008
夜になり、私とクラウド様は、フッカ伯爵の屋敷に来ています。
「シャティー、今日は、宴会の席で人が多いから慎重にね」
「慎重にぶん殴ればいいんですね」
「ははは、いきなりはやめてあげてね」
「は〜い、ご主人様」
毛むくじゃらのブタがやってくる。
「また、会いましたな、クラウド様」
「フッカ様、またお会いできて嬉しいです」
「おっと、そちらはクラウド様の奴隷かな?」
「はい、私の奴隷でございます」
「言いにくいのですが、本日の宴会では、奴隷を連れてはいけない暗黙の了解がございまして」
「それは、失礼なことをいたしました」
「ぐふふ、それにしても可愛い娘ですな、私の奴隷コレクションに加えたいぐらいです」
加えなくて結構です。お断りです。
「お詫びと言ってはなんですが、安くお譲りいたしましょうか?」
「よろしいのですか?」
「はい、安くと言っても、これくらいのお値段になりますが......」
クラウド様は右手の指を4本立てる。
「ぐふふ、いや、十分に安いですぞ、クラウド様。その話、乗りました」
「では」
「はい」
クラウド様と毛むくじゃらのブタは、貴族のブレスレットをカチンと当てて、お金のやり取りをした。
「ぐふふ、では早速、頂こう」
「はい、思う存分、お楽しみ下さい」
「ぐふふ、さあ、行こうか」
毛深いブタは私の肩に手を回し、無理やり、私を歩かせる。
き、気持ち悪い〜!
汚い手で触れないで〜!
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
私は、小さな部屋に連れ込まれ、毛深いブタの奴隷の首輪をつけられる。
「12歳くらいか?可愛いじゃないか」
「お褒めに預かり光栄です。ご主人様」
「ぐふふ、しっかり、躾もなされているではないか」
「ご主人様のご期待に添えるように頑張ります」
「ぐふふ、よく言ったぞ」
私は、両手を拘束され、吊り上げられる。
「ぐふふ、1つ質問してもいいかな?」
「はい、もちろんです。ご主人様」
「貴族警察というワードに聞き覚えは無いかな?」
「はて、私の知るところにはございません」
「ぐふふ、簡単には口を割らないか」
毛深いブタは私のローブを切り裂く。
私の赤色のドレスが露わになる。
「ぐふふ、クラウドは酷く、お前を気に入っていたようだな」
「クラウド様は、私を大切に扱ってくださってーー」
「おい、私以外の者に、”様” なんて、つけんじゃねーよ」
私の顔にナイフを向けて叫んだ。
「せっかくの可愛い顔を台無しにして欲しくは無いだろう?」
「申し訳ありません。ご主人様」
「物分かりのいい奴隷だな。奴隷なら知っているんじゃないか?奴隷を解放している者の存在を」
私の存在が貴族警察と疑っているわけではないのか......
「いえ、聞いたこともございません。私は奴隷市場でクラウド様に買われて以来ずっと、クラウド様の奴隷をーー」
「クラウド様クラウド様、言ってるんじゃねーよ」
毛深いブタのナイフが私の頬をかすめ、少し血が出る。
ナイフを当てるつもりは無かったのか、毛深いブタが動揺している。
「申し訳ありません。ご主人様」
「まあいい、とりあえず、お前の確認を済ませるか」
毛深いブタは私のドレスを縦に切り裂く。
私の白い肌が剥き出しになる。
「ぐふふ、体も一級品では無いか」
今!
私は魔力を最大解放する。
完全に気を抜いていた毛深いブタはその場で卒倒した。
「き、気持ち悪くて、吐き気がしたよ......変態貴族ばっかり......」
私は魔法で、両手の錠を解除して、地面にスタッと下りる。
「私、胸もないし、女性っぽい体つきでは無いけどね......」
自分の体を確認する。
「まあ、いいや」
いつも通り、修復魔法と洗浄魔法でドレスを綺麗にして着る。
毛深いブタに隠蔽魔法をかける。
「さて、助け人を探しに行きますか」
私は、ドレスを華麗にひらめかせ、小さな部屋を飛び出した。