最終話 冒険者レティシア
久しぶりに、皆さんに会えて有意義な時間を過ごせました。
私は満たされた気持ちで神界の家へと転移してきました。
おや?
どうやら二人とも帰ってきているようです。
「ただいま戻りました」
「おかえりなさい。レティシア様」「おかえりレティ」
二人は私を抱きしめてくれます。
普段は三人まとまった仕事が多いのですが、たまに別の仕事になると、帰ってきたら抱きしめて迎えてくれます。
これが私達の挨拶みたいなものです。
家でゆっくりとしようと思ったのですが、余計な異物が部屋に居ました。
「ねぇ、レティシアちゃん。神様になってくれないかなぁ……」
「何度も言っていますが、嫌です。そもそも、どうしてサクラさんがここに居るんですか? 邪魔です。帰ってください」
「レティシアちゃんは酷いなぁ……」
最近のサクラさんは、本当にしつこいです。ご飯の時も寝るときも勧誘してきます。というよりも、この人は神族の中でも一番忙しいと聞いていましたが、思っているよりも暇なのでしょうか?
「サクラさん。一応聞きますが、どうすれば諦めてくれますか?」
「うーん。レティシアちゃんが神族になってあの世界を管理してくれたらかな?」
まったく……。この人は本当に人の話を聞きません。
「あの世界を殺戮の世界にしましょうか? もしくは永遠の地獄二号にしますよ」
「いや、流石にそうしようとしたら、私が止めるよ。今でもレティシアちゃんにはまだ勝てるからね」
ムカつきます。
私もこの五年でかなり強くなりましたが、サクラさんにはまだ勝てません。
でも、私は知っています。
神界で最強なのはサクラさんではない事を……。
トキエさんにもサクラさんをどうにかして欲しいと言われていましたからね。そろそろ脅しましょうか……。
「知っていますよぉ……。サクラさん、あの人にも負けましたもんね」
「え!? ど、どうしてその事を!?」
サクラさんは腐っても神族の王です。神格も当然なのですが、神界でサクラ様が負けたという事実をあまり口外されたくないと、月の女神である師匠に聞きました。
それに、この情報は師匠に戦い方を教えてもらっている時に、「ようやく僕でもサクラ様に勝てるようになったよ」と嬉しそうに話していましたのを聞いて知りました。
ちなみに今の神界最強は、金色の武神魔王さんです。あの人にも戦い方を教えてもらっているのですが、今の私が本気を出しても手も足も出ません。ドゥラークさんも私と同じように手も足も出なかったのでしょうね。
「くっ……。あの子か!? あの子は、レティシアちゃんに甘くない? いや、あの子は自分より小さい子に甘かったよ……」
サクラさんがブツブツ言っているので、今のうちに私達は冒険者ギルドへと出かけます。
神界には夜という概念はないので、夜もギルドが開いているのです。
神界にギルド? と思うのですが、私達が神界に住むと決めた時に、サクラさんが無理やり作っていました。どうやら、ベルもサクラさんの頼みは断れなかったのでしょう……。
私がギルドに入ると、ジゼルが立っていました。
「あれ? ジゼル、今日は非番ですか?」
「あぁ、忌み子ちゃんじゃないか。私は、今から医師として異世界に行くところだよ。どうやら疫病が流行っているらしくてね」
ジゼルも今は神界に居る事が多いです。基本はフィーノの村にいるのですが、神界からの依頼が多いらしく、こうして医師として別世界に行く事も多いみたいです。
「忌み子ちゃん達も依頼かい?」
「いいえ」
私はサクラさんから逃げてきた事を説明します。
「あはは。あの方も随分とイメージが変わったからなぁ……。あ、そうだ……。忌み子ちゃんは今日オフだったんだろう?」
「はい」
なるほど。
ジゼルが聞きたい事が分かりましたよ。
「ジゼル、リッタちゃんに会いに行ってきましたよ」
「あ、あぁ……」
「ジゼル……。リッタちゃんはソレーヌの生まれ変わりですよ。元気に育っていました」
「そうか……。サクラ様も粋な事をしてくれたものだね……」
ジゼルは少し申し訳なさそうでしたが、嬉しそうでした。しかし、私の報告はそれだけじゃありません。
「それに、あの世界に行って分かりましたよ。アルジーも転生しています」
「なんだって!?」
これにはジゼルも驚きの様です。
「おそらくですが、ドゥラークさんとリディアさんの娘さんがアルジーみたいですね。実際に会ってはいませんが、間違いないでしょう」
あの三人の魔力を感じた時、ドゥラークさんとリディアさんの魔力も感じました。ほぼ間違いないでしょう。
「そうか……。それで、タロウは?」
「はい。ちゃんと転生していましたよ。もうすでに、リッタちゃんと仲が良いようでした」
「そうか。それを聞いて安心したよ」
ジゼルはリッタちゃんとダロの話を聞いてとても嬉しそうにしていました。
「今度は……守らないとな……」
そう呟くジゼルはとても優しい顔になっていました。
ジゼルと別れた後、私達は受付に依頼を受けに行きます。どうせ、今日も指名依頼がるのでしょう。
そう思って手続きをしに行くと、トキエさんが座っていました。
「はて? 飲みに行ったんじゃないんですか?」
「あぁ……。今日はオフじゃないからねぇ……。ところでサクラ様に言ってくれた?」
「あ、忘れていましたが、脅すネタはあるのでまた言っておきます」
「お願いね……。これが今回の指名依頼だよ」
私はサクラさんからの嫌がらせ依頼を受けます。今回も別世界で魔物の生態を調べてくる依頼みたいです。
本来は魔物オタクである私の師匠に行かせていたみたいなのですが、最近は私にこの仕事を振ってくるようになりました。
恐らく、無理やり受けさせる事が出来なくなったのでしょう。
「わかりました。では、行ってきます」
「いってらっしゃい」
さて、今日も冒険者として頑張るとしましょう……。
私達は、嫌々次元転移魔法陣へと乗りました……。
これで完結です。
今まで、ありがとうございました。
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