続・イギリス軍事情
パーシーホバート率いるイギリス軍機甲旅団のその後です。
1939年4月上旬 イギリス陸軍准将 パーシー・ホバート
我が旅団も将来的な機甲師団への改編を視野に入れて、編成の強化が行われた。
三つの機械化された騎兵連隊に二つの機械化歩兵大隊に歩兵大隊を支援する戦車大隊、更には機械化され対戦車砲と軽対空砲を装備した対戦車、対空砲連隊に砲兵連隊がより機械化された編成へと強化され、満州での戦訓からさらに工兵大隊が追加され二つになった。
これら以外にも、航空支援を担う二つの飛行隊が配備され、それぞれハリケーン戦闘機とライサンダー軽爆撃機を装備し既に任務で活躍している。
特に、ライサンダー軽爆撃機は下方視界が素晴らしいらしく、偵察機としても、直協機としても抜群の活躍を見せている。
この軽爆撃機は離陸速度が90km/hで離陸距離が250mと短く、滑走路が無くとも開けた場所であれば離着陸が可能であり、この特性を生かして連絡機や輸送機としても使える他、着弾観測も可能と、とにかく使い勝手が良いと現場でも好評らしい。
但し天敵とも言える戦闘機に対しては当然ながら分が悪く、敵の戦闘機が出てきた場合は直掩するハリケーン戦闘機の出番だ。
ハリケーン戦闘機は我が軍の主力戦闘機であるが、残念ながら演習での他国の戦闘機との模擬戦闘ではあまり良い成績を残せていない。
もう一つの主力戦闘機である本国にのみ配備されているスピットファイア戦闘機であればまた違うのだろう。
本国の空軍の知り合いに聞いた話だと、ハリケーン戦闘機の性能が劣る事は既に認識されているが、スピットファイア戦闘機に比べ圧倒的に生産性が高く、当面はハリケーン戦闘機を改良しながら運用し、スピットファイア戦闘機の生産性を改善していくという話だ。
やはり数を揃えられなければ、如何に性能が良くとも話にならぬからな。
幸い敵の装備するソ連製のI-15、I-16戦闘機に対してはハリケーン戦闘機の性能が優位に戦えるようだ。
我が旅団に配備されている戦車も更新され、騎兵連隊にはクルセイダーと名付けられたA13巡航戦車が新たに配備されそれ以前に配備されていたA9巡航戦車と随時交代となる。
A13巡航戦車は巡航戦車に求められる高い機動性を高レベルで実現している。
この巡航戦車にはアメリカのクリスティが開発したサスペンションを参考に開発したサスペンションを装備しており、大きな四つの転輪が特徴となって居る。
340馬力エンジンを搭載して最高速度は48km/hに達する上、路外性能も我が軍の戦車の中ではピカイチの性能を誇る。
更には装甲厚も以前のA9の14mmから30mmと倍以上に強化されており、火力以外は大幅に高性能な戦車となっており活躍が期待される。
他にも小生も開発に関わったA12歩兵戦車が満州にも届いた。
この戦車は緊急性から本来満州の我が旅団に配備される筈だった車両が上海に配備され、一足先に実戦投入されたが、その期待された性能を存分に発揮し素晴らしい戦車である事が証明された。
A11歩兵戦車はコンパクトで重装甲という歩兵支援戦車としては十分な性能を持っていたが、搭載火器が機銃のみであり、敵に戦車が出てくるとまるで歯が立たなかった。
その点、A12歩兵戦車は貫徹力に優れた2ポンド砲を装備しており、中国共産党軍が装備していたソ連製T-26戦車を容易に撃破せしめた。
このA12歩兵戦車は2ポンド砲を装備したタイプが標準モデルで、QF3インチ砲を搭載した近接支援モデルの二種類がある。
近接支援モデルは上海の戦訓から我が旅団では本来の配備計画より標準モデルとの装備比率を上げ、対戦車砲等にも十分に対応出来る編成となった。
我が軍が現在主に相手にしている外蒙赤軍との小競り合いでは平原での遭遇戦が殆どであり、敵の陣地を攻撃するというケースは発生していないが、張鼓峰でのレポートに出てくる様な対戦車砲や野戦砲が配備された防御陣地を攻撃する様なケースが発生しても現在の我が軍の装備を持って当たれば何事にも対処できる筈だ。
外蒙赤軍との小競り合いは前年の張鼓峰事件以降数を増しており、敵の偵察部隊が頻繁に侵入してくる様になった。
我が国が担当する軍管区は外蒙との国境線にある為、ソ連軍を相手にした事は無いが、外蒙赤軍の装備はソ連軍とほぼ同等であり当初は殆どが偵察に適した騎兵だけの部隊だったようであるが、その内装甲戦力を投入してくるようになり、我が軍に支援要請が来るようになったのだ。
外蒙赤軍が装備する装甲戦力は当初は戦車砲を装備した装甲車程度であったが、今では我が軍の巡航戦車と同等の火力と防御力を持つ戦車を出してくる様になった。
幸い、物量と練度で勝る我が軍が敵を圧倒しているが、敵も練度が上がってきており、少なからず損害が出ているのも事実であり、本格的な紛争が発生する可能性に備える必要があるだろう。
彼ら外蒙赤軍との戦闘と防共協定加盟国で行われてきた数々の演習で、我が軍が研究してきた機甲戦術も随分と磨かれた。
それだけ考えても我が旅団が満州に来た価値は十分にあったと言う物だ。
イギリス軍は外蒙赤軍と国境を面している軍管区を担当しており、もっぱら侵入を繰り返す外蒙赤軍の偵察部隊を相手にしています。勿論、馬賊討伐もやっています。
連携をとる為にも防共協定加盟国で演習を度々実施しており、機甲戦術を実際に試してみたりという事も行われて居ます。
その為、練度もかなり上がっており史実より実戦データの蓄積が進んでいます。
とはいえ、パーシーホバートは英国面を自ら体現する人物なのです。




