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異世界転生後に繰り返す転生  作者: 久遠 甲斐
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6話 狩猟

 俺は今日も父さんと森に狩りに来ている。

 

 「父さん、今日は何を狩ろうとかって目標ある?」

 「そうだな、今日は最近森で増えすぎている狼を狩ろうと思っているから、レンスは狼を狩るための罠を狼が掛かりそうな所に仕掛けてくれ」


 父さんはそう言いながら背中に背負っている弓矢を外すと、弓と矢のそれぞれが万全な状態かを確認していく。


 「分かった!それじゃ狼がいつも通っている道を探して仕掛けてくるよ!」

 「ああ、頼んだぞ。けどあまり遠くには行くなよ。特に森の中心の方には絶対に近づくな」

 「分かってるよ父さん。毎回言ってくるけど一回も行ったことなんてないだろ」

 「まあ、一応言っとかないと心配でな」


 父さんには毎回のように森の中心の方には行くなと言われるが、なぜ行ってはいけないのかは、俺にはまだ早いと言って教えてくれない。少しくらい教えてくれてもいいのになぁ。

 俺はそんなことを考えながら父さんに言われた通り罠を準備していく。


 「そういえば父さん、ルイがもう喋れるようになったけど父さんどう思う?」

 「ルイか!あいつはきっと神童だろうな。昔、父さんが小さい頃に聞いた話なんだが、その昔、まだ生まれて一年くらいしか経っていない赤ん坊なのに、急に言葉を喋り始めて、さらに会話までできたという神童がいたらしいんだ。その神童は、10歳になってスキルを与えられるまでに、大人でも理解できないような色々な知識を披露して、さらにスキルもなんと階級がノーマル級のスキルじゃなく、数百年に一人しか与えられるものがいないというレジェンド級のスキルを与えられたんだ。赤ん坊なのに既に話すことができているルイもきっと神童に違いないと俺は思ってる!!」

  「……でたよ、父さん以上の世代の人が時々語るその神童伝説。別にそういうことを聞きたかったわけじゃないんだけどな……」


 レンスはラルバートの話を聞いてつぶやく。


 「まあいいか。その神童って伝説上の存在じゃなくて実際に存在したのかな」

 「存在したって父さんは信じてるぞ!まあ、父さんはルイが神童じゃなくとも、かわいい子供の内の一人だから神童かどうかは気にしないがな!」


 そう言って父さんはルイのことを思い浮かべているのかデレデレした顔をしている。


 「もちろんルイだけじゃなく、レンスとリズのことも愛してるぞ!母さんのこともな!」

 「はいはい、分かってるよ。じゃあ、俺は罠を仕掛けてくるから」


 父さんは狩りの時は真剣そのものだが、家族の話になるとすぐに狩りの時とは別人のようにデレデレしながら家族について語り始めるモンスターと化してしまう。

 家族愛が溢れているのは家族として愛されていることが分かるため嬉しいことだが、この家族愛に溢れたテンションで家族について話す時は少しうっとおしく感じてしまう。

 この状態にさらにお酒でも入った時は手が付けられないほど大変なことになる。

 村での宴会が行われる時などは村人の何人かが同じ話を延々と聞かされるという地獄を味わい、犠牲となっている。


 ただ、このやりとりのおかげか分からないが、だんだんと俺がしっかりしないといけないと思うようになった。

 いたずら好きで人を困らせることに楽しみを見出していた俺だが、こんなところでしっかりしなきゃという意識が芽生えたことに自分自身でも驚いている。

 小さな弟ができたことや、こうやって危険な森に来るようになったことも関係しているかもしれないが。


 そんなことを考えているうちに狼用の罠を仕掛けるための狼がよく通る獣道にたどり着いた。


 「早速、罠を仕掛けるか」


 背中に背負っている木製のカバンから紐を取り出す。

 そして、周りに落ちているちょうどいい大きさの木の枝を拾う。


 『スキル・《罠》』


 ここ最近、何度も使い続けてきたスキルを使って罠を作成する。


 「よし、できたぞ」


 レンスはスキルによってあっという間にできた罠を獣道の真ん中に設置する。

 設置の際に少し工夫することも忘れない。

 その工夫はいたずらの時に身に付けた知識ではあるが、相手に罠の存在を気づかれにくくするコツなのだ。


 そのコツとは、罠が見えないように土を被せたりするという小さなことだ。

 小さなことではあるが、それだけで気付かれる可能性がかなり下がる。

 いたずらをしていた時は一からどのように引っかかるか考えながら罠を手作りしていたため、せっかく作った罠がすぐバレないような工夫も色々と考えていたが、今ではスキルのおかげで簡単に作ることができ、手間が省けて助かると同時に、そのような工夫もあまり考えなくなってしまった。

 いたずらをしていたあの頃もスキルがあれば楽だったのにと思う気持ちもあるが、今の小さな工夫を思いつくことができたのも、スキルに頼っていなかったおかげだとも感じる。


 「おっと、余計なこと考えてる暇ないな。早く父さんと合流しないと」


 できるだけ急いで、しかし、森の生物には気付かれないようにそっと足跡と足音に気を配りながら、来るときに付けてきた目印を頼りに父さんがいるであろう場所に向かって戻っていく。

 

 ある程度戻ると、最初にいた地点よりも少し罠を仕掛けた方向に近づいていた父さんを見つけた。

 

 「父さん戻ったよ」

 「戻ったか。ちゃんといつも通りにやれたか?」

 「当たり前じゃん。ちゃんと罠を仕掛けてきたよ。」

 「それならいいんだが、慣れてきた頃が一番油断しやすいから十分気を付けるんだぞ」

 「は~い。今日もいつも通りにやったから大丈夫だって」

 

 真剣になった父さんに色々と注意をされる。

 父さんはその注意のおかげか、今まで一度も大きな怪我とかしたことないらしく、俺も父さんが怪我をしたところを見たことが無い。

 それに俺も父さんの注意を守っているためか、狩りに一緒についていくようになってからまだ一度も怪我をしたことはない。

 これは村の狩人の中でも珍しく、他の狩人は小さなけがは当たり前のようにするものだが、父さんは何故か一切の怪我を負わない。

 狩人の中には森に入って大きな怪我をして狩人を引退せざるを得ない人もいくらでもいるが、父さんがそうなる未来は俺には見えない。


 一切森での怪我を負わない父さんは村の中では一番の狩人だと認められていて、他の狩人や村の人々に一目置かれる存在になっている。

 一目置かれるのは狩人としての実力だけでなく、獲物を多く獲ったときには他の人々にお裾分けしに行くなど、村の人々との助け合いの結果もあるだろうが。


 「よし、レンスが罠を仕掛けてくれたことだし、罠が仕掛けてある所に獲物を追い込むように移動するか。レンス、向かう途中に何か見つけたら教えてくれ」

 「了解、父さん。いつものように群れを見つければいいんだよね」

 

 最早、獲物を探して見つける作業もお手の物になっていると思う。

 実際に今では、父さんほどではないが、周囲を見て、獲物の特徴を掴んで探し当てるのが得意になっている。自分自身では、この技術は村の他の狩人にも負けていないと思っている。 


 「レンス、早速狼の群れを見つけたぞ」

 「父さんもう見つけたのか。相変わらず早いな!」

 「狩人歴が違うからな。そんなことはいいから早く追い込むぞ」


 やっぱり、父さんには勝てないな。さっき出発したばかりなのにすぐに獲物を見つけることができてるからな。やっぱり観察力の差が違うのかな?

 

 「レンス、方向はこっちで合ってるのか?」

 「合ってるよ父さん。そのまま真っ直ぐ向かうと罠を仕掛けてある所につくから」

 「分かった。いつも通り罠にかからなかったのは父さんがやるからお前は罠にかかったやつらが逃げないように見張っててくれ」

 「了解!」


 そんな会話をしながらどんどん俺と父さんは罠を仕掛けてある所に狼の群れを追い込んでいく。


 「父さん、ここら辺が罠を仕掛けてある所だよ。引っかからないように気を付けてね!」

 「分かった。引っかからないように気を付ける」

 

 そうは言いながらも父さんは俺が仕掛けた罠に一回も引っかかったことがない。

 森に仕掛けた分かりずらい罠も、前にいたずらでしかけたことがある罠にも一回も引っかかったことがない。なぜか、父さんだけには罠がかからないのだ。


 しかし、狼の群れは俺が仕掛けた罠にどんどんと引っかかっていく。

 後ろから追い込んでいるのもあるが、どんどんと罠に引っかかっていくその姿は見ていておもしろささえ覚えてくる。

 だが、狼は賢いため全部の狼が引っかかるわけでもなく、何匹かはそのまま俺と父さんから逃げていこうとする。

 

 「父さん、何匹か罠にかかんなくて逃げてるよ!」

 「分かった、父さんに任せろ!」


 『スキル・《弓矢》』


 父さんがスキルを発動した次の瞬間――


 逃げていこうとしていた数匹の狼がドサッという音を立てその場に倒れていた。


 その倒れている狼の体には矢が刺さっており、一瞬で絶命していた。

 驚くべきは矢が刺さっている場所であり、全ての狼が急所を射抜かれて死んでいた。

 

 「相変わらず父さんのスキルは凄いや!ほんと狩人のためのスキルだよね!」

 「レンスのスキルも凄いぞ。そのおかげでこんなに一度に獲物を捕らえることができるんだからな。俺一人で狩りをしていた時とは大きな違いだ」

 

 父さんはこう言ってくれてるが、きっと父さん一人でも狼十数匹程度なら簡単に狩ることができるだろうと俺は思っている。

 

 「さあ、ひとまずこの狼たちを血抜きするぞ。持ち帰るときに重くなると困るからな」

 「今手伝うよ。ちょっと待ってて」


 罠にかかっている狼をナイフを使って血抜きしていく。

 最初の頃はまだ生きている獲物にナイフを刺していく感じが慣れなかったが、今ではもう慣れたもんだ。

 周りを見ると、父さんは俺が血抜きしやすいようにナイフで傷をつけた狼を周囲の木の枝に持ってきた紐で頭を下にして括り付けている。

 

 「父さん、母さんとリズとルイの三人今頃何してるかな」

 「そうだな、母さんはいつも通り家事を頑張ってくれてるんじゃないか。リズはその母さんの手伝いかな。ルイは今日は何してるんだろうな。俺には想像もつかないな」

 「父さんも想像つかないか。ルイは他の一歳児とは色々と違うからなぁ」


 そう、俺は神童の話は信じてないが、神童かどうかは別として弟のルイの行動は普通の赤ん坊とは色々と異なっているのだ。

 生まれてきて数か月の頃はその辺の赤ん坊とあまり変わらない感じだったが、ある日を境に急に変わっていった。

 例えば、急に叫びだしたりするとか、そしたら今度は急に静かになったり、また、俺の考えすぎかもしれないが、ある時は何かをずっと考えているようなそぶりをしていたりと、村の他の家の赤ん坊とは違う点が色々とあり、最初は少し不思議に思っていたが、そんなルイにもあっという間に慣れた。


 ルイが一歳になった時に会話ができるようになった時には、家族みんなそれが当たり前かのように接していて、俺を含め、誰も驚きもしていなかった。

 まあ、他の人からすれば普通じゃないかもしれないが。


 俺はそんなルイを、父さんが言うように大切な弟だと思っているから普通かどうかなんてどうでもいいけどな。

 

 「じゃあ、血抜きが終わるのを待つ間、今日はルイが何をやっているか予想するか」

 「いいね父さん!じゃあ俺の予想は前みたいにまた本を読んでると思うな」

 「いいや今日はきっと、部屋で一人で頭を抱えて何か悩んでるな」


 慣れた手つきで持ち物の手入れをしながらも二人でそんな会話をしていく。

 

 

 二人で予想しあっていたらあっという間に血抜きが終わっていた。

 木の枝に吊るしていた狼の下には大きな血溜まりができていて、その血溜まりに足で土を被せながら二人で狼を枝から降ろしていく。

 血抜きが終わった狼は最初に持った時よりだいぶ軽くなっており、10歳の俺でも簡単に持ち上げることができる。

 降ろした狼を荷車へと積んでいき、積み終わった所で父さんと家に向かって歩いていく


 「今日は大量に狩ることができたな。帰って母さんたちに報告だ」

 「三人ともこんなに狩ったこと知ったら驚くかな?驚くといいなぁ」

 「父さんは驚く反応を見るのもいいが、ルイの予想が当たってるかどうかも気になるけどな」

 「そうだね。けど何よりも早く帰って母さんの料理食べたいよ」

 「じゃあ、できるだけ急ぐか!」

 

 ラルバートとレンスは荷車を引く手と疲れている足に力を入れた。

 

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