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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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69話 魔竜王VS戦竜

誤字報告 いつもありがとうございます。

感想で最初の方に同じ文章が繰り返されていたので直しました。教えていただきありがとうございます。


 さてと……。格好よく登場したのはいいが、目の前にいるグラヴィは俺が今まで戦ってきた敵の中でも、最も強いだろう。

 もし、誰かが勝てるか? と聞いてくれば、間違いなく勝てると答える。

 まじまじとグラヴィを見たわけではないが、厄介なところは全身を覆う黒い龍鱗だけだ。いや、実際は身体能力の向上もあるだろう……。だが、負ける気はあまりしない。


 まぁ、俺達を鍛えてくれているのは、あのレティシアだからな……。アイツと比べれば、グラヴィなんて可愛いモノだ……。


 俺は【身体超強化】の第三段階を発動させる。第三段階はレティイロカネにより作られた小手を、龍鱗の様に体に纏い、疑似的な竜人化を再現したものだ。

 最初の頃の綺麗な薄い緑色の龍鱗も気に入っていたが、今の深緑の龍鱗も俺的にはかっこいいと思っている。リディアは、前の明るい色の方が好きだと言っていたがな。


 グラヴィは俺の竜神化を見て鼻で笑う。


「それが君の全力かい? ベアトリーチェ様は君にも気を付けるように言っていたけど、正直期待外れだね」

「そうかい? お前の方も、ベアトリーチェに強化されたと言っていたが、龍鱗以外には脅威に感じる事はないな。ベアトリーチェの強化も大した事がないな」


 俺としては挑発に挑発で返した軽口のつもりだったのだが、グラヴィにとってはそうではなかったらしい。その証拠に、グラヴィは怒りの表情で俺に迫ってくる。

 思っていた通り、たいした速さではないな。


 俺も疑似龍鱗を纏う事で知ったのだが、龍鱗は思っている以上に重いのだ。グラヴィは普段から戦い慣れていないのか、それとも巨体で戦う事を想定しているのか、今の状態では龍鱗の重さに気付いていないように見えた。演技という可能性も捨てきれはしないが、怒りに任せたこの動きが証拠だろう。

 まぁ、この怒りさえ演技ならもう少しは楽しめそうだが……。

 俺はグラヴィの爪による攻撃を腕で少し受け流す事で避け、頬に拳を撃ち込む。


「ぐっ!?」


 今のは牽制のつもりだったのだが、まともに入ったみたいだ。怒りは演技じゃなかったみたいだな……。


「クソっ!! どうして、竜人(お前)の攻撃が僕に効くんだ!?」

「何を言っている?」


 言っている意味は分からないが、俺は次々とグラヴィの顔だけを狙い殴り続ける。グラヴィは必死に避けようとしているが、その程度の動きで俺の連撃から逃げられるわけがないだろう。

 正直な話、今のグラヴィの方が魔力も身体能力も高くても、アルジーの方が強く感じた。

 俺がグラヴィを脅威に感じなかったのは、理不尽なレティシアに鍛えられただけではなく、武術を極めていたアルジーと戦っていたからかもしれないな……。


 俺に殴られながらも、グラヴィは爪で反撃しようとしているが当たる気配がない……。いや、当たったら師匠にもアルジーにも叱られちまうな。


「く、くそがぁあああああ!! なぜ、攻撃が当たらないんだぁああああ!!」


 グラヴィは自分の思い通りにいかない事に苛ついているみたいだ。

 そう言えば、さっきグラヴィが言っていた攻撃が効く効かないの話だが……、俺は傷ついたバハムートとヨルムンガンドを見て納得した。


「つまりは、ドラゴンによる攻撃のみを無効化する結界でも張っていたのか? まぁ、俺は竜人化しているとはいえ、攻撃は自分の技術によるモノだからなぁ……。期待に応えられずに済まんな」

「ふ、ふざけるなぁあああ!!」

「ふざけちゃいないぜ。それに……」


 俺の体から龍鱗が消える。そして、一気に魔力を解放させた。


「【身体超強化】第四段階」


 これが俺にできる最強の【身体超強化】だ。

 俺の放つ魔力により、グラヴィが萎縮しているのが分かる。しかし、俺も時間をかけるつもりはない。

 俺は一撃で仕留める為に魔力を自身の拳に上乗せする。そして、一気にグラヴィを殴りに迫った。

 グラヴィは、青褪めた顔で破れかぶれな攻撃を繰り出してくる。何の技術もない攻撃など、目を閉じていても当たるわけがない。

 俺の渾身の一撃がグラヴィの腹部を貫く。


「ぎゃあああああああ!!」


 グラヴィは穴の開いた腹部を抑えて、後退っていく。


「ふ、ふざけるなぁああああ!! ベアトリーチェ様に強化していただいたこの体は無敵だぁああああ!!」


 いきなり叫びだしたと思ったら、グラヴィの腹部の穴が塞がった。そして、目が真っ赤に染まり、血の涙が流れている。そして、口もドラゴンの様に鋭い牙が生えていき、まるで本物のドラゴンの様になっている。

 しかし、巨竜になる事は無く、体の大きさは俺と変わらない。


「ギガァアアアアアアア!!」


 理性が飛んだのか人の言葉を発する事もなく、ただ咆哮を上げている。

 そして……、今までよりも圧倒的に速く、俺に迫ってくる。

 チッ……。

 俺は先ほどまでと同じようにグラヴィの攻撃を受け流そうとするが、威力がありすぎて完全に受け流せなかった。


「これは一撃でも喰らうと、死んじまうな」


 さっきまでは死の恐怖というモノを全く感じなかったが、今は違う……。

 それに、俺の第四段階には時間制限がある。制限を迎える前に、グラヴィを倒しきれるか?

 いや、弱気じゃだめだな。倒すんだ!!


 俺はグラヴィの苛烈な攻撃を避けながら、徐々に攻撃を当てていく。しかし、決定打になるような攻撃を当てられない。いや、グラヴィの防御力が格段に上がっているんだ。


 どうする?


 いや、どうする事も出来ない。いまはただ、愚直に攻撃を続けるしかない。

 そう思ったその時、俺の体から魔力が抜けていった。


「しまった!?」


 俺の動揺をグラヴィは本能で嗅ぎ分けたのか的確に爪による攻撃を繰り出してくる。

 これは避けられない。

 ここまでか!?

 そう覚悟を決めた時、頭の中で声が聞こえた……。


『お前なら、俺様の力の全て(・・・・)を、人の身で使いこなせるだろう。今こそ戦竜の力(・・・・)を全て解き放て……』


 ……戦竜?

 確か毛玉の話にいた、七竜の一匹か?

 そんな力がなぜ俺の中に?


 そんな馬鹿な……と信じ切れなかった俺は走馬灯が見えたような気がした……。


 ……ドゥラークさん。


 リディア?

 なぜリディアの泣き顔が浮かんだんだ? まぁ、もう認めてもいいな……。俺にとって一番大切なのは……リディアだ。


 ドゥラークさん。死んでも生き返らせてまた殺しますよ。


 いや、ちょっと待て。

 今、認めたんだから、ここはリディアだけでいいだろうよ。なんで、レティシア(お前)に悪態を吐かれなきゃいかんのだ。


 ははは……。

 いや、分かっている。

 もし、俺に力があるのならば……。

 使えるのならば……。


 俺は目を見開き、魔力を一気に解放させる。


「【身体超強化】最終段階!!」


 俺が残った魔力を爆発させると、グラヴィの攻撃が一気に遅くなった。

 こ、これは?

 まさか、思考加速という奴か?


『いや、違うな。お前は今、時間停止の世界にいる』

「時間停止だと? それは理論上不可能だとジゼルが言っていたぞ!!」


 人間であれ神であれ一個体の矮小な存在がこの世の全てを止められるわけがないとジゼルは言っていた。

 確かに、仮に俺が時間を停止してもレティシアに効くと思えない。そういう事なのだろうと俺は納得した。


『そうだな。人の身……、いや、例え神であろうとも、時間を止める事は不可能だ。不可能ならばどうするかだが、それも簡単な話だ。お前が誰よりも速く動けばいい』

「あ?」

『お前だけが常人の一万倍速く動けば、時間は止まっているように見えるだろう。今がまさにその状態だ』


 そんな馬鹿な……。

 だが、現にグラヴィの攻撃は動いていないように見える。いや、じっくりと見てみると、わずかに動いていた。俺はグラヴィの拳を殴って弾いてみる。その瞬間、グラヴィの腕がゆっくりと弾けてなくなった。


「は?」

『常人の一万倍の速度で殴られれば、消し飛ぶのも当たり前だろう。そのまま、哀れな竜もどきを殺してやれ』


 ま、まぁ……理屈は分かるが……。

 ともかく、そんなに時間をかけられるわけではないみたいだからな……。

 俺は一思いにグラヴィの頭を全力で殴る。さっき腕を消し飛ばした時はたいして力を入れなかったので、ゆっくりと消し飛んだが、今度は俺の目の前で一瞬で消し飛んだ。


 そして、時間の流れが通常に戻り、グラヴィが何も言わずに塵へと変わっていく。


『な、何が起きたんだ?』


 毛玉もヨルムンガンドも何が起きたのか理解できなかったのだろう。

 俺はその場で倒れる。背中にシシオーが乗ってきた。


「体が動かねぇ……」


 最終段階ってのは、常人の一万倍の動きってのは、体に負担がかかりすぎるみたいだな……。笑えねぇ……。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 最初のドゥラークの台詞の後辺りから話がしばらく前に戻ってますよ
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