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異世界転生後に繰り返す転生  作者: 久遠 甲斐
39/82

39話 冒険者

「冒険者登録ですか?か、かしこまりました」


 職員のお姉さんは少し戸惑った様子になりながらも、きちんと登録の準備をしてくれる。

 そりゃあ、いくら何でも二歳の子どもが冒険者登録をするとは思わないもんな。

 それでも仕事だからか、ちゃんと対応してくれるのは偉いな。


「それではお名前は伺いましたが、決まりなのでもう一度とお名前の方とスキルをお教えください」


 名前とスキルね……。

 ってスキルも教えなきゃいけないのか!?

 ど、どうしよう……。

 俺のスキルは三つあるってことも問題だし、何よりそのうち一つはアブノーマルスキルだ。

 これは言わないとけないという、最大級の危機なのでは!?


「申し訳ございません!ルイ様はまだスキルを与えられるような年齢ではございませんでしたね。なので、お名前だけで結構です」


 そうだった!

 俺自身も忘れていたが、スキルを与えられるのは本来、十歳のはずだから、二歳の俺はスキルが無くて当然なんだった。

 危ない危ない、ここで俺が間違ってスキルを言ってしまっていたら、確実に何かめんどくさいことになっていただろう。

 もしかしたら、教会とかに捕まって尋問されるような事態になっていたかもしれないと考えると、やはり気を付けないとな。


「あっ!名前ですね。名前はルイ・フーリエです」


 ここで、俺は再び名前を名乗る。

 職員のお姉さんはそれを聞くと、紙に今聞いた内容を書いている。

 そして、ハンコを取り出し、その紙に押した。


「こちらご確認をお願い致します」


 そう言って、俺が言った内容を書いた紙を見せてきて、確認を求めてくる。

 何も問題がないことを確認し、俺は頷く。

 

「それでは少々お待ちください」


 そう言って、何やら紙をカウンターの裏に持っていき、しばらくすると銅で出来ている小さな長方形のプレートを持って戻ってきた。

 職員のお姉さんは椅子に座ると、俺に向かってその銅のプレートを渡してくる。

 

「こちらがルイ様の情報が刻まれている冒険者プレートでございます。こちらのプレートは冒険者ギルドでの活動の際に必ず必要となっているので無くされないようにご注意下さい。もし、無くされた場合は、また新しく冒険者登録をしていただくしかございません。ただ、二回以降の冒険登録の際は、料金が発生してしまうのでご了承ください。それと、何度もなくされる方は、最悪の場合には冒険者として二度と活動できなくなるのでご注意ください」


 この説明はジェイクから聞いたことがあるのと何ら変わらないな。


「これで、説明は以上になります。後、詳しくお聞きしたいことがある場合は、またその度お聞きください」


 説明も終わり、プレートを受け取った俺は、もうここに用は無くなってしまったので、職員のお姉さんに感謝の言葉を告げ、セシリアと共に冒険者ギルドを後にする。

 前世に冒険者登録の際のことはジェイクに聞いていたので、詳しく聞きたい話もないからな。


 馬車まで歩いているとセシリアが声をかけてくる。


「ルイ様、それが冒険者ギルドに所属している証となるプレートでございます。ルイ様はご登録なされたばかりなので、ランクはブロンズの4となっております。それと、先程のギルド職員の話の通り、紛失には十分ご注意ください」

「ありがとう。でも心配しなくても大丈夫だよ。ひとまず、無くさないようにリチャードからもらったこの腕輪の中に入れておくからさ」

 

 ルイは腕輪に魔力を込める。

 そして、受け取った銅のプレートを腕輪の中に入れるイメージをすると、持っていたプレートは腕輪の中に収納される。


「そういえば、その腕輪がありましたね!確かにそれなら無くすことはないですね!」

「そうなんだよ!やっぱりリチャードからもらったこの腕輪凄いね!何回か中に物を入れてみたけど、こうやって絶対に無くしちゃいけないものとかを入れて置けるのは便利だね!」


 中に入れられる物も一つだけなので、まさにこのためだけにあるようなものだ。

 今日出かける時に、中に物を入れてこなくてよかった。


「ところで、セシリアは冒険者登録ってしているの?」


 ふと疑問に思い、聞いてみる。


「は、はい。一応、私も登録しています。なので、冒険者に関して何か分からないことがあったら私に聞いてもらって大丈夫です」


 そうか、セシリアも登録しているのか。

 もしかしたら王国の人はほとんどの人が登録しているものなのだろうか?


「セシリアも登録しているんだ!だから僕に冒険者登録をすることを進めてきたのか!」

「確かに、それもございます!ただ、冒険者登録をしておいて悪いことは無いので!」


 確かに話を聞く限りでは悪いことは何もなさそうだった。

 というか、セシリアも冒険者登録をしているということは、名前だけじゃなく、スキルも登録の際に言ったということだよな?

 セシリアのスキルは頑なに教えてくれないので、もしかしたら、冒険者のプレートに何か書いてあるかもしれない。


「ちょっとセシリア僕の冒険者プレートと比べたいから、セシリアのも見せてくれない?」


 これで見せてくれたら、セシリアのスキルが分かるぞ!

 そう考えていたが、そんな俺の考えに気づいたのか、簡単に見せてくれるわけもなく、俺に注意してくる。


「ルイ様!!冒険者プレートには個人情報が色々と含まれているので、そう簡単に他の人に見せてはいけないんです!ルイ様もご注意下さい!それと、冒険者登録の際にスキルを聞かれ、プレートに刻まれるのは、冒険者同士がパーティーを組む時に、互いに分かりやすいようにするためと、戦うスキルがあるかどうかで、依頼を受けていいかを判断するためです!」

「なるほどね、分かったよセシリア!それと何を勘違いしてるのか分からないけど、そんなに怒らないでよ!」


 ルイは、必死にセシリアのスキルを知りたがっていたことを隠そうとする。


「あっ!ほらリチャードが待っているから早く馬車に乗ろうよ!」


 リチャードを待たせているからと、他の話題に変えることで何とか誤魔化す。

 セシリアはそんな俺の考えには気づいているようだが、大人しく俺の意見に従い、馬車に乗ってくれる。


 馬車に乗ると、再びリチャードへの労いの言葉をかける。


「リチャード待たせてごめん!予想外のことが起きて、思ったよりも遅くなっちゃった!」

「いえいえ、私のことはお気になさらず。ルイ様のためなら私たちは何でもやりますので」


 待たされても、文句ひとつ言わないリチャード。

 こ、これがきっと執事の鑑なんだろう!

 まるで、空想上の執事の手本を見ているようだ。


「それではルイ様、お次はいかがなさいますか?」


 リチャードが次に行く場所を聞いてくる。


「う~ん……。本当は南側のお店とかを色々と見るつもりだったけど、今日は思ったよりも時間がかかっちゃったし、ちょっとやりたいこともできたから、今日はこの辺にして、ひとまず屋敷に戻ろうか」

「「かしこまりました!」」


 完全に俺一人の気分で色々と連れ回してしまったが、とりあえず村の情報を得るための目的も達成できた。

 後は、ラッセル食堂から知らせが来るのを待つのと、待っている間に王国三騎士団のことを少し調べてみることにしよう。


「それでは出発致しますので、揺れにご注意下さい」


 リチャードが馬車を走らせてくれる。

 そして、一度通ってきた屋敷までの道のりを戻っていくのだった。


 ◇


 薄暗い洞窟を抜けたその先の開けた空間で、団員が持つ松明の光によって巨大な姿が映し出されている。

 松明を持った一人の団員、メアリーがその映し出された巨大な姿を見て叫ぶ。


「だ、団長!?この犬のような頭が三つあって、しかも大きいって……!!もしかしてケルベロスじゃないですか!?」

「静かにしろメアリー!!そんなこと皆分かっている!皆も団長も集中しているんだ!お前も気を引き締めろ!」


 近くにいた副団長はメアリーにそう言い放つと、手前にいる他の団員と共に腰にある剣を抜くと、魔鎧(まがい)を発動し、剣を構える。

 後ろにいる団員は何やら魔力をコントロールしている。

 メアリーに呼ばれた団長はそんな団員達の最後尾で剣を構え目を瞑っている。


 すると、突然ケルベロスが咆哮する。

 

「グルウゥゥォォォ!!!」


 そして、まるでその咆哮がきっかけとなったかのように、副団長と団員はケルベロスに飛び掛かっていく。

 ケルベロスも、団員達が飛び掛かってくるのを見て、その三つの顔と巨大な体で、襲い掛かってくる。


 両者は互いに主導権を譲ることなく、ぶつかり合う。

 

 ケルベロスも三つある顔を使い噛みついたり、巨大な爪を使い切り裂いてくる。

 団員達はそれを躱しながら、それぞれ、剣をケルベロスに向かって斬りつけたり、突き刺してたりしている。

 しかし、ケルベロスの皮膚が分厚いのか、なかなか傷を負わせられない。

 ただ、団員達も王国の騎士だけあってケルベロスの攻撃をするりと躱していく。


 ケルベロスの攻撃は一撃でも当たったら致命傷になりそうだが、それでも団員達に当たる様子はない。

 翡翠騎士団は調査に長けているとはいえ、全員が騎士なため、その身のこなしも鮮やかだ。

 そんな中、後ろで剣を構えていた団長が瞑っていた目を開く。


『スキル・《一刀両断》』


 そしてスキルを使用する。

 スキルの使用と同時にその剣をケルベロス目掛けて振り抜く。

 すると、団員達と戦っていたケルベロスが突然、動きを止める。

 

「ど、どうしたんですか!?ケルベロスの動きが止まってますよ!?」


 メアリーは急に止まったケルベロスに驚いている。

 その言葉を聞き、ケルベロスの動きが止まったことに気づいた団員達は、攻撃の手を止める。

 必死に攻撃に参加していた副団長も、それに気づくと攻撃の手を止め、団長のいる後ろを振り向く。


「団長、ありがとうございます。お陰で簡単にケルベロスを倒すことができました」

「え!?倒す!?団長が今ケルベロス倒したんですか?」


 メアリーがその言葉を放った瞬間、ケルベロスが真ん中から真っ二つに割れ、両側に倒れる。


「え!?え!?」


 メアリーはそれを見て混乱している。

 

「そうか、メアリーはまだ知らなかったか。これが団長が、王国三騎士団の団長足り得る理由だ」


 副団長が自慢げに、メアリーにそう説明する。

 

「それにしても団長!?スキル使うなら使うって言って下さいよ!」

「大丈夫だ。私は外さない」

「いや!そういう問題じゃないんですよ!他の団員達も自分に団長の攻撃が当たんないのかって思ってますよ!」

「大丈夫だ」


 これ以上何を言っても無駄だと思ったのか、副団長はため息をついて、やれやれという顔をする。

 

「それにしても団長、いくら何でも調査で何の結果も得れなかったからといって、遺跡でマジックアイテムを見つけてくるまで、戻ってくるなっていうのはひどくないですか?」

「しょうがない、マジックアイテムを見つければいい話だ。それに団員達の訓練にもなるしな」

「だとしたら団長がスキルで一撃で倒すのもおかしくないですか!」

「この程度の相手、訓練にもならないだろう」


 再び副団長はため息をついて、頭を抱える。


 「さあ、ここはもういいから次へ向かうぞ」


 団長はそう言うと、ケルベロスの死体を超え、歩き始める。

 団員達はもう行くのか、という表情を顔に出しながらも、その後ろを大人しく付いていった。

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