表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
2章 レティシア、ファビエ王都で暴れる。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/325

22話 それぞれの武器

 

 ギルガさん達は、ドゥラークさんの大斧をまじまじと見ています。

 自分で作っておいて何ですが、緑色に光る刃が宝石みたいで綺麗ですねぇ。ドゥラークさんの顔には似合いませんが、ドゥラークさんの人柄には似合っていると思いたいですねぇ。


『まさか、無から聖斧を作り出すとはな。私自身も【神殺し】の力を初めて見たが、ここまで凄いモノとは思わなかったぞ……』


 毛玉に褒められてもたいして嬉しくありませんねぇ。


「確かに、この斧からは神聖な魔力を感じる。レティシア、これと同じような物をオレ達全員分作るつもりか?」

「はい。カチュアさんとエレン、姫様は今は作りません(・・・・・・・)が近いうちに作ります。まずは戦闘経験のある貴方がた四人の分です」

「しかし、なぜオレ達の分まで武器を作ろうとする? いつものお前ならば、エレン以外はどうでも良いと考えるはずだろう?」


 確かにエレン以外はどうでも良いと思っていましたが、いまではギルガさん達も最低限どうでもあるんですよ。

 まぁ、素直に言う必要はないと思っていますが……。


「私が戦った露出狂はジゼルが作ったと思われる魔剣を持っていました。それに大罪の力まで持たれてしまうと、まともに戦えるのがドゥラークさんだけになってしまいます。それを避けたいのですよ。私がいない時にエレンに何かあったら大変でしょう?」


 露出狂はあの魔剣を使いこなしていませんでしたが、結構危険なモノに見えました。だからこそ、最低限同じ舞台に立ってもらわないと。まぁ、私の作ったモノの方が強力ですけどね。


「さて、サクサクと作っていきましょう。と、その前にエレン、こっちに来てください」

「なに?」


 私はエレンの手を握ります。するとなぜかカチュアさんが反対の手を握ってきます。

 はて?


「カチュアさん?」

「あ、ご、ごめんなさい」


 カチュアさんは恥ずかしそうにしますが、手を離しません。

 

「いえ、別にいいのですが……。エレン、魔力を貰っていいですか?」

「え? うん。良いよ」

「じゃあ、分けて貰いますね」


 私はエレンから魔力を吸収します。

 凄いですね。エレンから魔力を吸っても全く無くなる事はありません。


『エレンは【無限の魔力】持ちだからな。どれだけ吸っても大丈夫だ』

「そうなのですか?」

「私も初めて聞いたよ」

『本来【ゴスペルヒール】や【サルヴェイション】はエレンみたいに何度も連続で使えるようなモノではない。エレンには幼い頃から【無限の魔力】が備わっていたみたいだな。だから使えていたんだろう』

「そうなの? なら、レティは()の魔力を吸い放題だね。いつでも手を握ってもいいからね」


 エレンはなぜかカチュアさんの方を見てそう言います。

 エレンはとてもいい笑顔です。逆にカチュアさんはなぜか悔しそうです……なぜでしょう?



「さて、魔力が回復しました。ちゃちゃっと全員分作ってしまいましょう」


 私は一人ずつ要望を聞き武器を作ります。


 それぞれ、ギルガさんには【聖剣・アーク】、レッグさんには【聖剣・ゲネオス】、リディアさんには【龍槍・ヴィーヴル】、紫頭には【魔剣・キマリス】を作りました。


 五人分の武器を作った後、やはりアレスさんにも作っておいた方が良いと判断したので、連れて来る事に決めました。

 私は転移魔法でマリテさんの下へと移動します。

 

 

 前に聞いた話だとアレスさん達は故郷で冒険者をすると言っていました。

 という事はここがアレスさんの故郷なのでしょう。

 私はマリテさんがいると思われる家を訪ねます。

 家は狭くベッドが一つあるだけの部屋でした。そんな小さな部屋にマリテさんだけでなく、アレスさんも一緒にいました。


「申し訳ありません。イチャイチャしていたところをお邪魔して」

「そ、そんなんじゃないぞ!?」


 しかし、アレスさんとマリテさんは二人っきりでこの家にいました。

 やはりお邪魔をしてしまったようです。


「……申し訳ありません」

「い、いや。それはいいんだ。レティシア、お前が俺の所に来たという事は何かあったのか?」


 そうです。お二人をおちょくる暇はありません。

 私はここに来た理由をお二人に話します。


「……そうか。タロウは俺達が思っているよりも危険な存在になっていたんだな。アイツがいつ襲ってきても対処できるように鍛練は積んでいたんだが……」


 こういうところが、偽物の勇者とは違うのです。やはりアレスさんは本物の勇者です。

 どちらにしても、タロウ達と戦う意志を見せているなら……。


「そうですか。なら、都合がいいです」

「都合がいい?」

「はい。まだ、姫様の下にいる人達には話していませんが、みんなの武器を作った後は、私の楽しい楽しい授業(地獄)を始めようと思っていたんですよ。アレスさんも強くなりたいのなら都合がいいです」


 私はアレスさんのやる気についつい嬉しくなってしまいます。しかし、アレスさんは顔が青褪めています。


「何を心配しているのかは知りませんが、大丈夫です。鍛えるだけですから殺しませんし、体が壊れてもエレンがいますから」

「い、いや。そういう問題じゃないんだが」

「どちらにしても、アレスさん達には私と共に来てもらいます。私の駒は一つでも多い方が良いですから」

「駒って……。まぁいい。ロブストとサジェスも連れて行った方が良いか?」

「そうですね。強くなるのは一人でも多い方が良いでしょう」


 アレスさんは脳筋戦士さんとサジェスさんを急いで連れてきます。

 お二人は私がこの村に来ている事に驚いていましたが、事情を説明すると快く私と一緒に来る事を決めてくれました。

 え?

 鍛える事ですか?

 アレスさんですら青褪めていたのに、お二人には言う訳ないじゃないですか。


 私はアレスさん一行を連れて姫様の部屋へと移動します。

 部屋で姫様と顔を合わせたマリテさんは、少しだけ居辛そうにしています。


「お、お久しぶりです。ネリー様」


 少し、オドオドしていますが、マリテさんが姫様に挨拶をします。

 姫様はそんなマリテさんに抱きつきました。


「ごめんね、マリテ。守ってあげられなくて……辛い思いをさせて……」

「いえ、あの状況で私を救えた者はいませんでした。でも、エレンちゃんとレティシアちゃんのおかげで乗り越える事もできましたし、タロウに襲われる前の身体に戻る事もできました」


 それを聞いた姫様は、エレンに物凄く感謝をしていました。

 姫様は、マリテさんやお城の侍女達を守ろうとしていたそうです。

 しかし、マリテさんは教会の裏切りによってタロウに捧げられたそうです。教会が出てくると、姫様でもどうにもならなかったそうです。

 どちらにしても、胸糞の悪い話なのでタロウ達は確実に殺す事にしましょう。

 ……いっその事教会も潰しましょうか?


 私はアレスさん達の要望も聞き、武器を作りました。


 アレスさんは【聖剣・エクスカリバー】、脳筋戦士さんは【聖槌・トール】、サジェスさんは【聖杖・フレイ】、マリテさんには【聖杖・ディアナ】。


 ドゥラークさんの武器に始まり、九本も連続で作ったので少々疲れましたが、時間は有限です。ちゃっちゃと次の作業(・・)を始めましょう。


 私は姫様の寝室とは別の部屋のドアノブを握ります。

 イメージとして果てしない空間。

 壊れない壁。

 気配も何も感じさせない隔離された空間。

 そして、これは上手くいくか分かりませんが……時間の凍結。

 これが成功すれば、時間を気にする事も無くなります。

 しかし……。


『レティシア。それは無理だ』


 いざイメージが出来上がり、魔法を作ろうとすると毛玉が私を止めました。


「何故ですか?」

『時間停止はこの世の理に反する。たとえ成功したとしても、そこに入れば生命活動も停止してしまうんだ。道具袋や箱のような大きさのモノ限定であれば時間凍結は可能だが、生物が入る空間を時間凍結させる事はできん』

「そうなのですか? 単純に魔力の問題ですか?」

『いや、できないモノはできないという問題だ。今まで【無限の魔力】持ちが時間凍結を試した事があったが、命ある生物がそこに入った瞬間、時間停止が解除された。どんな手段を使っても、こればかりはどうしようもなかったみたいだ』

「……そうですか」


 できないモノはできないとはえらくザックリとした理由ですが、無理な事に時間は費やせません。

 しかし、【創造】の力でも作れないモノは存在するという事ですか。この辺りをもっと研究する必要がありますね。


 私はイメージから時間凍結を排除して空間を作り出し扉を開きます。

 扉の先には先の見えない空間が広がっています。

 視覚に配慮するために、空は青空にしてあります。


「な!? 外に出たぞ!?」

「違いますよ。私が作った空間です。ここで貴方達を鍛えます」

「レティシアちゃんがか?」

「はい。エレン、カチュアさん、姫様、マリテさんは下がっていてください。それ以外の人は一斉に私にかかってきてください」


 私の言葉にギルガさんとレッグさんが驚いています。

 そこまで驚く事でしょうか?

 これには紫頭が反論してきました。


「いくら何でも自信過剰過ぎないか?」

「そうでもないですよ」

「そこまで言うなら後悔はしないな」


 後悔とは何でしょう?

 私が首を傾げているとサジェスさんも私に文句があるそうです。


「いくら貴女でも、この人数に襲われたら危ないんじゃないの? アレスも強いし、ギルガさんもレッグさんも強いぞ?」

「サジェスさん。私も試してみたいのですよ……」

「何をだ?」

「私の本気(・・)です」


 私がそう言うと、全員の顔が青褪めます。

 私自身が把握していない本気というモノをこの八人なら引き出せるかもしれないじゃないですか。


「あ、ドゥラークさんは【身体超強化】の二段階目を使ってくださいね。それを見て、後で調整しますから。さて、かかってきてください」


 ギルガさん達は、最初は戸惑っていましたが、覚悟を決めてかかってきました。

 


 二時間後。

 全員が動けなくなったので模擬戦は終了です。


「ふむ。やはり一番強いのはドゥラークさんですね。【身体超強化】の第二段階を使いこなしていますが、何故武器を使わなかったのですか?」


 私は寝転がっているドゥラークさんの所へと歩いて行きます。


「はぁ、はぁ。前にアルジーと戦った時は素手だったんだよ。だから、つい武闘家の時の癖がでちまった」

「ドゥラークさんは武闘家だったんですか?」

「あぁ。十年以上続けていたが、これ以上強くなれなかったからな。それで、今は戦士をやっていた」

「成る程。他の人にもいろいろ聞いて回りますか」


 私はへばっている皆さんに話を聞いて行きます。

 ふむふむ。


 するとギルガさんが、苦笑しながら私に声をかけてきました。


「流石にこの結果は凹むな。全員と戦ってレティシアに傷一つ付けられないとはな。ドゥラークでも無理とは思わなかった」


 これにレッグさんが続きます。


「確かにな。俺もギルガさんもAランクと自負していたが、ここまで差があるとはな」

「流石はSランクといったところか……。それで? オレ達は強くなれるのか?」

「さぁ? それは本人次第じゃないですか? ドゥラークさんは自分自身で【身体超強化】の第二段階を克服していますし、アレスさんは自己の剣術だけで食い下がっていましたよ。そう考えれば結局は自分自身じゃないですか?」


 一番強かったのはドゥラークさんでしたが、アレスさんもかなり強かったです。

 これで【身体超強化】があれば、タロウ如きに負けなかったんじゃないですか?


 ともかく、色々な話を聞いて皆さんに必要な特殊能力を考えます。

 それと……。

 マリテさんにも聞いておかなきゃいけない事があります。


「マリテさん」

「なに?」

「聖女の力を取り戻したいですか?」

「え……?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ