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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
3章 マイザー編

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23話 ギルガの心配


 グローリアさんとの話が終わった私は、一度拠点に戻り、エレンとカチュアさんの二人を連れて一緒にセルカへと戻ります。

 二人には自室でゆっくりしてもらい、私はリーダーであるギルガさんにグローリアさんが話していた作戦を伝えます。


「そうか。エラールセ皇国軍がミーレル鉱山に挙兵しているマイザー王国軍と一線を交えるのか。鉱夫に変装するとはグローリア陛下も考えたものだな。それで、お前が参戦するのはグローリア陛下からの要請か?」

「いえ、私が一緒に戦いますと言ったんです。このままマイザーを放っておいたら、エレンに危害が及ぶかもしれませんから」


 私がそう言うと、ギルガさんはため息を吐きます。


「そうか。お前が戦うと決めたのなら、オレからは何も言えん。だがな、レティシア。一つだけ約束してくれないか?」

「約束……ですか?」


 ギルガさんは真面目な顔で私を見つめています。とても重要な約束なのでしょうか?


「レティシア……、お前は目立つな」

「はい?」


 目立つな?

 私は目立ちたがりではないですから、目立つつもりはありませんよ。そもそも、私も鉱夫に変装するのですよ? 私は身長が低いですからドワーフと間違えられるでしょうし。

 

「お前はどこまで自信がある?」

「自信ですか? それはどういった自信でしょうか?」


 ドワーフと言い切る自信はありますよ。小さいですからね。


「数百、千を超える兵士を一人で殺せるか? と聞いている」


 あ、そっちでしたか。

 殺せる数ですか……。

 正直な話、ジゼルやギルガさんクラスの人達が数百もいればかなりキツイですが、時間をかければ負ける事は無いでしょう。

 ですが、普通の兵士が相手ならば、魔法を数発撃ちこめば済むので簡単に殺しきれます。


「そうですね。条件(・・)が揃えば可能です」


 兵士が雑魚ならばという条件が揃えばですけどね。ギルガさんくらい強い人が沢山いれば面倒くさくなります。


「やはりそうか。お前に鍛えられてから、オレ達でも百人くらいの兵士なら何とかなりそうだからな。お前なら余裕だろうな」


 分かっているのになぜ聞くのでしょうか?

 しかも、私に目立つなと言った答えになっていませんが。


「そこまで強いお前が暴れれば暴れるほど、お前が目立ってしまう」

「そうですね」

「だが、それはオレ達の総意じゃない」


 はい?

 総意じゃないという事はギルガさん一人の判断ではないのですか?


「……はぁ、理解していないみたいだな」

「はぁ。理解も何も私が暴れて誰が困るんですか?」

「オレ達は、お前には目立って欲しくはない。お前にはエレン達とのんびりと冒険者をやって過ごして欲しいんだ。カンダタさんが、冒険者ギルドの総本部にお前の転移魔法の事を伝えなかったのもそれが理由だ」


 のんびりとですか。

 まぁ、それができるのならば、それが一番なのでしょう。でも、マイザー王国はエレンを手に入れようとしています。私がそれを許すとでも?


「もう一度聞くが、理解してくれたか?」

「そうですね。ギルガさん達が私を心配してくれている事は理解しましたよ。でも、エレンが狙われているのは事実ですし、マイザー王国を放っておくのもギルドにとっても危険みたいですし、みなさんが危険になるのならば、私はのんびり暮らす事を捨ててでも暴れますよ」


 私も、これだけは譲れません。

 みなさんが私を大事に思ってくれるように、私もみなさんを大事に思って……いますよ。だから、そこだけは譲る事はできません。


「そうか……。ちょっと待っていろ」


 ギルガさんは連絡用の魔宝玉を取り出します。そして魔力を込めます。


「こちらギルガ、聞こえるか?」

『はい。どうかしましたか?』


 この声はマリテさんです。

 なぜマリテさんに連絡を?


「マリテ。近くにアレスはいるな。代わってくれないか?」

『はい』

『アレスだ。どうした? もしかしてジゼルの残党でも出たか?』


 アレスさんの声です。

 そういえば、結婚したと言っていましたね。夫婦なのですから近くにいて当然ですか。


「いや、今回はジゼルは関係ない。アレス、お前とロブストの力を借りたい」

『なに? 俺とロブストだけか? サジェスやマリテといった魔法職は必要ないのか?』

「あぁ。詳しい話は明日話すが、今回は前衛職だけだ。お前の村には転移魔法陣が設置してあるだろう? 明日こちらに来てくれ」

『……分かった。一応、四人で向かうよ』

「あぁ。頼んだ」


 ギルガさんはそう言って通信を切ります。


「アレスさんを呼ぶのですか?」

「あぁ。今回の鉱山での戦いに、オレとドゥラーク、それとアレスにレッグとケンを投入する」

「前衛職全員ですか。私は信用されてないんですか?」


 これには少しムッとします。

 そんな私の反応にギルガさんは少し呆れています。


「お前を信用していないとかじゃないんだよ。お前、さっきの話を聞いていたか? オレ達はお前を利用されたくないし、お前を目立たせたくないんだよ。だから、オレ達も協力すればお前が暴れなくても済むだろう?」

「そうなのですか?」

「お前、理解していると言ったが理解していなかったな?」

「え?」

「おい。そこに座れ」

「え? あ、顔が本気です……。はい。今日は大人しく座ります」


 なぜかギルガさんに怒られてしまい、今日は大人しくセルカの自分達の部屋で一夜を過ごします。


 次の日、私はドゥラークさんにギルガさんから聞いた作戦とやらを伝えに行きます。ついでに転移魔法陣が書きあがったので設置にしに行きます。


「ドゥラークさん、おはようございます。そちらはどうなっていますか?」

「あぁ。鍛冶ギルドの職員に詳しい状況を話して、鉱夫には今日から仕事を自粛してもらっている。今は鉱山内を清掃しているところだ」

「はい? 清掃?」


 確かに、グローリアさんの作戦通りなら、鉱山を奪われる事は無いでしょう。でも、ドゥラークさんにはグローリアさんからの作戦とやらをまだ話していません。それなのに清掃ですか?


「あの、ドゥラークさん?」

「うん?」

「鉱夫さん達はこの鉱山が今から奪われるというのを分かっているんですよね?」

「あぁ。ギルドの奴から聞いているはずだ」

「なぜ清掃を?」

「あぁ。こいつ等は自分達の仕事に誇りを持っているらしくてな、鉱石を掘り出している鉱山に感謝をしているそうだ。それで、ここを離れるのなら最後に清掃をしたいと言っていた」

「そうですか。よく分かりませんが、まぁ、理解しました。ちなみにどれくらいかかります?」

「あぁ、二日ほどかかると言っていたな」


 二日ですか……。

 グローリアさんにも準備が必要でしょうし、一度話を聞いてみますか。


 私は転移魔法で転移魔法陣の転移先に指定された場所へと向かいます。

 そこは外が見えなくなっている部屋でした。最低限生活できるみたいですが、ここに閉じ込めておくのでしょうかね?


「よぅ、俺達の準備もまだだぞ?」


 私が振り返ると、グローリアさんが手を振って近付いてきます。こちらにいましたか。


「グローリアさん。鉱夫さん達をここに閉じ込めておくのですか?」

「あぁ。本当は適当な町へと転移させる予定だったんだがな、今回の事はマイザーと鍛冶ギルドの問題だ。エラールセ(俺達)が介入しているとバレるわけにはいかないんだ。鉱夫達には不便をさせるが、マイザー軍を蹴散らすまではここにいて貰う」

「そうですか。あ、言っておかなくてはいけない事はあるのですが」

「ん? なんだ?」


 私は鉱夫さん達が鉱山を清掃している事、これに二日費やす事を説明します。


「ははは。アイツ等は真面目だな。まぁ、ここを完全に使えるようにするのにも二日はかかる。ちょうどいいだろう?」


 確かに、お互い時間がかかるのであれば都合がいいかもしれませんね。


「レティシア、転移魔法陣の設置は終わったのか?」

「いえ、まだ設置はしていません」

「ならば、設置は二日後。転移はその次の日に始めてくれ」


 設置自体は置くだけですから問題はありません。

 しかし、転移は三日後ですか……。まぁ、間に合いますからいいのですが……。


「あ、そうです。ギルガさん達も今回の作戦に参加するそうですよ」

「なに? ……あぁ、そういう事か。随分と過保護な事だな……わかった。お前もさっき言った事を頼むな」

「分かりました。三日後ですね」

「あぁ。頼んだぞ」


 グローリアさんとの話を終えた私は、ドゥラークさんの待つ鉱山へと転移しました。

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