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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
3章 マイザー編

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8話 新たな仲間?

誤字報告いつもありがとうございます。


 エラールセの皇王の執務室で仕事をしていたグローリアさんは、突然現れた私達を見て驚いていました。


「帰ってきましたよ」

「ここは皇王の執務室だぞ。いきなり転移してきて無礼とか思わないのか?」

「いえ、別に何とも思いませんよ。そんな小さな事(・・・・)よりも、お仕事を終えて帰ってきましたよ」

「依頼してから一日しか経っていないのに、もう黒いドラゴンを討伐したのか?」

「討伐……? まぁ、討伐かどうかは知りませんが黒いドラゴンの心臓を持ってきました」


 私は収納魔法から氷漬けの心臓を取り出します。

 凍ってはいるものの、鉱石に見えないのは明らかです。


「これが……ドラゴンの心臓か?」

「そうですよ」


 グローリアさんは心臓をマジマジと見ています。

 

「凍らされているとはいえ、どこから見ても生ものにしか見えないな。心臓はヒヒイロカネでは無かったのか?」

「はい。ヨルムンガンドの話では鉱石の心臓を持つドラゴンは存在しないそうですよ」

「ヨルムンガンド?」

「あの山にいたドラゴンです」


 厳密にいえば、後からやってきたドラゴンですが。私はエレンの足元にいる小さな蛇を一瞥します。


「レティシア。セ―ヴィ山のドラゴンは強かったのか?」


 確かに、ヨルムンガンドは普通の冒険者が戦えば脅威になったんじゃないでしょうかね。

 でも、私達からすれば……。


「いいえ。別に強くなかったですよ」

「そうなのか?」

「はい。一方的に倒しました」


 私は再びヨルムンガンドを一瞥します。

 するとエレンの足元にいたヨルムンガンドが私の足元に這いずってきました。

 

「何か用ですか?」

『おい。こ奴に言いたい事があるのだがいいか?』

「誰が喋っていいと言いましたか?」


 小さな蛇が喋っているのにグローリアさんが驚いているじゃないですか。

 しかし、ヨルムンガンドは喋るのをやめません。


『いや、これだけは言っておかなければいけないのだ。頼む、発言権をくれ』

「嫌です……と言いたいところですが、まぁ良いでしょう」


 蛇の目が真剣かどうかは私には分かりませんが、どうしてもというので許可をあげます。

 私は優しいですねぇ……。とまぁ、冗談は置いておいて、私に反抗してまで言っておきたい事とは何でしょうか。


『すまんな』


 ヨルムンガンドはそう言って、自分の心臓の上に登っていきます。

 そしてグローリアさんの顔をジッと見ています。


『お前がこの国の王でドラゴンの心臓がヒヒイロカネと言った男か?』

「あぁ。俺がこの国皇王グローリアだ。随分と偉そうな蛇だがお前は何だ?」

『我がヨルムンガンド。この心臓の元の持ち主で竜神のうちの一匹だ』

「なに!? 竜神だと!? それに、ドラゴンは心臓を抜かれると蛇になるのか!?」

『いや、そうではない』


 ヨルムンガンドはグローリアさんに自分が黒い蛇に変身している経緯を説明します。


「そうか……。いまいち信じる事のできない事もあるが、レティシアの非常識さは十分に知っているからな、今は信じよう。それで言いたい事とは何だ?」

『まず、ドラゴンの心臓は鉱石ではない。少なくとも我の知るドラゴンの心臓はヒヒイロカネではない』

「あぁ、それはレティシアも言っていたな。だが、人間の持つ伝承にはそう書かれているんだ」

『誰がそんなモノを書いたかは知らんが、そもそもヒヒイロカネとは特定の魔物が持つ素材の事を言う。全身七色に輝くゴーレム等がそうだな。心臓と言えば海の王者の心臓がヒヒイロカネと聞いた事もあるが真偽は分からん。ただ、そうやすやすと手には入るモノじゃない。だから、その伝承をこれ以上伝えるな』

「なぜだ?」

『その伝承を悪しき者が知りドラゴンが根絶やしにされたら、我等竜神を含むすべてのドラゴンが人間と敵対するだろう。そうなれば人間とドラゴンの存続をかけた戦争になる』

「……その通りだな。どこまで回収できるが分からんが、エラールセ皇国の皇王として責任をもってこの伝承を消し去ることを約束する。一つ聞いていいか?」

『約束してくれるのならそれでいい。聞きたい事とはなんだ?』

「お前はヒヒイロカネを見た事があるのか?」

『あぁ。七色に輝く鉱石だろう? 今から数百年前にこの世界でヒヒイロカネを持つ魔物が討伐された。その時にその魔物の外装であったヒヒイロカネの欠片を持ち帰った者がいる。ソイツはその欠片で盾を作ったはずだ』

「盾を? そうか……。それがファビエの至宝か……」


 良い事を聞きましたよ。

 ヒヒイロカネのゴーレムがいるのならば、そいつを殺せばいいんです。

 私は意気揚々にそう言いましたが、ヨルムンガンドは首を横に振ります。蛇の首ってどこかは知りませんけど。


『ソイツを倒せば手に入ると思ったのだろうがやめておけ。お前が伝説の【神殺し】だろうがその魔物は倒せない。それくらい強力な魔物だったそうだ。それに、どこに生息しているのかすら分からない』

「そうなのですか?」

『あぁ。それと真偽は分からないが、数百年前に現れたのが最後の一匹だったとも言われている』

「そうですか……。それは残念です。それで、ヒヒイロカネはどうするんですか?」


 魔物がいないのは仕方のない事なのですが、ヒヒイロカネは作り出す事ができます。しかも、前に作ったのは私の想像で作ったヒヒイロカネでしたが今は本物を見た事があるヨルムンガンドがいます。


「レティシア、その心臓をヒヒイロカネに変化させる事はできるか?」

「できますよ」


 さっきは小石でしたが凍った心臓でも同じ事ができるでしょう。

 

『ちょっと待て。変化とはどういう事だ?』


 はて?

 ヨルムンガンドは【神殺し】の事は知っているのに【創造】の事は知らないのですかね。

 

「レティシア、こいつはお前の【創造】の力の事は知らないのか?」

「さぁ? 私は話していませんけど【神殺し】の事を知っているのなら【創造】の事も知っていると思うのですが……」

『なに、【創造】だと? 【神殺し】の能力の中で一度も発現された事のない能力ではないか』

「そうなのですか?」

『あぁ。我も今まで何人かの【神殺し】の噂を聞いた事があるが、殆どが【再生】の能力、ごくまれに【破壊】を持つモノばかりで、誰一人として【創造】の能力を持つ者はいなかった』

「へぇ。そうだったんですね」


 確かにこの能力は便利ですからね。

 

「レティ様は特別なのですね」

「うん。レティは凄いね」


 エレンとカチュアさんのお二人が私を褒めてくれます。

 嬉しくてニヤニヤしてしまいます。

 

 私達が話し込んでいると、急にエレンが抱いていたヨルムンが「ねぇ、僕の事も紹介してよ」と言い出します。


「ん? その小さい子竜は?」

「この子が元々山にいたドラゴンだよ。ヨルムンガンドさんは後から現れたの」

「なに?」


 エレンはヨルムンの事をグローリアさんに説明します。

 今まで、一度も人を襲った事が無い事や静かに暮らしていた事を説明すると、グローリアさんは申し訳なさそうな顔になります。


「そうだったのか……。それは済まなかったな。それで、お前は山に帰るのか? それとも、これからはエレン達と一緒に暮らすのか?」

「うん。僕はエレン達と一緒に暮らすよ」


 はい?

 この見た目だけ子竜は何を勝手に決めているんですか?

 私がヨルムンを睨むとエレンが「ダメ?」と聞いてきます。

 そんな目をされたら断れませんよ。


「分かりました。ついでにヨルムンガンドも私達の所へ来てください」

『なに? 我がか?』


 ヨルムンガンドは嫌そうな顔をします。蛇の表情は分かりませんけど多分したでしょう。

 しかし……。


「さっきの約束忘れましたか? エレンを守れと言ったでしょう?」

『ちょっと待て。さっきのはここに来る条件じゃ……』


 私は笑顔でヨルムンガンドの頭をかすりながら床を踏み砕きます。


「はい?」

『いえ、なんでもありません……。分かりました。守らせていただきます』


 ヨルムンガンドの顔が少し青かったような気がしますが、いう事を聞くので良しとしましょう。

ヨルムンとヨルムンガンドが仲間に加わりました。仲間というよりもペットみたいなものですがね。


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