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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
2章 レティシア、ファビエ王都で暴れる。

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6話 大司教の気持ち

誤字報告、いつもありがとうございます。


 エレンを見て驚いていたのは、白い生地に金の刺繍が入った服を着た五十代くらいのおじさんでした。

 アレを脅せば、エレンの事を隠し通せますかね。

 しかし、殺してはいけない人かもしれませんし……。


 私はギルガさんに小石を投げます。

 顔に小石が当たる事で、ギルガさんは私の視線に気付き隣にやってきました。


「どうした?」

「アレは偉いのですか?」

「オレもこの町の教会の人間の顔までは分からん。だが、間違いなく高位の神官だろうな」

「その根拠は?」

「あの法衣を見てみろ。アレは特殊な糸で縫われた刺繍でな、教会の司祭以上の役職を持つ者だけが着る事を許された法衣だ。アレを着ているという事は、あの男がこの教会で一番偉い可能性がある」


 一番偉いですか。

 私は周りを見ます。

 ……ふむ。


「という事は、あの男を消せば教会を掌握できるという事ですね」

「そう急くな。今はまだアイツが敵か味方かもわからん。殺していい男かどうかも分からないんだ……今は押さえろ」

「分かりました」


 私は男を注意深く観察します。

 しかし、エレンに何かをした瞬間、殺します。

 その様子を見たギルガさんが、一言だけ私にこう言いました。


傷つけるな(・・・・・)。エレンに何かしようとしたら殴って止めろ」

「……分かりました」


 すると男はゆっくりとエレンに近付き、腕を掴みました。

 エレンは抵抗しますが、男は無理矢理奥に連れて行こうとします。

 

「レティ!?」


 させません。


 私は男の顔面を思いっきり殴り、男は教会の奥に置いてあったアブゾルの神像まで吹っ飛び体を打ち付けました。

 そこまで吹き飛ぶほど強く殴った覚えはないんですが……、まぁ、良いでしょう。

 私は男に話を聞きに行く事にします。


 男は神像にもたれかかっていたので、私は男の襟元を掴み持ち上げます。


「ぐぬぬ……」

「さて、話を聞きましょうか?」


 男は私を見て驚いています。

 まさか自分を殴ったのが、こんなに小さい女の子とは思っていなかったのでしょう。


「くっ……き、君は……」

「私はレティシアです。貴方が連れ去ろうとした子の親友です」

「な!? 君は聖女と知り合いなのか!?」

「聖女? 何を言っているのですか? エレンはただの少女です」

「し、しかし……あの魔法は……」


 やはり知っていますか……。

 ならば、ここで殺しておきましょう。

 私は男を殺そうと力を込めます。


「待て!!」


 この声は?

 私が振り返ると、ヘラクさんがいました。

 私はこの人が嫌いです。


「何か用ですか?」

「お嬢ちゃんの性格を考えればこうなっているかもしれんと思い来てみたが、間に合ったようだな。しかし、ギルガから聞いていたが、本当に躊躇いなく殺そうとするとはな」


 何ですか?

 随分な言われ様ですねぇ。


「エレンを攫おうとした人に慈悲など必要だと思いますか? 先ほども言いましたが敵は殺します」

「攫おうと? ラウレン、お前そんな事をしたのか!?」


 そうですか。

 コレはラウレンというのですか。


「ち、違う!! この娘が聖女だと知られたら不味い(・・・・・・・・)と思い隠れていて貰おうとしたんだ!!」


 隠れて?

 知られたら不味いとは、誰に知られると不味いのですかね。

 これは詳しく聞く必要があります。


「どういう事ですか?」


 しかしラウレンと呼ばれた人は何も答えません。

 いえ、周りに人がいるのを気にしているのでしょう。


「リディアさん、ドゥラークさん。ここは任せていいでしょうか?」

「あぁ。住民や教会の連中には俺から話をしておく」

「お願いします。あ、エレンが聖女という事は……」

「分かっている。俺だってエレンの身を心配している。上手い事やるから、ここは任せておけ」

「はい」


 私はエレンとギルガさん、ヘラクさんにラウレンさんの五人で奥の部屋に入りました。

 奥はそれなりに広い部屋で、アブゾルと思われる老人の絵が描かれているステンドグラスがあります。

 お爺さんの絵って……趣味が悪いですねぇ。

 

 私達はそれぞれ座って話を聞く事にします。

 私はエレンを守れるようにエレンの隣に座ろうとすると、エレンに膝の上に座らされました。

 はて、何故でしょう?

 隣でいいはずなのですが……。


「ちょうどいい。エレン、そいつを離すなよ」

「どういう意味ですか?」

「暴れられたら困るという事だ」


 失礼ですねぇ。

 話を聞かないと暴れようがありません。

 エレンもそんなにぎゅっと抱かなくても暴れませんよ。

 しかし、動けなくとも話を聞く事は可能です。


「何故、エレンを隠そうと?」

「彼女が聖女にしか使えない魔法を二つも使ったからです。〈サルヴェイション〉と〈ゴスペルヒール〉を使った。この二つを使っている姿を見れば、大司教ならば聖女に覚醒する前でも聖女と気付く事ができます」

「聖女に覚醒?」

「……そこまでは知らないようですね」

「はい。勇者に会えばクラスが聖女になるとは聞いていました」


 セルカの教会のレウスさんはそう言っていました。

 もしかして意図的に隠していたのですかね?


「貴女は勇者と出会えば聖女になると聞かされていたのですね。ですが、それは正確ではありません。この事は教会の中でも司祭以上のモノしか知らないのですが、勇者と出会う事により聖女になるのではなく、聖女の力が覚醒するのです。その結果、クラスが聖女に変わるのです」

 という事は、マリテさんはアレスさんに出会ったから覚醒したという事ですか?


「しかし、マリテさんは聖女の力を失っていましたよ。覚醒したのに力が消えてしまう事もあるのですか?」

「マリテを知っているのですか!?」

「はい。最近会いました」

「彼女は勇者アレスと恋仲になり、聖女に覚醒しました。しかし、あの悲劇が起こってしまった」


 悲劇……。

 タロウがマリテさんを襲ったアレでしょう。


「しかし、あの悲劇は貴方がたが引き起こした事では?」

「違います!!」


 どういう事でしょうか?

 ラウレンさんは物凄く動揺しています。

 その理由をへラクさんが教えてくれました。


「マリテはラウレンの娘だ」

「娘?」

「ラウレンは大司教だからな。マリテが聖女になったのをラウレンは誰よりも喜んだ。そして、幼馴染のアレスが勇者になり、近所に住んでいたサジェスとロブストの二人がマリテを守る為に旅に出たんだ。だが、タロウが召喚された」


 ラウレンさんはマリテさんの父親でアレスさんも勇者として有能だったのでしょう?

 それなのに、どうして勇者タロウを召喚したのでしょうか?

 必要ないと思うのですが……。


「タロウの召喚は教皇が指示したと聞いた。神聖国アブゾールの教皇にファビエ王が嘆願書を出したのだ。勇者アレスは勇者に非ずと嘘を書いてな。それを読んだ教皇はタロウの召喚の儀式をする事を許可したそうだ」


 ラウレンさん達はアレスさんが勇者に相応しいからと反対したそうなのですが、教皇には逆らえなかったそうです。

 そして、タロウが召喚され、聖女であるマリテさんを呼び出すように国王から要請があったそうです。

 教会は国に縛られないとはいえ、相手は国王、ラウレンさんは大司教とはいえファビエ国民だったので、逆らう事はできなかったそうです。

 しかし、どこにいるのか分からないと時間を稼ごうとしたそうなのですが、他の神官達が呼び戻したそうです。

 そして、タロウはマリテさんを襲いました。


「聖女の力が消えるという事は聞いた事がありません。しかし、タロウに襲われてから力が消えたのです」

「まさか、身体の問題か!?」

「いえ、マリテとアレスは聖女と勇者になる前から、そういう仲でした」

「という事は……何故力が無くなったんだ?」

「それは私にもわかりません」


 力を失った理由は分かりませんが、マリテさんの体は元に戻ったのでいいでしょう。


「お、おい。エレンが体を治してなかったか?」

「はい。どうしました?」

「い、いや……。お前は気にしなくていい」

「はぁ……」


 気にしなくていいのなら、気にしないでおきましょう。


「しかし、やはり国が元凶でしたね。それで、エレンを隠そうとした理由を教えてください」

「あ、あぁ。タロウは顔のいい女であれば加護である【誘惑】を使い強姦する。そして、用が無くなったら【誘惑】を解き、恐怖と絶望に泣き叫ぶ女性を無理やり襲う。という事を繰り返していたのです。聖女の魔法を扱う彼女を見た瞬間タロウの被害に遭うと思い、隠そうとしたんです」

「……? ここに隠したとしても、いつまでも隠れているわけにはいかないのでは?」

「タロウは今ファビエ王都にいるのです!!」


 勇者タロウがこの王都にいる……。

 私はつい口角が吊り上がってしまいます。


 そうですか……。

 この町にいるのですか……。

 


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