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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
3章 マイザー編

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13話 ポインターナイフ

誤字報告、いつもありがとうございます。


 私とドゥラークさんはミーレル鉱山を目指して歩いています。

 私としてはマイザーに来た時のように走って早く到着するのがいいと思うのですが、ドゥラークさんから歩いて移動したいと頼まれましたから大人しく歩いています。


「しかし、ゆっくりと歩いていますが、鉱山にはいつごろ着く予定なのですか?」

「遠くに山が見えるだろう? あそこまでだから、一週間くらいかかる予定だな」

「はい? 時間がかかり過ぎです。早く行きましょうよ」

「いや、今回はゆっくりと行く予定だ。お前が早く到着したい気持ちも分かるが、スミスを探すのなら歩いて行った方が良いみたいだからな」

「どういう事ですか?」

「この辺りには結構な数の盗賊が出るらしい。俺は鉱山にいると思っているが、スミスが盗賊に攫われていた場合に情報を得られるかもしれん。それに、俺達からすれば盗賊なんて雑魚と変わらんだろう?」

「確かに雑魚ですね。それにしても、盗賊を利用しようなんて、ドゥラークさんも私の考えに似てきましたねぇ……。お母さんは嬉しいです」

「ははは。俺には年下で見た目が幼女のお母さんはいねぇよ」

「ふふっ。誰が幼女ですか」


 そういえば、ドゥラークさんと初めて一緒に仕事をしたのも盗賊退治でしたね。あの時は鬱陶しいだけの人でしたが、今では冗談を言える仲になりましたねぇ……。人生というのは何があるか分かりません。



 今は鉱山への道中の平原ですが、随分と歩きました。日もだいぶ傾いてきましたねぇ……。


「そういえば、ドゥラークさんは人間ですよね?」

「いや、いきなりなんだよ。そもそも、その質問の意味が分からねぇよ」

「いえ、昨日は不眠でマイザーまで走り、今日もそのまま一日歩いていましたが眠くないのですか?」


 私がドゥラークさんに気を遣うと、呆れた顔でため息を吐かれます。

 なんですか? 人が心配しているのに失礼ですねぇ……。


「その言葉をそっくりそのままお前に返すよ。俺ならまだ大丈夫だ。俺は長く冒険者をやっているからな。一日以上寝なくても動けるさ。お前はどうなんだ?」

「私も三日くらいは寝ないでも大丈夫です。とはいえ、これは長丁場の仕事になりそうですから何かいい方法を考えましょう」

「ん? 野宿用のテントなら持っているぞ?」

「別に野宿でも良いのですが、ドゥラークさんもお嫁さんに会いたいでしょうし、私もエレンやカチュアさんに会いたいです」

「い、いや。だから、リディアは……」

「誰もリディアさんとは言っていませんよ?」


 私がからかうとドゥラークさんは顔を真っ赤にします。

 ついニヤニヤしてしまいますね。


「ぐっ……」

「あははは。少し待っていてくださいね」


 私は魔法をイメージします。

 転移魔法の欠点とは何でしょうか? 

 いえ、簡単でしたね。最大の欠点は術使用者が一度行った場所でないと転移できない事ですね。

 そして、もう一つは同じ場所に転移できない事でしょうか。


 これは魔法陣を使わない転移魔法を使う者しか知らないと思いますが、転移魔法陣を置かない限りはまったく同じ場所には転移できないのです。比較的近い場所には転移できますが、結構なずれが生じます。

 町などに移動するときは問題はありませんが、洞窟などに移動するときが結構厄介なのです。まぁ、私の場合は気にしませんが……。


 うーむ。

 そうですね。転移魔法陣の代わりのモノ……。

 そうです!


 私はナイフを十本だけ取り出します。


「えい。えい。えい……」

「何をしているんだ?」


 私がナイフに魔法を込めていると、ドゥラークさんが不思議そうな顔で覗き込んできます。


「このナイフを目印に転移できるようにしているんです。このナイフを刺しておけば元の場所に帰ってくる事ができます。それに、私が行った事のない場所でもこのナイフを刺しておけば移動できるようになります」

「ちょ、ちょっと待て。それって、誰かがそのナイフを持って移動すれば、どこにでも転移できるという事か?」

「はい。そう言っています」

「お前は本当に出鱈目だな。この魔法があれば今までの転移魔法陣の常識が覆るぞ」

「まぁ、常識が覆るとかはどうでも良いんですが、これで夜は拠点に帰れますよ。ドゥラークさんはセルカに帰って、私はエラールセに帰ります。拠点の一室がエラールセの私達の拠点とつながっているので出発も簡単です」


 これで野宿をする必要もなくなりますね。

 私達は、もう少し歩く事に決めました。


 しかし、町を出てからずっとですねぇ。


「ドゥラークさん気付いていますか?」

「当然だ。ついて来ている奴がいるな。しかも一人じゃねぇ……」


 一人ではないという事は盗賊ですね。

 殺していいですかね。


「殺しに行きます。あ、殺しちゃダメなんですね」


 ドゥラークさんは情報源にすると言っていましたし、半殺しにして〈自白魔法〉を使いましょう。


「レティシア、待て。ついて来ている奴等は盗賊じゃない可能性が高い」

「はて? 盗賊でもないのに勝手についてくるものなのですか?」

「俺達が今向かっているのはどこだ?」

「鉱山です」

「あぁ。俺達は常時依頼で鉱山に向かっているが、冒険者ギルド以外の連中も仕事で鉱山に向かう事もあるだろう? 例えば商業ギルドとかな」


 確かに。

 鉱山であるなら、取れた鉱石を売る必要もありますよね。

 盗賊でない可能性は理解しました。

 しかし、気になる事もあります。


「はて。それならおかしくないですか? なぜ一定以上離れているのですか?」

「いくつか理由は考えられるが、一番あり得る理由として護衛の冒険者代を浮かすのが目的とかな」

「せこい理由ですね」

「まぁ、鉱山までの経路はだいたい共通だからたまたまの可能性が一番高いけどな」


 はて。

 今の言葉ですと盗賊である可能性は限りなく低いと言っているようなモノです。


「盗賊ではないんですね」

「断言する気はないが、ほぼ間違いなく違うな。ほれ見てみろ」


 ドゥラークさんが指さす方向では、冒険者と思われる人がテントを張っています。

 馬車が近くに有るので護衛依頼でしょうか。


「しかし、テントを張るには少し早くないですか?」


 まだ日は沈んでいませんし、もう少し進めそうです。


「いや、別に早くはないな。進行方向を見てみろ」

「……森ですね」

「そうだ。今のペースで動けば森で一夜を過ごす事になってしまう。俺達ならば問題ないが、普通は盗賊や魔物を警戒して森では野宿をしない事が多い。お前は目が良いだろう? 周りを見てみろ」


 ドゥラークさんに言われた通り周りをよく見てみます。

 よく見ると点々とテントが張られています。


「見通しが良いと他のテントが盗賊に襲われたときに手助けや逃げ出す事がしやすい。そうした点から平原で一夜を過ごす場合が多いんだ」

「え? 森の方が隠れやすくていいと思うんですが」

「自分達が隠れやすいという事は、盗賊達も隠れやすいだろう? それに森では魔獣も警戒しなければいけないからな」

「なるほど」


 確かに魔獣は森に良く住んでいます。

 冒険者にもいろいろあるんですね。

 

「さて、俺達はもう少し進むか?」

「そうですね。私達なら森で野宿をしても関係ないですからね」


 まぁ、私達は野宿なんてしませんけどね……。

 私達は夜まで歩き、森の入り口に生えている木にナイフを刺して転移して帰宅しました。

話の中では平原で野宿した方が安全と書いていますが、実際はどうなんでしょうね。

森の方がいろいろと隠れていそうだから危険な気もしますが、隠れる事も可能でしょうからねぇ……。


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