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異世界転生後に繰り返す転生  作者: 久遠 甲斐
38/82

38話 情報

「フーリエ?フーリエってあのフーリエ男爵家ってことですか?」


 どうやら三人ともフーリエの名前のことを知っている様子だ。


「フーリエ家のことを知ってるの?」


 フーリエ家は有名なのか?という単純な思いで聞いてみると、信じられないとでも言いたげな顔で三人に驚かれた。


「あのフーリエ男爵家だぜ!?この王都では知らない人はほとんどいないと言われている貴族じゃないか!」

「しかも、この平民区画の南側の住民なら、なおさら知らない人はいないと思いますよ!」

「平民区画によく関わっている男爵家のことは、貴族をよく知らない平民たちでもよく知っているのよ!」


 そうなのか!!

 フーリエ家が平民区画の南側に影響を与えているのは知っていたが、平民からの知名度も高いのか!


 この情報はセシリアに教えてもらわなかったので、セシリアも知らなかったのかと思い、セシリアの方を見ると、三人の言葉通りだと言うように頷いていた。

 知っていたのか……。

 きっとセシリアは、単純に考えれば分かることだと思っていて、教える必要もないと思ったのだろう。


 俺がフーリエ男爵家の人間だと知ると、ラッセル食堂でのことも納得がいったのか、逆にこちらに謝ってくる。


「いや!フーリエ男爵家だったらラッセル食堂でのことも納得できるぜ!あそこの店長はフーリエ家に恩があるっていうのは有名だし、これはしょうがない!それなのにさっきはあんな態度をとってすまねぇ!」


 アランはそう言うと頭を下げる。

 そこまでフーリエ家は平民区画での影響が強いのか。

 兄弟で跡取り争いをしたりしているくらいだから、本当はそんなに有名だと思われるような家じゃないんだけどな。

 もしかしたら、いい意味で有名なんじゃなく、悪い意味で有名かもしれないか。


 けど、明らかにアラン達は、俺がフーリエ家の人間だと知ると、態度がいい方向へと変わったと思う。

 何なら、カウンターのギルド職員も、俺がフーリエ家と知った後は明らかにこちらを見る目が尊敬の眼差しのように変わった。

 そんなにフーリエ家は良い家だと思われているのか?


「ねえ、フーリエ家を知らない人がいないくらい有名なのは分かったけど、どんな意味で有名なの?」


 我慢できなくなったのか、三人でもセシリアでもなく、ギルド職員のお姉さんが興奮した様子で椅子から立ち上がり、答えてくる。


「平民たちは、フーリエ家を含む平民区画に関わっている男爵家を四男爵と呼んでいて、とても感謝と尊敬をしているんです!王都の平民区画がこんなに栄えたのも全部、過去からの四男爵のお陰なんです!特にフーリエ家の前の御当主様はとても南側に貢献してくださり、我々の今があるのもフーリエ家のお陰なので、フーリエ家は南側では特に感謝されているんです!」


 ギルド職員のお姉さんは興奮した様子でそう答える。


「ありがとう、職員のお姉さん」


 さっきの俺への対応時の冷静な様子とのギャップに驚いたが、詳しく説明してくれたので感謝をしとく。


 お姉さんは自分が何をしたのか思い返し、「し、失礼いたしました」と言うと、何も無かったのように椅子に座る。


 そんなに興奮して立ち上がるほどフーリエ家は王都の人から好かれているのか。

 前の当主が貢献したと言っていたことから男爵家の代々の積み重ねなのだろう。

 ただ、一応俺の父親である今の当主は、貢献するようなことをしているか分からないが、次の当主となる兄達二人は、今のままだと確実に貢献するようなことができるとは思えない。

 きっとこの感謝も、今だけのことになるだろう。


 フーリエ家の行く末など俺には関係が無いから、今後どうなろうとどうでもいい。

 俺は早く家族の行方を調べないとな。


 そう思い、ギルド職員から情報を聞くという目的を達成するため、俺は三人組に声をかける。


「じゃあ、さっきのことは本当に申し訳なかったけど、僕はちょっと急がないといけない用があるから、この辺でいいかな?」


 アランが代表して答える。


「ああ、こっちこそ時間を取ってしまって申し訳ない!さっきのことは気にしないでくれ!俺らも早く依頼を受けないといけないから俺らもこの辺で!」


 そう言い、アラン達はこっちに向かって頭を下げた後、空いている他の職員の元に行こうとする。

 途中何か思い出したのか、振り向いてきてルイに言う。


「そうだ!もし、何か困ったことがあったら、俺達のパーティー名は『ファスターズ』って言うから、いつでもギルドに指名依頼してくれ!」


 そう言い残すと、隣のカウンターに歩いていった。

 ファスターズか、俺もそんなパーティー名とか憧れるな。

 冒険者になるのもやっぱり考えておこう。

 

 とりあえず今は、職員のお姉さんにティリオ村のことを聞こう。

 お姉さんに声をかけようとすると、先に声をかけられる。


「彼らは今、ランクゴールドに上がれると注目されている若手冒険者パーティーなんです。そんな将来有望な彼らなので、必要になったら是非!指名依頼してあげてください!」


 流石冒険者ギルドの職員だ。

 ここぞとばかりに貴族に冒険者を売り込んでくる。

 この職員のお姉さんだけじゃなく、きっと彼らも貴族に名前を憶えられれば仕事に繋がりやすくなると思い、自己紹介の時にもアピールしてきたのだろう。

 俺が冒険者を雇う時なんて来るか分からないが、一応憶えておくことにしよう。


「それでは先程のお聞きしたいことの内容をお聞きしてもよろしいでしょうか?」


 話を聞こうとした流れから色々とあったが、ちゃんと覚えていてくれたみたいで、お姉さんから話題を戻してくれる。


「はい、その聞きたいことなんですが、この王都から東に向かった王国の辺境にある森の中にある村って分かりますか?」

「はい、存じております」

「その村が今、どうなっているかとか分かりますか?」

「どう、ですか?具体的にはどのようなことでしょうか?」


 具体的にか……。

 これを言ってしまうと、俺の記憶があるのがセシリアにバレる可能性が高まってしまうから、少しはぐらかして言う。


「そのティリオ村のことを古い本を読んでいたら偶然知ったのですが、その村について気になって、ギルドなら何か情報があると思って来てみたんですが、村についてならどんな情報でもいいですから何かないですか?」


 職員は何か思いあたることが無いかうつむいて考えている。

 少しした後、職員はうつむいていた顔を上げる。


「申し訳ございません。私は特に何も情報は聞いていないので、他の職員にも聞いてきますので少々お待ちください」

 

 自分だけでは何も思い当たることは無かったのか、椅子から立ち上がり、他の職員に聞きに行く。

 待っている間、俺はセシリアにあることを聞かれる。


「ルイ様。少し質問をよろしいでしょうか?」

「いいよ?何?」


 俺がティリオ村のことをわざわざギルドにまで聞きに来た理由でも質問するのだろうか?

 

「ルイ様は冒険者登録はなさらないのですか?」

「え?冒険者登録!?」


 まさかセシリアからそのことを言われるとは思っていなかったため、つい驚いて聞き返してしまった。


「はい、冒険者登録です。ルイ様はまだ二歳ですが、冒険者登録自体は何歳でもできるので、するなら早めにしておいた方が楽ですよ?」

「僕もいつかは冒険者登録してみたいとは思ってたけど、まさかセシリアから言われるなんて思ってもいなかったよ」


 てっきりセシリアとかリチャードは冒険者になるのを止める側だと思っていたため、予想外だった。

 俺はいつかは冒険者登録をするつもりだったが、そんな時はセシリアに、冒険者は危ないからやめてくださいとか言われるものだと思っていた。


「いえ!私もリチャード様も冒険者になるのも、ルイ様の将来の選択肢の一つだと考えていたので、そんなことはございません!ただ、流石に冒険者登録しても、冒険者として活動されるのはまだ早いとは思いますがね」

「僕はフーリエ家の跡を継がないから、冒険者登録した方が将来の選択肢を増やすためにはいいかもしれないけど、登録しておいた方がいいことって何かあるの?」

「そうですね……。冒険者登録をして、冒険者ギルドに所属しておくと、依頼をする際に少し依頼料を安く依頼することができますね。そのため、冒険者として活動しない平民とかでも依頼のために冒険者登録をしている人は結構います」


 なるほど、依頼をしたい人は依頼料を出さなければいけないが、冒険者登録をしておくとそれが安く済むのか。

 金がある貴族ならする必要はないが、平民は少しでも自分の負担する金額を安くしたいだろう。

 俺もお金は大事に使いたいと考えているので、安く済むのは助かる。

 ただ、依頼する時がくるのかは分からないが。


「あとは、他の都市を訪れる際に身分を証明するものの代わりになることですね。特に男爵家の三男などは、跡継ぎになれなければ貴族の身分も没収されることが多いので、そんな時のために持っておくのもありですね」


 なんだって!

 それはかなり重要じゃないか!

 もしかしたら、俺も今後貴族の身分を没収されることがあるかもしれない。

 そんな時、他の都市に行った際に身分証の代わりになるなら、確かに持っておいた方がいいな。


「冒険者登録をしておいた方がいいってことは分かったよ。職員のお姉さんから話を聞き終わったら僕も登録することにするよ!」

「特に登録料も必要ないので、登録だけしてしまうのはいいと思います」


 そんなことを聞いていると、職員のお姉さんが戻ってくる。


「大変お待たせ致しました。ティリオ村のことに関する情報なのですが、最近一つだけ情報がありました」


 何だって!?

 情報があっただと!?

 

 ここにきてようやく村に関する情報が手に入ることになったが、ルイはこれが最悪な情報じゃないことを願いながら職員に聞く。


「ど、どんな情報でしたか?」


 何も起こってないでくれ!!頼む!!


「ちょっと前に、そのティリオ村というところに、王国三騎士団の一つである翡翠騎士団が、団長自ら騎士団員を連れ向かったという情報がありました。何をしに行ったかは分かりませんが、最近王都に戻ってきたようなので、その村で何かが起こったということなんでしょうか……。ティリオ村に関する情報はこのくらいです」


 王国三騎士団の一つが村に行っただって!?

 それで最近戻ってきたということは翡翠騎士団の人なら、村について何か知っているのだろうか……。

 ただ、俺は翡翠騎士団だけじゃなく、王国三騎士団にも伝手はないし、伝手のありそうな他の貴族とかにももちろん伝手は無い。

 翡翠騎士団に近づくためには一体どうすればいいだろうか……。


「ありがとうございます職員のお姉さん。いいことを聞けました」


 本当にいいことを聞けた。

 これで、行商人以外にも情報を知っているかもしれない人が増えたのだから。

 とりあえず、行商人も騎士団の方もすぐにはどうにもすることはできない。

 騎士団の方なんて、本当ならすぐにでも飛んでいきたいくらいだが、騎士団がいるのは王城なため、それもできない。


 ひとまず、行商人に会えたら、その後に騎士団に話を聞けるように伝手を探すことにする。


「それじゃあ、話を聞くだけと言ったんですが、ついでに冒険者登録もいいでしょうか?」


 焦らず、今はできることをやろう。

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