49話 決闘内容
決闘に関する内容が書かれた紙を読む。
「えーっと、何て書いてあるんだ?」
ルイは、セシリアに渡された紙に書かれている内容を声に出しながら読み上げる。
「一、決闘の日程は食事会をした日から一ヵ月経った日とする。二、決闘は本人又はその代理となる者を選び、その三人で同時に戦いを行う。三、決闘の勝敗については、相手側が負けを認めるか、相手が死ぬことによって、残った一人を勝者とし、フーリエ男爵家の跡継ぎとする。四、決闘にはフーリエ家の者なら、跡継ぎに興味があるなしに関わらず強制的に参加してもらう」
声に出して読み上げたルイは、持っている紙から顔を上げると、セシリアとハンスの方を見る。
「えっと……。これはいつ届いてたの?」
ルイがそう二人に聞くと、セシリアもハンスも慌てた様子で弁明し始める。
「申し訳ございませんルイ様!これは、先日リチャード様がお受け取りになられたのですが、てっきりその後にルイ様にお知らせしたものかと……」
「俺も大体メイドちゃんが言った通りで、テーブルの上に普通に置かれていたもんだから、坊ちゃんが読み終わった後かと思っていたから知らせなかったが、まだ読んで無かったのか!まあ、こういう時もあるさ!しょうがないしょうがない!」
そう言って二人とも届いていたことを知らせなかったことを謝ってくる(ハンスは全く謝っていない)が、一ヵ月後と書いてあるし、そんなに急なことでは無かったため、ルイは二人を許す。
「まあ、二人ともそう思っていたならしょうがないよ。ただ、リチャードがなんでこれを受け取った時にすぐに僕に知らせてくれなかったのかが気になるけど、二人とも何か知らない?」
そう聞くと、セシリアもハンスも互いに顔を合わせ、お互い何か知っているか確認するが、二人とも何も知らないのか、互いに首を横に振る。
その反応を見て、ルイは首をかしげる。
リチャードが俺に知らせなかっただけじゃなく、その理由を二人にも知らせないのはなぜなんだ?
もしかしたら、知らせが届いた後にすぐ、暗殺者が来ていたため、その対応をしていた可能性もある。
それだったら、知らせるのを忘れていても納得だ。
「まあ、今日とか明日とかの予定でも無いから、別にいっか」
決闘まで、約一ヵ月ほどの期間があるため、そんなに急いで知る必要も無かっただろう。
とにかく、これで決闘についての内容はある程度は分かった。
後は、一ヵ月後まで生き残ることが大切だ。
ただ、ハンスが男爵夫妻から聞いたという、大人数を動かしても騒ぎにならないような準備をしているということだが、その準備がいつ終わるのかは分からないが、いつ暗殺者が大量に攻めてくるかも分からない。
準備をしていると言うくらいだから、本当にそのような根回しを周りにしておいているのだろう。
大人数で攻めてきた時の対策も何か考えて置かないとな。
そう考えていると、部屋の扉を誰かがノックする。
ハンスもセシリアも、慣れた様子で扉の方を向き、警戒する。
すると、扉の向こうから声が聞こえてくる。
「ルイ様、リチャードでございます」
扉の向こうから聞こえてきた声は完全にリチャードのものだったが、もしかしたら、声を変えるようなスキルがあるのを警戒しているのか、ハンスはゆっくりと扉に近づき、そして静かに扉を開いていく。
扉の向こうにいたのは、どうやら本物のリチャードのようだった。
ただ念のため、ハンスがリチャードの身体検査を行い、何か危険なものを持っていないかを確認する。
声を変えるだけじゃなく、顔を変えられるスキルとかもあるかもしれないもんな。
そんなことを言っていたら、スキルなんて数え切れないほどあるだろうし、どんなスキルがあるかもよく分かっていないから、キリがないだろうが、警戒しすぎて損はないだろう。
「それでは失礼いたします」
ハンスによる検査が終わったリチャードが、部屋の中へと入ってくる。
リチャードは部屋に入ると、俺の下へと近づいて来る。
そして跪き、挨拶をすると、何やらその懐から何かを取り出し始めた。
何を取り出すのかと、その様子を見ていると、リチャードの懐から出てきたものは、一枚の紙だった。
リチャードはその取り出した紙をルイへと渡してくる。
「この紙は一体何?もしかして、また決闘に関することについて書かれているもの?」
もしかしたら、決闘について変更点でもあったのだろうか。
「いえ、違いますルイ様」
「じゃあ、これは何?」
ルイはそう言って、もらった紙を開き、中身を見る。
「これは、ルイ様が以前、平民区画に出た際に行かれた、ラッセル食堂のゴドフリーの使いと名乗る者からお預かりした手紙でございます」
「ラッセル食堂からの使い!?」
ラッセル食堂の使いというと、もしかしたら、以前頼んでいたあのことだろうか!?
「使いの方が、つい先ほどこの屋敷を尋ねて来られて、ちょうど近くに居合わせた私がこの手紙をお預かりしたのです」
ルイはその言葉を聞くと、すぐにもらった手紙を読み始める。
そこにはこんな内容が書かれてあった。
「ルイ・フーリエ様。先日お話していた行商人ですが、只今、店に仕入れをしに王都へとやって参りました。こちらから行商人に話をし、ルイ様がこちらにお尋ねになるまで引き留めておくので、できるだけお早めにお越しください。ゴドフリー・ラッセル」
そうか!もう王都へと戻ってきたのか!
喜びのあまり、とび上がりそうになるが、周りの目を気にして、どうにか気持ちを落ち着かせる。
行商人が来てくれたのは嬉しいが、来たタイミングが悪いと感じてしまう。
よりによって、今は暗殺者を送られたりする危ない時期なのに、そんな時に平民区画に行くのは危険が伴わないだろうか。
だが、行商人もいつまで王都に滞在するかは分からないので、できるだけ早くラッセル食堂へと行きたい気持ちもある。
そう悩んでいると、ハンスが手紙を読んでいたルイに近づいてきた。
「坊ちゃん。その手紙には何が書かれてあったんだ?」
単刀直入に聞いてくるハンスだったが、きっと本人もリチャードやセシリアが手紙の内容を気になっていることを感じ取り、こうして聞いてきたのだろう。
行商人と会うという部分は隠して、手紙の内容を説明する。
「ああ、これは以前行った、ラッセル食堂のゴドフリーから、近いうちに店に来てくれっていう内容の手紙だよ。ただ、今はこんな状況だし、どうするか悩んでいるんだ」
そう説明し、ラッセル食堂に行くかどうかを悩んでいることを話す。
「ラッセル食堂か!あそこには俺も一回、行って見たかったんだよな~!けど、確かにこんな状況だから行きづらいか……」
ハンスもラッセル食堂には行きたいとは考えていたみたいだが、その理由は俺が思っているのとは違う理由だろう。
「そうだぜ!」
「うわっ!びっくりした!」
何か考え事をしていたのか、静かになったと思ったハンスが、急に目の前で大きな声を出す。
「坊ちゃん!何も悩む必要なんかないぜ!?バレないようにここから出て行くなら、リチャード様のスキルを使っていけばいいじゃないか!?」
「リチャードのスキルか!それなら兄達にバレないで行けるかもしれないし、リチャードのスキルって人だけじゃなくて、物にも使えるよね!?」
ハンスの言う通り、リチャードの『スキル・《気配遮断》』を使えば、兄達に知られずに平民区画に行けるだろう。
しかも、『スキル・《気配遮断》』はリチャードが言うには、人だけじゃなく、動物や物にまで発動できるはずだ。
ルイはリチャードの方を見る。
「はい。確かに私のこのスキルは、動物や物にも発動できるので、馬車と馬にも発動できるでしょう。ただ、私も馬車ほど大きいものにスキルを発動させたことは無いので、うまく行くかは分からないのです」
「大丈夫!リチャードならきっとできるよ!よしっ、ハンス!その手で行こう!」
「はっ!ルイ様のご期待にお応えできるように私も頑張ってみます」
リチャードはいつも以上にやる気に満ち溢れているが、こんなにも張り切っているリチャードは初めて見る。
どのくらい張り切っているかというと、今、暗殺者が来たら、一人で全員片付けてしまいそうなくらい張り切っている。
そんな張り切っているリチャードの隣にいるセシリアが冷静にルイに聞く。
「それではルイ様。ラッセル食堂へと向かうのはいつになさいますか?」
「そうだな……。本当なら今から行きたいくらいだけど、準備もあるだろうし、明日にしておこうか」
「「かしこまりました」」「分かったぜ」
三人は、ルイの言葉を聞き、同時に返事をする。
一名だけ返事の仕方はバラバラだが、細かいことは気にしない。
「じゃあ、リチャード。ラッセル食堂から来た使いに、明日そちらに向かうから準備しておいてくれと伝えてきてくれ。だから今日はもう帰ってくれていいってことも」
「かしこまりました。お伝えしておきます」
「セシリアはこの前準備したけど、結局着ることを忘れていた、平民の服をまた用意しておいてくれないか?今度こそは使う用事があるから」
「以前ご用意した服ですね?準備しておきます」
明日は、ラッセル食堂にも行くが、他の目的もあるので、平民区画の別の場所にも行くつもりだ。
「それとハンスは……」
「俺は何をしておけばいいんだ坊ちゃん?」
ハンスにも何か言おうとしたが、特に何も出てこない。
「ハンスはいつも通りで大丈夫だから、特にないや」
「俺だけ何も無いのかよ!」
ハンスには何も言うことが無かったが、やはりハンスにも準備しておいて欲しいことを思いつく。
「あっ!やっぱりハンスは明日は平民が着ているような服を着てきてほしいな?」
「平民が着るような服?それなら俺が休みの日に来ているような普段着で来ていいってことか?」
「ハンスが普段どんな服を着ているか分からないけど、それでよろしく」
騎士の服装はよく分からないが、ハンスは自分の身を守る気がないのか、鎧とかを身に付けず、とても軽装しているので、貴族の部下とかにはあまり見えないが、それでも平民の服とかよりは十分上質なものを着ている。
ただ、それだと明日は困るので、その服装を変えてもらうことにする。
「俺だけでいいのか?リチャード様とメイドちゃんはそのままの格好なのか?」
自分だけ服装を変えろと言われ、不思議がったハンスが聞いてくる。
「そうだよ。ハンスだけ着替えてくれれば大丈夫だから」
「まあ、俺も普段着でいれて楽でいいや!」
まだ、不思議そうにしながらも、普段着でいれることに喜んでいるハンス。
まあ、なぜ平民の服を着てもらうかは、明日になったら分かることだからな。




