005
「そんな機関、噂話であろう......」
「信じるか信じないかなんてどうでもいいよ」
「お前も貴族警察なのか?」
私は、隠蔽魔法で隠していた、ブローチを見せる。
「王の紋章......」
「奴隷に対する人権侵害、不正な奴隷売買、そして、貴族警察に対する公務執行妨害により、タルラ伯爵、君を王国追放の刑に処する。また、私たちの貴族警察という身分について箝口令を敷く。以上」
クラウド様が淡々と述べる。
「まあ、いい。すでに奴隷となった者の身柄は私の者だ。国外でも存分に働いてもらおうぞ」
ガマガエルは私を睨む。
「お好きにどうぞ。残っていればですが」
「このクソガキ、何かやりやがったのか」
「説明がめんどくさいのでご自身で確認をどうぞ」
私は手で、奴隷を捕らえていた部屋にどうぞと合図する。
ガマガエルは走って部屋まで行く。
もぬけの殻になった部屋に言葉を失う。
「な、奴隷の首輪をつけていたはずだぞ......どうして、儂の命令に逆らえるんだ......貴様の仕業かーー!」
ガマガエルが私を殴ってくる。
私は、爆風魔法を発動しようとした。
「風魔法!」
それよりも先に、クラウド様が、魔法を起動した。
同時に、私の肩に手を回し、引き寄せる。
「グアアアア!」
ガマガエルは壁にぶつかり、地面に伏せる。
「クラウド様、ありがとうございます......」
「うんん、奴隷を守るのは主人の役目だろ?」
「ふふふ、そうですね、当たり前です!」
「おいおい、馬鹿にしてるだろ、シャティー」
「いいえーー!」
「ぐは......くそ......」
ガマガエルは立つのも辛そうだ。
「ご主人様ーー!」
一人の女の子が駆け寄った。
残った子がいたんだね。
「お前は、シュルテー......なんでここにいるんだ」
「決まっているではないですか、ご主人様をお慕い申しあげているからじゃないですか」
「儂はお前に、何度も卑劣なことをしただろう」
「私を救ってくださったご主人様を裏切るわけには参りません」
「おい、貴族けい.....いや、クラウド、シュルテーは連れて行っても問題無いんだな」
「もちろんです。私どもは、奴隷の皆様の意思を尊重いたします。その女性が、望むのであれば、私どもの意見するところにはありません」
「そうか、シュルテー、儂とともに来てくれるのか?」
「はい、もちろんでございます。首輪をくださいませ」
女性は首輪がつけやすいように首元をあける。
ガマガエルは一瞬、目を閉じる。
「いや、そんなものは必要ない......そうでは無いのか?」
「ご主人様がそう望まれるのであれば......」
奴隷の女性は嬉しそうに顔を赤らめた。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「なんやかんや、いつも、誰かは、主人を慕っていますよね」
「ははは、そうだね。どんなに悪い人間でも、どこかで良いことをしているものだよ」
「その逆も然りですよね?クラウド様のように」
「シャティーはいつも手厳しいね。今は真っ当なんだから、許してくれよ」
「そうですね。今日も守ってくれたので、ひとまず許してあげます」
「それはよかった。遅くなってしまったし、露店で買い食いでもしようか」
「はい、アルプパイを食べましょう〜!」
「シャティーはいつもアルプパイだね」
「甘くてサクサクでジュワーですよ!何度でも食べたいです!早く!」
私はクラウド様の袖を引っ張る。
クラウドは引っ張られながら、笑う。
タルラ邸の救出作戦編はここで終了です。
次回は閑話になります!
面白いと思っていただけた方、下の [☆☆☆☆☆] より、評価いただければ、嬉しいです。