79話 エピローグ2
私が転移してきたのは、のどかな村の中心でした。ここは、ファビエの領土の中でも端にあり、エラールセの領土になった後も、あまりエラールセ王都とは交流がありませんでした。この村がアレスさんの故郷になります。
アレスさんの故郷には、アレスさんとマリテさん、それにこの村の小さな教会で牧師をしているラウレンさんが住んでいます。
アレスさん達と会うのは、アレスさん達の娘であるリッタちゃんが生まれたとき以来です。
リッタちゃんは女の子で、その子は驚く事にある人物と同じ魔力を持っていました。
サクラさんに捕まった後に、確認してみると、あの三人は良くも悪くもベアトリーチェに利用されていたようなモノだったので、特別に転生させたそうです。まぁ、記憶までは残してはいないそうですけど。
私はアレスさんの家を訪ねます。
「こんにちわ。アレスさんはいますか?」
「はーい。って、レティシアちゃん!? いらっしゃい、今日はエレンちゃんやカチュアちゃんと一緒じゃないのね」
出迎えてくれたのは、五年経ってますます美人さんになったマリテさんです。そして、このマリテさんの後ろに隠れているのが、アレスさんとマリテさんの娘のリッタちゃんです。
「こんにちわ」
「はい。こんにちわ」
私はリッタちゃんの頭を撫でます。リッタちゃんは四歳ですが、彼女の生まれ変わりだという事もあり、なおかつアレスさんとマリテさんのいい所だけを取って生まれたらしく、とてもかわいらしいです。
将来はきっと美人さんになりますね。
そんな事を思っていると、後ろから男の子の声が聞こえてきました。
「リッター。遊ぼうぜー!」
「うん。お母さん、遊んでくるね。お姉ちゃんもバイバイ!」
「いってらっしゃい」「はい、いってらっしゃい」
元気そうな男の子ですねぇ……。って、あれ?
「マリテさん、あの男の子は?」
「あぁ、近所の私の友達の子供で、ダロって子なの。リッタととても仲良くしているのよ」
ダロ……ですか。まぁ、間違いありませんね。
あまりにも名前が近すぎてどうかと思いますが、今度はくだらない運命に翻弄されないように守ってあげますよ。
私はしばらくマリテさんとお話をした後、帰る準備をします。
「さて、リッタちゃんとマリテさんの顔を見れたから帰るとします」
「え? アレスには会って帰らないの?」
「はい。マリテさんとリッタちゃんに会いに来たのであってアレスさん達はついででしたのでいいです」
「そう? アレスもたまにはレティシアちゃんに会いたいと思うわよ」
「マリテさんと会うのは四年ぶりですが、アレスさんとは冒険者の依頼で何度か会っています。会う度にリッタちゃんの話ばかり聞かされるのでうんざりです。では」
マリテさんは苦笑していました。
私は転移魔法を発動させます。
「では、また会いに来ますね」
「うん。楽しみにしているね」
「はい」
さて、次はエスペランサです。
エスペランサと言えば会いたい人がいるとすればシャンテさんとシーラさんです。クランヌさんともお話はしたいですねぇ……。あ、紫頭はどうでもいいです。
私がエスペランサ城に入ろうとすると、門番さんに止められてしまいます。しかし、すぐに兵士長さんが現れて、私を通してくれました。
「ありがとうございます」
「いやいや。嬢ちゃんの事はケンに聞いているからな」
この兵士長さんの名前はマイケルさんというそうで、紫頭とは友達だそうです。どうやら、紫頭から私の特徴を聞いていたようですね。
私はまずブレインの下へと向かいます。
そう言えば小耳に挟んだのですが、ブレインは結婚したそうです。相手が誰かまでは知らないのですが、どうやらどこかの貴族の娘さんだそうです。
せっかくですから、冷やかして遊びましょう。
私はブレインの部屋の扉を蹴り開けます。すると扉は木っ端微塵となってしまいました。すると、仕事をしていたと思われるブレインに頭を叩かれました。
「お前はもう少し、静かに部屋に入ってこれないのか?」
「ブレイン、お久しぶりです。しかし、お客さんに対して頭を叩くのはどうかと思いますよ」
「それなら、扉を蹴破るんじゃない」
まぁ、ブレインの言う事も一理あります。そんな事よりも、ブレインの奥さんはどんな人なのでしょう。私はキョロキョロと部屋の中を見ます。しかし、誰もいません。
「もう離縁したのですか?」
「何の話だ?」
「いえ、結婚したと聞いたのですが……」
「あぁ、確かに結婚したが、ヘクセは妊娠しているから家で安静しているぞ?」
はて?
今、ヘクセと言いましたか?
ヘクセさんと言えば、エラールセの貴族ではなかったですかね? 私のおもちゃだった女の子です。そう言えば、ブレインに憧れているような節がありましたねぇ……。
「憧れを抱いている女の子に手を出してしまったのですね」
「お前……、人聞きの悪い事を言うな。そもそも、ヘクセから求婚してるし、清いお付き合いをしてだな……。そもそも、私が相手の気持ちを考えない行動をすればマジックが黙ってはいないさ」
「そうなのですか?」
どうやら、マジックはブレインの事を息子の様に思っているらしく、筋の通していない事をすれば問答無用でボコボコにされるそうです。今でも、マジックは四天王筆頭なのですね。
私はブレインと話し終わった後、クランヌさんに会いに執務室へと向かいます。私がクランヌさんの執務室に入ると、なぜかエラールセの狂皇グローリアさんがいました。
「はて? どうして、グローリアさんがいるのですか?」
「ん? レティシアじゃないか。近いうちに、世界会議があるんでな。その打ち合わせだ」
グローリアさんとクランヌさんは、今では世界を代表する王様です。
「ところで、今日はどうしたんだ? レティシア嬢は冒険者をしていると聞いたが……」
「はい、そうですよ。今もリーン・レイとして活動しています」
私はクランヌさん達に近況を説明します。
リーン・レイに所属しているとはいえ、今の住まいは神界です。
ベアトリーチェを倒してから、しばらくはサクラさんから逃亡していたのですが、二年で捕まってしまいました。
予測通り、サクラさんの要求は、私達に神族を名乗ってもらう事だったのですが、拒否しました。
とはいえ、私を野放しにしておくと危険だと判断したそうで、神界を拠点にする事を約束させられました。
私達三人と、ペットの毛玉、ヨルムンガンド、ヨルムン、シシオー、アマツの五匹と一緒に神界へと引っ越ししました。
「それで、今回はどういった理由でやってきたんだ?」
「今日はお休みなので、皆さんとお話をしに来たのですよ」
私がそう言うと、クランヌさん達が緊張した顔になってしまいました。
……なぜでしょう?




