クソ人間のクソエッセイ2 成長
クソ人間といえども、成長することはある。
昔の僕は自分という存在の無価値さに絶望していた。
殺人も窃盗もしないが、誰かを助ける事も無いしなにがしかの賞賛を受ける事も無い自分が嫌いだった。
あたりまえだ、僕自身が為した事は何も無いのだから。
高校や大学に進学出来たことも自分の力では決してない、所詮親の金がある程度ある家庭に生まれて塾に行けたり大学の学費を考えなくてもよかったからだ。
でも自分が無価値な事自体が嫌だったのではない、そんな存在が自分の価値に釣り合わない程いい生活をしているのが気に食わなかった。
僕は街を歩いても殴られる事は無いし殺される事もない。無価値さと釣り合わないほどいい生活だ。
僕みたいなクズが腹いっぱい食える事も許せなかったが、べつに食事を止める程聖人ぶる事も出来なかった。
僕は中途半端だ、世界の歪みに憤っても何もしない。ただ心の内に苛立ちをつのらせるだけ。
世界なんて理不尽で残酷で、どれだけ優秀な子供だろうと運が悪いだけでグチャグチャの死体になる。
そんな当たり前のことを昔の僕はイラついていた。
今より若かった僕は世界が汚い理不尽なものと受け入れたくなかっのかもしれない。
でも無意味な拒絶は時間を経て、薄れていったのだろう。
僕は無価値で無能なゴミ屑である僕が、満腹になるまで食う事なんて平気になってきた。
だって、それが世界では当たり前だから。
世界が理不尽な事を受け入れる、何も考えないロボットになる、誰か偉い人の奴隷になる、それをきっとこの世界では成長と呼ぶ。