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異世界転生後に繰り返す転生  作者: 久遠 甲斐
2/82

2話 気づいたら

 まるで目覚めたように徐々に意識が戻ってきた。

 今度は暗い。

 先ほどの白い空間での出来事は本当に起こったことなのか、それとも夢だったのだろうか。

 俺はどうなったんだ? 

 今の状況を確認するために周りを見渡そうとしたが、体がなぜか動かしづらく、見渡すことができない。近くで何か人の声らしき音がするが、よく聞こえず、声も聞き取りづらい。

 周りに何かあるかもしれないと思い手探りで探ってみると、地面と柵らしきものに触れた。

 地面は柔らかくまるでベッドのようで、柵は木でできているようだったが、なにやら狭い空間に閉じ込められているようだ。もしかしたら、どこかの牢屋かもしれない。

 とりあえず助けを求めるために声を出そうとすると、

 

 「オギャー、オギャー」


 という声が聞こえてきた。

 どうやら近くに赤ん坊がいるようだ。近くに赤ん坊がいるなら、他にも誰かしらいるだろうと思い、助けてもらうためにももう一度声を出してみる。

すると、


 「オギャー、オギャー」


 と、また赤ん坊の声が聞こえてきた。

 そういえば赤ん坊の声は聞こえるが、先程から助けを呼んでいるはずの自分の声は聞こえない。などと考えていたら急に俺の体が何者かに持ち上げられた。

 そして持ち上げたと思われる人が言った。


 「いったいどうしたの? ルイちゃん? お腹がすいたのかしら?」

 

 持ち抱えた人は声から判断すると、二十代ほどの若い女性のようだ。

 それにしてもルイ? さっきから泣いている赤ん坊の名前か? 俺の名前と一緒だな?  偶然か?

 

 「じゃあルイちゃん、今からミルクをあげるからね」


 赤ん坊の母親らしき人がそう言うと、なにやら布が(こす)れる音が聞こえ、俺の顔に何か柔らかいものが触れるような感触があった。

 ここまで来て気づかないほど俺も馬鹿じゃない。もしかして、俺は赤ん坊に転生したのか?

 そう考えれば辻褄(つじつま)が合う。ということはどこかの赤ん坊の母親だと思っていたこの女性は俺の母親になるのか?

 そんなことを考えていると、

 

 「ルイちゃんなかなか飲まないわね。お腹が空いているわけじゃないのかしら?」

 

 前世で三十歳を超えた俺にとっては、見知らぬ(まだはっきり目が見えるわけじゃないが)自分よりも年下の女性の母乳を飲むことは難易度が高いものだった。しかし、確かにお腹からはかなりの空腹を感じる。

 今ここで母乳を飲まなかったら、この後は空腹に襲われ続けることになるだろう。

 そんな葛藤をしている間にどんどん時は過ぎて行ってしまう。

 そこで俺は仕方なく飲むことにした。そう、仕方なくだ。

 下心があったわけでは無い。断じて無い。

 

 「やっぱりお腹が空いていたのね。飲んでくれて安心したわ。いっぱい飲んでどんどん大きくなってね」


 そう言うと俺の転生先でできた新しい母親はベッドにそっと俺を寝かせると、扉を開けて部屋を出て行った。

 

 母親が出ていくと俺はこれまでにあったことや、これからのことを考えるためにも一旦、頭の中を整理することにした。

 ひとまず自分が無事に転生することができたということは分かった。

 ただ、前世の体のまま転生するのかと思っていたから、そこに少し勘違いがあった。赤ん坊からやり直すことになるとは思ってもいなかったからこれからどうしていこうか。

 それと前世の記憶もそのままだ。前世の記憶は消されるものだと思っていたからこれはうれしい誤算だ。

 また、何個かの疑問があるからあげておこう。


 一つ目は、無事に転生はできたが、この世界は前の世界なのか、それとも本当にあの女神の言う通り、まったく別の異世界なのかということだ。

 これはまだ分からないが後々分かっていくだろう。


 二つ目は、この世界の文化レベルだ。

 これはこの世界が異世界だった場合だが、この世界の文化レベルが前世でいう現代と同じくらいなのか。それとも低いのか。高いのか。確かめる必要があるだろう。

 文化レベルによっては前世の知識を活かすことができるかもしれない。

 ただ、これも現段階ではわからないから、後々確かめようと思う。


 三つ目は、スキルだ。

 女神が俺にスキルを差し上げるとか言っていたが本当にスキルは手に入っているのだろうか。

 俺の体に光の玉みたいなのが入っていったし、別れ際にスキルを授けたと言われたから多分スキルは授かったんだろうが、あの女神はスキルの説明もなしに俺を転生させたから、俺はこのスキルがどういうものかも知らないし、スキルを発動することもできない。

 ただ、スキルを授けたっていうことはこの世界はファンタジーの世界なのかもしれない。

 そうなると、この世界はやはり異世界ということになり、文化レベルもファンタジーの世界だとするとそんなに高くないだろう。

 

 疑問を上げていくつもりがこれで一つ目と二つ目の疑問が多分解決してしまった。

 そうするとスキルだけが問題となってしまう。

 こちらの世界の人々は全員スキルを持っているのだろうか。

 持っていたら使い方を聞けばいいのだろうが、俺はまだ赤ん坊だからしゃべることすらできない。

 とりあえず前世の知識を活かしてスキルをどうやって発動させるか試してみることにした。

 前世の異世界ものによくあるパターンを試していこう。

 まずは何か言葉を発してみようと思ったが、俺は今赤ん坊だからしゃべることができない。

 仕方なく何かを念じてみたが何も起きなかった。何回か念じれば何かしら起きるかと思い何度も繰り返し念じてみたが何も起きなかった。

 もしかしたら、何か詠唱とか必要なのかもしれない。それかこの世界独自の方法があるのかもしれない。いや、自分のスキルが何かよくわかっていないからか?

 などと考えていると、再び扉が開く音がした。

 また母親が入ってきたのだろう。


 すると


 「ルイは起きたか?」


 全く予想していなかった男性の声が聞こえてきた。

 今度は誰だ?


 「パパが帰ってきたぞ。どうだ? パパがいない間も元気にしてたか?」


 母親の次に入ってきたこの声の主はどうやら俺の父親らしい。

 これで転生後の俺の両親が分かった。


 「パパは今日も家族のために狩りを頑張ってきたんだぞ。お前は早く大きくなるのが仕事だからいっぱい食べて頑張れよ」


 父親はそう言い残して俺の頭をなでてからすぐさま部屋を出て行ってしまった。

 何だったんだろうか。いきなり来てすぐに出て行ってしまった。

 あれがこっちの世界の父親か。狩りを頑張ったと言っていたが、職業は猟師かなにかなのだろうか。

 それにしても母親もそうだったが父親も声から判断するとまだ若そうだったな。

 俺の前世の年よりも全然若いんじゃないか?

 まあそんなことはいい。何をしていたか忘れてしまった……。

 

 スキルの使い方を探していたが、あの父親のせいで作業が中断されてしまった。

 次は何を試そうか……?

 念じるのはさっきやってできなかった。詠唱はまだできない。他になにか方法があるのだろうか?

 それとも、俺のイメージが足りなかったのか?

 とりあえずしっかりとイメージしてみよう。


 自分がスキルを使っている姿をよくイメージしろ。

 イメージするんだ――。


 すると、


 俺の頭の中に自分のスキルの詳細が浮かんできた。


 「あーー!」


 成功したぞ! これで自分のスキルが分かる! それに嬉しすぎてつい声を出してしまった!


 よし。とにかく成功はした。ひとまず落ち着こう。


 

 とりあえず気持ちは落ち着いた。

 落ち着いたところで確認しよう。

 どれどれ俺のスキルはどんなものだ?


  

 スキル 《                              》 階級????? 熟練度???

      《デスイーター(死を喰らうもの) ――生まれてから死ぬまでに一度だけ死んだ者のスキルを奪うことができる》 階級アブノーマル 熟練度0


 

 なんだこのスキルは? それに階級と熟練度?

 これらについてはまだよくわからないが、まだスキルが分かっただけいいとしよう。

 それにしても上の欄が空白になっていて、階級と熟練度は?になっているが大丈夫なのだろうか。

 これらについては後々成長したら調べることにしよう。

 まだ赤ん坊だし、そんなに急いでやることもないだろう。

 ひとまず見えているスキルのことだけでもどのようなものか把握したいが、効果的に今すぐどうこうできそうなものではないため、後回しにする。


 よし、スキルも分かったことだし後は何をしようか。

 赤ん坊のうちにできることは他に何があるだろうか。


 せっかくこの世界に転生してきたんだからこの世界で生きていく上での目標でもたてることにしよう。

 どんな目標をたてようか考えてみる。

 ひとまず、前世では三十歳で亡くなってしまったから今度の人生は長生きすることを目標にしてみて、今後細かい目標を立てていけばいいだろう。

 

 目標を決めたらなんだか眠くなってきた。

 今日は意識が戻ってきてから色々あったりたくさん考えたりして少し疲れたのだろう。

 それに今の俺の体が赤ん坊といこともあるだろう。

 赤ん坊の本分は食べて寝ることだと思う。

 仕方ない。

 よし、そうと決まったら、


 今日はひとまず寝よう……。

 

 


 

 


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