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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
3章 マイザー編

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10話 指名手配

誤字報告いつもありがとうございます。


 鍛冶屋のスミスさんの捜索依頼を受けてから、三日が経ちました。

 私達は冒険者ギルドや鍛冶ギルドなどの各ギルドへ出向き情報を集めていました。


 今日はエレンが冒険者ギルドに行き、カチュアさんは鍛冶ギルド、私はスラム街に行き情報を集めていました。

 

「今日は何の成果も得られませんでしたねぇ……カチュアさんはどうでしたか?」

「やはり、マイザー王国へ行くと言った以外の情報は得られませんでした」

「そうですか」


 カチュアさんが私の為にコーヒーを淹れてくれます。あ、黒い状態では苦くて飲めませんからミルクを多めに入れてくださいね。

 カチュアさんにそう頼もうとしましたが、すでにミルクたっぷりのコーヒーを淹れてくれていました。私の好みをちゃんと知ってくれているのは嬉しいです。


 私がコーヒーを飲んでいるとエレンが帰ってきました。


「あ、エレン。お帰りなさい」

「エレン様。お帰りなさい」

「うん。ただいま」

「何か情報はありましたか?」

「スミスさんの情報はなかったけど、冒険者ギルドで宰相のエフェットさんに会ったよ」

「宰相様ですか? 珍しいですね」


 宰相さんが冒険者ギルドに来るなんて、エラールセに来てからの一ヵ月で見た事はありません。

 もしかして緊急依頼でしょうか。


「うん。どうも私達三人のうちの誰かに会いたかったみたい」

「という事はグローリアさんから呼び出しですか?」

「うん。三人で来てくれって言ってたよ」


 三人でですか。

 もしかして、スミスさんについて何かわかったのでしょうか。


「しかし、グローリア陛下は私達の拠点の場所は知っているわけですから、ここに兵士を送ればいいのに宰相様が直接来るとは……」

「うん。何か大事な話があるんだって」


 大事な話ですか……。

 可能性として考えていましたが、スミスさんは既に殺されているという事でしょうか……。


「それともう一つ……。時間はいつでもいいけど、転移はしないでお城の受付を通して来てくれ、って言ってたよ」

「転移しちゃダメなんですか?」

「そう言っていたね」


 転移してはいけない理由。

 もしかしたら、他の人に聞かれたくない内容かもしれませんね。

 まぁ、良いです。


「今から行きますか?」

「そうですね」「うん」


 私達は歩いてお城へと向かいます。

 しかし、何故かチラチラとみられていますねぇ……。

 お二人は、見ての通り美人さんですから皆さんが見るのは分かります。

 試しに私が冒険者を見てみると、凄い勢いで目をそらします。

 なぜでしょう。

 まぁ、別にどうでも良いんですけど。


 あ!

 エレンに報告しなきゃいけない事があるんです。


「エレン。先程ギルガさんから聞いたのですが、ドゥラークさんがテリトリオの調査に入ったそうですよ」

「え? ドゥラークさんって私達の事もテリトリオで起こった事も知っているよね」

「そうですね。話してあります」


 ドゥラークさんには私がテリトリオを滅ぼした事、魔物の巣になっているであろう事は話してあります。驚きはしていましたが、事の発端を詳細に話すと、むしろ私達にたいして同情的になっていました。あの人は本当に優しい人です。


「で、でも、何のための調査なの?」

「今回はテリトリオの町を魔物の狩場として使えるかどうかを調査するための依頼だそうですよ」


 確かに、あの町は元々は魔物の侵入を防ぐための高い壁で囲まれていて、一度入ってしまえば魔物も簡単には逃げられなくなります。大型の魔獣を倒すのであれば狩場になると言えなくもないですが……。


「え? 危険じゃないの!?」

「今現在、テリトリオには冒険者が何人も入っているそうです」

「町を狩り場にするなんて……。流石に、国……マイザー王国が止めないの?」

「ギルガさんが言うには、マイザー王国がテリトリオを魔物の狩場として使おうと提案したそうですよ」

「そ、そんな……」


 マイザー王国が何を考えているかは知りませんが、あの町にいる魔物は大型種が殆どを占めているはずです。

 ドゥラークさんや一緒に行っていると思われるリディアさんはともかく、Cランク程度の冒険者に太刀打ちできるのでしょうか?

 

 まぁ、元々町には魔物に喰い散らかされた住民の死体が転がっているでしょうし、そこに冒険者の死体が増えようと知ったこっちゃありません。



 お城に到着した私達は、正式にエラールセ皇王グローリアさんに会うための手続きをして順番を待っています。

 謁見を待つ部屋で座って周りを見ると、たくさんの人が謁見を待っています。

 グローリアさんは狂皇と呼ばれていても、国民からの支持は高いので謁見する人も多いのでしょう。


 しかし、暇ですねぇ……。


 と思っていたら、宰相のエフェットさんに呼ばれます。

 連れていかれたのは謁見の間ではなく執務室です。


 私達は執務室に入ります。

 そこには疲れた顔をしているグローリアさんと、宰相のエフェットさんの二人だけがいました。


「こんにちわ。まだ謁見の順番ではないと思うのですが……」

「わざわざ済まんな。早めにお前達には言っておいた方が良いと思ってな。無理やりねじ込んだ」

「それはどうも。それで、大事な話とは何ですか?」

「これを見てみろ」


 宰相さんは三枚の紙を私に渡します。

 一番上に描かれていた似顔絵は……。

 

「これは……エレンですか?」


 上手く描かれています。

 しかし、これは手配書です。


「わ、私に手配書?」

「そうだ。しかも生きて捕らえろとの事だ……。心当たりはあるか?」

「いえ……」


 エレンは今でこそ聖女ですが、それまでは領主の娘……ただの貴族だったはずです。

 この手配書には容疑が書かれていません。


「この手配書を発行した愚か者は誰ですか? 私が殺しに行きます」

「待て。これを発行したのはマイザー王国だ」


 テリトリオが所属していた国ですか。

 あそこの王もあまり良い評判は聞きません。

 どうせ、聖女を手に入れたいと思ったのでしょう。


「そうだ。それにエレンだけじゃない」

「こ、これは……」


 もう一枚には黒髪のエレンくらいの少女が描かれています。

 ……。

 なぜでしょう。無性に腹が立ちます。


「随分と成長した私ですねぇ……」


 本来ならば、私はこうなっているはずなんです。しかし、現実はなぜか成長しないんです。

 この体が腹立だしいです。


 そして最後の一枚……。

 今の私の姿です。


「これは修正後……ですか」

「つまりは、今現在のお前を知っている奴がマイザーにいるという事だ」


 今の私を知っている……。

 ギルガさんから何も聞いていなかった事を考えると、ドゥラークさんはこの手配書の事は知らないはずです。知っていたとしても、わざわざ本当の姿を教えないでしょう。

 テリトリオから逃がした人達にしても、ギルガさん親子や武器屋のおじさん夫婦もセルカにいるはずです。わざわざマイザーに行くとは思えません。


 では一体誰が?

 逃げ出した神官でしょうか……。

 いえ、町の人間を皆殺しにはしていませんから、そこから私やエレンの事が漏れた……。

 ……ふむ。


「これは早急にマイザーに入った方がよさそうですね」

「お前の言いたい事も分かるが、二人共、指名手配されているんだぞ」

「それは何の問題もありません。もし、襲ってきても殺せばいいだけです。それにスミスさんの事もあります」

「なに?」

「スミスさんは、マイザー王国に行くと言った後に行方をくらませているという事も分かっています」

「そうなのか!?」


 これは、グローリアさんの情報にも書いてなかった事です。


「はい。どちらにせよ、誰かがマイザーに入る必要があるという事です」

「あぁ……そうだな。レティシア、お前一人でマイザーに入ってくれるか?」

「「な!?」」


 グローリアさんの言葉にエレンとカチュアさんが驚き、グローリアさんに抗議します。


「ふざけないでください。私達はレティ様の足手まといになりません」

「そうです。私も聖女として……」

「そういう意味じゃない。俺はレティシアを心配などしていない。本当に心配しているのはエレンだ」

「私?」

「あぁ。マイザー王家はエラールセにエレンがいる事を掴んでいる」

「どういう事ですか?」

「エレンはテリトリオの領主の娘だ。つまりはマイザー国民という事になる」

「なるほど……。エラールセにエレンの引き渡しを要求をしているのですか……」


 確かに自国の国民が指名手配されていて、他国にいるとなれば、引き渡し要求はするでしょうね。

 エラールセとしても本来は渡さなければいけないのでしょうが、拒んでいると……。


「そういう事なら仕方ありませんね」

「レティシア。マイザーに行ってくれるか?」

「勿論です」

「レティ……」

「レティ様」


 お二人は心配そうにしています。


「二人共、大丈夫ですよ。マイザー王国程度に私は殺せませんよ。グローリアさん、マイザーを滅ぼしても構いませんか?」

「それはダメだ。お前に頼むのはあくまでスミスの調査だ」


 チッ。

 滅ぼしてもいいと言われれば楽だったのですけどね。


「わかりました。ただし、降りかかる火の粉は振り払いますよ。私はマイザーではすでに町を滅ぼした凶悪犯です。もし、私を襲ってくる馬鹿が現れたら殺します」

「あぁ。無抵抗を貫いてお前が殺されるよりはいい。もし、王族と対峙しなければいけなくなったら迷わず帰って来い。その時は俺が動く」


 まぁ、無抵抗でも殺されることはあり得ませんけど、心配してくれているのでしょう。

 それにグローリアさんが動けば戦争になります。それくらいの覚悟があるという事でしょう。

 そこは素直に受け止めておきますよ。


「お二人の事は任せてもいいですか?」

「あぁ。二人はこの城で匿う。とはいえ、この二人が簡単に殺されるとも思えんけどな」

「ふふ。もし、二人が怪我でもしたら……分かってますよねぇ?」

「あ、あぁ……。大丈夫だ。護衛も付けるさ」


 ふふっ。

 グローリアさんもちゃんと理解してくれたようです。


「では……、行ってきます」


 私は、その場で転移魔法を発動させます。行き先は……。


 懐かしいテリトリオの町です。

エラールセの宰相さんの名前を探す為に復讐編を読み直していたのですが、そのせいでテリトリオの滅びた理由を復讐編と間違えていました。前はレティシアが直接滅ぼして、今回は魔物だったんですね。いやぁ、勘違い勘違い。

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