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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
3章 マイザー編

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25話 スパイ

誤字報告いつもありがとうございます。


 服を傷付けずに、なおかつ殺さないよう……ですか。意外と難しい注文ですね。

 ……難しい注文というのは嘘ですけど。


「それで、結局のところ、脳を破壊してもいいのですか?」

「それも困るな。こいつ等には情報を吐いて貰わねばならん」

「そうですか」


 殺さず、脳の破壊もダメ……、となると特殊能力を作り出す必要がありますか……。

 えっと……。

 まぁ、作るのは後にして……。

 

「どちらにせよ、一人捕まえようと思います。どれがいいですか?」

「そうだな。あそこの岩陰の奴ならば他の奴等に気付かれない。俺も行く。転移できるか?」

「できますよ。でも、一緒に行くとは、私は信用されていないんですね」

「そうだな。お前が素直に言う事聞くとは思っちゃいないからな。お前を一人にしたら殺しかねん」

「失敬な。一度、殺さないと決めたら殺しませんよ」


 私とグローリアさんは、岩陰に隠れている先遣隊の一人の背後に転移します。普通は転移の光が発せられるのですが隠ぺい魔法で光を隠します。

 そして、そーっと近付き、頭を掴みます。


「な!?」

「うるさくしたら、頭を潰しますよ?」

「こ、子供? はんっ。子供の力で大人の頭を潰せると思っているのか?」

「はい。可能ですよ。試してみましょうか?」


 私は笑顔で頭を掴む力を強めます。

 ミシミシと音が鳴って楽しいです。


「あががが……。や、止めてくれ……」

「ふふふ」


 楽しくて、つい笑ってしまいます。


「レティシア、止めてやれ」


 グローリアさんに止められたので力を緩めます。


「き、キサマら何者だ?」

「通りすがりの狂皇だ」

「な!? エラールセの狂皇だと?」

「そうだ」


 アレ?

 この人、狂皇と言っちゃいましたよ。


「正体をバラすんですか?」

「あぁ。どうせ、用事が済んだら殺すんだ。バレても問題はない」

「え? 結局殺すんですか? それなら脳を破壊しても良かったんじゃないんですか?」

「いや、情報は吐いて貰うから脳の破壊は駄目だ。お前は〈自白魔法〉が使えるんだろ?」

「な、何を言っている!? 〈自白魔法〉だと? そんなモノ存在するはずがない!? そ、それに脳の破壊だと!?」


 先遣隊の一人は私達の会話を聞いて青褪めています。

 まぁ、敵対した以上、殺される覚悟は必要だと思いますよ。


「別に貴方が信じようと信じまいとどうでもいいですよ。ガタガタ言わずに黙っていてください」

「そうだな。でも、安心しろ。今は殺さねぇから。レティシア、脳を破壊しても〈自白魔法〉で情報を吐かせる事は可能なのか?」

「さぁ? 情報を記憶している脳が破壊されるのですから無理じゃないですか? 試した事が無いから、知りませんけど」

「そうか……。なら、別の方法しかねぇな。どう拘束するか悩むな」

「私が特殊能力を作りますよ。作る能力ある程度は考えついていますから」

「何を作るんだ?」

「え? 今から考えますよ」

「お前、今考えついてるって言ったじゃねぇか」

「だからある程度ですよ。黙っていてください」

「ったく。本当にお前は口が悪いな……」


 ……。

 逃げないようにするには……。

 ふむ。

 そういえば、ジゼルのところの【怠惰】が面白い能力を使っていましたね。確か……無気力にして殺すでしたっけ? それをベースに考えましょう。


「ひ、ひぃい!?」

「何を逃げようとしているんですか?」


 私は先遣隊を眠らせます。そして、両足の骨を砕いておきます。


「これで逃げられないでしょう」

「おい。〈睡眠魔法〉があるんなら、それでよくないか?」

「はて? その程度じゃ面白くないじゃないですか」

「いや、面白いとか面白くないとかそういうのじゃねぇんだよ」

「はて?」


 グローリアさんは何を言っているのでしょう? 面白いから敵を実験体にするんじゃないですか。


 私は先遣隊の人に特殊能力を作ります。

 作るのは【怠惰】から【無気力】【無力】【虚弱】の三つです。これを常時発動させておきます。これでこの人は、死ぬまで何もせずにボーっと生きるでしょう。ある意味幸せかもしれませんね。感謝してください。


「えい!」


 私が魔力を込めると、先遣隊の人は体を痙攣させます。そして、ボーっとし始めます。成功ですね。まぁ、失敗はありえませんけど。


「さて、残りは四人だな」

「そうですね。しかし、思っていたよりも数が少ないですね」

「いや、先遣隊はこれくらいの人数だ。そもそも、鉱夫相手にこんなに送って来るなんて多いくらいだ」

「そうなのですか?」

「本来の鉱夫は戦えないんだぞ? それにビビって五人もの先遣隊を送って来るなんて、どれだけ鉱夫にビビってんだよって話だ。レティシア、残りの四人も捕らえてきてくれるか?」

「はい」


 私は全員の足の骨を砕き連れてきます。

 四人には、まだ魔法は作っていないので今は痛みと恐怖で喚いています。


「うるさいですねぇ……。一匹くらい殺してもいいですか?」

「だから、ダメだ。さて、こいつ等には聞きたい事がある」

「え? 〈自白魔法〉を使わないのですか?」

「あぁ、嘘の情報が聞きたいんだよ。恐らくこいつらは捕らえられた時の為にこう言えと言われている事がある。それが聞きたい」

「なぜです?」

「宰相のエフェットがその情報が欲しいって言っていてな。俺は良く分からないけど、必要だそうだぞ」

「そういうモノなのですか?」

「さぁな」


 私達の会話を聞いていた先遣隊の一人が青褪めています。


「ちょっと待て。宰相ってどういう事だ?」


 あ、聞かれていましたよ。


「もう。グローリアさんが余計な事をべらべら話すから嘘の情報を聞けないじゃないですか」

「ちょ……、俺のせいかよ」

「はい」

「はぁ……。嘘の情報はもういい。レティシア、こいつ等にもあの魔法を使っておいてくれ。鉱山に戻ってから情報を吐いて貰う。もう素直に話はできんだろうからな」

「この後どうするんですか?」

「お前の転移魔法で連れて帰り、俺の部下をマイザー本隊に送る。だから、転移してもらうぞ」

「あ、はい」


 私は残りの四人にもさきほどの〈無気力魔法〉を使い、鉱山へと転移します。

 鉱山には十人くらいのエラールセ兵が立っています。それをドゥラークさんは呆れた目で見ていました。そして、私に気付き駆け寄ってきます。


「お、おい。鉱山に兵士の格好をした奴が堂々としているんだが……、これじゃあ、鉱夫に変装する意味ねぇじゃねぇか。エフェット殿に聞いても「大丈夫」しか言わねぇしよ……」

「あぁ、この人達がそうなのですね」

「何がだよ。意味が分かるように言ってくれ」


 ドゥラークさんは意味が分からないと言った顔をしています。まぁ、スパイの事は分かりませんよね。


「おい。お前等、頼むぞ」

「分かりました」


 五人は無気力な先遣隊から服を剥ぎ取り、着替え始めます。体格も似たような人が着替えるみたいですね。

 そして、グローリアさんに敬礼をした後、マイザー本隊がいる方向へと駆けていきました。

 残ったエラールセ兵は、転移魔法陣でエラールセへと帰っていきます。残ったのは宰相のエフェットさんだけでした。


「なるほど……そういう事か……」


 帰っていくエラールセ兵を見て、説明せずともドゥラークさんも気付いたようです。

 

「さて、私達はどうしますか?」

「そうだな。こいつ等に〈自白魔法〉を使って情報を聞きだすぞ」

「分かりました。あ、そうです。質問の仕方によっては、エフェットさんが欲しがった嘘の情報も聞けるんじゃないですか?」

「そうだな。エフェット、お前が尋問してくれ」

「分かりました」


 私はパンツ一丁にされた先遣隊の人達に〈自白魔法〉を使います。

 宰相さんのエフェットさんがいろいろと先遣隊に話を聞きましたが、たいした情報は得られませんでした。

 一つだけ分かったのは、今回の挙兵はマイザー王がミーレル鉱山で採掘できるミスリルを欲しがった事が理由でした。


「なんとも、下らない理由だな」

「そうですね」

「しかし妙です。マイザー王はミスリルの価値をどう知ったのでしょうか。私達の知るマイザー王は本物の無能です。そんな無能がミスリルの価値を知っているはずがありません。誰かが口添えしたとしか考えられません」


 口添えですか。

 エフェットさんはとても賢いのでこの人の言葉はとても参考になります。尊敬できますね。

 しかし、先遣隊は誰も口添えした人の事を知りませんでした。


「まぁ、その辺りは全員が揃ってから話すとしよう。ドゥラーク、アイツ等をこちらに呼んでおいてくれ」

「あぁ」


 ドゥラークさんはギルガさんに連絡を入れます。

 ギルガさん達も準備が終わり次第、こちらに来るそうです。

 エフェットさんはグローリアさんに鉱夫の服を渡しています。


「陛下もこちらで待機しておいてください。私は一度帰り、彼等の尋問を続けます。色々と聞きたい事もありますから」

「おう、夜に一度こっちに来てくれ。無理はするなよ」

「無理をするなというのであれば、今回の作戦に参加しないでください」

「ははは。そりゃ無理な相談だな」

「ちょっと待て。あんた、マイザー軍との戦いにも参加するつもりか!?」

「当たり前だろう? 何を言ってるんだ?」

「いや、あんたが何言ってんだ!?」


 グローリアさんはケタケタと笑い、ドゥラークさんとエフェットさんは額に手を当てて呆れていました。

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