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異世界転生後に繰り返す転生  作者: 久遠 甲斐
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4話 魔力操作

 あれからは毎日起きて寝て食べての繰り返しで、前世で大人がやっていたら自堕落と言われるような生活を送っていた。

 まあ、この年齢の頃なら当たり前のことで、赤ん坊の仕事であると言っても過言ではないが、今は前世の三十歳としての意識があるせいか、当たり前のことだとしても少し罪悪感を感じる。

 前世では社会に出て働き始めてからはほぼ毎日仕事があり、週に一度の休みはあったものの、こんなにだらけて過ごせるような長期の休みは一度たりとも無かった。

 そのため、少し罪悪感を感じるものの、このだらけて居られる日々を満喫している自分もいる。


 そんな貴重なだらけられる日々を過ごしていたが、この期間を使って俺はだらけることを満喫しつつもだらだらする以外のこともしていた。

 俺以外の赤ん坊にはあるはずのない三十歳の頃の記憶があるという条件は、これから成長していく上で有利であるはずだと考え、俺はこの幼少期で何かできないかを考え試していたのだ。

 

 

 色々と試した中でも成果があったと言えるのが、魔力の操作についてだ。

 魔力量の数値をいじれたことで魔力がこの世界に存在すると確信できたが、実際の魔力の方の使い道が分からなかったため、魔力量の数値を最高値にした日から毎日魔力を使って何かできないか試していた。

 

 すると何日も経ったある日、ついに魔力を自分で操ることに成功した。

 毎日が暇だったからなんとなくで色々な方法を試してみたが、日々試行錯誤したお陰なのか考えていたよりも早く成功した。


 成功すれば簡単だったが、魔力を操るまでには様々な関門があった。

 まず、魔力を使うにもどのようにして使えばいいか分からず、試行錯誤を繰り返さなければいけなかった。

 ほぼ毎日ずっと魔力の使い方を考えていたが、魔力量を頭に思い浮かべた時と同じように頭に魔力量を思い浮かべて、そこから何かを出すようなイメージを思い浮かべたら、魔力が減り、自分の体の外に出て行った。


 これでひとまずは魔力の操り方は知ることができた。その後この作業を毎日繰り返していたらスムーズに魔力を操れるようになっていった。

 しかし、俺が想像していたのはこの魔力を消費して何か魔法のようなものを使うということであり、ファイアーボールとか魔法によくありがちなものを使えるようになると考えていた。

 そのため、想像していたものとは違った魔力の使用用途であった。

 今後使えるようになるための重要な一歩かもしれないが、期待が大きかったためそれ以上にがっかりしてしまったのも仕方がないことだろう。

 

 もう一つ成果と言っていいものか分からないが、この長い期間で体が成長したことによって視覚や聴覚がはっきりし、見ること聞くことが以前よりも出来るようになった。

 これは大きな進歩だった。

 目や耳がはっきりしたことによって、ついにこの新しい世界での景色や、この人生での家族の姿を確認することができるのだから。

 

 目がはっきりしたことにより、今まで見れていなかったものを始めて目にすることができた。

 まず初めに見たのは声だけでは分かっていた母親と父親だったが、ぼんやりと見えていた姿と実際にはっきりと見た姿は全く異なっていた。

 母親は茶髪に茶色い瞳と茶色づくしで、身長はだいたい165㎝程度だろうか。父親は赤髪に赤い瞳で、身長はだいたい175㎝程度だった。

 だが何より特徴的なのが、二人とも前世であったら誰もが振り向くような美男美女であったということだ。

 この二人の容姿を見た時に、この容姿を引継ぐであろう自分も成長したらのなら相当な美男子になるという想像は容易にできた。この二人の容姿を引き継ぐだけで前世よりも勝ち組になれるだろう。

 前世では普通以下の容姿であったため、美男美女の子どもに生まれて来てそう考えてしまうのは仕方がないだろう。

 

 目が見えるようになってから両親を始めて見た次の日、両親は俺の下に初めて見る二人の子どもを連れて来た。

 どうやらその二人の子どもは俺の今世での兄と姉であるようだった。

 この時初めて兄と姉の存在を知ったが、両親はわざと俺の下へ二人を連れてこなかったようだ。

 両親が兄と姉を俺に会わせなかったのは、まだ生まれたばかりなことを気遣ってなのか、それともまだ知らないこの世界の慣習なのかは分からないが、俺が成長したことによってついに会わせる判断をしたのだろう。


 兄と姉はどちらも髪の毛や瞳の色などの特徴は両親の特徴を継いでおり、兄は髪と瞳がこげ茶のような色、姉は髪と瞳のどちらも明るい赤色であった。

 そしてこちらの二人も両親の特徴を受け継いでいることから想像できた通り、もちろん両親譲りの美男子と美少女であった。

 父と母だけでなく兄と姉も顔が整っているということで、俺の顔も整っていることが確定した瞬間でもある。

 ただ、今は自分の顔を確認する術がないことだけが悔やまれる。


 これで我が家の家族構成は両親と兄と姉、そして俺を含めた五人となっていることが分かった。


 さらに、耳が以前よりも聞こえるようになったことで、家族の名前も知ることができた。


  父親 ラルバート

  母親 ローズ

  兄 レンス

  姉 リズ

 

 ちなみに俺が新たに生まれ落ちた一家の姓はフーリエというみたいだ。

 となると、俺のこの新しい人生での名前はルイ・フーリエとなる。

 この名前もどこか前世と似たような雰囲気の名前になったがこれは偶然なんだろうか。それともあの女神の仕業なのだろうか――。

 

 そんなことを考えていたら、部屋の扉が開いて部屋に誰かが入ってきた。

 

 「ルイ!起きてるか!お兄ちゃんとお姉ちゃんが来たぞ!」


 誰かと思ったら兄のレンスが元気な声と共に部屋に入って来た。

 

 「お兄ちゃん!ルイは寝てるかもしれないってお母さんに言われてたでしょ!」


 そしてその後ろからは、騒ぐレンスに小声で注意をしながらリズが部屋へと入ってきた。


 この二人は何をしに来たのだろうと考えていると、部屋に入ってくるなり俺が寝ころんでいるベッドの近くに寄って来た。そして俺が寝ていないことを確認すると、二人は突然両親の自慢話や、自分達が普段何をしているか、それ以外にも様々なフーリエ家についての話をし始める。

 

 子どもは唐突に色々な話をしてくるものだと知ったと同時に、このフーリエ家を知るいい機会だと思い、真剣に内容を聞いていくと、フーリエ家について色々な情報を得ることができた。


 このフーリエ家は先ほど知ったように、俺を含めて家族五人構成であり、父・母・兄・姉・末っ子である俺といった家族構成である。これは既に知っている情報だが、ここからは初耳であることばかりだった。

 まず、二人の話からすると、このフーリエ家は周りを森に囲まれたとある村に住んでいるようだ。 

 そしてそのフーリエ家の暮らしている村は、王国と呼ばれる国の領土の一部に組み込まれているよらしい。と言っても森に囲まれていると聞いた時点で察していたが相当な辺境に位置しているようだ。

 この王国というのは、王国と言うくらいだから王がこの国の政治の中心であるらしく、王政を敷いている。

 村はそんな王国の領土に存在してはいるが、王都や各都市から離れ、周囲が木々に囲まれている森の中にある環境のため、話を聞く限り村の住民たちは王国の国民であるという意識は全くなさそうだ。


 そんな王国の国民であるという意識がない村の住民がどうして王都や都市の存在を知っているかというと、一番近い都市からたまにこの村に来るという行商人から聞いているみたいだ。

 二人も行商人から色々な話を聞いているようだ。

 行商人がたまに来るということからも相当この村が辺境に位置することについて納得できた。

 

 二人の話は次々と変わり、フーリエ家がどのような生活しているかという内容の話へと移った。

 フーリエ家は辺境にあるこの村でどのようなことで生計を立てて生活しているかというと、父親が狩りをしてそれで得た獲物を村の中で物々交換したりして生活しているらしい。

 やはり以前父親が来た時に、狩りを頑張っていたと言っていたことから猟師なのかと予想を立てていたが、その予想は当たっていたようだ。

 

 母親は完全に専業主婦のようで、常に家にいて家事をやっている。まだ幼い子供が三人いるから共働きをせず家にいてくれているのか、それともそれがこの世界では当たり前なのかは分からないが、俺に付きっきりではないにせよ、世話を欠かさずしてくれるいい母親なのは間違いない。


 このような話を色々と聞かされていると、突然レンスが話題を変えてきた。


 「ルイ!そういえば兄ちゃんは明日ようやく教会に行ってスキルが与えられるようになるんだ!俺も父さんみたいに狩りに使えるようなスキルを与えられるだろうから、これでルイにも獲物を獲ってきてやるぞ!」

 「お兄ちゃんったらどんなスキルが与えらえるかまだ分からないのにルイにそんなこと言ってもいいの?それにまだ一日あるんだし、今からそんなにはしゃがなくてもいいんじゃない?」


 妹のリズにはしゃぎすぎだと言われてもレンスの興奮は収まりそうにない様子だ。


 レンスの興奮する様子を見ながらも、レンスの話の中で一点気になった部分があった。

 それはスキルを与えられるという点だ。


 ルイの関心をよそにレンスは話を続ける。

 その話をまとめると、この世界では子どもが10歳になる年に、どんな子どもでも教会に行き、そこで自分だけのスキルを1つ、神によって与えられるようだ。

 神がスキルを与えてくれる場所は教会のみで、教会以外の場所では与えられることが無いようだ。そのためこのような辺境の村でももちろん、人間の住む場所ならどこでも教会が備えられており、10歳になる子どもはみんな教会へと足を運ぶ。

 スキルは、この世界の10歳以上の人間ならば誰しもが必ず与えられているもので、この10歳の時に神によって与えられたスキルによって今後の人生が決まると言っても過言ではない。そのため10歳になる年は人生の節目であり、人生においてとても重要なイベントである。

 

 10歳になる子どもたちはもちろん、子どもの親族だけでなく、村全体が一喜一憂するイベントらしく、その日は祭りのような盛り上がりになるらしい。

 俺もこの話を聞いて、この祭りのようなイベントにいい印象を抱いたが、その話の続きは俺にとってはいい印象を覆すような内容であった。

 


 通常、10歳になったら教会で神によりスキルを与えられるため、10歳になって教会でスキルを与えられる前からスキルを使える者は本来存在しているはずがない。

 だが、過去に教会でスキルを与える前にスキルを発動できた子どもがいたらしく、その子どもは異端児として扱われ、迫害の対象となり、住んでいた場所を追われ――


 ――そして、最終的には殺されてしまった。

 


 俺はこの話を聞き、自分が今置かれている状況を整理する。

 俺は女神にスキルを与えられたため、既にスキル持っている。

 幸いなことに今はまだスキルを発動することができないが、いずれ発動できるようになるかもしれない。しかし、この話を聞いたからには10歳になるまでは人前で使わないことを心に留めておく。

 しかし、スキルを使わなくとも教会がスキルを既に持っているかどうか確認する方法がある可能性もある。

 子どもは10歳になったらスキルを与えられるために必ず教会へは行かなければならないため、そのような手段があったら、いくらスキルを持っていることを隠そうとしてもそこで知られてしまう。

 そのような可能性もあるため、俺は10歳になるまでにスキルを隠すような方法を見つけなければ、異端児として殺されてしまう。

 せっかく長生きすることを目標にしているのに早死にしてしまうことになる。

 俺は10歳までにスキルについて何かしらの方法を探さなければならないだろう。


 兄と姉の話を聞いたことによって生まれた俺の焦りも知らずに、赤ん坊の俺にただ話を聞かせたいだけの二人の話題は次へと進んで行く。


 「そういえば父さん今日も大物の鹿を獲ってきたらしいんだ!すごいよな~!」

 「お兄ちゃんもお父さんみたいに狩りに使えるようなスキルだといいね。もしかしたらお兄ちゃんはいつもいたずらばっかりしているから、そのいたずらを見ている神様が、スキルの中でも一番ランクが低いアブノーマルスキルを与えるかもしれないけどね!!」


 アブノーマルスキルは一番ランクが低いスキルなのか。俺が女神から与えられたスキルの一つは階級アブノーマルとなっていたが、リズの言い方だと何やら使えなさそうなスキルな気もする。

 もしかしたらあの女神は使えないスキルを俺に与えたのか?


 「ア、アブノーマルスキルなんてほとんど与えられることのないハズレスキルなんだから俺が与えられるはずないだろ!そんなこと言ってるリズのほうこそ10歳になった時に与えられるかもしれないぞ?」

 「私はお兄ちゃんと違っていたずらもしてないし、毎日遊んでばっかりでもなく、お母さんのお手伝いとかしてるからきっとそんなことないも~ん!」

 「どうかな~?神様はそういうことに関係なくスキルを与えてるかもよ?」

 「そしたら私だけでなくお兄ちゃんだって可能性あるでしょ!もうっ!からかわないでよ!」


 アニメや漫画だったら、ドドドドッッというような擬音が付きそうな足音を立てて二人は勢いよく俺のいる部屋を出ていった。

 いったいあの二人は何のためにここに来たんだろうか。いきなり来て好きなことだけ喋べるだけ喋っていきなりいなくなる。前世でもそうだったが、子どもの考えることはよく分からない。しかし、今では俺の方があの二人よりも小さいのだから皮肉なものだ。


 あの二人が話していた内容からこの世界についての新しい情報と共に、また新しい問題が生まれてしまった。

 まだ色々と確かめてみなければいけないことだらけなのに、今度は10歳までに解決しなければならない問題ができてしまった。

 転生して日が浅いのに、前世で暮らしていた時以上に問題が山積みであることに対し、頭を悩ませる。



 「しかし、俺はこの世界では立てた目標を達成できるように頑張っていくんだ!」



  そう心の中で自分を鼓舞してみたが、なぜか全く気持ちが奮い立たなかった。

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