表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自分  作者: 見伏由綸
2/2

2/2

段々と物語風味になるので、自己責任でどうぞ。

(この物語は、フィクションです。)

いなくなったら悲しむ人がいるから、決して自死は選ばないけれど、自分に存在価値を見いだせない。

死ねばいいのに。消えてしまえばいいのに。そう自分を呪いながら生きる毎日は、いかほどの苦しみか。


 今日だって、あわや卒業できない事態に陥りそうになって、最初に思ったのは先生や両親、先輩方に合わせる顔がない、ということだった。どう償えばいいのか、そう思うばかりで、自分が卒業できなくなることには、なんの感慨も浮かばなかった。卒業できなくなることで進路先にかける迷惑だとか、そんな事ばかりが頭をよぎった。

 そんな、自分を大切にできない人間にも、春が来た。



 文字通り麗かな季節に、初めてお付き合いすることになったのだった。彼は、3つ年上で、社会人だった。チャットアプリで出会い、ともすればおおっぴらにできない関係になりそうなところだが、彼はとても誠実で優しい人だった。ただ、性癖が少々特殊で、付き合った子からことごとく嫌がられて別れることになるため、ささやかな癒しを求めて性癖で引かない子と会話できるアプリを使っていたらしい。特殊とは言いつつも身体的な危険などは一切なく、まあちょっとおじさんっぽいかな、くらいの性癖で、特に問題なかった。自分の存在価値を認められない私でも、少しくらいは価値があるのかな、と思える程には、彼から溺愛されていたし、彼のことを大好きだった。

 だけどどこで掛け違ったのか、段々と心が離れている気がして心配になっていたある日のこと、彼が私を他の人の名前で呼んで、しまった、という顔をした。様式美かと思って誰の名前?と聞いたら、罰の悪そうな顔をして最近仲のいい子、と言われた。本当は心の中はちっとも冷静でもなんでもなくて、何をどうしていいのかわからないけど、表面上は表情が変わらないまま立っていたら、彼はぽつりぽつりとSNSで趣味が合って最近仲良くなってきた子で、と説明を初めて、次第に落ち着いてきたかと思ったら、吹っ切れたような顔で別れないか、そう言ってきた。段々とすれ違いながら関係を続けてどうしようもなく互いを傷つけて別れるより、今落ち着いて別れた方が、いい気がするんだ。そういった彼の表情は穏やかで、本当にそう思っているようで、だから私は何も言わずに了承した。

 彼のおかげで少しマシになりかけていたとはいえ、もともと自分の存在価値が分からない私には、それで彼が自分のせいで苦しみも悲しみもしなくて済むのなら、別れるのもいいと思ったのだ。


 しかし実際に別れてみたら、自分の存在価値がかき消えるのは一瞬だった。なんのために生きているのか分からない、むしろ生きているだけで食べ物を食べ、資源を消費し、酸素を吸うのだから存在しない方がほんの少しだけ世界のためになるのではないか、そう思って毎日を過ごす日々に戻った。

 唯一違ったのは、彼との毎日で存在価値を否定し続ける以外の日々があることをうっすらとだけど感じてしまっていたことだろうか。自分を否定し続ける毎日の中で、苦しまない生活があることを知ってしまったせいで、以前よりもさらに苦しみが深くなっていった。




だから、衝動的に自分を自分で売ってしまったのも、しょうがなかったんだと思う。




 あまり向こうみずな売り方はしなかったおかげで、今は優しいご主人様のもとで愛玩動物とお手伝いさんを合わせたような仕事をしている。唯一の難点はお給料が安いことだが、他の人には問題でも自分の存在価値を求めていた私にとっては特に問題なかった。どんなに安くても給料があるということは、それだけの価値が自分にはあると認められているようなものだからだ。存在価値が全くないのと、1円でもあるのでは精神的に全く違った。それだけで今ここに存在して息をしていていいと許されていると感じて、どうやって消えようか、を考えるのではなく、どうやってその価値を提供するかを考えられるのである。だから、側から見て過酷な境遇であろうと、私にとっては天職だったんだと思う。そういうわけで、私は今日も自分の仕事をし続けるのだ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

感想等いただけますと、小躍りして喜びます(謎

そうでなくても、ここまで読んでこの小説に少しでも存在価値があると思っていただけたら、嬉しいです。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ