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異世界転生後に繰り返す転生  作者: 久遠 甲斐
70/82

70話 戦闘後‐2

「これって兵士達が何度倒されても起き上がっていた原因だった、あのマジックアイテム!?」


 ハンスに手渡された十字架を手に持つと、その十字架を隅々まで確認してみる。

 一見、教会で司祭が持っていた十字架などと何ら変わりのないものに見えたが、先程の戦闘時には室内にも関わらず光っており、それは十字架が黄金だからという理由ではないことは分かっている。

 けれども今はその光は消え、ただの黄金の十字架と化している。

 

「これってもしかしてまた使えるのかな?」


 この奪ったマジックアイテムをまた発動することが出来れば、その復活できる効果から、次の戦いの時に役立てることができるかもしれない。

 そう思い、発動するか試そうとすると、ハンスが話しかけてくる。


「坊ちゃん、けど敵さんが言っていた通り、それって発動すると復活できる代わりにスキルが使えなくなるものだろう?確かに復活できて何度でも戦えるのは強いが、それを発動するのにそもそもかなりの魔力が必要そうだし、そもそも俺もリチャード様もスキルが使えていた方が普段通りの戦いができるから使わない方がいいんじゃないか?」


 魔力切れのことについては、ルイは魔力がほぼ無限大にあり、切れる心配がほとんどないが、自分の魔力量を三人には伝えていないためこのことについては知らない。

 魔力量がたくさんあるため、ルイは発動すればこのマジックアイテムもずっと発動できるかもしれないが、それをしてしまったら魔力量が三人にバレてしまう。

 転生のことなど、ある程度の秘密は三人には話したが、知られてしまったら迫害などを受けるようなことについては、いくら三人でも話すことは無いだろう。

 魔力量がこの世界の人の平均に比べ膨大なことや、アブノーマルスキルを持っていることなど、言う必要も無ければ、知られてしまえばまずいことになる内容は、ルイの心の内にだけ秘めておくことにする。

 

 魔力に関してのことは放っておくことにし、スキルについては確かにハンスの言う通り、二人とも自由に使えていた方が強い気もする。

 リチャードはスキルが使え無くとも格闘術で何とかなるかもしれないが、リチャードの棒術は、棒をハンスのスキルで作りだすことで成立するものだろう。

 今回も棒そのものが壊され、棒術が使えなくなるところだったが、戦闘中にスキルを使えていたことで棒を即時に作り直すことが出来ていた。

 ただ、スキルを発動できなくなってしまえばそれもできなくなってしまう。

 棒術を使わないハンスのそもそもの強さは分からないが、棒術を使えるハンスの方がより戦力になることは間違いない。


 それにハンスのスキルは持っている木の枝を『成長』させ、棒を作り出すだけでなく、他にも様々点で使えるだろう。

 そう考えるとこの十字架型のマジックアイテムは使わない方がいいかもしれない。

 ただ、貴重なマジックアイテムなので、発動できるかどうかを確かめておいて損は無いだろう。

 

「まあ、使うか使わないかはその時の状況次第として、とりあえず発動するかだけ確かめてみようよ。それに貴重なマジックアイテムだから使わなかったとしても持っておいた方がいいじゃないか」


 ハンスにそう言うと、ルイは十字架のマジックアイテムを発動させようと魔力を込める。

 三人とも、何が起こるか分からないため、マジックアイテムをルイに発動させることに否定的だったが、三人のうちリチャードとハンスは戦闘の後ということもあり残りの魔力量が少なく、主であるルイの命令もあり、三人は仕方なくルイがマジックアイテムに魔力を込めるのを見守っている。

 ただ、何が起こったとしてもすぐにルイを守れるようにその傍で警戒しながら待機している。

 

 ルイが十字架に魔力を込めようとしたその時――。

 

 

 縛られていたライアンの側近が意識を取り戻し、その状況を見て声を発する。


「貴様ら!なぜそれを触っている!!それは私がライアン様から授かった貴重なマジックアイテムだぞ!!貴様らみたいな者達が軽々しくそれに触れるな!!」


 意識を取り戻し、早速騒ぎ散らかしているので、それをうるさく思ったハンスが近づいて行き、何か口をふさぐものが無いか辺りを見回すが、ちょうどいいものが見つからなかったのか、再びライアン側近が意識を失うほどの強い衝撃を与え、黙らせる。


 ようやく静かになった所で、ハンスはルイの下へ戻って来る。

 そして戻ってくるなりルイに進言する。


「なあ坊ちゃん、あいつは坊ちゃんが当主になったとしても屋敷の兵士として従うことは無いんじゃないか?ライアンの側近にまでなってるからその忠誠心はきっと揺らがないんじゃないか?さっきの様子見ただろ?ライアンに完全に忠実そうだったぞ?」


 ハンスはそう言いながらライアンの側近を指さす。


「あいつは他の兵士と違ってライアンに心の底から心酔しきっているはずだ。だからあいつは始末した方がいいんじゃないか?」


 そのハンスの言葉にリチャードとセシリアも同意する。


「ええ、そうですね。彼の忠誠心は我々のルイ様への忠誠心と同じほどだと思います。彼はルイ様が当主になったとしても決してルイ様の味方にはならないでしょう。それにこのままにしておけば、脱出を試みたり、助け出される可能性もあります。それならいっそ殺してしまった方が、ルイ様の当主となる障害にはならないでしょう」

「私もお二人の意見に賛成です」


 ルイはそんな三人の意見を聞きながら、ライアンの側近の処分について考える。

 確かに殺してしまうのが一番安全だろう。しかし、ライアンの側近なら何かに使えるかもしれない可能性もある。

 そして考え抜いた末に、ある一つの提案をする。


「……よし、それじゃあ一応生かしておくことにしよう。今後何かの場面で使える時がくるかもしれないし。ただ、逃げられるのも困るから、ハンスのスキルを使ってその手足だけを動かせないくらいまで『成長』させ、身動きができないようにしよう」


 このルイの提案に、三人は頷いてくれる。

 そして提案通りハンスはライアンの側近の方へと近づいて行き、スキルを発動させる。

 スキルを発動されても痛みなどは無いのか、側近は意識を失ったままだった。

 ハンスのスキルにより両手足だけが成長したせいで、その手足は老人のようになっていた。

 

 とにかく、これで邪魔をするものもいなくなったので、ルイは再び十字架に魔力を込めようとする。

 そしてその様子を他の三人は見守っているが、ルイが魔力を込めようとしてもなかなか十字架が光る様子が無いので、違和感を感じ、ある一つの仮説を立てる。


「ルイ様、もしかしたらその十字架は、先程の戦闘で壊れてしまった可能性がございます。その証拠にルイ様がいくら魔力を込めようとしても光る様子がございません。せっかくのマジックアイテムでしたが、残念でございます」


 リチャードの言葉の通り、ルイも先程から魔力を込めようとしても中々込められなかったのだが、まさか壊れているとは思っていなかった。

 だから先程から光る様子が無かったと納得していると、リチャードの言葉を聞いたハンスが恐る恐る声を出す。


「あ~。もしかすると、それ壊したの俺の可能性が高いわ。かなり激しい戦闘をしていたし、後半はもう一方的に攻撃していた気もするから、もしかしたら俺が壊した、かも――」


 ハンスが話している途中で突然、ハンスの言葉が途切れる。

 何が起こったのか一瞬理解できなかったが、それはハンスが話している途中にセシリアに叩かれたことが原因だった。

 

「ハンス!!なぜ相手がマジックアイテムを持っていると分かっていてそのような戦い方をしたんですか!!マジックアイテムはとても貴重なものなんですよ!!同じものは二つとしてこの世に存在していないものなのにそれを壊してしまうなんて!!それに見て下さい!!このルイ様の悲しそうな顔を!!」


 セシリアが今までに見たこともない剣幕でハンスに攻めかかり、ルイは驚く。

 ルイだけでなく、リチャードとハンスも普段見たことがないのか、とても驚いた表情をしている。


「わ、悪かったってメイドちゃん!!そんなに怒るなよ!!確かに貴重な物ってのは分かってたが、戦闘に集中してたからしょうがないだろ?それに壊れたのも坊ちゃんに申し訳ないと思うが、別に坊ちゃんもそんなに悲しんでいるようには見えないぜ?」


 確かにルイもハンスの言葉には納得だ。

 戦闘に集中していたなら他のことを考えている暇もないだろうし、それにマジックアイテムが貴重とは言え、自分の命には代えられないはずだ。

 そして、別にルイ自身もただでマジックアイテムが手に入ったと思っていただけなので、壊れていてもそんなに悲しんではいないが、なぜセシリアはここまで怒ったのだろうか。

 それほどまでこのマジックアイテムを俺が欲しがっていたと思っていたのだろうか。


 理由は分からないが、とにかくマジックアイテムは壊れてしまっているので、セシリアを落ち着かせ、リチャードとハンスには兵士の片付けをしてもらうことにする。

 

 リチャードとハンスに兵士を片付けてきてもらい、再び全員が集まった所で、ルイは口を開く。


「とにかく、今回の戦闘はこれで終わったことだし、次に備えることにしよう」

「「ハッ!!」」「おうっ!!」


 ルイの言葉に三人は返事をする。

 そして次の戦いに向けて備えるのだった。





 腰に剣は差しているが、普段の鎧と兜を脱ぎ、道行く人々と同じような格好をしている翡翠騎士団団長のイザベル。

 そしてその後ろには同じく鎧と兜を身に付けていないが、剣だけは身に付けている副団長のウォルターと、団員のメアリーが王都の街中を歩いていた。

 

「団長!!冒険者ギルドに行っても何も教えてくれないんじゃないでしょうか!?今は冒険者ギルドに反応は無いので、行っても無駄足ですよ!?」


 歩きながらメアリーは、前を歩く団長に話しかける。

 メアリーに話しかけられてもイザベルは聞こえていないかのように、黙って歩き続ける。


 その姿を見たメアリーは、また何かを言おうとイザベルに話しかけようとするが、急に目の前で止まったイザベルに気が付かず、その背中に思いっきり顔面をぶつけてしまう。

 慌ててメアリーはイザベルに誤りながらも弁解する。


「ぶ、ぶつかってごめんなさい団長!!けど、団長も急に立ち止まったのも悪いんですよ!!」


 メアリーは怒られるかと思い警戒したが、イザベルは予想と違い別の言葉を口にする。


「着いたぞ、ここが東側の冒険者ギルドだ」



 その言葉を聞いたメアリーの前には、思っていたよりもとてつもなく大きい建物があった。

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