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異世界転生後に繰り返す転生  作者: 久遠 甲斐
30/82

30話 訓練場‐2

 ハンスに捕まっていたことで忘れかけていたが、俺は訓練場に来て実際にその施設を利用しようと考えていたのだった。

 

 俺は当初の目的を果たそうと、ハンスとは別れて施設を見に行こうとする。

 

「どこ行くんだ坊ちゃん?ちょっと待てよ」


 なぜかハンスに呼び止められる。


「どこって訓練場にどんな施設があるかを見て、いいのがあったら利用しようと思って」

「なら俺が紹介してやるよ!坊ちゃんのこと気に入ったしな!」


 そう言ってハンスが訓練場を紹介してくれることになった。

 リチャードとセシリアよりも、実際に使用している人に紹介してもらう方が分かりやすいだろうと思って俺もそれを許可した。

 なぜか気に入られてしまったが、元王国三騎士団に所属していた人に気に入られるのは悪いことではないだろう。

 もし、何かあったら助けてくれるかもしれないしな。

 

「けど、訓練終わったばかりでそんなに汗もかいてるのに大丈夫なの?」


 話している間にさっきより少しは汗は収まっていたが、よほどハードなことをやっていたのか、まだ汗をかいている。

 

「それにセシリアの前でずっと上裸で恥ずかしくないの?恥ずかしくなかったとしてもセシリアがかわいそうだから何か服を着てよ」


 上半身は服もずっと着ていなかったため、服を着ろとも言ってみる。

 そう言われてどうするつもりなのか様子を見ていると、ハンスは少し頭を悩ませた後、行動した。


「ちょっと待ってくれよな!」


 そう言うとハンスは魔力を消費してスキルを発動した。

 

『スキル・《成長》』


 成長!?一体どんなスキルなのだろうか?

 そう思い、ハンスのことを見ていると、汗がみるみるうちに無くなっていった。

 

「……!!」


 見ていても何が起こったのか全く分からなかった。

 ハンスのこのスキルはどんな効果なのだろうか!?

 スキルの名前から想像するに何かを成長するスキルだろうが、それが汗を引かせるのとどう関係してくるのだろうか。


「よしっ!これで大丈夫だな!」


 持っていた服を着ながらハンスはこちらを向いてくる。


「ちょっと待って!!今スキルを使ったよね!?どうしてそれで汗が引いていったの!?」


 ハンスに直接聞いてみる。


「どうって?ただ汗を成長させただけだが?そんなことはいいから早く行くぞ!」


 汗を成長!?全く分からなかったが、とにかく名前の通り成長させることができるスキルなのだろう。

 汗が成長してどうして乾くのかは全く分からなかったし、全然説明してくれる様子もないので、

大人しく施設を見に行くとするか。


 ハンスを先頭に、その後ろを俺とリチャードとセシリアが付いていく。

 歩きながら、ハンスに訓練場の施設について質問してみる。


「ところで訓練場ってどんなことを訓練できる施設があるの?」

「どんな施設かって?そうだなぁ、大きく分けると三つの施設があるな」


 そう言いながら右手の指を三本立てる。


「まず、一つ目は自分の体を鍛えるための施設だ。これは単純に、運動とかのトレーニングをするための器具が置いてある施設だな。二つ目は、剣技や槍技を磨くための施設だ。兵士や騎士は守ったり攻撃したりするために、自分のスキル以外に剣と槍を主に使うために普段から鍛えておくんだ。三つ目は、魔力操作を鍛えるための施設だ。坊ちゃんにはまだ早いかもしれないが、魔力操作もトレーニングのように毎日欠かさずにやった方がいいからそのための施設があるんだ。魔力操作の施設に関しては、施設って言えるものか分からないけどな」


 聞く限りは思っていたより、大した施設じゃなさそうだな。

 剣や槍の技を磨けるのはいいかもしれないが、この体は魔鎧(まがい)を常時発動させているため剣や槍を持つこと自体簡単だろうが、振り回したりするのは体格の問題でまだ早いだろう。

 魔力操作も常に魔鎧を発動させているため何の問題もない。

 もちろん運動やトレーニングもそんなにハードなのはまだ必要ないだろう。


 もしかしたら訓練場は俺にはまだ必要ない施設だったのだろうか。

 折角ここまでして来たのに使う意味がないだなんて……。

 まあ、今後使うことになるかもしれないし、ハンスも紹介してくれるから、見るだけ見ておくか。


「よしっ!まずここが一つ目の施設、運動場だ!」


 入口から歩いてすぐに着いたのは、一つ目の施設の運動場だった。

 その名の通り、運動できそうなスペースがあって、そこに体を鍛えるための器具と思われるものが置かれているだけの施設とも呼べるのか分からないくらいの所だった。

 俺は体を鍛えたり運動する施設と聞いていたため、勝手にトレーニングジムのような所を想像していたが、それが悪かったのだろう。

 こちらの世界ではマジックアイテムという未知の物は存在しているが、機械や電気などは存在していないためトレーニングジムのようなものがあるわけないのにな……。


 ただ、もしかしたら特殊な効果を持ったマジックアイテムがあるのかもしれないという期待をしてみるが、実際にそこでトレーニングしている兵士達を見るとそれもなさそうだった。


「この施設にはここで運動すると、自分の体を効率的に鍛えやすくなったりするマジックアイテムとかがあるの?」


 ないと思いながらも少しだけ期待を込めて聞いてみる。

 するとハンスは驚きの表情でこちらを見てくる。

 もしかしてあるけど秘密にしていたとかなのか?


「ぼ、坊主……。お前天才か!?」


 え!?あ、あるのか?


「確かにそんなマジックアイテムがあったら最高だな!!」


 ないのかよ!!期待しちゃったじゃないか!!

 そんな反応をするもんだから俺の予想が当たっちゃったのかと思ったよ!!

 ハンスの反応は、今まで出会った人とは違う反応の仕方をするからとても紛らわしい。

 それがこの男の特徴なんだろうがな。


「そんなマジックアイテムが訓練場にあるなんてことは聞いたことはないが、ここはあそこで運動している兵士達のように施設を利用するんだ」


 そう言って現在、運動場を利用している兵士達を指差す。

 そこにいた兵士達はどの兵士もジェイクやハンスほどムキムキではないが、かなりガタイが良い人ばかりな気がする。

 こんな施設であそこまでムキムキになれるのは、この世界の人の元の体が優れているのだろうか。


「なるほどね、じゃあここはもういいから次の所に行こうか」

「え!?もう行くのですか?」


 もう行くのかとハンスには言われるとは思っていたが、まさかの思っていなかった所から返答が返ってきた。

 声の主はリチャードだった。

 リチャードにしては俺の意見に逆らうような行動をするなんて珍しいな。

 もしかしてトレーニングしている兵士達を見て、通称筋肉モード(俺が勝手に呼んでいるだけ)になってしまったのだろうか。

 

 そうだとすると俺の予想は当たっていたことになる。

 一度、筋肉モードになったリチャードの熱は中々止めることはできないから、きっと今回もどうにもできないだろう。

 リチャードは諦めよう。 


「リチャード。僕とセシリアはハンスと一緒に他の施設を見てくるから、ここに残ってていいよ。後で入口で合流しよう」

「よ、よろしいのですかルイ様?ですが、ルイ様の元を離れるなど……」

「大丈夫だよ。何かあってもハンスもいるからさ」


 きっとあの兵士達に指導したくてうずうずしているのだろう。

 たまにはリチャードの好きなこともさせてあげないとな。

 兵士達には申し訳ないが、リチャードのために犠牲になってもらおう。


「そうですか……。そうですね。彼らを鍛えてあげるのもゆくゆくはルイ様のためになるかもしれませんしね」


 何か勘違いしたのか、完全にリチャードはやる気になっている。

 俺は訓練場で運動している兵士達に軽く頭を下げ、彼らの今後の無事を願うと共に、リチャードを置いて次の施設に向かう。

 後ろを振り向くと、兵士達に近づいて行くリチャードの姿が見えたが、その後ろ姿は何かの使命に燃えている男のように見えた。

 

「すまん……。屋敷の兵士達よ」


 よし、兵士達のことはこのくらいにして気持ちを切り替えて、次の施設のことを考えよう。


「次の施設は剣とか槍の練習をするところかな?」

「おう、そうだ。次は木の丸太とかを相手に見立てて実際に剣と槍を使って訓練する場所だ。まあ、言葉で説明してもよくわからないだろうから、実際に見た方が早いな」


 ハンスは自分から施設の紹介をすると言ってきたのに、元々説明するのが苦手なのか、あまり大した説明をしてくれない。

 まあ、さっきも見れば分かるような施設だったから、ハンスの言う通りなのだが。


「ほら、着いたぞ!ここが二つ目の施設だ!」


 今度はすぐに次の場所に着いた。

 さっきの施設のほぼ隣だったのだろう。

 

 施設を見てみると、ほとんどハンスの説明通りの場所だった。

 先程の運動場と同じくらいの広さの場所に、人間に見立てた丸太が何本か立っていて、それを相手に武器を突き出している兵士がいたり、兵士同士が刃を潰している武器で訓練している姿がそこにはあった。

 こちらの施設は想像していた通りの剣や槍の訓練場のような感じだったので少しテンションが上がったが、そこで模擬戦をしていた兵士や丸太に対して武器を突き出していた兵士を見ると、そのテンションも通常に戻った。

 

 初心者だから詳しくは分からないが、どの兵士もほとんど武器を力任せに振るっているだけで、武器として扱えているようには決して見えなかった。

 ハンスに聞いてみる。

 

「ねえ、あれって兵士として大丈夫なの?剣とか槍として使えて無くない?」


 ハンスは驚いた顔をして俺に向かって言う。


「坊主、あいつらが武器をちゃんと使えてないって分かるのか!?本人たちさえ分かっていないのに!?」

「やっぱり使えてないんだ……。それでこの屋敷を守ってるって大丈夫なの?」

「まあ、屋敷を守るために兵士はいるが、実際には攻めてくるやつなんていないから屋敷を守る必要が無くて、ああやって駄目になっちまってるんだよ。」

「それは平和だってことだからいいことなのかな?」


 王都は平和で、貴族同士で争ったりすることもないため、外部から誰も攻めてきたりすることはないことは分かっていたが、そのせいでこんなに剣や槍の扱いが下手になっているなんて……。

 結局ここも利用することは無さそうだな。

 ただ、ハンスは自分は兵士達とは違うと言うような口ぶりだったため、剣や槍の扱いに慣れているかもしれない。

 もし、そうだったらハンスに教えてもらうことにしよう。

 教えてもらえればの話だが。



 ところで訓練場の施設を二つも見終わった所だが、どちらもあまりいいと思う所は無かったな。

 三つ目に期待することにしよう。

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