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異世界転生後に繰り返す転生  作者: 久遠 甲斐
15/82

15話 祝福と急襲

 教会でスキルを与えられた後、帰路についたルイ達フーリエ一家。

 家の扉を開け中に入ると、それぞれ聞きたいことはあるものの何も言わずにテーブルへと座っていく。

 全員が座った所で我慢を抑えきれなくなった四人はそれぞれ口を開く。


階級(ランク)スペシャル……。我が家からそんな凄いスキルを与えられる子が出るなんて……。本当に父さんはビックリしてるし、自分のことのように嬉しい!!」

「お母さんも嬉しすぎてもう涙が止まらないよ!本当におめでとうリズ!」

「もう、お父さんもお母さんもいい加減落ち着いてよ!一番うれしいはずの私が素直に喜べないじゃんか!」

「スペシャル……。」


 家に帰っている途中だけでは、この興奮は収まらなかったようだ。

 最早、レンスだけはただ、スペシャルという言葉を時折口からこぼす屍みたいになっている。


「おめでとうリズお姉ちゃん!ところで階級スペシャルってそんなに凄いの?」

 

 ルイはずっと気になっていたことを聞いてみる。


「凄いのかってそりゃすごいに決まってるだろ!……ってそうか、ルイは知らなくてもしょうがないな。父さんが凄さを教えてやろう!」


 なぜか熱血モードなラルバートが代表して説明してくる。


「与えられるスキルの階級は全部で五つある。弱いと言われている順にアブノーマル、ノーマル、スペシャル、ユニーク、レジェンドだ。」

「ほとんどの人はノーマルを与えられて、ごくたまにリズのようなスペシャルを与えられる人もいる。ユニークなんてほんと数十人しか与えられている人はいないはずだぞ?アブノーマルスキルはもっと少ないが、まあ最弱なスキルと言われているため与えられない方がいいくらいだがな。レジェンドも一応与えられたことがある人はいるらしいが、これは数百年に一人くらいしかいないはずだ。父さんも詳しくは知らないがな」

「これで分かったか!?リズがどれだけ凄いのか!この村程度の規模だと一人いるかいないかくらいのスペシャルのスキルを与えられたんだぞ!?」

「なるほど、リズお姉ちゃんはやっぱりすごかったのか!よく分かったよ。ありがとうお父さん!」


 やはり、階級スペシャルはすごかったようだ。

 家族の興奮状態を見ればどれほど凄いかがよくわかる。

 しかし、父さんが言う階級の順番だとやはりルイが持つスキルの一つ《デスイーター》は、階級アブノーマルなため最弱の階級ということになってしまう。

 効果を見るところそこまで弱いという感じもしないが、色々と制限があるところが弱い原因なのだろうか。


 それと階級レジェンドだが、これはもしかしたらあの絵本に載っていた神童が与えられていたスキルの階級だろうか?

 数百年に一人与えられたというのは絵本の神童のことで、もしそうだとしたらあの絵本の内容は実際にあった話ということになる。

 確定している内容ではないため、このことは頭の片隅にでも入れておくことにしよう。

 

「さっ!そろそろお昼ご飯食べましょうか!今日はリズがスキルを与えられたお祝いということで豪華にしましょう!」

「おっ!いいね~!さすが母さん!」

「じゃあ、今から用意するからちょっと待っててね!」


 ローズは椅子から立ち上がり、台所でいつものように料理を作り始める。

 テーブルに残された四人は食事の用意が終わるまで待つ間に、再びリズの話へと戻る。


「ところでリズお姉ちゃん。せっかくスキル手に入れたんだから使ってみてよ!」


 ルイはまだ人がスキルを使っている所を見たことがないため、今がスキルの使い方を知る機会だと思い聞いてみる。

 スキルの使い方さえ知ることが出来れば、ルイ自身もスキルを使えることができるかもしれないという考えもあった。

 基本家にいて《家事》スキル持ちのローズがいるからスキルを使用しているところを見れるかもしれないなどと最初の頃は思っていたが、普段の生活では一体いつスキルを使用しているのかが分からなかった。

 そのため、スキルを得たばかりの今はスキルを使う姿を見れるチャンスなのだ。


「いいよ!スキルの使い方はねえ魔鎧(まがい)と同じ感覚で魔力を使うみたいだね。よく見てて!」


 リズは魔鎧を見せてくれた時と同じように集中し始めた。

 しかし、何も発動しない。


「あれ?おかしいな?もしかして私の魔力が足りないのかな?」

「そういえばリズお姉ちゃんの魔力量ってどのくらいなの?」

「私の魔力量は100だよ!魔鎧を使うのに必要な魔力がだいたい5くらいだから私のは20回分くらいの魔力量だね。」

「そうなんだぁ!それって凄いの?」

「まあお父さんとお母さんも魔力量はそれぞれ120と80で高いほうらしいから私も高いほうだと思うけど?」

「へぇー。そうなんだぁ……。」


 ここでまた新たな事実を知ってしまった。

 やはり、ルイの魔力量はとても多い。断言できる。

 この世界の魔力量の平均は分からないが、だいたい100くらいの魔力量で高いと言われるなら平均はもっと低いのだろう。

 魔鎧も本来ならあんなに長時間発動できるものではないのかもしれない。

 リズが魔鎧を発動させていたのも思い出すと短時間だけだった気がする。

 自分の魔力量の多さに驚いていると、父さんが気になったことがあるのかリズの方を見る。


「リズ、魔鎧と同じで魔力を使うって言ってたけどまだルイには教えてないから分からないはずじゃないか?なんでその説明を聞いてルイは納得してるんだ?」

「うっ……。……本だよ!そう、本に書いてあったのをルイが見たんだって!だからもうルイも魔鎧を使えるんだよ!」


 リズは墓穴を掘ってしまうが、なんとか苦し紛れの言い訳を捻りだし、なぜかその言い訳でラルバートは納得したのか頷いて黙り込む。


 ……本を読んだと言われただけで納得されるなんて、父さんに一体何だと思われているんだ。


「よし!気分を切り替えてスキルをまた試してみよう!」

「リズお姉ちゃん!もしかしてスキルを使う対象が無いと使えないのかもよ?」

「なるほどね!?それで試してみよう!」


 ルイは、リズのスキルには対象となるものがないと使えないのではと考え、アドバイスを出してみる。

 それを聞き入れ、リズは近くにあったいらない布切れを持ちスキルを発動させる。

 

『スキル・《縫合》』


 リズがスキルを発動させると持っていた布が勝手に縫い合わさった。

 別に糸を持っていたわけでもないのにそこには綺麗に縫い合わさった跡がある。

 このスキルの仕組みは一体どうなっているのだろうか?

 スキルの仕組みについてまた、深く考えそうになったが、リズの声で現実に引き戻される。


「やったーー!!見て!!スキル使えたよ!」

「よかったねリズお姉ちゃん!」


 

 リズが初めてのスキルを使えたことをみんなで祝福していたら、突然、家の東側から大きな音が鳴り響き、地面が揺れ動いた。


「なんだ今の音は!?東側の門の方から聞こえてこなかったか!?」

「ええ、凄い音がしたわ!!」


 突然の爆音と揺れにより家族は混乱状態に陥る。

 

「ちょっと様子を見てくる!母さん子ども達は頼んだぞ!」


 ラルバートは魔鎧を発動し、玄関に立てかけてあった弓矢を掴み取ると、凄い勢いで扉を開け出て行く。

 開け放たれた扉の外で煙が立ち上がっているのが見える。

 何か起こったのだろうかと不安になっているとすぐに土埃にまみれたラルバートが戻ってきた。

 

「レンス!!お前も来てくれ!母さんはリズとルイを連れて教会に避難してくれ!頼んだぞ!」

「ちょっと待ってあなた!外で一体何があったの!?」

「俺にもまだ分からない!!とりあえず避難してくれ!教会なら頑丈だし何とかなるだろう!早く行け!」


 ラルバートと先ほどまでの落ち込んだ気持ちを切り替えたレンスは急いで外へと出て行く。

 残された三人も教会に行けと言うラルバートの言葉の通り、二人の後を追うように外に出る。

 

 外に出ると村の周りからたくさんの煙が立ち上がっているのが分かった。

 先ほど玄関から見えた北側だけじゃなく、全方位から煙が上がっている。

 中には火の手が上がっているところもあった。

 ルイは魔鎧を発動させたローズとリズに手を引かれながら、教会の方向に向かって走り出す。

 避難している最中、周りの家からも異常に気付いた人々が次々と外に飛び出してくる。

 ルイ達と同じ方向へと向かう人は同じく教会へと避難する人達だと分かる。

 避難している人々は皆、老人・女性・子どもと言った人たちで、村の狩人や門番などに限らず男の人たちは外に異常を確認しに行くためか、避難している人達と反対方向に向かって駆けていく。


「一体、何が起きているんだ……!!」


 この村で今起きていることが分からず、何もできない自分に腹が立つ。

 ただ避難することしかできない自分の小さな体がさらに自分が役に立たない存在だということを嫌でも分からせてくる。

 

 避難している村の人達と共に教会へと辿り着く。

 教会でも異常を察した司祭が扉を開いて避難してくる人々を教会内へと誘導している。


「さあ、早く教会の中に入ってください!急いで!」


 司祭は人々を教会内へ誘導しながら、階段を登るのが大変な老人などに手を貸している。

 続々と教会の中へと避難していく中、ルイ達も中へと入るとそこには既にたくさんの人がいた。

 皆おびえているのか、体を震わせながら床に固まって座っている。

 

 ルイもローズとリズの手を引き、空いている場所を見つけるとそこに腰かけた。

 ローズとリズは座ると、急いでここまで来た疲れと何が起きているか分からない恐怖から、足が震える。

 

「何が起きてるんだろう!?お父さんとレンスは大丈夫かな!?これからどうなるの!?」

「大丈夫よ。きっと大丈夫よ。落ち着いてリズ」


 リズは泣きそうになりながらローズに近寄る。

 ローズは震えるリズの頭を撫でながら気持ちを落ち着かせようとする。

 二人とも不安でしょうがないだろうが、教会に集まっている人達も皆、不安で震えている。

 ここで今誰かがパニックになったら、この場は収集がつかないことになるだろう。


 教会に避難した今もあちこちから爆音が鳴り響き、頑丈な建物であるはずの教会もそのたびに揺れ動き、天井からほこりが舞い落ちてくる。

 

 村の外で起こっている出来事に皆恐怖を感じ、悲鳴を上げる。

 ルイは何が起こっているかも分からないままなのは嫌だという気持ちから立ち上がる。

 ローズとリズに驚かれた表情をされながら両手を掴まれるが、それを振り切って教会の扉に近づこうとする。

 しかし、扉に近づいた瞬間、蝶番が外れたのか教会の扉が勢いよく内側に倒れてきた。

 

 扉の近くにいた人たちは悲鳴を上げながら扉から離れるようにして教会の奥へ奥へと後ずさりしていく。

 逆にルイは無くなってしまった扉の方へと近づいていき、倒れた扉を踏み越えて外の様子を窺う。


 

 村の様子は周囲には煙が舞っており、燃え上がっている建物なども避難してくる時よりも増えているように見えた。

 そして、外で扉を守っていたはずの司祭は血を流し、地面に倒れていた。一切動く様子が無いことから恐らく既に死んでいるのだろう。

 

 一体なぜ司祭が死に、頑丈なはずの扉が内側に倒されたのか、その原因を探そうと教会の建物から一歩外へと足を踏み出そうとした瞬間、ルイを強い衝撃が襲った。


 どこからか強い衝撃を受けたが、一瞬の出来事だったあまり、自分に何が起きているのか全く理解ができなかった。

 衝撃を受けたことを理解した次に、自分がどうなったか確認しようと顔を上げると、先程までルイが立っていた教会が数十メートル先に見えた。

 周囲を見回すと家の壁だったと思われるがれきにもたれかかっており、一瞬にして教会から吹き飛ばされたことを理解する。

 ルイがぶつかった衝撃が原因で、この家の壁は破壊されたようにも見える。

 魔鎧を発動させていなかったら、ルイもこの壁のように粉々になっていただろう。

 

 ルイが立ち上がろうと近くにあった棒を杖替わりに掴もうとすると、教会の方からたくさんの断末魔ともとれるような悲鳴が聞こえてくる。


「まだ……、母さんとリズがあそこにいるんだ!早く戻らないと!」


 ルイは痛みで言うことをきかない体をどうにかして動かそうとする。

 しかし、どう頑張ってみても体が動くことはなかった。


「どうしてこんなに動きづらいんだ……、俺の体は」


 不思議に思い、自分の体を確認したところでルイはようやく自分の体の異常に気が付いた。


 魔鎧を発動させていたため衝撃をある程度は吸収できていたのだろうが、ルイの体は二歳児の体でしかない。

 右手と首から上は辛うじて無事だが、それ以外の部位は変な方向へと曲がっていたり、出血していたり、骨がむき出しになっていたりと、見るに耐えない状態になっている。

 この状態で少しでも動けたことの方が驚かれるような姿だった。

 

 自分の状態に気づいてしまったことでとてつもない痛みがルイを襲うが、それでもルイは痛みに耐えながら何とかして、教会の方へ行こうと右手だけで体を引きずる。

 しかし、魔鎧を発動させる集中力もなく素の状態であるため、その進みは微々たるものだった。

 

 少し、そしてまた少し教会へと近づいていくが、その意識は段々と薄れていく。

 先ほどの司祭の死体の近くまで来ることができたが、ルイの意識はもうなくなる寸前だった。


 意識が無くなる前に自分の持っているスキルのことを思い出し、司祭の死体からスキルを奪うことで、今の状況が改善するかもしれないと思い、わずかな可能性にかけ、ルイはスキルを発動させる。

 

 『スキル・《デスイーター》』


 スキルを発動させるとルイの体から黒い靄が出てきて、それが手の形になると司祭の胸のあたりに吸い込まれていく。

 少ししてから黒い靄が司祭の胸の辺りから出てくると、黒い靄でできた手が光りの玉のようなものを掴んでいた。

 その黒い靄は光の玉を掴んだままルイの体にまた戻っていった。


 ルイはその光景をおぼろげに見ながらも、気力だけで意識を保っていた限界が来てしまう。

 

 周りで鳴り響く爆音や人々の悲鳴が耳に入ってくる阿鼻叫喚の中、ルイの意識はゆっくりと薄れていった。


 

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