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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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64話 聖なる魔王


 私はレティシアに強化してもらった魔剣を振るう。ゴッドゴブリンもミスリルで作られた大きな斧を振り回しているが、レティイロカネという常識を逸脱した鉱石で強化された魔剣に勝てるわけがない。


 しかし、ケンの報告書では、ゴッドゴブリンは脅威だと書かれていたが、あの魔法(・・・・)を使えば割と簡単に倒せそうだ。逆に、剣の達人であるマジックでは、ゴッドゴブリンの耐久性に苦戦するかもしれないな……。

 私はゴブリンの体に反回復魔法をかける。通常の回復魔法は名前の通り、傷をいやすのだが、この魔法は傷を悪化させる。

 レティシアがベアトリーチェに使う予定だと開発していたのを教わった。私としては、クランヌ様に逆らう者に使う予定だったんだがな……。こんな形で使う事になるとは……。

 反回復魔法を受けたゴッドゴブリンは、私が魔法をかけた直後に傷つけた小さな傷が悪化していき、そのまま絶命した。どれほど小さな傷でも悪化し続けたらいつかは死ぬ……。拷問に使うときは適度に癒してやるといいと教わったな……。

 本当に残酷な事を平気で考える恐ろしい奴だよ……。

 しかし……。


「魔物は新人類に進化させていなかったんだな。いや、もしかしたらゴッドゴブリンに自我を持たせる事しかできなかったのか?」


 私はゴッドゴブリンの心音が完全に止まったのを確認してから、クランヌ様の下へと戻った。



≪クランヌ視点≫


 私達は場所を変え戦い始めた。

 アンスタンとは、私が魔王に就任した時に道を違えた。

 だが、腑に落ちなかった。

 アンスタンは武闘派で、何でも力で解決するところはあったが、常に国民を第一に考え、野心を持つよう人物じゃなかった……。しかし、今のアンスタンは本気で私を倒そうとしている。


 アンスタンの攻撃は苛烈だ。一撃一撃が重く、そして速い。まるで、レティシア嬢と戦っているみたいだな……。いや、それは言いすぎだ……。あの娘はアンスタンとは比べ物にならないくらい強い。


 私は、マジックに教わった剣技でアンスタンを攻める。一方のアンスタンは、本能のまま私の攻撃を受け流し、拳を打ち込んでくる。

 しばらく攻防が続いた後、アンスタンの口角が吊り上がる。


「その動き、マジックと同じ剣技だな。だが、マジックよりもキレがある」

「褒めていただき光栄だな。だが、マジックもあれから腕を上げた。今でもマジックは私の師匠だ」

「……」


 ん? 

 今、一瞬だけアンスタンがニヤついた気がする。しかし、気のせいか今は怒りの表情だ。


 アンスタンは本能で攻撃してくる。それを受け流すのは至難の業だ。私はレティシア嬢に教わった【身体超強化】を使う。しかし、アンスタンに押されている状況は何一つ変わらなかった。

 私の【身体超強化】はケンやシーラの様に急激な効果は出ない。

 レティシア嬢が言うには、私の強さは完成されていて、下手に強化すると体が付いて行かないそうだ。だからこそ、私は自分の持つ能力である【美徳】と神族としての力を鍛えた。


「アンスタン。お前を倒すには、私も本来の自分として戦わなくてはいけないようだ……」

「本来の自分だと? 俺の知っている貴様は、幼い頃から甘ちゃんだ……。お前に魔族の本能は無い!!」


 そう言ってアンスタンは一気に踏み込んできた。アンスタンが魔族の本能を大事にしている事を知っている。だが、私には魔族の本能とやらは無い。

 ……なぜなら!!


 私は七つの美徳を使う。

 レティシア嬢に鍛えられてから、私はすべての美徳を使う事に成功した。それと同時に、私の本当の力を引き出す事にも成功した。


「美徳【知恵・勇気・節制・正義・信仰・愛・希望】!!」


 私が七つ全ての美徳を発動させると、私の背に純白の翼が現れる。そして、神気を発動させる。


 私の姿を見てアンスタンの表情がさらに怒りに染まる。魔族である事を誇りに思っているアンスタンが、この姿を見て怒らないはずはない。


「貴様ぁああああああ!! 魔族である誇りを失って、天使になるとは!!?」


 天使?

 確かに、この翼を持つモノは天使と呼ばれてもおかしくはない。だが、実際は私は天使ではない。

 あくまで神族と魔族の血を引くだけだ。


「アンスタン。あんたが言う魔族の本質というのは、強いかどうかだけじゃなかったのか?」


 私がそう言うと、アンスタンは納得したかのように笑いだす。


「確かにその通りだ!! クランヌ、貴様もエスペランサの魔王であるなら、俺を倒してみろ!!」


 アンスタンは魔力の全てを放出させ私に迫る。私も美徳の力を全て引き出しアンスタンを迎え撃つ。



≪ブレイン視点≫


 私は目の前の光景に釘付けになっていた。

 武闘派であるアンスタンの強さは当然知っている。しかし、神族としての力を使ったクランヌ様はもっと強かった。


 おそらくだが、私が今まで出会った中で一番強いのは、文句なしでレティシアだろう。アレはどう考えても、どんなに卑怯な真似をしても勝てると思えなかった。

 そして、レティシアの仲間のリーン・レイのメンバーも全員が強い。それも認める。

 当然なのだが、アンスタンもうやはり強い。

 だが、私はエスペランサ四天王だ……。

 私の中で一番強く尊敬できるのは、クランヌ様だ……。


 クランヌ様はアンスタンの喉元に剣を突き付けた。アンスタンも動けなくなっている。


「アンスタン……。私の勝ちみたいだな……」


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