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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
3章 マイザー編

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26話 開戦、そして決着

誤字報告、いつもありがとうございます。


 鉱夫さん達を逃がして、エラールセの兵士さんが鉱夫の格好をして配置されて三日経ちました。もし、マイザー軍が予定通りに来るのならば、今日にでも鉱山に到着できるでしょう。

 あ、私はとっくにどこにいるかを把握していますよ。他の人よりも目がいいですからね。もう見えています。


 私達が一応監視を続けていると、エラールセの宰相であるエフェットさんがグローリアさんにマイザー軍の進行状況を報告しに来ました。


「陛下。スパイをさせている者から通信が入りました。明日の早朝にマイザー王国が強襲してくるそうです」


 早朝ですか?

 確かに隙があるといえばありますが、夜の方が鉱夫を殺すのには最適だと思うのですが……。


「それと追加の情報なのですが、鉱山に向かっている兵士を指揮しているのはマイザー王国のプアー王子だそうです」

「はぁ? あの無能のマイザー王をさらに無能にしたようなプアーが指揮官? マイザーの軍部は何を考えているんだ?」


 プアーとは誰なのでしょう? 王子と聞こえましたが、なぜそんな重要人物がこんな所へ? グローリアさんは呆れかえっている様です。いえ、ギルガさん達もプアーを知っているのか、ため息を吐いています。


「プアー王子がいるのに、よく予定通り進軍してこれたな……。俺が兵士なら途中でプアー王子を殴っちまうだろうな」

「ドゥラークさんもプアーって人を知っているのですか?」

「あぁ。マイザー王国、王太子プアー。歳は三十を超えていて大の女好きだ。一週間に一度町へ繰り出しては人妻だろうと声をかけて、金と権力を使い女を奪う。そんな最低な野郎だ。お前は知らないだろうが、プアー王子がいるからか、マイザー王国には女冒険者は殆ど近付かないんだ。今回リディアを連れて行かなかったのもこれが理由だ」

「そうなのですか? タロウ並みの下衆ですね」

「あぁ。いや、王族という立場を考えれば、タロウ以上のクズだろうな」

「そうですか。グローリアさん」

「ん? なんだ?」

「そのプアーというのは殺しても構いませんか?」

「いや、ダメだ」


 まったく。

 私は敵を殺しますから、いちいち気を遣わなくてもいいんですけど。


「今回はお前に気を使っているんじゃないぞ」

「え? 心が読めるんですか?」

「いや、お前は不満があると割と顔に出るからな」


 顔にですか……。これは気を付けなければいけませんね。


「そんな事はどうでもいいです。なぜ、殺しちゃいけないのですか?」

「そうだな。プアーには利用価値があるからな」

「利用価値……ですか?」

「あぁ。マイザー王はプアーを溺愛している。だから、交渉に使おうと思ってな」

「交渉ですか……。でも、エラールセが関わっている事がバレてはいけないんじゃないんですか?」

「まぁな。そこはお前の力を借りるつもりだ」

「え? 脳を破壊するんですか?」

「おい。脳を破壊って何だ?」


 私とグローリアさんが話していると、話が聞こえたらしくギルガさんが血相を変えて走ってきました。


「え? 【破壊】の力を使って脳を壊すんです。殺しちゃいけないと言われたので代わりに考えました」

「ぐ、グローリア陛下?」

「い、いや、俺はそんな事を頼んじゃいないぞ。こいつには倫理というものが無いから、すぐに殺そうとするからな。もう抑えるのは無理と思った方がいいんじゃねぇか? もしくは倫理観を植え付けるために学校に入れるかだな」

「い、いや……。それは……」


 ギルガさんが何かを葛藤している様です。考える事を放棄すれば楽になりますよ。それにしても学校ですか。聞いた事はありますが、そこに入るとどうなるのでしょうね。まぁ、そこまで興味はないので忘れましょう。


「まぁ、いい。レティシア、プアーにかけて欲しい魔法は〈無気力魔法〉だ」

「あぁ、先遣隊に使った魔法ですか。あれでも喋る事はできますよ」

「そういえば、お前は知らなかったな。あの魔法はこちらが声をかければ反応はするが、自分から喋る気力はなくなるみたいで、今も牢に入れている五人はボーっとしているだけだそうだ。あ、飯も喰わんらしいぞ」

「それなら勝手に死にますね」

「そうだな。処刑する手間が省ける」


 処刑する手間というのなら、捕らえず殺すのが一番だと思うのですが……。


「さて、エフェット。全員を集めてくれ」


 グローリアさんが鉱夫の格好をした私達を一か所に集めます。何を始めるのですかね?


「お前等。マイザー王国軍が明日の早朝に来るそうだ。最初はそれとなく逃げ回れ。そして、余裕ぶっているところを叩いてやれ! きっと面白い結果になるぞ!」


 なるほど。

 私はグローリアさんの考えに何度も頷いています。すると、レッグさんに頭を叩かれます。


「アレを見本にするな。陛下は本当に変わっちゃいないなぁ……」

「ははは。この人が狂皇と呼ばれる理由が分かった気がするぞ……」


 レッグさんとギルガさんがグローリアさんを呆れた目で見ています。


「レッグさん。グローリアさんが狂皇と呼ばれるのはあんな考えがポンポンと出てくるからですか?」

「いや、あの人は戦うと自分が怪我をしようと構わず血みどろになりながら戦う王なんだ。そこから狂皇と呼ばれるようになった。あの考えは元からだが、国が絡むとあんな考えはしないよ」

「そうなのですか?」

「あぁ。俺は新人の時に陛下と一緒に仕事をした事があってな。その時から全く変わっちゃいない」


 レッグさんがしみじみと昔を思い出していると、グローリアさんがこちらに歩いてきます。


「そうだなぁ。レッグ、お前と一緒に戦うのは久しぶりだなぁ……。そうだ、ギルガ」

「はい?」

「俺もリーン・レイに入れてくれよ」


 グローリアさんもパーティに入るのですか? エラールセ皇国もパーティに入るんですか?


「いやいやいやいや……。ダメだろう」

「なんでだよ」

「あんた皇王だろうが!?」

「辞めちゃダメかな?」

「その言葉を横にいるエフェットさんの顔を見て言えるのか?」


 グローリアさんは隣にいるエフェットさんを見ます。凄い笑顔ですが、何か怖いです。


「い、いや……。冗談じゃないか。エフェット、怒るなよ」

「それならいいのですが……」


 なるほど。

 グローリアさんもエフェットさんが怖いんですね。私でも少し怖かったですよ。



 その日は、寝ずにマイザー軍を見張ります。そして、日が昇りました。



「みなさん。見えましたよ」

「そうみたいだな。足音が大きくなってきた」


 この足音は、馬ですか?

 馬に乗っていたのに一週間もかかったんですか?


「プアーがいたから、一週間もかかったんだろうな……。数は二百くらいだ」


 二百人ですか。

 鉱夫の数は百人ほどでしたから、倍ですか。


「こっちは戦うのは三十人くらいか?」

「三十人でも多いだろ? 正直、ここにいる俺達で充分だ」

「そうだな」

「だが、俺達は最後まで手は出さん。まずはこちらの兵士に戦わせる。それでいいな」


 兵士に戦わせるですか。別にいいのですけど、それだと暇になりますよ。


「情報では弓兵はいないそうだ」

「馬鹿じゃないのか? 鉱夫相手とはいえ舐め過ぎだろう……」

「そうだな」


 遠距離攻撃をしないのですか。

 強襲と聞きましたから、まずは矢が飛んでくると思っていたのですけどね。それならば……。


「弓兵がいないのなら、魔導士がいるんじゃないんですか?」

「いや、それはないな。マイザーには宮廷魔導士すらいないんだぞ。軍部に魔導士がいると聞いた事がない」

「遠距離攻撃にはどう対処するんですか? 魔物の中にもブレス攻撃などをしてくるモノもいるでしょう?」

「魔物討伐は冒険者にやらせているから問題ないと思っているんじゃないか?」


 魔導士までいないって、本当に頭がおかしい国なんですね。放っておいても滅びそうです。


「こっちから魔法を撃ちこみましょうか?」

「そんな事をしたら俺の部下まで死んじまう。止めてくれ」


 そういえば、グローリアさんの部下もいましたね。グローリアさんは部下を大事にする人なんですね。


「分かりました。止めておきましょう」


 私達は慌てる演技をしながら、マイザー軍が来るのを待ちます。すると、驚くべき光景を見る事になりました。

 何とマイザー軍は馬から降りて、整列して鉱山に向かってくるではありませんか。これは強襲ではないのですか?


 マイザー兵達は、整列したまま鉱山の入り口までやってきます。流石に、ここまで礼儀正しく来られているので私達も慌てるわけにはいかなくなりました。

 兵士達と対峙する私達。ギルド職員に変装したエフェットさんが前に出ます。

 そういえば、マイザーの王子がいるんですよね。彼はエラールセの宰相であるエフェットさんの顔を知っているんじゃないんですか? これは不味いんじゃないんですか?

 そう思っていると、グローリアさんが鉱夫に変装した兵士に指示を出しています。どうやら、馬鹿正直に整列しているマイザー兵を囲むようです。これから、彼等を殺すのですから逃げないように囲むのは当然かもしれません。


 兵士を掻き分け、一人だけ綺麗な格好をしたアホそうな顔をした人が出てきました。これがアホ王子ですか?


「私はマイザー王国王太子であるプアーだ! 鍛冶ギルドにより不法占拠されたミーレル鉱山を武力によって取り返させてもらう。今いる鉱夫は全員処刑だ!」


 ふむ。

 マイザー王国と鍛冶ギルドの間で交わされた取引内容は知りませんが、このアホ王子がアホというのは良く分かりましたよ。


「それはあまりにも勝手が過ぎるのではありませんか? マイザー王はミーレル鉱山の所有権を手放したではありませんか。鍛冶ギルドもそれ相応の対価を支払ったはずですが?」

「くどい。鍛冶ギルドから支払われた金では足りん。この鉱山ではミスリルが取れるのだろう! その金もマイザーのモノにするのが道理だろうが!」


 このアホは本当に何を言っているのでしょうか……。

 アホが兵士に指示を出します。


「問答は不要だ。鉱夫は今すぐ死ね!」


 アホが手を振り下ろすと兵士達が一斉に鉱夫を襲おうとし始めます。さて、どうなるでしょうね……。



 ……と思ったのですが、戦闘はあっけないほどアッサリと終ってしまいました。というか、弱すぎます。

 プアー王子(アホ)以外に数人を生かし、それ以外は殺しました。しかし、エラールセの兵士さんは強いですね。私達の出る幕はまったくありませんでした。


「私達は見ているだけでしたね」

「そうだな。弱すぎて話にならん。それに見てみろ」


 ドゥラークさんが指さした先には機嫌の悪そうなグローリアさんが腕を組んで立っています。


「弱すぎて暴れられなかったから、むちゃくちゃ不機嫌だな」

「そうですね。自分で手を出さ無いと決めましたよね。まぁ、私は私のお仕事をしましょ……?」

「ん? どうした?」

「……とても強いのが来ます。マイザーの英雄かもしれません」

「なに?」


 私がしばらく空を見上げていると、一人の男性が落ちてきました。

 鉱夫に変装した兵士さんが男性を取り囲みました。

 しかし、男性は気にした様子もなくゆっくりと立ち上がり、私の所へとやってきます。


「よぉ。お前がレティシアか?」

「そうですが?」

「ラロから聞いてたけど、こんなに小さいとは思わんかったなぁ……」


 いきなり現れて、小さいとは失礼ですね。

 どちらにしても、私を知っているという事は敵ですね。殺しましょう。

 私がツルハシを振り上げると、男性は慌て始めます。


「待て、俺はお前に話があるだけや! それとそこにいるグローリア陛下にな」


 グローリアさんがここにいる事も知っているのですか?


「敵ですか?」

「俺は建築ギルドの人間や。俺は建築ギルドのSランクのアセールって言うんや。よろしゅーな」


 アセールという男性は握手を求めて手を差し出してきます。


「はい? なぜ握手をしなきゃいけないんですか? 貴方は敵ですか?」

「いや、敵ちゃうで。味方でもないけどな」


 味方ではない。

 では敵ですね。


「じゃあ、死んでください」

「ちょっと待てや。ホンマに話の通じひん幼女やな。実年齢は十六歳と聞いてるけど、精神まで幼いんちゃうか!?」

「はい? 喧嘩を売っているんですね?」

「ま、待て。わいは別に喧嘩売ってへんで。新しい仲間(・・)は凶暴な幼女とは聞いてたけど、ホンマに凶暴やなぁ……」

「仲間?」

「あぁ。お前はわい等の仲間や」

「はい?」

「お前にSランクの真実っちゅう奴をわいの知っている限り教えたるわ」


 Sランクの真実ですか……。


「興味もないし、必要ないのでいりません」


鉱山での戦い。一瞬で終了。

レティシアに暴れさそうと思いましたが、弱さを引き立たせるために兵士だけで終わらせました。


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