73話 成長力という名の絶望
誤字報告 いつもありがとうございます。
鬼紅魔法ですか……。
ジゼルが土壇場で覚醒して覚えた鬼の神気と爆縮魔法をかけ合わせた魔法ですか……。
鬼の神気は問題ありませんが、爆縮魔法は今は使えません。私に使えるでしょうか?
私はエレンのような【無限の魔力】は持っていません。ジゼルは、『【無限の魔力】がなければ、爆縮魔法を扱うのは、とても難しい』と言っていました。
ふ~む。どうにか簡単に使う方法はないでしょうか。
確かに、爆縮魔法というのは魔力をパズルの様に組み合わせなければいけないのですよね……。正直面倒くさいです。
どうしましょうか……。
あ! そうです。最適化しましょう!!
私は早速【爆縮魔法】を最適化します。
魔力をパズルの様に組み合わせる。これは面倒なので、全ての魔力を一気に使いましょう。後は……、圧縮ですね。
はい。できました。
これで、【無限の魔力】がなくとも爆縮魔法が使えますよ。そして、それと同時に鬼紅魔法を完全に使えるようになりました。
偽アブゾルと化したテリオスは、無表情で私に迫ってきます。そして、体の至る所から、汚いヒヒイロカネの骨の突起物を生えさせていました。
ここまでくると、もう人とは思えませんね。
そう言えば、テリオスが最初に持っていたヒヒイロカネの剣はどこに行ったのでしょう? まぁ、剣がなくとも、体中から剣みたいなモノも生えていますからね。
無い物の事は考えないようにして、今は鬼紅魔法の実験をしましょう。
私は色々な属性の鬼紅魔法をテリオスに撃ち込みます。
ふむ。
どうやら鬼紅魔法は爆縮のおかげで大幅な威力の強化は勿論の事、どんな耐性を持っていたとしても、完全に無視する事が出来るみたいです。
色々と使ってみた結果、鬼炎という炎魔法が一番気に入りました。
この魔法は、私がごみを焼却する時に使う魔法そっくりです。この魔法を使って、テリオスの片腕を焼いてみると、見事に焼却できました。
「……っ!?」
テリオスは自分の腕が焼き尽くされた事にショックを受けているのか、動きが止まります。すると、ベアトリーチェがテリオスを自分の下へと転移させます。
「なにをやっている、テリオス!!」
ベアトリーチェはテリオスの背中に手を当てます。そして何かの力を与えたのか、テリオスの体が一気に膨れ上がり、二回りほど大きくなります。
顔はベアトリーチェに似た男性だったのが、鼻が大きく耳が尖った……、あ、これはゴブリンです。もしかして、ベアトリーチェはテリオスをゴブリン化させたのですか?
しかし理解できません。ゴブリンといえば一番弱い魔物のはずです。それなのにどうしてそんな意味のない事をしたのでしょう……。
そんな事を考えていると、今度は紫頭とシーラさんがサタナスと戦っているところが浮かびました。
そして、倒したのはシーラさんみたいです。まったく、紫頭は何をやっているのでしょうか……。
しかし、シーラさんの変化はとても面白いです。
私にもできるでしょうか。いえ、雷を自分に流すだけですよね……。簡単です。
私はシーラさんを真似ます。第一段階までは特訓の時に見ていましたけど、サタナスを倒す直前の状態は何でしょう? 進化ですかね?
まぁ、良いです。早速やってみましょう。
私は通常の【身体超強化】を発動させると同時に、自身の体に雷の魔力を流し込みます。シーラさんの様に【身体超強化】に組み込まれているわけじゃないので、少しビリビリしますがこれでいいでしょう。
ビリビリのおかげで少しだけ髪の毛が立っていますが、色はちゃんと金色になり、体が放電しています。見た目は成功です。
さて、この状態の時は、素手で戦わなくてはいけない気がします。ファフニールは仕舞っておきましょう。
体が大きくなり醜くいゴブリンになったテリオスが、どたどたと私に向かい走ってきます。
いやぁ……、通常のテリオスよりも遅くなってどうするのですか……。
私はテリオスのお腹を思いっきり殴ります。すると、テリオスの巨体が宙に浮きました。
一発では面白くないので、何度もテリオスを殴ります。テリオスは手も足も出ないのか、一方的に殴られ続けています。せっかく膨れ上がった体も、スピードがなければ意味がありませんよ。……と思っていると、テリオスの体がまた大きくなっていきます。
今度はどんな変化をするのでしょうねぇ……。
別に変身中に攻撃する事は出来ますが、テリオスがどう変化するのかが楽しみでじっと見ていました。
醜かったゴブリン顔のテリオスの口がだんだんと突き出て来て、体中に黒い鱗が生えます。そして、元の体の三倍以上の大きさのトカゲになってしまいました。
「ギャオオオオオオオン!!」
煩いです。
テリオスだったトカゲは、私に向かって威嚇してきます。その時、また頭の中に誰かが戦っている風景が見えてきました。
コレはドゥラークさんです。
ドゥラークさんは大きな小さなトカゲの前で目を閉じています……。
まったく……。
「ドゥラークさん、死んだら……生き返らせてもう一度殺しますよ」
リディアさんを置いて死のうとは何を考えているのでしょう。ドゥラークさんには私の脅しが一番効きます。
その直後、ドゥラークさんが立ち上がり、グラヴィが弾け飛んでしまいました。
今のは……。
とても、面白いです!!
私も早速試したいです!!
私は【瞬き】を使います。これは私専用のスピード特化型の身体超強化です。これは重ね掛けが出来まして、私はこの【瞬き】を四回使います。これで、ドゥラークさんが使った時間停止能力を再現します。
しかし、ジゼルは時間停止は不可能だと言っていたのですが、まさか自分の動きを一万倍にする事で似たような事象が起こるとは考えもつきませんでしたよ。
あ、そうです。
ドゥラークさんを真似るのであれば、見た目にもこだわってみましょう。
私は急いでファフニールを粉々にして、体に振りかけます。すると、私にトカゲの羽と尻尾が生えました。おでこの両端にも角が生えましたよ。これはかっこいいです!
私は一万倍の速度の世界で、一万分の一の動きしか出来ないテリオスを何度も殴ります。
あれ? ドゥラークさんの時みたいに弾け飛びませんよ? うーむ。何がいけないのでしょうか……。
あ、いけません。私のかっこいい羽と尻尾が点滅をし始めました。
どうやら、私でも、この変身は時間制限があるみたいです。仕方ありません。時間が無くなるまで殴り続けましょう。
私は羽と尻尾が消えるまでの十分間、テリオスを殴り続けました。テリオスからすれば一秒も経っていません。
そして、時間の流れも元に戻った瞬間、テリオスは粉微塵に爆散してしまいました。
はて?




