16話 新たなおもちゃを手に入れました。
ドゥラークさんの脅しにラリーさんや冒険者さん達は怯えている様です。でも、三人はドゥラークさんに怯えているはずなのに私を見て青褪めています。見られていたので笑顔を返してあげます。すると目を逸らされました。
「おい、レティシア。状況がややこしくなるから、今は何もしないでくれ」
「そうですか?」
おかしいですねぇ。
私は見られていたので笑い返しただけなのですが……。
本当に失礼な人達です。
「とりあえずだ。お前達はどうする? 一度町へ帰るか?」
帰るのなら止めはしませんが、虫の息の二人は助からないでしょうねぇ。
お仲間の治療師さんが必死に治療魔法をかけているようですが、間に合わないでしょう。
「お主達と一緒に行けば盗賊共に襲われる心配はないという事だな」
ラリーさんはそう言います。
まぁ、鍛冶師であるラリーさんからすれば鉱山に行く事が最優先になるでしょう。
しかし……ラリーさんは冒険者さん達の前に立ち険しい顔をしています。
「お前達は町へと帰れ」
ん?
それは冒険者さん達に依頼を放棄しろと言っているんですかね。
「し、しかし、俺達の仕事はあんたの護衛だ」
「四人パーティのうち二人が瀕死の重傷じゃ。その状態で護衛はできんじゃろう」
「し、しかし……」
「それに、その二人の治療をしないと死んじまうぞ」
確かにそうかもしれません。
依頼は失敗になるかもしれませんが、お仲間が死ぬのは嫌でしょう。もし望むのであればマイザー首都の前まで送ってあげますよ。
「確かにそうかもしれないが……俺達にも冒険者としての意地がある」
そう言って、冒険者さんは倒れている魔導士の女性を見ます。
「アホか。冒険者は意地の前に命だ。そんな事、新人の頃に教わっているだろうが……」
ドゥラークさんは怒っています。
この人は優しいお方ですから、命を粗末にする冒険者を目の前にすると許せないのでしょう。
「い、いや……俺達も……連れて行ってくれ……」
死にかけの戦士さんがそう言います。
どう考えても無理だと思いますが、これが冒険者の意地でしょうか。
まぁ、頑張りたいと言っている人には頑張ってもらいましょう。私はこの人達の意地とやらが気に入りましたよ。
それに、最近はリディアさんが幸せそうなのであまり遊べないので、新しいおもちゃが欲しいんですよね。
私がニヤニヤしていると、ドゥラークさんは額に手を当ててため息を吐きます。
「それで、どうするんだ?」
「そうですね。とりあえずこの二人に元気になってもらわないと」
ふむ。
治療院に運ぶのもいいのですが、それでは時間がかかります。エレンの力を借りましょうか。
「そういえば、そちらの女性は治療師の様ですが、このお二人を治せないのですか?」
「あ、あの……私は……」
「彼女はまだ駆け出しなんだ。魔力が少し低くて治療に時間がかかってしまう」
「そうなのですか?」
それは思っている以上に役に立ちませんねぇ……。
いえ、普段からエレンを見ているから感覚がマヒしているのかもしれません。治療ギルドのセラピアさんはともかく、サブマスのエメラさんでも治療に時間がかかると言っていました。それが普通なのかもしれませんね。
さて、どうしましょうか……。
私は治療師さんの目の前に立ちます。
「あ、あの……」
「貴女、名前は?」
「は、はい。治療師のお、オリビアです」
「そうですか。私はレティシア。これから(おもちゃとして)よろしくお願いしますね」
私がそう笑顔で言うと、ドゥラークさんが私の頭を掴み持ち上げます。
あの……痛いんですけど。頭が取れたらどうするんですか?
「何をするんですか? 離してください」
「お前、何をするつもりだ?」
何をするつもりって、決まっているじゃないですか。
「え? 都合のいいように作り変えようかと」
「ちょっと待て。お前、人前で【創造】の力を使うなよ」
ドゥラークさんはコソコソと小さな声でそう言います。
「なぜです? 私はこのおもちゃに死なれたくないんです。だから助けようとしているんですよ」
「た、確かにそうだが……」
ドゥラークさんは冒険者さん達を見てため息を吐きます。
「わかった。わかった……。また脅しておくよ」
「大丈夫ですよ。この冒険者さん達とは長い付き合いになると思いますから」
「おい。おもちゃと冒険者が逆になっているぞ。お前、こいつ等を実験体に使用しようとしているな」
「だって、最近私のリディアさんがドゥラークさんに取られてしまいましたから」
「おもちゃってリディアの事か?」
「良く分かりましたね。流石は恋人同士です」
「お、おい」
ドゥラークさんの顔が真っ赤です。
ふふっ、ドゥラークさんをからかうのはとても楽しいです。
さて、そろそろ本題に移りましょうか。
「あの~」
「は、はい!!」
怯えていますねぇ。
まぁ、どうでも良いんですけど。
私が何かを言う前に、ドゥラークさんが三人の前に立ちます。
「おい。今から見るモノを絶対口外するなよ。ラリーのおっさんもだ」
「なんじゃと?」
冒険者さん達は少し青褪めています。ラリーさんは怪訝な顔をしていますね。
「わかったな」
「「はい!!」」「しょうがないのぉ……」
これで口止めはできましたね。
さて……。
「ふむ。ではオリビアさん。こっちに来てください」
「え?」
「早くしてください。その二人が死にますよ」
「は、はい!」
オリビアさんは私の目の前に立ちます。
ふむ。
大きな胸に目が行きますねぇ……。
なぜでしょう。私の平坦な胸がムカムカしますよ。
ちょっと揉んでみましょうか。
私はオリビアさんの胸を鷲掴みします。
「き、きゃあ!」
悲鳴を上げられてしまいました。
「お前は何をしているんだ? いきなりセクハラをしてんじゃねぇよ」
「失礼な。私は女だから良いんですよ」
「いや、よくねぇよ」
同性だから大丈夫なはずです。
しかし、ドゥラークさんには睨まれてしまいました。
……まぁ、いいです。
「さて、オリビアさん。目を閉じ楽にしてください」
「え? あ、あの胸から……」
「なんですか?」
「い、いえ……」
さて、魔法を作るよりも、特殊能力を作った方が良いでしょう。
しかし、問題もあります。
私は治療魔法が使えないので具体的なイメージができません。という事は治療魔法よりも別の物を作りましょうか。それに、魔力が少ないと言っていましたね。魔力強化も必要でしょう。
さて……。
作っちゃいましょう……。七つの美徳を……。
「【創造】七つの美徳【博愛・治療効果増大・魔力軽減・慈愛】」
「あ? ちょ、ちょっと待て、レティシア!?」
「なんですか?」
「こんな未熟な奴に美徳を与えたのか!?」
「はい。今は〈ヒール〉だけですが、いつかは立派な治療士として育て上げますよ。他の三人もです。新しいおもちゃを手に入れてご機嫌さんですから」
「お前……おもちゃって……」
私は胸から手を離します。
ふむ。今の感触は良かったです。また鷲掴みにして遊びましょう。
「ふふっ。これからよろしくお願いしますね。さて、早く二人の治療に当たってください。五分だけ待ってあげます」
「は、はい」
オリビアさんは瀕死の二人に〈ヒール〉を使います。今回は自動で美徳を使えるようにしてあります。魔力は適当に私の魔力をオリビアさんの胸から入れておきました。無くなる事は無いでしょう。
暫くすると、瀕死だった二人が起き上がります。
そして、私にお礼を言ってきました。
あ、冒険者の名前は剣士でリーダーのダインさん。戦士のビックスさん。魔導士でダインさんの恋人のジュリアさん。そして、私のお気に入りのおもちゃのオリビアさんです。
オリビアさん以外も今のままでは使えません。このお仕事が終わったらたっぷり鍛えてあげましょう。
さて、治療も終わったから鉱山に向けて移動しましょう。
「さて、行きましょうか」
「あぁ」
私達は鉱山に向けて森を歩きだしました。
最近リディア(おもちゃ)が幸せなのでレティシアに新しいおもちゃを与えました。これからギルガのパーティはレティシアの気分次第でどんどん人が増えそうですww




