、ソ連軍人が入り込み指揮を執っているというのは少々驚いた。


ソ連にも同じくロシア帝国時代からの伝統的を受け継ぐコサックが居るが、その辺りの軍人を連れてきているのだろうか。



外蒙、つまりモンゴル人民共和国に対し、清朝から独立しなかった部分、所謂内蒙は独立運動の機運もあったが、結局そのまま満州国に留まり、満州国の騎兵師団を構成するに至っている。


満州国の保有する騎兵師団は興安警備軍として8個師団にも及び、士気も高く精強で広大なモンゴルの平原の警備と治安維持、そして度々越境してくる外敵よりの守備を担っている。


その編成は伝統的なモンゴル騎兵がベースとなって居て、戦車等装甲戦力こそ持たないが、その使用装備は早くからスイス製の短機関銃取り入れるなど先取の気質もあり、今現在はアメリカ製の自動小銃が取り回しが良く使いやすいとの事で、自動騎兵銃として採用したという話だ。


満州国の騎兵部隊は他の防共協定国の軍と異なり騎兵を帯同してきたアメリカ派遣軍と行動する事も度々あり、その辺りもあるのかもしれない。


他にも、チェコ製の軽機関銃やイタリア製の歩兵砲も装備するなどその保有火力を侮る事は出来ない。実際の所、彼らが支援を要請してくるときは殆どが敵が装甲戦力を出してくるなど、対応が困難な時だ。


いずれにせよ、もしソ連が本格的に越境してくるとなれば、彼らはその機動力と地の利を活かして活躍する事だろう。



増強著しいソ連軍に対し、現在満州国に配備されている兵力としては、満州国軍が約八万。


内訳は国境守備軍の意味合いの強い五つの軍管区と近衛を意味する禁軍を含む中央軍からなり、十六万迄増強するとは聞いていたが、結局まだ途上の様だ。


五つの軍管区はそれぞれ第一軍管区が奉天、安東、通化省を担当し、兵力は約一万二千、この軍管区は満州国建国の経緯もあるが我が軍が軍事顧問を担当している。


第二軍管区は吉林、間島省、担当し、兵力は約一万三千、この軍管区はフランス軍が軍事顧問を担当している他、朝鮮との国境に面している為、我が国とも関りがある。去年の張鼓峰事件はこの軍管区で発生した。


第三軍管区は龍江、黒河、北安省を担当し、兵力は約一万三千、この軍管区はオランダ、そしてイタリアが軍事顧問を担当している。


第四軍管区は浜江、牡丹江、東安、三江省を担当し兵力は約一万八千、この軍管区はアメリカ軍が軍事顧問を担当している。


第五軍管区は熱河、錦、興安西省を担当し兵力は約一万、この軍管区はイギリス軍が軍事顧問を担当している。


それに興安警備軍が内蒙古地域である興安東西南北四省を担当する他、満州国領内を広く治安維持の為に活動しており、軍事顧問はイギリス軍とアメリカ軍が担当している。


中央軍は約1万五千、機械化が進められている歩兵師団と戦車大隊からなっており全員が志願兵で構成され、満州国軍の精鋭であり予備戦力として首都のある新京を拠点とする。


あとは、首都である新京を警備する近衛である禁軍と治安維持を担う新京警備騎兵旅団が存在するが警備部隊であり新京から動く事は無い。


これに、防共協定加盟国が派遣している遠征軍。


我が国は建国期には五個師団を満州国に投入していたが、各国の遠征軍と入れ替わりに随時削減してきており、去年は札幌第七師団を北海道へ戻した為、現時点で東京第一、仙台第二師団の二個師団に二個機械化混成旅団が配備されている。


我が国の満州派遣軍の司令官は梅津中将、前任の植田大将は張鼓峰事件の責任を取って交代になった。植田大将と共に、参謀長の板垣中将も交代になり後任は石原少将が就任した。


満州派遣軍の規模としては我が軍が最大兵力となって居る為、いざという時は相応の働きが期待されるのだろう。



これに、防共協定加盟国の遠征軍として、イギリス、アメリカ、フランス軍がそれぞれ一個師団。それにオランダ軍、イタリア軍が二個師団。


それらすべてが戦車部隊を含む装甲戦力を有する機械化師団となっており、極めて強力な師団が七個師団も存在する事になる。


しかも、イギリス、アメリカ、フランスもそれぞれが既に本国からさらに一個師団ずつを増援中であり、それらが到着し戦力化すれば十個師団を有する事になる。



我が陸軍の兵力は現在十七個師団であるが、現在機械化が進められており、既に満州に駐屯している第一、第二師団は優先的に機械化が進められ、ほぼ完了している。


これも、満州国、そして我が国に進出したアメリカの自動車メーカーが自動車を大量生産し安価で調達が出来た事が大きい。


我が国に限らず、満州国軍は勿論の事、満州国に派遣された各国の部隊も一気に機械化が進められた事を考えると、この地域に進出した各国の自動車メーカーは特需に潤った事だろう。


我が国の自動車メーカーも欧米の自動車メーカーの部品製造などの下請け仕事などもやりつつ、着々と技術蓄積を果しなかなか良い性能の国産車の開発に成功しており、いずれ我が国を走る自動車は国産車が占める事になるだろう。


厳密には、既に我が国で走っている自動車の多くは日本製造車であるので、国産車が走っているというのはある意味達成されつつあるのであるが…。



満州国で緊張が高まり続ける中、1931年より長らく参謀総長を務められてきた閑院宮閣下が後任に永田を指名して退任し、永田が陸軍大将に昇進し参謀総長に就任した。


いつかは陸軍大臣か参謀総長と言われていた逸材だが、ここに至って参謀総長に就任したというのはもはや対ソ戦争を見据えての事だろう。


我が軍はこの時に備えあらゆる準備を整えてきた。

存分に戦えるはずだ。



そして五月十二日、外蒙赤軍部隊がノモンハンと呼ばれる土地を流れる国境線の河であるハルハ河を越え、同地を守備する国境警備隊と大規模な交戦が発生していると報告があった。







日本軍は宇垣軍縮の規模のまま師団の増強はしていませんが、一個師団四個連隊編成のままであり、史実の日中戦争とその際の水増しの為の師団改編を経ていないので兵員の充足率も練度共に高く、機械化が進んでいたりと史実よりかなり強い軍隊となって居ます。


更には無線機大好きになった陸軍が米国のガルビン製造会社製の無線機とか装備しているかもしれないですね。




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