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アメリカの使命

合衆国は史実通りチャーフィを指名しました。


 



1936年9月下旬 アメリカ陸軍省 陸軍大佐 アドナ・R・チャーフィ・ジュニア



「チャーフィ大佐、第七騎兵旅団を率いて満州国へ行ってくれ」


「はっ。

 ですが、私が第七騎兵旅団を率いるのですか?」



マリン・クレイグ参謀総長閣下から出頭命令があり、私は閣下の執務室に出頭したのであるが、そこで満州国へ派遣される部隊を指揮しろとの命令を受けた。


しかし、第七騎兵旅団はダニエル・ヴァン・ヴォーリス大佐によってノックス砦で新たに機械化部隊として編制され、彼がそのまま旅団長を務めている筈だ。


私は1934年より予算・立法計画局長として陸軍省に勤務している。その前に第七騎兵旅団で副官を務めていたから古巣ではあるのだが…。



「現旅団長であるヴォーリス大佐が、貴官が適任である、と推薦している事もあるが、これ迄のキャリアなどを総合的に検討して貴官が適任であると判断した」


「了解いたしました」


我が陸軍の初の諸兵科連合としての機械化混成旅団の編制はヴォーリス大佐の功績である部分が大きく、彼自ら率いるべきだと思うのであるが…。そのヴォーリス大佐が私を推してくれているというのであれば否は無い。それにヴォーリス大佐が1930年から今の任務に就いている事を考えると、人事的な理由もあるのかもしれない。



「満州国は我が国にとってラストフロンティアとも言える国だ。

 既にスタンダードオイル社が満州国での石油採掘権を獲得して調査を行い、黒竜江省の湖沼地帯に有望な油田が存在する可能性が極めて高いと言っているし、我が国の自動車メーカーなど多くの企業が有望な市場として満州国に注目している。


 従って、その満州国で我が国の権益、そして現地進出企業や居留民を護る事は、極めて重要な任務であると言える。

 

 既に我が合衆国の国民が多く住む居留地には小規模な警備部隊が派遣されて居るが、それ等部隊は匪賊を追い払う程度の事ならいざ知らず、国境紛争等の大規模な事態に対応できる程の規模も能力も無い。


 先の満州国でのフランス人夫妻殺害事件のお陰で、我が国も他国と並んで一個旅団の規模ではあるが、まとまった部隊を派遣することが出来るようになった。

 

 チャーフィ大佐、この部隊で合衆国の威信を現地で示してきてほしい。


 ところで大佐、日本は満州国建国に関わった経緯もあり、既に数個師団の部隊を現地に駐屯させているが、一方で日本には我が国から多くの企業が進出し、また自動車やガソリンなど多くの製品を輸入してくれている良き顧客でもある。


 彼らと余計な摩擦を起こさぬよう上手くやってほしい。

 

 それに日本陸軍は、現地に独立混成旅団という機械化混成旅団を配備し、既に数々の戦果を挙げていると聞く。それもあって、今回を部隊を派遣するフランス、イギリス、オランダも、我が軍と同様に機械化混成旅団を派遣すると思われる。

 

 貴官は、現地で他国の機械化混成旅団の実態調査も併せて行ってくれ。

 

 人選、装備に関してはある程度便宜を図れるだろう。

 

 以上だ。よろしく頼む」

 

「はっ、失礼いたします」



後日正式な辞令と命令書が届き、私は准将に昇進の上、第七騎兵旅団と共に満州国へと派遣されることになった。


色々と準備もある。先遣隊は年内にだが、本隊は年が明けてから出発する事になるだろう。


さて、誰を連れて行くか。


真っ先に頭に浮かんだのは第七騎兵旅団時代の同僚であるロバート・W・グロー少佐。それと、燻っていると聞くあの男を連れて行こう。





1936年11月上旬 満州国大連港 アメリカ陸軍中佐 ジョージ・パットン



「ふん、どんな田舎かと思っていたが、意外と整備されて居るじゃないか」


暫くハワイ師団で燻っていた居た俺は、満州国に派遣される第七騎兵旅団麾下の第十三騎兵連隊の連隊長を拝命し、派遣部隊の先遣隊として大連にやって来た。


第七騎兵旅団は勿論の事、俺が連隊長を務める第十三騎兵連隊は、部隊名に〝騎兵〟と付いているが、既に機械化された騎兵連隊である。しかし、戦闘車両など重装備が届くのは来年だ。


代わりに馬を連れて来た。合衆国の騎兵たるもの、機械化された部隊とて馬に乗れぬ者は一人として居ないからな。それに満州国は騎馬民族の国らしく未だ馬が広く使われて居ると聞くし、装備が届くまでは馬で活動するつもりだ。


旅団長であるチャーフィ准将と旅団の幕僚が到着する迄、俺は旅団長代理を拝命しており、この大連に建物を借りて旅団司令部を設置して後続部隊を待つ予定であるが、その間に先遣隊として現地で受け入れ準備や各地を視察したりと、やる事は多い。


我が軍の駐屯地は、スタンダードオイル社が石油採掘を予定している湖沼地帯に程近い場所にある平原を予定している。そこの視察を真っ先にやりたいのだが、その前に大連で本隊の受け入れ準備を先に進めなければならない。


それに満州国最大の港湾都市であり、国際港となって居るここ大連に他の国の部隊も到着するらしいから、先んじてここに陣取って居れば他国の旅団を見る事が出来るだろう。




それから俺は、約一月ほど大連で旅団司令部を開設したり、後続の人員の受け入れを手配したりと、忙しく過した後、漸く黒竜江省にある駐屯地の予定地に視察に行くことが出来た。


自国ならいざ知らず、ここは満州国という我が国も国家承認している独立国だからな。何事も勝手にという訳にはいかない。


船で届く装備にしても軍需品であるから、適当な港湾倉庫を借りて保管しておくという訳にもいかない。満州国との協定でいちいち通常の通関処理を受ける必要は無いが、その代わり管理は我が国の責任になる。警備に兵士を配置せねばならないし、大量に集積される物資の管理も重要だ。盗難や横流しなどが起これば我が国の威信にかかわる。



黒竜江省への視察は、未だ車両が到着していない事もあり、かといって馬で直接行くには遠すぎる為、客車を一両貸し切りにして鉄道で向かった。


満州の鉄道は沿線も良く整備されており、我が国の鉄道と比較してもそれ程遜色はない。


南満州鉄道は日本が運営しているが、フランスやイギリスもそれぞれ鉄道を敷設中らしく、満州国全域とはいかないだろうが主要都市は鉄道で繋がる様だ。


我が国も満州国で鉄道事業に参画する予定だと聞いている。



但し、満州国は市街地から一歩出れば平原が広がり、そんな平原には農業を営む寒村が点在するが、その生活水準は低く、恐らく教育水準も低いのだろう。治安も悪く、馬賊匪賊が闊歩する未開の地だ。


正にラストフロンティアと言えるな。


流石に他国も既に進出している独立国を征服する事は出来ないが、未開の地を文明化するという意味では、我が国のマニフェストディスティニーはハワイを経て今まさにアジア大陸へと到達した、と言えるだろう。



しかもこの満州国は、ソ連やモンゴル人民共和国といったアカ共の国と国境紛争が頻発している国だ。


新兵器の実験場になるのだろうな。



「アカ共を追い回してやるのが待ちきれんな」






パットンはやる気満々です。


ちなみに、スタンダードオイルが石油採掘を行うのが所謂大慶油田と遼河油田です。大慶油田の方は本作だと違う名前になると思います。元々の地名の『スタンダードオイル大同石油採掘所』とかそんな感じの名前で呼ばれるかもしれません。

スタンダードオイルはここに大慶油田に大規模な油田と石油精製プラントを設置して、ガソリンなど石油製品を満州は勿論、中国、日本に販売します。副産物のアスファルトも満州で広く使われるでしょう。遼河油田はさしもの米国石油会社も苦労するかもしれませんが、技術的には可能なので操業までもっていくでしょう。


そして、ロイヤルダッチなどオランダが採掘するのが扶余油田です。


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― 新着の感想 ―
[一言] ちなみに朝鮮はこの作品ではどうなってますか?
[一言] おおっとアメリカも軍隊送りつけることに。 ここだとぶっちゃけ国内でだいたいなんとかなってた分、作る必要がなくて航空機偏重になり、発達が遅れた戦車開発もかなり進みそうですね。今のうちに製作と…
2022/08/31 21:43 ケーニヒツ
[一言] で、血を流して実験された各国新兵器見本市の情報がルーズベルト政権やらアメリカ陸軍の中枢に入り込んだスパイからソ連に流れますよっと。パットンは怒っていいと思うよ。
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