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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
2章 レティシア、ファビエ王都で暴れる。

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29話 ジゼルの誤算


 くくく……。

 ようやく欲しかったモノ(・・)が手に入ったぞ。

 私が欲しかったモノ、それは平穏。それを叶える為には、国王という操り人形が必要だからな。


 私はファビエ王の体を治し、別の魂を埋め込む。

 ……あぁ、脳も弄っておこうか。

 あの無能でうるさいだけの男など必要はない。できれば、こいつの父親が欲しかったのだが、あやつは病気で死んでしまったのでそれは仕方がない。

 こいつには私の手足になってもらう予定だが、無能なアホでは困るからな……。

 ぜひ……賢くなって貰わねば。


 自分が歳を取らない事に気付いたのは、いつの頃だろうか……。

 最初は戸惑った。

 だが、私には家族もいなかったし、共に歩む友もいなかった。だからこそ、都合がいいと解釈し研究に人生を捧げていた。

 不老を持っていた私はいつしか孤独になり、私の為の研究所を作った。

 そして、私を慕う者が集まり研究所は大きくなった。

 しかし、研究が大詰めになるといつも邪魔が入る。

 私の不老を妬み、私の研究を邪魔するのだ。

 何度か同じ経験を繰り返して、あの研究所を作った。

【忌み子】ちゃんが生まれるきっかけになった研究所だ……。まさか、三十年ほど前の因縁が今も続いているとはね。

 でも、その研究所も一人の研究者の妬みから滅びてしまった。その結果、生まれたのが【忌み子】の母親である【呪い子】だ……。


 なぜ、私の邪魔をする?

 研究をして何が悪い?

 好奇心を求めるのが何が悪い?

 探求の為ならば人の命など軽い(・・・・・・・)モノだろう?

 私が何の為に何百年も生きていると思っているんだ?

 

 すべてが研究の為だ!!


 その為に必要なのがこの国王だ。


「今後はファビエ国王に表に立ってもらい、邪魔をされそうになったらコレの首を差し出せばいい。その都度、新しい国王を作ればいいのだからな」


 ……国王の改造は終わった。

 しかし、ソレーヌ、アルジー、騎士団長に宰相。

 それなりに強化をして大罪も埋め込んだが、誰か一人でも殺したという報告がまだ来ない。

 どうなっている?


 私はタロウが入っているカプセルまで歩く。

 奴は薄目を開けて私を睨んでいる。

 私はそんなタロウを冷ややかな目で見る。

 

 本心を言ってしまえば、私はタロウが大嫌いだ。

 性格は屑で、性行為にしか興味が無く、一言でいえば下衆野郎。こんな奴と一緒の空気を吸っているだけで気分が悪くなる。

 しかし、こいつには【忌み子】ちゃんと戦ってもらう必要はある。

 本当はもっと扱いやすく、まともな勇者を望んでいたのだがな。


 私が嫌々こいつを使う理由。それは、異世界から召喚された者は例外なく魂を強化されている。こいつも同じだ。

 本来であれば、国が力や権力で異世界人を制御するのだが、この国は王が愚かだった為に、タロウのような下衆が権力を持ち、犯罪者として好き勝手できた。

 これが別の国であったのなら、こんな犯罪者は即刻処刑されていただろう。


 まぁ、人の命をどうとも思っていない私が人道的なセリフを言っても意味がないな。

 

 しかし、なぜ誰も帰ってこない?

 ソレーヌだけは理由は分かる。彼女の相手はあの【忌み子】ちゃんだ。

 あの出来損ない(・・・・・)に【神殺し】の【忌み子】ちゃんを殺せるとは思えない。

 もう生きてはいないだろう。

 しかし、気になる事もある。

 ソレーヌとアルジーには死んだ直後、ここに帰ってくるように魔法をかけてある。

 アルジーはドゥラークを殺して遊んでいるだろう。

 しかし、ソレーヌはとっくに殺されているはずだ。

 まさか、意外と善戦しているのか?

 いや、在り得ない。

 まぁ、答えは出ているか……。

 

【忌み子】ちゃんは、私がソレーヌを生き返らせている事を知っている。

 だから、焼き尽くすなりして死体を残さなかったかもしれないな……。


 まぁ、あんな出来損ないには興味はない。

 問題はアルジーだ。

 アルジーはなぜ帰ってこない?


 アイツはソレーヌとは違い自我が強く、消す事まではできなかった。

 だからこそ、私の命令を聞かずにドゥラークを殺しに行ったはずなのだが、なぜ帰ってこない?


 私は特別な魔石の前に立つ。

 これは登録した者の居場所を示してくれるオリジナルの魔法具だ。

 これに二人の髪の毛を置くと、反応を示すはず……。

 

 ん?


 ソレーヌが死んでいる事は間違いないだろう。だから反応はない。これはどうでもいい。


 どういう事だ?

 アルジーの反応すらない。


 アルジーには、七つの大罪すべてを埋め込んである。

 あんな出来損ないに真なる神域の魔神としての覚醒は期待していないが、出来損ないとして最低限の魔神と化しているはずだ。ドゥラーク如きに負けるとは思えない。


 それに騎士団長と宰相も帰ってこない。

 あの二人には何も期待はしていないが、アレスのような雑魚に負けるような強化はしていない。まして、アイツ等は二週間しか……しかも正当な鍛え方をしただけの雑魚のはずなんだ……在り得ない。


 私は何度も魔石にアルジーの髪の毛を置くが、やはり反応はない。

 なにがあった?


 ま、まさか……。


「馬鹿な!! ドゥラーク如きに魔神(アルジー)が負けたというのか!!?」


 ふざけるな。

 どこまで出来損ないなんだ!!


 いや、取り乱すなど私らしくもない。

 アルジーの自我を残しておいた方が良いと判断したのは私だ。それが仇になったのかもしれんな……。

 まぁ……いい。


 私は八つ(・・)のカプセルの一番前のカプセルに手を置く。


「本当はもう少し眠らせてあげたかったけど、出番だよ……」


 私はカプセルを叩き割る。

 カプセルの中から、タロウが這い出る。


「はぁ……はぁ……」

「やぁ、目覚めの感想はどうだい? 勇者タロウ君」


 タロウは私を見るなり睨みつけてくる。

 えらく反抗的な態度じゃないか。

 私はタロウの頬を殴る。


「くっ……。じ、ジゼル……。俺に何をした?」

「何をした? 馬鹿な事を聞くものだね。君に新たに神の加護を与えてやっただけじゃないか」


 神の加護。

 当時の教会には笑わせてもらった。

 

 アレは数百年前、私は教会の司祭となり、能力の研究をしていた。

 その時に偶然特殊能力の可視化に成功し、それを仰々しく神の加護と呼ばせたのも私だ。

 少し考えれば理解できるはずだが、たかが特殊能力に神も何もあるわけがない。


 いや……あまり馬鹿にするのも良くないな。

 確かに、特殊能力の中には七つの大罪のような特殊なモノもあったが、殆どが七つの美徳の派生系だ。神の加護と思われても仕方ないかもしれんな。

 

 ここで地面を這いつくばるタロウが私に恨み言を吐いてきた。


「……ふざけるなよ。お前のせいでソレーヌもアルジーも死んだんじゃねぇか」

「へぇ……彼女達が死んだ事は理解ができるんだね……少しは賢くなったみたいだね」

「ふ、ふざけんな!!」


 これは面白い。

 あんな体だけの関係だった二人に仲間意識があったとはな。


「……滑稽だな」

「なに!?」

「滑稽だと言ったんだよ。お前はただ運が良かっただけの一般人。ソレーヌはただの被害妄想の強いお姫様。アルジーは我が儘なガキ。そんな三人が勇者一行? 滑稽以外の何モノでもないよ」


 全く。

 魔神の復活には自我が必要だと思い残してやったというのに鬱陶しい。


「お前は私の言う事を聞いておけばいい。それとも、お前もここであの二人の後を追うか?」

「え?」


 私がタロウの顎を持ち上げて冷たい目で見下しそう言うと、タロウは青褪める。

 タロウを動けない様に【怠惰】で気力を殺しておく。


「自分は大切だから、殺されないとでも思ったか? いい機会だ、正直に話しておこう。私にとってお前はもう不要なんだよ。いや、今回のお前の肉体(・・・・・・・・)は必要だよ。アイツ等(・・・・)の覚醒も終わったから、お前の自我は必要ないんだよ」

「な、なにを言っているんだ?」


 タロウは、ガタガタと震え始めている。

 中のアイツ(・・・)も目覚め始めているようだな。


 私はタロウが入っていたカプセル以外のカプセルに目をやる。

 中に入っているのは異形の人。

 ……これが私の本当の戦力。

 ゴミのような二人……、いや、今のタロウもゴミでしかないか?

 ゴミのような三人とは桁が違う。

 ははは。

 ゴミのようなと言えば、ゴミに失礼だな。


「私にとっての本当の部下(・・)はこいつ等だけだ。もう一つ教えておいてやろう。お前の肉体にはすべての大罪を埋め込んである。お前の中のアイツ(・・・)ももうすぐ起きる。お前は邪魔なだけだ」

「あ、アイツって誰だ!?」


 私はタロウの頭を掴む。


「は、離せ……」

「お前が知る必要もない。【暴食】こいつの自我を喰らい尽くせ」

「や、止めろぉおおおおおお!!」


 タロウは抵抗しようとするが、私の【怠惰】により動けない。

 さて、愚かで馬鹿な勇者もこれでさようならだ……。


「い、いやだ!!」


 抵抗していたタロウは、自我が喰われ一度ぐったりしていたが、ゆっくりと立ち上がる。

 そして、私を見て口角を釣り上げる。


「やぁ、ジゼル様。おはよう(・・・・)

「あぁ、おはよう。聞いておきたいのだけど、お前は私の手足となって働いてくれるかい?」

「当たり前じゃないか。俺達古代魔族(・・・・・・)強い者(・・・)に従う。だから、ジゼル様に従うよ」

「助かるよ。じゃあ、手始めに仲間(・・)の力を使って、【忌み子】ちゃんの仲間を八つ裂きにしてくれるかい?」

「あぁ、そのくらい簡単な事だ」


 タロウだったモノは、カプセルに目を向け「行くぞ、我が同胞達」とカプセルを全て割った。

 カプセルの中から【暴食】【色欲】【傲慢】【強欲】【怠惰】【憤怒】【嫉妬】の力の権化が姿を現す。こいつ等はタロウ同様古代魔族の組織を埋め込んだ人間だ。

 古代魔族……、今の平和ボケした魔族と違い、性格は残忍で強さこそが全てという種族。

 こいつ等は千年前に神によって滅びたのだが、千年経った今でも死体の一部がそのままの形で発見される。

 私はその死体を捜し、八体の古代魔族を手に入れた。そして、人間をベースに作り上げたのがこいつ等だ。


「そうだ、君の事をどう呼べばいい?」

「私か? 私の事はタロウと呼んでくれればいい。その方がいろいろと都合がいいだろうからね」

「そうか。真名は教えてくれないか」

「ふふふ。私にとってもジゼル様にとっても必要のない(・・・・・)事だからね」


 ふん。

 信用はできないって事かな?


 まぁ、いいさ。

 お前達が何を言い企もうと、お前達の命は私の手の中にある。


「さぁ、彼等を皆殺しにするんだ。行っておいで、私の可愛い子供達」

ジゼルの過去に矛盾は無いはず。

うん。大丈夫だと思う。


これからしばらくレティシア視点じゃなくなります。


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