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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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68話 猫神シシオー

誤字報告、いつもありがとうございます。


 子猫であるシシオーが何十倍もの大きさのグラヴィの足を持ち上げたと思ったら、突然体が光り始めた。

 そして、光が止むとそこにはグラヴィとほぼ同じ大きさの巨大な猫が現れた。


「にゃああああああ!!」


 い、一体、何がどうなっているんだ!?

 グラヴィと同じ大きさなのに、見た目は子猫のまま、鳴き声も愛らしいままだ。


「くっ……、何が起きた!?」


 あまりにも突然な事でグラヴィにも何が起きたのかが分からないみたいだ。


「な、なんだ!? この巨大な猫は!?」


 グラヴィは目の前のシシオーを見て驚愕している。そんなグラヴィの隙をついたかまでは分からないが、シシオーは猫じゃらしに飛びかかる勢いでグラヴィに襲い掛かった。


「ぎゃああああああ!! な、なぜ僕にダメージを与える事が出来る!? 僕は漆黒の龍鱗に守られているはずなのに!?」


 グラヴィが困惑するのは当然だ。

 確かに、シシオーはドラゴンじゃない。だからグラヴィの結界は通用しないだろう。だが、こいつを龍鱗が守っているのが龍鱗というのも事実だ。

 考えられるのは、シシオーのひっかき攻撃の鋭さが高いのか、もしくはシシオーの爪が龍鱗以上の硬度を持っているのかだ……。

 私がシシオーの爪をじっくり見てみると、黒く光った爪を持っていた。

 あれは……、レティイロカネか?


「しゃああああ!!」


 シシオーがグラヴィを威嚇している。サイズはともかく、見た目は完全な猫であり行動も猫そのものだ。しかし、レティイロカネの爪を持っている点で、猫とは違う。


「く、くそっ!! 僕の龍鱗に傷をつけるなんて!!」


 グラヴィはじゃれる様にズタズタに切りつけられて、自慢の漆黒の龍鱗はボロボロになっていた。


「殺してやる!! この糞猫がぁあああ!!」


 グラヴィは逆上して空に浮かび上がる。

 シシオーは空に向かって威嚇している。シシオーは猫だ。空を飛ぶ事は出来ない。だが……。


「にゃああああああ!!」


 シシオーは一気に飛び跳ね、グラヴィを叩き落とす。


「ごぶっ!?」


 地面に落下したグラヴィをシシオーが猫じゃらしで遊ぶように弄んでいた。


 しかし、攻撃無効化の優位性を失うと、ここまで一方的になるものなのか?

 グラヴィは、尻尾を使いシシオーを攻撃するが、シシオーは尻尾にじゃれて、尻尾を引き千切った。


「にゃ! にゃ!」

「ぎゃあああああ!! き、貴様、僕の尻尾を!! 許さんぞ!!」


 そう言って、グラヴィは一歩下がりブレス攻撃をしようっとしているのか、口を開く。


 ……!!?


『シシオー!! グラヴィは【破壊】の力を使おうとしているぞ!!』

「にゃ?」


 だ、ダメだ……。

 シシオーはあくまで遊んでいるだけで、グラヴィの【破壊】の力もブレス攻撃にも何も危機感を持っていない。


「滅べぇえええええええ!!」


 グラヴィは真っ黒な光線のようなブレスを吐いた。あんなモノを喰らってしまえばシシオーが消滅させられてしまう。私はそう思った。


『シシオー!!』

「にゃああああ!!」


 私はグラヴィのブレスがシシオーに直撃するのを見ていられず目を逸らした……。

 く、くそ……。

 私達がグラヴィを倒していれば……。


 そう後悔していたのだが、ヨルムンガンドが震える声で「そ、そんな……馬鹿な」と呟いた。

 私はシシオーを見た。


 結果から言うと、シシオーは無傷だった。一部始終を見ていたヨルムンガンドに詳しい話を聞くと、シシオーはグラヴィのブレスを叩き返したそうだ。


 ちょっと何を言っているのか分からない。

 そもそも、ブレス攻撃を叩き返すってどういう事だ!?


 ブレス攻撃を叩き返されたグラヴィを見てみると、【破壊】の力を含んだブレスは強力だったらしく、龍鱗はほぼ砕かれ、ボロボロになっていた。


「クソ……。まさか、こんな目に遭うなんて……」


 自身のブレスの威力でそうなったのか、【破壊】の力でそうなったのかは不明だが、グラヴィは人間の姿に戻った。

 グラヴィの変身が解けた以上、もうグラヴィは脅威じゃない。そんな風に思っていた……。


「全く……。セルカに残っているのは雑魚ばかりだと思っていたから、本気を出す必要はないと思っていたのに……」


 どういう事だ?

 今のグラヴィの言葉は、まだ本気じゃないみたいな言い方だったぞ?


「あーあ。まぁ、いいか。僕だけ手を抜いていたんじゃ、テリオスの馬鹿はいいとして、ベアトリーチェ様に叱られるかもしれないからね……」


 グラヴィは、ボロボロになった上着を破り捨てる。いや、巨竜になっていたのに、なぜ服を着ているんだ……というツッコみは野暮なのだが、全裸になるわけでもなくズボンだけは履いていた。

 ……。

 冗談でも言っていないと、今の状況を受け入れる事は出来ない……。

 私達の視線の先には、漆黒の龍鱗の様な装甲を体の至る所に装着したグラヴィが口角を吊り上げて笑っていた。


「さぁ、刮目せよ。これが魔王竜である僕の真の姿だ……」


 装着されていた漆黒の龍鱗は、徐々にグラヴィの全身を覆い、まるでドゥラークの第三段階と同じような姿になっていた。

 しかし、ドゥラークとは決定的に違うところもあった。それが竜の羽と尻尾だ。それに大きく鋭い犬歯に、血の様に染まった目。

 ……狂気に満ちていると思ってしまった。


「さて、本当の恐怖を見せてやろう……」



 魔王竜となったグラヴィは圧倒的に強かった。

 シシオーも負けてはいないが、巨体になってしまったシシオーに人型のグラヴィに速さで負けていた。

 シシオーは、必死に防御している。大きく傷ついてはいないが、このままではもたない……。


 私は最後の力を振り絞って再び竜化した。だが、グラヴィは私を一瞥する事もなく私の胸を掌から放出させた黒い光線で撃ち抜いた。


「がっ……」

「いまさら、弱い君なんて相手にならないんだよ。後で殺してあげるから、大人しくしているんだ」


 そう言ってグラヴィは、シシオーに近づく。


「シャアアアア!!」


 シシオーは威嚇しているが、徐々に体が縮んでいく。そして……元の子猫のサイズに戻ってしまった。


 クソっ……、ここまでか。

 そう思った時、グラヴィの背後に人影が現れた。

 その人物はグラヴィの肩に気安く手を置き、髪を掴み自分の方に振り向かせる。


「あ?」

「よぅ。俺の仲間に何してくれてんだ?」


 そう言って、グラヴィを殴り地面に叩きつけた。


 グラヴィを殴った男は、拳をさすっている。龍鱗を殴ったんだ普通であれば拳が砕ける。だが、この男の拳は砕けない。


「貴様、どうしてここに居る?」


 グラヴィはまったく効いていないみたいで、すぐに立ち上がり男を睨む。

 男は拳をボキボキと鳴らしながら、グラヴィに笑いかける。


「トカゲ退治に来たんだよ。グラヴィ」

「くくく……。レティシアの腰ぎんちゃくの中で一番強いのはお前だったな……。ドゥラーク!! 貴様を殺せば、リーン・レイ壊滅も容易いだろう!!」


 ドゥラークは、大笑いをして「お前如きにゃ負けねぇよ。もし負けちまったら、レティシアに殺されちまう」と大声をあげて笑った。

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