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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
2章 レティシア、ファビエ王都で暴れる。

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23話 聖女の力


「せ、聖女の力を取り戻す……?」

「はい」


 私がそう言うと、マリテさんは驚いた顔をしていました。

 タロウに汚されて、消滅してしまったと思っていた聖女の力を取り戻せるんです。

 しかし、それは同時に今の平和な生活から再び闘いの日々に戻るという事になります。

 それをマリテさんが本当に望んでいるのかどうか……。


 しかし、私としては疑問が残っています。


 マリテさんの聖女の力は、本当にタロウに奪われた(・・・・)のでしょうか?

 アレスさんの勇者の力は、先日の戦闘でタロウが使っていた事から、奪ったのは間違いないでしょう。

 しかし、タロウは聖女の力は使っていません。

 いえ、そもそも聖女の力とはどんなモノなのでしょうか?

 少なくとも、タロウからは神聖な魔力は感じませんでしたし、エレンのような治療魔法も使っていません。

 

「ちょ、ちょっと待て。マリテの聖女の力が戻るという事は俺の勇者の力も戻せるのか?」

「勇者に戻りたいんですか?」


 これは意外です。

 いえ、意外でもないですか。

 アレスさんはタロウみたいな似非勇者とは違い、本物の勇者に相応しい人物です。

 アレスさんが勇者に戻りたいのなら、あの二つを作ってもいいかもしれません。

 しかし、アレスさんの言葉は私の予想とは違いました。


「勇者の称号はどうでも良い。だが、マリテが聖女に戻るというのなら、俺が勇者じゃないと聖女(マリテ)を守れない」


 ふむ。

 アレスさんは勇者に戻りたいんじゃなくて、マリテさんを守りたいんですね。

 やはり、アレスさん(貴方)は勇者に相応しい。

 そう考えた場合、今までの(・・・・)【身体超強化】ではダメな気がします。


「アレスさん。一つ聞いていいですか?」

「なんだ?」

「【身体超強化】というのはどういったモノでしたか? ドゥラークさんが使っていた【身体超強化】みたいに段階が分かれていましたか?」


 タロウが使った時は、未熟だから第一段階しか使えないと思っていましたが、もしかしたら……。


「そうだな。ドゥラークさんのように段階分けはしていない。俺達の【身体超強化】は自身の身体能力を三倍強化する程度(・・)の能力だ」

「やはりそうですか……。ならば、そこは安心してください。貴方の力はタロウに奪われましたから、貴方に特化した能力に作り変えます」


 アレスさんは作り変える事よりも、奪われたという言葉に反応します。


「レティシア。タロウに【身体超強化】を奪われたってどういう事だ?」

「アレスさんはタロウの特殊能力について知らないのですか?」

「特殊能力? 加護じゃないのか?」


 そうです。

 毛玉との話の時、アレスさん達はいませんでしたね。


 私は神の加護が存在しない事や、七つの大罪、七つの美徳という名の特殊能力について説明をします。

 しかし、タロウの能力を聞いて、アレスさんは首を傾げていました。


「どうしました?」

「いや、俺はタロウと出会った事は無いし、顔すら知らないんだ。マリテを助けに行った時もタロウはもういなかったし、勇者の力は突然失ってしまったからな。それなのに、奪われたと言われてもしっくりこないな。もし奪われたのならいつ奪われたんだ?」


 はて?

 突然失った?

 まさか!?


「では、魔導士ジゼルとは会った事はありますか?」

「魔導士ジゼル? あの女には会った事がある。あの女と会った直後に勇者の力を失った。その時にタロウの事を聞かされた。そして、マリテの事を教えてくれたのもあの女だ」

「そうですか……」


 今までタロウがアレスさんの力を奪ったと思っていましたが、もしかして奪ったのはジゼルだったのでしょうか。

 そう考えた場合……。

 ふむ……、ジゼルの本当の目的は。


「自らが魔神になる事ですか?」

「なに?」

「あ、すいません。独り言です」


 まだ確証はないので、余計な事を言って皆さんを不安にする必要はありません。

 しかし、ギルガさんは見逃してくれませんでした。


「いや、魔神と聞いた以上、独り言で済む問題じゃない。話してくれないか?」

「分かりました。では、話します。ジゼルも七つの大罪【強欲】を……いえ、もしかしたら【強欲】だけでなく、タロウの仲間が持つ大罪を全て使えるかもしれません」

「なぜ、そう思うんだ?」

「アレスさんはタロウに会った事は無く、顔も知らないと言いました。しかし、ジゼルには会ったと……そしてその直後に能力を失ったと言いました」


 ギルガさん達がアレスさんに確認を取り、アレスさんも頷きます。


「という事は、アレスさんから能力を奪った者はジゼルという事になります。今度はレッグさんに確認を取りたいのですが、タロウが姫様を襲い、タロウを追い返したのはマリテさんが襲われた後ですか?」

「あぁ。確か、マリテが襲われた数日後にネリー姫を襲おうとしたんだ。その時に追い返した」


 やはりそうですか。


「その時、タロウは勇者の力【身体超強化】と【光魔法】は使いましたか?」

「いや、使っていないな。もし使われていたら俺は生きていないだろうからな」

「そうですか……」


 やはり使っていませんでしたか。

 となると……。


「レッグさんと戦った時のタロウは【身体超強化】は持っていなかった。だけど、【強欲】は持っていたと考えていいでしょう」

「なぜだ? 今の話だけ聞けば、【強欲】を後から手に入れたんじゃないのか?」

「いえ、それはあり得ません。タロウの【誘惑】はラウレンさんから奪った(・・・)ものだからですよ。あれだけはタロウが望んだんだと思います。そして、都合よくそこにラウレンさんがいて、能力の【誘惑】があったという訳です」


 こればかりは本当に偶然なのでしょうけど……。


「お、お父さんが【誘惑】を!?」

「そうです。でも、ラウレンさんはその力を忌み嫌い、一度も使った事は無いと言っていました。ですが、タロウに奪われてしまいました……」

「そ、そうなんだ……」


 マリテさんは少し落ち込みます。

 タロウがお城で好き勝手やるのに使っていた能力が、父親が隠してきた能力だと聞けば落ち込むのも分かります。


「タロウとジゼルの力の事は理解したが、それとお前が言った「自らが魔神」という言葉はどう説明するんだ?」

「簡単な話です。ジゼルは七つの大罪を集め、タロウで実験をするつもりなのでしょう。そして、完璧な方法で自分が魔神になろうと企んでいるのでは、と思ったのです。そう考えればジゼルの行動も辻褄が合うんです」


 私がそう言うと、みなさんは言葉を失います。

 この推測が当たっていれば、かなり厄介です。


「ともかく、今はマリテさんの力の話です」


 マリテさんの聖女の力に関しては一度アレの話を聞く必要があります。


「エレン。毛玉を出してくれますか?」

「え? うん。ちょっと待ってね」


 エレンが祈ると頭の上に毛玉が現れます。

 そういえば、さっきまで居たはずなのに何を勝手に消えているんですかね。


『今度は何だ?』

「誰が勝手に消えていいと言いましたか?」

『ちょ、なんで怒ってるんだよ!!』

「怒っていませんよ。早く話を始めたいのでとっとと静かにしてください」

『私の扱い酷ぇえな』


 なぜかリディアさんも頷いていますね。何かムカつくので、後でお仕置きです。


『それで、何を聞きたい?』

「聖女の事です。先日にマリテさんは聖女の力を発現していたと言っていましたが、どういう意味ですか?」

『そのままの意味だ。エレンの場合は聖女に必要な力がまだ発現していないが、マリテは発現していた。それは【神言】という特殊能力だ。【神言】自体に能力はなく、神の力が覚醒したという証でしかない。マリテはそれを持っていたんだろ?』

「え? は、はい」

『ならば、聖女の力を復活させるのは簡単だ。聖女の力は奪われていない。いや、奪えない(・・・・)

「奪えないですか……。魂の奥にでも隠れているのですか?」

『そう思ってくれて構わない。前にも言ったが聖女の力は特別だ。神の力は簡単には奪えん。だからこそ、ジゼルはマリテをタロウに差し出そうとしたんだろう。貴重な治療手段としてな』


 ふむ。

 毛玉の話は筋が通ってますね。


「という事は聖女の力は戻す事ができるという事ですね」

『だが、マリテがそれを望むか? 聖女になれば再びタロウとの戦い、魔王との戦いに戻る事になるんだぞ』

「う……うん」


 マリテさんの表情を見ていると答えは出ていますね。


「やはりマリテさんには別の能力を作りましょう」

「別の能力?」

「はい。別に聖女の力が必要なわけじゃありませんし、マリテさんが嫌がる顔は見たくありません。だから、新しく能力を作ります」

「いいの?」

「はい。嫌がる人に無理やり能力を作るのは駄目だと思いますから」


 しかし、【神言】ですか……。

 何やら意味ありげな能力ですが、今は考えても仕方ないでしょう。


 さて、少し時間を使い過ぎましたね。みなさんの能力を考えて作っていきましょう。

マリテの能力の話……矛盾はないと思うけど、タロウの能力に関しては、かなり混乱中。どうしてこうなった……。

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