11
いざ、猫の体へ‼と思っていた五郎丸だったが、今一度確認をした。
「一つ確認をしたいのだが、本当に猫になった後は、金持ちの飼い主に飼われるのだろうな?」
五郎丸の質問に、妖は面倒臭そうに答える。
「あぁ、約束は果たす。それが道理と言う物。馬鹿め。」
妖の答えを聞き、五郎丸はほっと息を撫で下ろし、安心をする。
「では、地面に横になれ。」
妖に言われ、「う…うむ…。」と、五郎丸はそっと冷たい地面の上に、仰向けに横になった。いよいよだ。緊張と恐怖から、体が硬直してしまう。
妖は五郎丸の体に近づくと、その場にしゃがみ込み、先程の子猫と同様、ふぅーと息を吹きかける。すると五郎丸の体から、薄い青色の火の玉が浮かび上がった。妖はその魂と呼ばれるモノを、そっと両手で覆うと、ゆっくりと隣に寝かせてある子猫の死体の中へと、移し変える。五郎丸の魂は、猫の体の中へと入って行った。そして五郎丸の体は、抜け殻と化す。
暫くすると、横たわっていた子猫の目が、ゆっくりと開く。
(ここは…)心の中でぼやくと、目の前に自分の体が横たわっている姿を目にし、五郎丸は慌てて体を起こした。
「ニャッ⁈」
思わず鳴き声をあげる。
(おかしい‼声が…喋れぬ。)
自分の声にも驚き、キョロキョロと周りを見渡した。視野が低い。そして目の前にはデカい自分の体がある。いや、死体と言うべきか。
「キシシ…。どうやら成功したみたいだ。」
妖が子猫の五郎丸を、大きな瞳で覗き込んだ。
(成功?と言う事は、わたしは本当にあの子猫になったのか‼信じ難いが、目の前に自分の死体が転がっている‼)
「まぁ信じ難いのは分かる。だが成功だ。」
妖の言葉に、五郎丸は驚いた。
(私の言葉が分かるのか?)
先程から、五郎丸は「にゃーにゃー」としか言っていない。
「動物の言葉くらい、容易く分かる。馬鹿め。さて、約束は果たした。対価を頂く。」
五郎丸は、慌てて妖を止める。
(待て‼飼い主は…。)
言い掛けている途中、妖は即座に補足をした。
「飼い主ならば、ここで待っていればすぐに来る。ここで大人しく待っていろ。」
そう言うと、ゆっくりと立ち上がり、体をブルブルと震わせた。その後、妖の体は黒い煙の覆われ、その煙は次第に大きくなっていく。そして煙が消えた後、妖の本来の姿が現れた。
(なんと…これが妖の真の姿…。なんとも恐ろしい…。)
子猫五郎丸は、思わず体を震わせてしまう。
頭は狐、体は龍の様な鱗が沢山あり、尻尾は猫の尻尾が三本。そして口には大きな牙が二本に、ギラギラとした真っ赤な瞳。とてもデカい。正に獣の妖だ。
「それでは対価を頂く。いただきます。」
妖がそう言うと、大きな口を大きく開けた。子猫五郎丸は、ゴクリと生唾を飲み込み、恐怖に体を震わす。




