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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
2章 レティシア、ファビエ王都で暴れる。

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24話 そして事態が動き出す


 タロウ達との戦いから二週間。私は次の戦いに備えてギルガさん達と楽しい特訓(地獄)を続けていました。

 特訓(地獄)前に一人一人の要望と特徴に合った特殊能力を作り、作った能力を最大限に扱えるように考えて特訓(地獄)のメニューを作っていました。

 殆どの人は声が出ないほど喜んでいるのに、リディアさんだけは「虐めだぁ!」といつも失礼な事を騒いでいます。

 今日もいつものように特訓(地獄)を始めようとしたところ、姫様の部屋にノックの音が響きました。

 いつもは食事の時間以外はノックされる事はほぼ無いのですが……何かあったのでしょうか?


「こんな時間に兵士が来るなんて珍しいですね」

「そうね。ケン、出てくれないかしら」

「あぁ」


 紫頭は今回の騒動が落ち着くまでは、姫様の側近として仕えていく事が決まりました。

 本来であれば、私達の様に冒険者として姫様の護衛という形でいればよかったのですが、紫頭は魔族です。ファビエ王国は全体の約九割九部が人族の国なので、魔族である紫頭がこの国に居続けるのには別の理由が必要でした。

 紫頭としても、そこまで無理をしてファビエに留まる必要はなかったのですが、タロウを放っておけないとの事でレッグさんの提案で今の形になりました。

 驚く事に紫頭は人柄が良いみたいで、たった一週間で城の姫様派の兵士達とも打ち解け、今では結構信頼されているみたいです。


 紫頭が扉を開けると、姫様派の兵士が立っていました。


「どうした?」

「ケンさん。ネリー様に国王がお呼びです……と伝えてください」

「国王が? この二週間全く干渉してこなかったのにか?」

「……はい。噂なのですが、タロウが帰還したと……」

「そうか。お前も気を付けて、レティシアが支給した物をちゃんと身につけておけよ。そうじゃないと、アイツは剣を向けられた時点でお前は敵と判断されて殺されるぞ」

「は、はい」


 紫頭……いい度胸です。

 しかし、間違った事は言っていませんので、怒るのは筋違いですね。


 でも、ちゃんと支給した物を身につけていれば敵になることはありません。

 私が支給したのは、精神攻撃を無効化するペンダントです。

 今まではタロウの【誘惑】……つまり、女性だけが警戒していればよかったのですが、ジゼルも【誘惑】を使える可能性があります。そうなると男性にも【誘惑】が効いてしまう可能性が高くなります。私としては剣を向けて来た時点で、敵判定するので殺す事は可能なのですが、姫様から無駄に命を散らしたくないと、対処法を頼まれたので作ってみました。


 紫頭は兵士を帰らせた後、姫様に伝言を伝えに来ます。

 まぁ、聞こえていたので本当は必要ないのですが、一応必要といえば必要なのでしょうね。


「ネリー姫。どうするんだ? 相手は毛嫌いしている父親とはいえ国王だ。無視するわけにはいかないだろう?」

「そうね。国王の呼び出しだからね。それに、タロウが帰ってきているんでしょう?」

「そうみたいだな。アイツは噂と言っていたが、国王が動きだしたという事は、帰ってきていると見て間違いないだろう。レティシア、どうするんだ?」

「そうですね。姫様次第でしょうか? 国王を殺して来いというのなら今すぐ殺しに行きますが、それは駄目なのでしょう?」

「そうね……。今はお父様を殺すわけにはいかないわ。いつかはこの国を混乱させた責任は取ってもらわないといけないけど、どちらにしても呼び出されたのなら、今は行くしかないわね」

「俺がついて行くか?」


 紫頭はそう言いますが姫様は首を横に振ります。


「ケンには、お父様を一度脅してもらっているから連れて行くと変に警戒されるでしょうね。レッグさんはあの時からお父様に毛嫌いされているから……」

「そうだな。俺はタロウと敵対してから国王に毛嫌いされているな。娘よりも得体のしれない変態を取ったという事だ……。父親としては最悪だよな」


 確かにその通りなのですが、もう少し姫様に配慮した方が良いのでは?

 嫌われますよ。


「……レティ、ついて来てくれる? それにエレンとカチュアにも来て欲しいの」

「私は構いませんよ。エレンとカチュアさんにも伝えておきます。それとカチュアさんは侍女服で行った方が良いですか?」

「そうね。武器は収納魔法に入っているし、下手に武装していけば警戒されるでしょうからね」

「分かりました」


 私は二人を呼びに特訓部屋へと行きます。

 今日も二人で特訓のはずです。お二人はとっても仲が良く、お二人で特訓をしていると効率がいいそうです。仲が良いのは良い事です。

 私が部屋の様子を確認すると二人は私の下へと駆け寄ってきます。


「レティ!!」「レティシア様!!」

「エレン、カチュアさん。姫様と一緒に国王の所へ行くので、特訓は中止して汗を流して着替えてきてください。カチュアさんは侍女服でお願いします」

「分かったよ」「はい」


 私は姫様の下に戻り、これからの事を話します。


「しかし、唐突だったな」

「そうですね。あれから二週間。ようやく動き出しましたか……。しかし、ジゼルがどういうつもりでこれだけ時間をかけたのかが分かりません」

「どういう意味だ?」

「単純にタロウを癒すのにここまで時間がかかったのか、それとも大罪をすべて集める為の時間稼ぎだったのかが分からないんです」

「そんなに簡単に大罪ってのは集まるのか?」

「さぁ? でも、ジゼルが私と同じ力(・・・)を持っていたら可能です。私も大罪系を作る事は可能でしたから」

「なに?」

「紫頭に大罪の【憤怒】を作りました。これは魔族と相性がいいみたいなので作ってみたのですが、違和感はないでしょう?」

「あぁ。結構使い勝手のいい特殊能力だ。怒りによってパワーアップできるからな。すぐにカーッとなる俺に向いている特殊能力だ」

「と、この様に私でも作り出せるのです。彼女も作れたとしてもおかしくありません」


 まぁ、彼女が【神殺し】だったらの話ですが……。

 警戒しても損はないでしょう。


「そう考えたら、魔神の事も頭に入れておいた方が良いって事か?」

「そうですね。もしかしたらジゼル以外の三人も魔神化するかもしれません」

「そうなったら、最悪だな。俺達で勝てるか?」

「それは根性次第じゃないですか?」

「根性かよ」


 エレンとカチュアさんの準備ができたみたいです。二人は侍女服を着ていました。


「アレ? エレンも侍女服を着たの?」


 姫様は微笑んでエレンを見ています。


「はい。少しだけ憧れていたんです」

「そう似合ってるわよ」

「ありがとうございます。レティ、どうかな?」

「かわいいですよ」


 私は素直にそう褒めます。

 エレンは嬉しそうに頬を染めています。その横でカチュアさんが少し面白くなさそうにしています。


「憧れだけでは侍女はできませんよ」

「私はレティの侍女だから良いの」

「いえ、レティシア様の侍女は私です」


 また二人で見つめ合っています。

 少し妬けてしまいますね。

 しかし、なぜでしょうか。このお二人のやり取りを見ていると心がホッとします。


 私達のやり取りを見ていた姫様が手をパンっと叩きます。


「さて、行きましょうか。お父様が何を企んでいるのかは知らないけど、良い内容じゃない事は確かだわ」

「そうですね」


 私達は四人で国王の部屋へと向かいます。

 そういえば、このお城に結構滞在していますけど、国王の顔を見た事がありませんね。

 まぁ、殺す予定なので別に顔などどうでも良いのですが……。


「姫様。少し意地悪な質問をしますけど、父親を殺す事に何も抵抗は無いのですか?」

「れ、レティ!?」


 エレンが私の口を押さえます。

 いえ、私は無神経ではありませんので、この質問が酷い事は理解していますよ。

 でも、姫様の覚悟を聞いておく必要はあります。


「そうね。あんなのでも父親だからね。心のどこかでは目を覚まして欲しいと思っているわ。でも目を覚まさないでしょうね」

「という事は?」

「最後は民衆の前で死んでもらうわ。それが私にとってもお父様にとっても、王族としての最後の仕事(・・・・・)だもの……」

「最後?」

「お父様を処刑した後、私も王位を返上して国を出るつもりよ。レッグさんにはまだ内緒だけど一緒に生きていくつもり」

「そうなのですか?」


 姫様の顔が少し赤いです。

 しかし、レッグさんはとても驚くと思いますよ。まぁ、姫様が幸せならいいのですが……。


 国王の部屋の前には宰相さんが立っています。


「ネリー様。陛下がお待ちです」

「えぇ。用件は聞いている?」

「いえ、ただ、先ほどまでタロウがいました。それから部屋には多数の騎士が配置されています」

「ふふ。私達を殺すつもりかしら? 騎士はお父様派なのね?」

「そうです。だから、レティシア嬢……騎士達を殺しても構いません」

「分かりました」


 この二週間で宰相さんとは数回会いましたが、私の性格を理解してくれて何よりです。

 これで心置きなく敵を排除できます。


「エレン、戦闘が始まったら姫様を守っていてください」

「レティ、私は戦っちゃ(・・・・)ダメなの?」


 姫様は期待を込めた目で見てきます。

 

「姫様が戦える事はできるだけ隠したいので、今回は大人しくしておいて下さい」

「そう、残念ね」


 姫様はとても残念そうな顔になります。


「カチュアさんは無理に踏み込まないで、自分の火の粉だけを振り払ってください」

「分かりました」


 カチュアさんの今の実力ならば、この国の騎士程度なら簡単に倒せると思いますが、まだ戦闘訓練を受けて二週間です。危険な事はさせたくありません。


 私達は国王の部屋に入ります。

 この気配は……囲まれていますが、所詮は雑魚ですね。

 

 目の前の椅子に偉そうに座っているのが国王でしょうか?

 国王は髪の毛の薄いおじさんでした。

 なんでしょう。このおじさんを見ていると髪の毛を全て引き抜きたくなります。

 そうです。

 殺す前に髪の毛を全部剃りましょう。


「来たか……ネリー」

「何か御用ですか? お父様」

「何か用だと? 貴様、国王であり父であるワシに反旗を翻そうとしているのではないか? 先程タロウからそう聞いたぞ。どういうつもりだ!?」


 やはりタロウが来ていますか……。

 しかし、妙ですね。

 姫様と国王の不仲はタロウが来る前からと聞きましたが……今更なぜ聞くのでしょう?。


「タロウはただの犯罪者ですわ。娘の言葉よりも犯罪者の言葉を信じるのですか?」

「ふざけるでない!! タロウはわしが呼びだした勇者だ!! 勇者を厚遇して何が悪い!!」

「勇者? 何を持って勇者と? 何を成して勇者と? タロウが行った事は婦女暴行や殺人未遂だけではありませんか。それが勇者としての行動だとでも?」

「無礼な!! わしに口答えをするな!!」

「まさかとは思いますが、お父様もタロウの犯罪に加担しているんじゃないでしょうね。もし、そうならば貴方に国王の資格はありませんよ。今すぐ退位してください」

「ぶ、無礼者!! 貴様等はここで殺す事に決めた!! 騎士達よ、こ奴等をここで殺せ!!」


 国王が激昂すると、騎士達が現れます。

 私は騎士達の目を見ます。


 なるほど……。


「目が正常ではありませんね。正気ではない。でも私達に刃を向けました……敵で良いでしょう。エレン、姫様を任せます。カチュアさん」

「はい。大丈夫です」


 カチュアさんは収納空間から身の丈ほどの大剣を取り出します。

 この剣がカチュアさんの【聖剣・アテナ】です。

 国王はカチュアさんの姿を見て大笑いします。


「はははは。侍女風情がそんな剣を持ってどうするつもりだ!!」


 何も知らない国王がそう思うのは勝手ですが、カチュアさんにはこの武器が最適なんです。


「カチュアさん。周りの言葉など無視して構いません。自分の攻撃範囲に敵が入ったら容赦なくぶちかましてくださいね」

「はい」


 私も【ヒカリ】と【ヤミ】を取り出し、騎士達を見廻します。

 全員を一瞬で殺す事も可能ですが、カチュアさんの為に残す必要もあります。

 とりあえず邪魔になりそうな、強いのだけでも殺しておきましょうか。


「くははははは!! こちらは子供か!! こんな子供に何ができる!!」


 私は一番近くにいた騎士の首を撥ねます。そして首を国王に投げつけて「このくらいの事は可能ですよ」と笑顔で答えてあげます。

 騎士の首は上手い事国王の膝の上に落ちました。


「ひ、ひぃいいい!!」


 国王は騎士の首をすぐに捨てます。

 他の騎士もその光景を唖然と見ています。

 馬鹿ですねぇ……。その一瞬が命取りですよ。


 私は騎士達を次々と殺していきます。

 騎士達は反撃もできないまま死んでいきます。


 一方のカチュアさんも大剣を薙ぎ払って騎士達を圧倒します。

 そういえば、カチュアさんの攻撃範囲はとても広いので騎士は立っているだけで攻撃範囲に入ってしまっていますね。これは失念でした。

 しかし、流石に人殺しはまだ慣れていないみたいなので私がとどめを刺しておきます。


「これで全員ですか? ここで襲われているという事は、ギルガさん達が心配ですね」


 まぁ、この二週間でものすごく強くなっていますから、この言葉は嘘なんですけど……。


「それよりも、国王です」


 私が国王に視線を移すと、国王の隣にジゼルが立っていました。

 いつの間に現れたのでしょう?


「久しぶりだね。【忌み子】ちゃん」

「お久しぶりですね。あれから二週間、準備は終わりましたか?」

「何の話だい?」


 ジゼルはしらばっくれます。

 まぁ、素直に吐くとは思っていませんが……。


「とぼけるのならそれでも構いませんよ。無理やり吐かせるだけですからね」

「へぇ……それは怖いね」

「じ、ジゼル、わ、わしを守れ!!」


 国王はジゼルに縋りつこうとしていますが、ジゼルの目は冷たいままです。


「お断りだよ」

「え?」


 国王の後ろにはソレーヌがいます。

 そして国王の胸から剣が突き出てきました。

 ソレーヌが刺したのでしょう。


「ぐふっ!!」


 国王は血を吐き出しジゼルを見上げました。アレは助かりませんねぇ……。心臓を一突きです。

 エレンなら助ける事もできると思いますが、ジゼルがそれを許さないでしょう。


「今回の君の役目はここまでだよ。次の君には私達の為に動いて貰うとしよう」

「な、なんじゃと……?」


 次の君……ですか。


「ソレーヌ。やれ」


 ソレーヌが国王の首を落とします。

 あぁ!?

 国王の髪の毛を剃れませんでした。


 ジゼルは国王の薄い髪の毛を掴み、姫様に向かい掲げます。


「ネリー姫、良かったね。これでクーデターは君達王女派の勝ちだ。ただし、ここからは、勇者タロウ一行が父親殺しのお姫様を討たせてもらう」

「な、なんですって!?」

「さぁ。ネリー姫。ここからは貴女達が滅ぶか、私達が滅ぶかの戦いだ。どちらが生き残るかな?」

「そんなの決まっているじゃないですか。貴女が死ぬんですよ」


 私はジゼルに斬りかかりますが、ソレーヌが邪魔をします。


「邪魔ですよ。貴女はもう二度も私に負けているんですよ。大人しく引っ込んでいてください」


 しかし、ソレーヌは何も言いません。

 この眼は……すでに操り人形と化しているんですか……。


「ははは。ソレーヌ、【忌み子】ちゃんだけは殺しちゃダメだ。【忌み子】ちゃんは私のモノになってもらうつもりなんだからね」

「私は貴方がたを皆殺しにする予定ですよ?」

「ははは。それは無理だね」

「そうですか?」

「あぁ。今のソレーヌは強いよ……大罪を四つ(・・)持っているからね」


 そういう事ですか……。


「じゃあ、私は帰るよ。ソレーヌ、【忌み子】ちゃん以外は殺してもいいよ」

「……はい」


 そう言ってジゼルは消えました。

 国王の死体を持って帰った事を考えると良からぬ事を考えていそうですね。

 とりあえず、今は目の前のソレーヌを何とかしなければいけませんか……。

 

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