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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
2章 レティシア、ファビエ王都で暴れる。

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21話 龍斧ティアマト


 数日間の平穏ですか……。

 ジゼルの言葉を素直に信じるわけにはいきませんが、ただ否定するというのも何か違う気がします。

 例えば、ジゼルの言った事を素直に信じたとして、本当に平穏に過ごすだけではいけません……。

 例えば、ジゼルの言葉を全て否定して、ガチガチに警戒して過ごすというのも時間の無駄と思ってしまいます。

 では、どうするかですよね。ここは両方を考えましょう。


 決めました。時間があるのなら、レッグさんやギルガさんを鍛えましょう。ついでにリディアさん(おもちゃ)も鍛えておきましょう。今のままでは、強くなったドゥラークさんの隣に立っても足手まといになってしまいます。

 リディアさんはドゥラークさんの伴侶になるつもりなのでしょうから。


「レティ!?」


 エレンとカチュアさんが荒れ果てた中庭までやってきました。

 カチュアさんは中庭の光景を見て唖然としています。

 元々は美しい中庭だったと思うのですが、今ではその面影は残っておらず、兵士の死体が転がっているだけなのですが……。


「な、なにがあったのですか? そ、それにこの死体は……」

「ここで露出狂と戦いました。兵士は私に刃を向けたので殺しました。どうやら国王派の連中みたいですね。まぁ、私には関係ありませんけど」


 カチュアさんの私を見る目が怯えの色に変わります。

 確かに普通の女性には少し刺激が強いでしょう。


「レティは無事だったの? 異常なほどの魔力を感じたけど……」

「そうですね。魔力は露出狂が【嫉妬】に目覚めたからです。少し深い話をしたいので、毛玉を出せますか?」

「え? けだまん? 少し待っててね」


 エレンが祈るように魔力を溜めると、頭の上に毛玉が現れます。


『なんだ? 深い話があると聞いたのだが?』


 私は毛玉に【嫉妬】の事を説明します。


『そうか……。そのジゼルという女は大罪を集めているのだな。ならば……』

「何か知っているのですか?」

『知っているというよりも噂話を聞いた事があるだけだ。七つの大罪を全て集めると【魔神】が生まれるらしい。そのジゼルという女は【魔神】の復活でも企んでいるんじゃないのか?』


【魔神】ですか。

 何か話が大きくなってきましたね。


「まぁ、その話は今は良いでしょう。とりあえず姫様の無事を確認しましょう」

「そうだね」

『え? お前が呼んだのに? もう話は終わりか?』

「うるさいですね。話は後です。エレンの頭の上にいる事を許してあげますから、大人しくしていてください」


 そもそも、毛玉がエレンに触れているのも本当は気に入らないんですよ。

 

 姫様の部屋に入ると、レッグさんが扉付近で武器を構えていました。


「もう警戒しなくても大丈夫ですよ」

「外でなにがあった?」


 私は露出狂が攻めてきた事を話します。

 レッグさんは露出狂が攻めてきた事に驚いていました。そして、私はジゼルの言葉も伝えておきます。


「そうか……一番の危険はタロウではなく、本当に危険なのはジゼルか……。転移魔法を持つアイツが敵に回っているのなら、ここも安全ではないな」


 安全じゃない……ですか。

 それならばいい案があります。


「姫様はここにいなければいけませんか?」

「え? どういう事?」

「この城にいれば、いつジゼルが攻めてくるか分かりません。それならば避難すればいいかと。避難先は私達が拠点にしているセルカなんかどうですか?」

「それはできないわ」


 姫様が言うには、国王と姫様が揉めているこの状況で、姫様が城からいなくなってしまえば、国王派にそこを突かれてしまうと懸念しているそうです。

 そう考えればそうかもしれません。

 なら、どうするかですよね。


 そうです。

 私の力は【創造】

 ……。


 何か【創造】で作れませんかね。

 転移魔法と危機管理……。それに……。


 この部屋に結界でも張りましょうか?

 いえ、ジゼルは大魔導です。結界など簡単に破られるでしょう。

 さて、どうしたモノでしょうか?

 

 五分ほど考えましたが、やはり姫様にセルカの町に来てもらった方が何かと都合がいいですね。

 姫様を連れて行くのは駄目なのでしたら……この部屋をセルカに移動してみましょう。

 この部屋の扉に転移魔法と結界を設定して、あっ、あそこに魔宝玉があるのでこれを利用しましょう。

 他にも部屋があるので、これも利用して……。


「レティ? どうしたの?」

「はい。今魔法を作っています。後は姫様の寝室ですが、レッグさんも姫様の寝室に入れるように設定しますか? もししないのであれば姫様と侍女のカチュアさんだけに設定しますが?」

「な、なにを言っているんだ!?」


 レッグさんは慌てています。姫様は何故か顔が赤いですねぇ……。

 まぁ、良いでしょう。レッグさんも入れるように設定しておきます。

 これで大体はできました。


「えい」


 私は部屋全体に魔法をかけます。

 安全の為に、この部屋にたいして私達以外の誰かが干渉した場合は逆探知して、干渉してきた人物の下へと転移できるようにしてあります。これにジゼルが引っかかればジゼルの下へと転移できます。


「できました」

「え? どうなったの?」


 私はここにいる皆さんに今使った魔法の説明をします。

 部屋に入れる人の登録は、魔宝玉と呼ばれるモノに触る事で登録できるようにします。この部屋にはいくつか置いてあったのでそれを利用させてもらいます。


「ちょっとまって。じゃあ、セルカに移動したいと思えば移動できるという事?」


 姫様は驚いています。


「そうです。普段はファビエ城に移動できるように設定してありますが、セルカに行きたいと願い扉を開ければ……」


 私は扉を開けます。

 すると、扉の前にはリディアさんがいました。


「は?」

「何を面白い顔をしているんですか?」

「え? れ、レティシアちゃん? どうして空き部屋にいるの?」

「説明は面倒です。後で説明しますから今は引っ込んでいてください」

「え? レティシアちゃん、相変わらず私には冷たくない?」

「そうですか? 愛情表現ですよ。そう思っていてください」

「う、嘘だ」


 うるさいので私は扉を閉めます。


「こういう感じです」

「「「あ、はい」」」


 エレンは困ったように笑っています。

 流石に他の三人は今の状況を飲み込めていない様でした。

 全く、リディアさんのせいでややこしくなってしまいました。


「さて、時間はありません。レッグさんが最も信頼できる兵士か冒険者を一人だけ連れてきてください。あ、地位の高い人は駄目です。どこで国王とつながっているか分かりませんから」

「一人だけなのか?」

「はい。人数は少ない方が良いと思いますので」

「わかった。少し待っていてくれ」


 レッグさんが部屋を出た後、カチュアさんに今後の事を話しておきます。


「カチュアさん。貴女は素質がありますので私達と共に強くなりましょう」

「え? でも、私はただの侍女です」

「いえ、大丈夫です。あの玩具……いえ、リディアさんでも強くなれる予定なのです。大丈夫です。私を信じてくれませんか?」


 私はカチュアさんの手を握り、目を見つめます。


「は、はい。分かりました」


 カチュアさんは少し赤くなっています。

 その光景を見てエレンが少し膨れています。

 そしてカチュアさんに近付き、「れ、レティは渡さないからね」と呟いていました。

 それを聞いたカチュアさんも「はい。受けて立ちます」と言っていました。


 はて?

 お二人は何を言っているのでしょうか?


 一時間くらい待つと、レッグさんが一人の男性を連れてきました。

 結構大きな人ですね。

 紫色の髪の毛で結構ガタイが大きいです。しかも羽が生えています。


「魔族ですか?」

「あぁ。魔族で構成されたエスペランサという国出身の冒険者で名前はケンだ」

「ケンですか……名前が長いので紫頭で良いでしょう」

「いや、余計に長くなっているだろうが!! そもそも初対面でどうして毒を吐かれなきゃいけないんだ!!」


 紫頭は即座にツッコんできます。

 これは面白い逸材です。


 私から見ても紫頭は強そうに見えますし、鍛えればかなり強くなりそうです。それに、人体実験にも耐えれそうです。

 気に入りましたよ。

 私は紫頭の傍に行きます。


「人体実験してもいいですか?」

「お、おい、レッグ。このガキめちゃくちゃ恐ろしい事を言っているんだが? 何者なんだ?」

「い、いや……」

「あ、レッグさんも改造するつもりなのでいいですよね?」

「え? ケン。お前のせいで俺にまで被害が及んできたぞ?」

「いや、俺のせいじゃねぇよ」


 全くうるさいですねぇ……。

 私はもう一度聞きます。


「いいですか?」


 二人は首を横に振って否定しますが、私は聞こえない、見えないふりをします。


「いいですか?」

「いや、聞こえているだろう!!」

「「はい」以外は受け付けません。いいですか?」


 私が笑顔で「いいですか?」と繰り返していると、二人は観念したのか「はい」と肩を落として返事をしてくれました。

 でも、安心してください。絶対に強くして見せますから。


 私は、セルカにいるギルガさん達に説明するために部屋を出ます。

 部屋の前にはリディアさんが呼んだのでしょうか、ギルガさんとドゥラークさんとトキエさんが立っていました。


「皆さん、お揃いですね」

「お、おい、レティシア。これはどういう事だ? どうしてネリー姫が家の空き部屋にいるんだ?」


 私はギルガさんに露出狂と戦った後の事を説明します。

 トキエさんだけは理解が追い付いていないみたいで、ものすごく驚いていました。


「……なるほどな。今のファビエ城の状況やタロウ達の事を考えれば、ネリー姫はセルカに避難していた方が良いかもしれないな」

「はい。私もそう思います。だからこそ、この魔法を作ったのですが」

「本当に【創造】の力は凄いな。どちらにしても、オレ達も部屋に入っていいか? 話は必要だろう?」

「そうですね。ギルガさん達にも関係がありますから」

「そうなのか? じゃあ、入るぞ」

「はい」


 私はもう一度、ギルガさんに強化計画を説明します。

 

「強化? お前が俺達を鍛えるのか?」


 ギルガさんが驚いています。

 今後強化されてくるタロウ達と戦う事を考えれば、今のままでは危険です。だからこそ、強くなって貰う必要があります。


「その予定です。とはいえ、鍛える前の準備が必要です。私には【創造】の力がありますから、皆さんにドゥラークさんの様に【身体超強化】のような力と武器を作りたいと思います。本当はアレスさん達もここに呼びたいのですが、今はいませんし……リディアさんには魔物化してもらおうと」


 リディアさんには十倍くらいの大きさになってもらいまして、口から火を吐いてもらって……。


「れ、レティシアちゃん? じょ、冗談だよね」


 リディアさんは涙目です。

 面白そうだったんですが、エレンに怒られそうですから止めておいてあげましょう。


「冗談ですよ。まずは一人ずつ武器を用意したいのですが、今使っている武器を出してくれませんか?」

「何を言っている?」


 レッグさんもギルガさんも意味が分からないと首を傾げています。

 まぁ、実際見てみないと何とも言えないでしょうね。

 私は【ヒカリ】と【ヤミ】を呼びます。すると窓から二本の聖魔剣が飛び込んできました。


「な、なんだ!? 剣が飛び込んできたぞ」


 私は二本の剣を手元に呼びます。


「私の聖剣【ヒカリ】と魔剣【ヤミ】です。露出狂との戦闘で作り出しました。貴方達に信じるモノがあれば私の力で作る事は可能です」

「信じるモノ?」

「はい。私が信じたモノ……。【ヒカリ】がエレンで【ヤミ】が私です。皆さんにも信じるモノがありますか?」


 そう聞いたところ、ドゥラークさんが前に出ます。


「それなら、まず俺の斧を強化できるか? 信じるモノもある」


 ドゥラークさんが斧を取り出します。

 確かにドゥラークさんには【身体超強化】も作りましたから、後は武器だけです。

 まぁ、【身体超強化】も少し調整しますけど。

 まず信じるモノを聞きましょう。


「信じるモノとは何ですか?」

「俺が信じているのはこの絵本の物語に出てくるドラゴンだ」


 ドゥラークさんの根底には、幼い頃に読んだ物語のドラゴンがあるそうです。

 私はドゥラークさんが大事に持っていた絵本を読みます。

 ……そうですか。

 この絵本のドラゴンは、命を懸けて仲間達を守ろうとしたのですね。恐れられていた力で仲間を守るといういい話です。このドラゴンの様に強くなりたいと思っていたそうです。

 ドゥラークさんらしいですね。


「できるか?」

「やってみましょう」


 私はドゥラークさんの斧を持ち、この絵本のドラゴンとドゥラークさんをイメージします。

 ドラゴンのイメージは大きく力強い。そして強靭な鱗と強靭な牙。炎も吐くし……。

 ドゥラークさんは自分を犠牲にするようなお人好しです。でも、頑張って強くあろうとしています。更に面倒見もいいです。この絵本のドラゴンと一緒ですね。

 ふむ……。

 大体のイメージができましたよ。


 ドラゴンの様に強く強固で、そして皆を守るドゥラークさんに相応しい武器。


「えい!!」


 私は魔力を注ぎ込みます。

 正直な話、私は【創造】の使い方をよく知らないんですよね。今は魔力を注ぎ込んでいるだけです。でも、今までこれで成功していますから、これでいいはずです。


 ドゥラークさんの斧は緑色に光り輝き、ドゥラークさんの前にドゥラークさんの身の丈よりも大きい斧が現れます。

 刃は緑色に輝き、持ち手などは龍鱗のような鱗がちりばめられています。


「こ、これは……?」


 ドゥラークさんは斧を持ちます。

 身の丈よりも大きい斧です。

 普通は持てないと思うのですが、ドゥラークさんは片手で持ち上げます。


「ドゥラーク。重くないのか?」

「あぁ。俺の理想通り(・・・・)の重さだ。今までの斧よりも持ちやすいし、負担も無い。これは凄いな」


 思っていたよりもいい武器ができたようです。

 でも、今のままでは完成ではありません。


「ドゥラークさん、その斧に名前を付けてください。それで貴方専用の斧となります」

「名前か……、そうだな……。この斧の名は【龍斧ティアマト】だ! あの絵本のドラゴンの名だ!!」


 はい。良い名前です。

 これで【龍斧ティアマト】はドゥラークさん専用の武器となりました。

誤字報告に感想いつもありがとうございます。

さて、次の話は全員の武器の創造です。さて、頑張って名前考えるかな……。

そういえば、冒険者になるというタイトルなのに冒険者してませんね。一応、長いタロウ編が終われば冒険者編をだらだらと書くつもりです。暫くはタロウ編をお楽しみください。


感想などあればぜひお願いします。

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