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中国へのアメリカの軍事介入

アメリカのマニフェストディスティニーに対して中国人の怒りの鉄槌が下ります。





1937年7月10日、モアプトが開発した成形炸薬弾を使用した歩兵用対戦車兵器が開発された。まだ正式採用では無いが、歩兵携行型対戦車擲弾筒弾と呼称するらしい。


この成形炸薬弾は、我が軍で使用中である八九式重擲弾筒の専用弾である直径50mmの八九式榴弾と同形状に作られており、この擲弾筒から同じ様に発射する事が出来る。


この弾頭は、上手く命中し正しく動作すれば、80mmの鋼板を抜くことが出来る。


難点は命中精度に劣る事と、従来の擲弾筒の様に伏せて射撃できる利点はあるものの曲射の為、命中した際の角度が悪いと成形炸薬弾が正しく動作しない可能性があるそうだ。


戦車は基本動いているものだから、理想の角度で命中させるのは中々難しいだろうな。



これとは別に、曲射だけではなく水平射撃も可能な物を更に開発中との事だ。

こちらの方は弾頭は既に完成しており、直径は75mmで迫撃砲弾の様な形状をしており、構造的には弱装薬の迫撃砲といった感じの物であった。


陸軍は歩兵部隊で広く運用する為にも、擲弾筒の様に低コストで大量生産出来る事を前提に考えており、一先ず出来上がった試作品を見せて貰ったところ、まるで子供のおもちゃの様な構造だった。


テストはこれから始まるが、これで戦車が撃破できるなら費用対効果は抜群だろう。



兎も角、八九式重擲弾筒で運用するタイプの成形炸薬弾は、満州国の実戦部隊で試験運用して問題の洗い出しと改良を行い、一定の水準を満たせば正式採用となる様だ。


とはいえソ連も外蒙赤軍も、まだ装甲車くらいしか満州国の戦場に投入してきておらず、あまり良い試験は出来ないかもしれないな。



対戦車兵器という意味では、我が軍で採用しているボフォース20mm機関砲の20x145R弾を使用する対戦車ライフルを開発したそうだが、この弾は強力なのだが反動が大きく、所謂対戦車ライフルとして使用するのは困難だと判断された。


ならばと、むしろ割り切って背の低い三脚にFN社の12.7mm重機関銃をスケールアップして20x145R弾を撃てるようにした物に、照準眼鏡を装備した自動砲的な物を開発する事にした様だが、成形炸薬弾を発射出来る軽量な対戦車兵器が低価格で作製出来るのに、恐らく高価になるだろうし重量もかさむだろう自動砲は果たして必要なのだろうかと、俺はいささか疑問に感じた。



成形炸薬弾を完成させて一先ず実績を残したモハウプトは、自分が開発した成形炸薬弾をより有効に使うために、成形炸薬弾を発射する事の出来る無反動砲を自ら開発する事にした様だ。





1937年7月下旬頃、中華民国北平(北京)の東にある通州に程近い街で、アメリカ人の宣教師たちや教師、その家族ら五十人余りがむごく殺されるという事件が起きた。


我が国が中華民国から撤退した後、その穴を埋めるように中華民国に進出したのがアメリカなのであるが、そのアメリカは単に商売をするために進出しただけでなく、彼らは教化と言っているが、宣教師が各地の町や村を訪れて教会や学校を作り、彼らの信じるキリスト教の信者を増やしていくという事をやっているのだ。


中華民国の内情として、教育に関しては都市部は兎も角、それ以外の地域では全くと言っていいほど立ち遅れているのが現状だ。


中華民国の指導者である蒋介石自身がキリスト教に入信した事もあるが、布教とセットにはなるが教育のまるで行き届かない地域にアメリカの資金で学力の底上げを行ってくれるというのは助かる話でもあり、半ば黙認していた様だ。


ところが中国人には昔からの宗教や、考え方の基本ともいえる儒教の教えがあり、共産主義者共は兎も角、それが彼らの価値観の根底にある。


それをよそから来た外国人が、違う価値観、違う宗教を押し付けようとする。そう考えて不愉快に感じる人たちが少ながらずいたのだ。


日本が租界への進出を皮切りに本格的に中国への進出を進めた結果、抗日運動とやらを展開されてやり玉に挙げられたのだが、実はその前はキリスト教布教の為に中国に進出した欧米人の宣教師たちが殺されたり攫われるという事件が頻発していたのだ。


それが、我が国が国の方針を転換し、中国本土から手を引いた結果、再びやり玉の的が欧米人へと戻って来たという訳だ。


俺はアメリカ人に親しい友達はいないが、聞くところによればアメリカ人というのは正義感があり基本的には善良な質らしい。だが少々独善的なところが有るとか。


その為だかどうだか分からないが、アメリカ人達は良かれと思って中国での布教活動を熱心に進めていた訳であるが、彼らが中国人を未開人扱いする事が目立っていた様だ。


中国人というのは、たとえ表向き下手に出ていたとしても、非常に誇り高い人たちだ。そして恩も恨みも余さず心に刻み込んで忘れないとも聞くな。


俺自身は中国人にもまた親しい人物がいないため、実際のところはわからんが。


そういうのもあって、自分達の家に上がり込んで勝手なことを言い、お前達の伝統や文化は未開だ、と断じるアメリカ人達に少なからぬ鬱憤をため込んでいたのだろう。


一度宣教師たちを血祭りにあげた事が各地に伝われば、それに触発されるかのように、あちこちで宣教師やその関係者がむごく殺される事件が頻発した。


そしてそれに加担した者達は、自分達を受け入れ守ってくれるという中国共産党の下へと逃げ込み合流したという話だ。



事件が起きた直後、天津の租界に居たアメリカ陸軍第十五連隊は直ちに出動し、惨劇が起きた場所へと急行した訳だが、既に下手人たちの姿は無く、現地の住人達は自分達は無関係だ、外から来た連中が勝手にやった事だと繰り返すばかりだった。


それでも何とか調査をして分かった事は、実行犯には地元住民や匪賊の類も交じっていたが、主体として動いたのは中華民国第二十九軍に所属していた兵士達だった。


彼らは北平に駐屯していた精鋭部隊ではあるが、後の調査で中国共産党の浸透工作をかなり受けていた事が判明したらしい。


つまり、今回の事件の裏で彼らの暗躍の手引きをしていたのが中国共産党という訳だ。


中国共産党にとって、彼らと内戦中の中華民国軍を積極支援するアメリカ、イギリス、ドイツ、そして我が国日本のうち、最も脇が甘くやり玉に挙げやすかったのがアメリカだったという事なのだろう。


ここ最近、様々な形での対華援助がアメリカ大統領の肝いりで急激に伸びていたそうだから、ここでアメリカと中華民国の関係を悪化させ、上手い具合に中華民国のリスクを米国市民に知らしめて日本の様に撤退させる事を狙っていた様だ。



ところがだ。


アメリカ人宣教師たちやその家族までもが、女子供に至るまで惨く殺された惨状が米国で報道されると、国の基本信条がモンロー主義という事もあって基本的にはあまり他国に干渉すべきではないと考える一般的なアメリカ国民の心に火が付いた。


アメリカの記者が優秀だったのか、或いは現地を調査したアメリカの政府関係者が有能だったのかはわからないが、中共が暗躍して扇動した結果、アメリカ人宣教師たちやその家族が惨く殺されたのだという実態が報道されると、太平洋を隔てたアメリカの一般国民にとって中国は縁遠い遠い国という意識から一気に身内が多数惨殺された国、という話になったのだ。


しかも未開人たちに正しい神の道を教え教化するという崇高な目的の為に、中国という異国へ渡り献身的に奉仕していた宣教師達とその家族を中国人が惨く殺したという事は、それだけ一般的なアメリカ人を激怒させるのに十分な出来事だった様だ。


我が国も、あのまま中国の泥沼にはまっていれば、中国に居留していた我が国の同胞が惨く殺されていた可能性があったという事で、それを未然に防げたという事は僥倖と言えよう。



米国政府は、直ちに太平洋艦隊と海兵隊を中国に送り込む事を決定し、また上海などの沿岸大都市の租界の防御を固めると同時に、駐留部隊には航空部隊を含む援軍が増派された。


米国政府は諸悪の根源である中国共産党に報復する為に、本腰を入れる事にした様だ。

また蒋介石には直ちに中国共産党の息の根を止める事を要求した様だが、蒋介石は中国共産党をかなり狭い地域まで追い込んでいるにも拘らず、未だ最後の一手を指せないまま時間ばかり経っている。


それだけ中国の民衆には、蒋介石と中華民国軍への不満が溜まっている証明であるともいえるし、一方では中国共産党の命脈を保つためにソ連がかなり大規模な支援をしているという事でもあるのだろう。


中国共産党が立て篭もる延安は、天然の要塞というか攻めるに難く守るに安いという地形の上、中国でも奥地にある。


中共側は戦車や野砲を運用出来ても、中華民国側はそれらを持ち込むことが困難で、兵力的には圧倒している筈が、数的優位を活かす事も出来ない様だ。


それで、最後の最後で攻めあぐねているという訳だが、中国共産党にしても要害から出て平野部へと進出すると兵力や装備で勝る中華民国軍に敵わない。故に、正面では膠着状態でありながら、共産主義者お得意の後方での様々な工作を活発に行っているという訳なのだろう。



但し、これまではそうだったがアメリカ軍が本格的に介入してくるとなると話は別だ。


そんなアメリカ軍が先ず最初にやったのは、陸軍航空隊の重爆撃機部隊による延安の爆撃だった。








中国共産党の暴虐に対してアメリカの怒りの爆弾が降り注ぎます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ≫陸軍航空隊の重爆撃機部隊 何だろう?B17はまだ実戦投入できないだろうし (試験的に少数投入?) B10かB18?
[良い点] これはルーズベルトが悪足掻きしてもソ連へのレンドリースが難しくなりそう。独ソ戦への影響が大きいな。 [気になる点] グリーンベレーの創設も10年以上早まったりして。 [一言] 争いは同じレ…
[一言] 伊メリカ→アメリカ 誤字報告です。
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