7話 疑似:身体超強化
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ラウレンさんが言うには、勇者タロウはファビエ王国の第一王女のネリー様を手に入れる為に帰って来たそうです。
しかし、一度レッグという人に負けているのによく戻ってきましたねぇ……。
「恐らくですが、レッグ殿を殺す算段が付いたのだと思います。タロウの加護もいくつか増えていますので」
「そうですか……。加護を知る事はできますか?」
ラウレンさんは一枚の紙を見せてくれます。
そこにはタロウが得た加護が書かれていました。
【身体超強化】【光魔法】【誘惑】【不老不死】【絶対回避】の五つは知っていましたが、それ以外に【絶対命中】【古魔法】【魔力超強化】の三つが増えていました。
しかし、私には気になる事がありました。
「これはどういった方法で知る事ができるんですか?」
「え? 教会関係者だけが使用する魔宝板に加護を得れば浮かび上がるのです」
「そうですか……」
まぁ、考え過ぎですかね。
私が思うに、あと二つあるような気がするんですが……。まぁ、確信はありませんし、頭の片隅に置いておきましょう。
しかし、お城に行くのにエレンを連れて行くのは少し不安です。
別に守り切るのは簡単なのですが、タロウと戦う事になってお城が崩れてエレンが巻き込まれたら大変じゃないですか。それを心配しているんです。
もう一つの心配は、私がお城に行っている時にタロウがこちらに来た場合ですよね。
ギルガさんは安心できるのですが……エレンを守る為には、もう一人強い人が必要ですねぇ……。
ふむ。
私はギルガさんに住民の様子を見に行くと言って、住民が集まっている聖堂と呼ばれる場所に戻ります。
聖堂ではドゥラークさんとリディアさんが住民と話していました。
いえ、どちらかというとドゥラークさんの見た目で怯えられているというのが正しいでしょうか?
私はドゥラークさんを呼びます。
「話は終わったのか?」
「いえ、まだです。ところで、私の魔法の実験体になりませんか?」
「はぁ? いきなりなに言ってんだ?」
私はファビエ城に行くにあたって心配しているところを説明します。
するとドゥラークさんは「何故ギルガの旦那じゃなく俺なんだ?」と聞きました。
「貴方は仲間が危機に陥った時、真っ先に死にに行くタイプの人間です。だからこそ、私の魔法実験に相応しい。ギルガさんが貴方も家族と言っていましたからね。死なれると困るのですよ」
「……」
「それに、死なないのであれば、そっちの方がいいでしょう?」
私がそう言うと、ドゥラークさんは頭をガシガシ掻いていました。
図星だったのでしょう。
「それで? どんな魔法なんだ?」
「【身体超強化】です」
「なにっ!!? それは勇者の加護じゃないのか!?」
「私が加護を再現しているのは知っているでしょう?」
「あ、あぁ。知ってはいるが、魔法の常識として身体強化魔法等は他人に使う事はできないんじゃないのか?」
「できません。だから、貴方の体の中に魔法を作り、自分で発動してもらいます」
「そ、そんな事が可能なのか?」
「分かりません。そうなるだろうと推測はしていますが、他人に使った事が無いのでどういった影響が出るか分かりません。ギルガさんは高齢なので体の負担が大きいですし、リディアさんは多分無理です」
ドゥラークさんは少し考えています。
しかし、すぐに私を見ます。
「分かった。やってくれ」
私はドゥラークさんの胸辺りに手を当てます。
身体機能の超強化をイメージして……尚且つ任意で発動するように……さらに強化倍率を段階に分けて……耐物理攻撃と耐魔法攻撃も追加で……。
あ、一番大事な事を忘れていました。
肉体の崩壊を押さえるために自己再生能力と痛覚麻痺をセットで……。
最後に精神が壊れるといけないので精神強化と精神耐性もつけて……。
完成です。
しかし、これはなかなか難しいですねぇ……。
ドゥラークさんの身体が持つでしょうか?
まぁ、頑張ってもらいましょう。
しかし、危険なので一回きりの魔法にしましょうか?
いえいえ、モノにできるのならば是非モノにしていただきたいですね。
私はドゥラークさんに魔力を注ぎます。
「かなり魔力を使いますねぇ……。流石は勇者の加護と言ったところでしょうか」
「お、おい。無理すんなよ」
「大丈夫ですよ~。えい!!」
私が魔力を込めると、ドゥラークさんの体が光り、魔法が作られました。
「お、おい。成功したのか? いや、それよりお前の髪の毛が!?」
「はい?」
自分の髪の毛を見てみると、黒が灰色になっています。
ありゃま……白髪とまではいきませんけど、ちょっと色が変わってしまいました。
魔力が空になった結果ですかね。
なるほど……魔力が無くなると髪の色素が薄くなるんですか。初めて知りました。
「まぁ、今も少しずつ魔力は回復していますし、数時間もすれば魔力は回復するでしょう。気にする必要はありません」
「い、いや、お前がそれでいいんならそれでいいんだがよ……」
そんな事よりも魔法が上手くできているかどうかです。
「さぁ、試しに使ってみてください」
「どう使うんだ?」
「魔力を全身に巡らせる感じです。段階は四つありますから一番下の段階を使ってください」
「いや、意味が分からねぇ」
「そうですねぇ。まぁ、自動調整するように作っていますから全開まで魔力を放出したらいいんじゃないですかねぇ?」
「えらく適当だなぁ……。まぁいいや」
ドゥラークさんは魔力を溜めて放出させます。
するとドゥラークさんの体が一瞬光り魔力が全身をめぐります。
ふむ。限界を超えてないみたいですから、今はこれで精一杯ですか。
「なるほど。この全身に魔力が巡っている状態が【身体超強化】か……確かにこの力があれば、魔王にでも勝てそうだな」
「魔王を知っているのですか?」
「いや、言ってみただけだ」
「そうですか」
思わせぶりはムカつきますねぇ。
「コレの解除方法は?」
「魔力を静めればいいんですよ」
「分かった……」
ドゥラークさんの魔力が小さくなり効果が切れます。
さて、これからですよぉ……。
「ふむ……」
「あれ? 何も起きないんですか?」
「何がだ?」
「いえ、全身筋肉痛とかそういうのです」
「いや、痛くはないな。ただ、少し痺れが出ている。これは多用はできねぇかもしれねぇなぁ……」
なるほど……。
多少の痺れという事は段階により体に影響が出るかもしれませんね。
今のドゥラークさんは一段階目までしか発動できませんから、問題はないでしょう。
「ドゥラークさん。今のドゥラークさんでは一段階目が限界みたいです。無理に二段階目を発動させないでくださいね」
「ん? あぁ……肝に銘じておく」
「では、私はギルガさんとエレンに報告して城へと向かいます」
「待て。魔力が空なんじゃないのか? せめて回復するまで……」
「先程も言いましたが、この王都にタロウが帰ってきているそうです。できるだけ早くいかないと話を聞きたいレッグさんが死んでしまうかもしれません」
「なに? もうタロウは城へ入っているのか?」
「それは分かりません。だから早めに行くのです」
「そうか……なら止める事はできねぇな。危険だと思ったら帰って来い。無責任な発言だが、最悪うちのパーティだけ生き残ればいいんだ」
「分かっています。行ってきますね」
「あぁ、気を付けろよ」
私は一度エレンがいる教会奥に戻ります。
私が姿を現すと全員が驚きます。
「レティ!? その髪の毛の色」
「ちょっと灰色っぽくなっていますねぇ。魔力の使い過ぎです」
「大丈夫なの?」
「大丈夫です。今も少しずつ魔力は回復してるっぽいですから。それよりも……」
私は一人でお城へ行く事を提案します。
エレンは反対してきました。
ギルガさんも渋い顔で理由を聞いてきます。
「レティシア、何故一人で行くんだ?」
「私がそれなりに戦うと周りに被害が出るかもしれません。城の事なんてどうでも良いのですが、それに巻き込まれる可能性があります」
「そうか……お前の髪の毛……魔力はどうなんだ?」
「そうですね。今はろくな魔法は使えません。まぁ、元々魔法はトドメ以外に使わないから問題はないでしょう」
「しかし……何に魔力を使った?」
「ドゥラークさんを強化しました。ドゥラークさんに【身体超強化】を覚えて貰いました。いえ、神の加護では無いので【疑似:身体超強化】とでも言いましょうか」
私が勇者の加護を作り出した事にラウレンさん達は驚いていましたが、今は説明している暇はありません。
……いえ、さっさと城に乗り込みたいだけです。
「という訳で行ってきます」
「レティ!?」
「エレン?」
「……行ってらっしゃい」
困りました。
心配させてますねぇ……。
「レティシア、危険だと思ったら逃げて来いよ。前にも言ったと思うが、お前はもう俺達の家族だ。生きて帰って来いよ」
「大丈夫ですよ。エレンがいるのですから死にません」
なぜか、私が二度と帰ってこないみたいになっていますねぇ。
まぁいいです。
私は、教会を出てお城に向かい走ります。
暫くお城に向かって走っていると追走してくる何かがいます。
かなりの速さで走っているのですが、徐々に差を詰められていますねぇ……。
狙いは……私みたいですね。
私は町の街道の真ん中で止まります。
すると、一人の女性が追い付いてきました。
「貴女は?」
「ものすごいスピードで走る何かがいたから追いかけたのですけど、まさかガキとは思いませんでしたわ」
「私も何かが追いかけてくると思っていたら、まさかの恥も外聞もない変態だとは思いもよりませんでしたよ」
「誰が変態ですか!?」
いやいや変態でしょう。
ピンク色の髪の毛で露出度の高い鎧のようなモノを着ていますが、胸と股間部分しか隠せていませんけど鎧の意味はあるんですかね?
その姿を見る限り、変態以外の何者でもありません。
「まぁいいですわ。貴女は面白そうですから、タロウ様の所に連れて行くとしますわ」
「タロウの? 貴女はタロウの仲間なのですか?」
「そうですわ。奴隷として飼ってあげましょう」
「いちいちムカつきますねぇ……ところで貴女の名は?」
「私は剣姫ソレーヌ!! タロウ様の第一夫人ですわ!!」
そう言って、露出狂は剣を抜きました。
かなり良い剣みたいですね。魔力を感じます。
「まぁ、いいです。貴女を殺せば勇者タロウも私に気付くでしょうからね」
「ふふっ、私に勝てるとでも?」
「はい。殺せますよ」
私はナイフを両手に持ちます。
「露出狂さん」
「ソレーヌだと言っているでしょう!!」
「名前なんてどうでも良いです。さぁ、殺し合いましょう」
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