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異世界転生後に繰り返す転生  作者: 久遠 甲斐
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61話 秘密の会合

「あの三男を消すだって?俺達で協力してか?」


 驚いた表情でリアムはそう返す。

 それもそのはず、二人はルイが生まれる前から互いに当主の座を奪い合うために殺し合っていたのに、突然、協力を申し込まれたのだから、驚くのも無理もない。


「どういうことだ。詳しく話せ」


 部屋から出て行こうとしていたリアムは再び席へと付く。

 リアムが席に着くのを見計らい、ライアンは話し始める。


「まず俺は、確実に当主になるのは俺達のどちらかだと考えている。それはお前もそうだろ?そのため、昔から互いに争って来たんだからな。ただ、そんな中ある日、三男であるルイが生まれてきて、俺達以外にも跡継ぎとなる可能性がある者が一人増えた」

「ああ。だが、お前も生まれたばかりで、本人はスキルも持ってないし、何より配下となる者が誰ひとりいなかったから簡単に潰せると考えていたんだろ?」

「その通りだ。しかし、俺達の父である現当主が二人の専属執事とメイドをつけた。それでも執事とメイドだから戦うこともできないと考え、あの会食の後、俺は邪魔者であるルイを消そうと暗殺者を送り込んだんだ」

「やはりライアン、お前があの三男に暗殺者を送ったって話は本当だったんだな」


 リアムがライアンに言うと、ライアンはニヤリと笑う。

 

「あれ?おかしいな~?これは極秘裏に行われた話なんだが、何でお前は知っているんだ?」


 リアムは、そんないちいち気に障る言い方をしてくるライアンをうっとおしく思いながらも無視する。

 自分の言葉に対し、何の反応も無いリアムを見て、ライアンはつまらなそうにしながら言葉を続ける。


「ま、それは置いといて、そこまで知っているならお前も知っているんだろう?俺が送った暗殺者がその後、帰って来なかったってことをな。そして、あの小僧は今でも普通に生きているってことを」

「俺は食事会であの小僧を見た時、あの生まれたばかりのひ弱そうな見た目と、後ろにいる執事を見て、簡単に消せそうな邪魔者にもならない存在だと考えていたが、そう甘くなかった。あの執事とメイド、どちらかが俺が送った暗殺者よりも強い実力者だった可能性が高い。もしかしたら、どちらもかなりの強さを兼ね備えている可能性はあるが、あの考えの良く分からない親父のことだから、俺達の邪魔をするためにかなりの実力者を偽装して、あの三男に付けたんだろう」

「とにかく、そのせいで暗殺者を送っても返り討ちされることが分かって、あの邪魔者を消すのに苦労しているんだ。お前もそうなんじゃないか?」


 ライアンに自分の考えを言い当てられたのか、どこか気に食わない顔をするリアム。

 しかし、実際にライアンの言う通りであった。

 リアムも過去、ルイが生まれたばかりの頃、将来邪魔になるのは分かっていたので、自分の配下をルイ暗殺のため送り込んだが、その送り込んだ暗殺者が帰って来なかったということがあった。

 ライアン同様、簡単に殺せると思っていただけに暗殺失敗の知らせを聞いた時、その衝撃は強いものだった。


 だから、この提案はリアムにとっても邪魔者を一人消せるかもしれないチャンスだった。


「確かに、俺もあいつは邪魔だと思っている。そして俺達が協力すれば、相手に強い奴が一人二人いようとも、数さえいればあの邪魔者を消せることも分かる」 


「だが、大勢の配下を送ろうとも、そんなに一度に動かせば、俺達が危惧しているような騒ぎが起きてしまうんじゃないか?そしたら、俺もお前も当主になれたとしても貴族として終わりだぞ」


 リアムもライアンもルイが生まれる前から互いに争っていたが、それでも暗殺などの手段はとっても、配下を大勢動かし、互いの命を狙うという手段はとらなかった。

 

 それは、互いに騒ぎになるのを恐れていたからだ。

 一度騒ぎになり、周りの貴族や王都の住人の耳に入れば、例え争いに勝って当主になれたとしても、王によって家をとり潰される可能性が高いからだ。

 何より、兄弟同士で殺し合っていたのが知られれば、世間体が悪いからだ。

 

 そうなるのを避けるため、騒ぎになるような手段はとらなかった。


「そうだ、お前の言う通りだ。しかし、今回はこれがある」


 ライアンはそう言うと、自分の配下の者に一枚の手紙を取り出させ受け取ると、リアムの方へとテーブルの上を滑らせる。

 リアムはその手紙を受け取ると、何か仕込まれていないか確認しようとする配下を止め、自らの手で開く。

 そして読み始めるとリアムの表情が変わる。


「おいっ、この紙に書かれている内容は本当なのか!?」

「本当だ。その手紙は俺らの親父が俺宛に渡してきたものだ。相変わらず何を考えているか分からないが、嘘では無いだろう。その内容通りならあの邪魔な三男を殺すこともできるはずだ」


 リアムはここまで言われても信じられない様子で手紙を読み返している。


「まあ、その紙に書いてある通りなら、俺らは相当有利な状況になるだろう。だから俺とお前で決着をつけるためにも、さっさとあの三男を殺し、それが終わったら俺達は再び敵同士に戻るってことでどうだ?」


 ライアンはニヤリとリアムへと笑いかける。

 それを見て、リアムもこの場にきてから初めて笑いながら答える。


「よし、その条件でいいだろう。今回だけは協力してやるよ」



 こうしてルイのいない間に、兄達二人の秘密の取り交わしが決められていたのだった。





 屋敷へと戻ってきたルイ達一行。

 途中、ハンスのスキルを使い、周りに気づかれることなく自分の部屋へと辿り着く。

 毎回部屋へ戻る度に行っているベッドへの飛び込みも、もはや恒例と化していた。


「お疲れ様でございますルイ様。今日はもうお休みになられますか?」


 確かに今日は色々な出来事があって精神的に疲れている気がするので、セシリアの言う通りにする。


「それじゃあ、そうするよ。あっ!後、話さなければいけないことがあるんだけど、明日話すことにするから、明日は三人ともこの部屋に集まってもらうようお願いするよ」

「「かしこまりました」」「おうっ!」


 三人それぞれ返事をし、ルイは疲れていながらも、セシリアの手を借りながら休む準備をする。

 

 全て終わり再びベッドへ横になると、ルイは今日会ったことを思い返しながら、深い眠りへと入って行くのだった。





 澄み渡る青い空の下、王城の中にある巨大な訓練用の庭で、大勢の騎士達がそれぞれ鍛錬をしている。

 ただひたすら自分の体を鍛えるもの、刃の潰された剣や槍で模擬戦をするもの、格闘術を互いに練習し合っているもの、自分のスキルの練習をしているもの。

 このような地道な鍛錬が騎士としての実力を保っているのだろう。


 そんな騎士達の中、ひときわ目立つ翡翠のような色の髪をした綺麗な顔立ちの女性がいた。

 

 その女性は翡翠騎士団の団長、イザベルであった。

 

 ひときわ目立つ理由は、騎士団の名前と同じ鮮やかな翡翠の色をした髪もだが、周りにいる男の騎士並みの大きさを持つ、巨大な剣を持って素振りをしているのもその理由だ。

 始めてその姿を見たものは、イザベルのその美しさに目を奪われるだろうが、この光景を見ればさらに目を奪われることになるだろう。


 そんなイザベルに一人の女性騎士が走って近づく。

 

「団長~!!」


 そう遠くからイザベルを呼ぶ一人の女性騎士は、翡翠騎士団団員のメアリーだった。

 そしてその後ろには周りの騎士達は見慣れたように、翡翠騎士団副団長であるウォルターがいるが、メアリーに走りで追いつけないのか、必死な顔でメアリーの後ろを走っていた。

 

 メアリーはそんな副団長のウォルターに気づいているのか分からないが、あっという間にイザベルの下まで辿り着く。

 そしてイザベルの下へ辿り着いた後、息も切らさずに鍛錬中のイザベルに話しかける。


「団長遺跡から帰ってきたばかりなのに鍛錬お疲れ様です!!それにしても玉座の間でのさっきの貴族達は本当に酷かったですね!?せっかく頑張って持ってきたマジックアイテムだけど、やっぱり私達が考えていた通り、あいつらがせっかく見つけてきたマジックアイテムを適当な理由を付けて奪ってったじゃないですか!?本当にあいつらは~!!」


 メアリー達、翡翠騎士団はティリオ村の失態を補うため、貴族達の提案で遺跡へとマジックアイテムを取りに行かされていたが、つい最近遺跡の下層でマジックアイテムを見つけ、無事に戻ってきたのだった。

 

 メアリーはその後、王へ報告に行った際の貴族達の態度に再び怒りが収まらないようだ。

 イザベルはそんなメアリーに話しかけられても集中を切らさずに素振りを続けている。

 巨大な剣が振られる度に、周りには風を切り裂くような音が聞こえてくる。

 

「本当にあの貴族達は許せない……!団長もそう思いますよね?」


 メアリーがそう言った瞬間、団長のイザベルは素振りをしていた手を止める。

 

 メアリーは「団長も自分の考えに共感してくれたのか」と喜びの表情だったが、次の瞬間、頭に強い衝撃が走る。


「痛った~~い!!急に何するんですか団長!?」


 メアリーは頭を押さえながら涙目の状態で団長のことを見る。


「何って、思い出したから罰を与えたまでだ」


 イザベルは一言そう言うと、再び素振りへと戻る。

 メアリーは何のことかよく分かっていなかったが、ふと思い返すと思い当たる節が出てくる。

 

 メアリーは頭を押さえながら、「え?あの遺跡で言ったこと?もしかして覚えてたの!?」と一人で騒いでいる。

 

 そしてそんな場にようやく追いついた副団長ウォルターが辿り着く。


 ウォルターはメアリーと違い、辿り着くと息を切らし、今にも座り込みそうなほど疲れている様子だ。

 そんなウォルターは息を切らしながらもメアリーへ話しかける。


「はぁ……はぁ……。メアリーやっと追いついた」

「あっ!副団長遅かったですね?」

「僕が遅いんじゃなく、……あなたが早すぎるんですよ!」

「あっ!そっか!私って普通の人より魔力量が多いから、魔鎧(まがい)が長続きするんだった!」


 すっかり忘れていた様子でメアリーがそう言う。

 副団長はそのことに呆れた顔をしながらもメアリーへと言う。


「所でメアリー、団長に伝えましたか?」

「あっ!忘れてました!」


 メアリーのその言葉に副団長は呆れた表情をする。


「団長、そう言えば他に言う事があってここに来たんです」


 メアリーのその言葉を聞いても、未だイザベルは素振りをやめない。



「実は、ティリオ村の村人で生き残っていた人がいるという情報を手に入れました」


 その言葉を聞いた瞬間、イザベルは先程同様素振りをやめ、今度はメアリーへと近づいて行く。



「どういうことだ。詳しく話せ」

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