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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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61話 大罪の真理


 俺は大罪【憤怒】の力を纏わせた剣を持ちハヤイに斬りかかる。いくらベアトリーチェから魔神の力を与えられたハヤイでも、同じ大罪の力で斬られれば無事では済まないだろう。

 ハヤイも大きなランスを持ち、俺に迫ってくる。

 

「あのクソガキに作られた大罪の力を見せてもらうぞ!!」


 以前戦ったハヤイと違って、スピード身のこなし、全てが別格になっていた。

 実際に、ハヤイは俺の剣を大きなランスで器用に逸らし、高速で二度突きしてきた。しかし、俺も負けじと、ハヤイのランスの軌道を剣で逸らす。すると、ハヤイはバランスを若干崩した。

 若干であってもバランスを崩すという隙を見逃す俺じゃない。俺はランスを蹴り、その反動を使ってハヤイを斬りに行く。

 さすがにこれは避けられないだろう。と思っていたのだが、ハヤイの顔は絶望に染まっているわけじゃなく、悪い顔でニヤケついている。

 ……まさか!?


「馬鹿め!!」


 ハヤイが膝を曲げると、そこから先端の尖ったような骨のようなモノがハヤイの膝の鎧を突き破って襲い掛かってきた。


「チッ!!」


 俺はその骨を咄嗟にキマリスの柄で叩き砕く。そして、そのまま斬りつけようとしたのだが、ハヤイの目が怪しく光る。その瞬間、得体の知れない恐怖感を感じたので、ハヤイを蹴り、大きく飛びのいた。


「くくく……。今のは良い勘だな」

「うるせぇよ」


 ハヤイは、口角を吊り上げ下卑た笑い方をしている。

 しかし、今の膝から出てきたモノは一体なんだ?


「ケン!! 手を貸すぞ!!」


 今の俺とハヤイの攻防を見て二人は危険と判断したのか、俺の両隣に立っていた。


「げひゃひゃ!!。一対一の戦いもできないなんて嘆かわしい。エスペランサの四天王は卑怯者の集まりかぁ?」


 わかりやすい挑発だが、こいつは何かを勘違いしているみたいだな。


「お前、何か勘違いしていないか? 俺達が今やっているのは戦争だぞ? 俺達は自国の領土を守ろうとしているだけ、お前は侵略者」

「侵略者? 酷い事を言うねぇ……。だが、俺も元々エスペランサの貴族だぜ? クランヌの馬鹿に不当に追い出されただけだが?」


 不当ね……。

 こいつがやってきた事を考えれば、正当な理由だと思うがな。それどころか、こいつの家族には恩情までかけられている。感謝する事はあっても怨む必要はないと思うがな。

 まぁ、このアホに何を言っても意味はないだろう……。

 

 しかし、ハヤイは下卑た顔を浮かべてマジック様を見ている。


「マジック、お前の相手はコイツだ」


 ハヤイが掌をマジックに向けると、掌から一匹のゴブリンが現れる。

 こ、こいつは……!?


「こいつは神獣種、ゴッドゴブリンだ。マジック、お前にコイツが倒せるかな? そいつを倒せたら俺と戦う権利をくれてやろう」


 こいつは、グラーズとレティシアが戦った時にハヤイを助けた圧倒的な存在感を持ったゴブリンだ。

 マジック様もこのゴブリンの異常さに気付いているようで、ゴブリンに視線を移していた。


「チッ……。ハヤイ!!」


 ハヤイに召喚されたゴッドゴブリンは、マジック様だけを狙うかのように、攻撃していく。徐々にマジック様が押されていくのを見て、俺はシーラにマジック様の加勢をするよう頼む。しかし……。


「パワー。お前もあの時ケンと一緒にいたからな。俺と戦ってもらおう。しかし、今のお前は美しい。ケンを殺した後に俺の女にしてやろう」

「何をほざくこのゲスが。お前の女になるくらいなら、ここでケンと共に戦って死ぬわ。ただし、私達は負けるつもりはないがな!!」


 そう言って、シーラも構える。


「くくく……。強がるなら強がっておけ」


 ハヤイは体から大罪独特の黒い魔力を放ちだす。そして、シーラに襲い掛かった。

 俺がハヤイに斬りかかろうとすると、ハヤイは手のひらから黒い霧を放出してくる。


 これは……、大罪の【怠惰】か!?


 いくら上澄みとはいえ、大罪の力は強力だ。

 同じ大罪を使う者としては俺の方が深層の力を使えるが、【怠惰】の霧を受けてしまえば俺でも無気力になってしまう。

 俺は、必死に霧を避けたのだが、その直後「ようやく隙を見つけたぞ!!」とシーラではなく、俺に向かってきた。

 こいつの狙いは最初から……。


 ハヤイのランス捌きは異常なほど速い。しかし、そんな攻撃を喰らう俺じゃない。

 俺は【憤怒】の力を使いハヤイのランスによる攻撃を捌く。だがハヤイは何度も何度もランスで衝いてくる。


「そろそろ、くたばれ!!」


 ハヤイは、再び膝から骨のようなモノを出し、攻撃してきた。


「もう再生しやがったか!! 鬱陶しい!!」


 俺も再び骨を砕き、剣でハヤイの首を斬り撥ねようとした。しかし、ハヤイはどこかから剣を取り出し、俺の剣を捌く。

 そう言えば、こいつはマジック様から剣を教わっていたんだ!? 最低限、身を守る剣技は使えると言う事か!!

 ハヤイはランスを捨てて、剣で俺を攻撃してくる。


 さすがはマジック様に剣を学んでいただけあって、ランスの時よりも攻撃が苛烈だ。だが、捌ききれないわけじゃない。


「ケン!」


 シーラも俺に加勢しようとしてくれたのだが、ハヤイの背中から多くの骨が飛び出し、シーラを襲う。


「こ、これは!?」

「くくく……。パワーが強くなったと言って肋骨二十四本もの攻撃を捌ききれるか!?」


 シーラは必死に骨の攻撃を受け流している。しかし、それ以上はハヤイに近づけないようだ。


 しかし、今ので戦い方が決まった。


「シーラ!! そのままその骨を捌き続けてくれるか!?」

「え……、あ、あぁ。分かった」


 シーラは、二十四本もの骨を捌き続けている。シーラ(アイツ)の武術の腕がないと捌ききれないだろう。

 しかし、そのおかげでハヤイの弱点を見つける事が出来た。


「ハヤイ。そろそろ決着を付けようじゃないか……。俺も本気(・・)でお前を殺す」


 俺は大罪の【真理】を発動させる。

 元々、七つの大罪の一つ【憤怒】は怒れば怒るほど身体能力が強化される能力だ。

 そして、大罪の深層を使えるからと言って、大きく能力が変わる事は無い。ただ、効力と効果範囲は爆発的に上がる。ただ、それだけだ。

 俺の【憤怒】もハヤイの持つ【憤怒】と変わりがないだろう。深層を使ったとしても、大罪全てが使えるハヤイに勝つのは難しいかもしれない。

 ただ……【真理】に関しては違う。

 七つの大罪【真理】は俺とレティシアしか使えない能力だ。

 この【真理】というのは、自分だけに能力の影響が出て、他者に影響を及ぼさなくなる。

 この話しだけを聞くと、弱くなっていると言われるだろう。実際にブレイン様に【真理】の話をしたら、そう言われた。

 確かに、七つの大罪のうちの【憤怒】を除く他の大罪は確かに弱体するかもしれない。

 だが【憤怒】は違う。【憤怒】だけは、爆発的な強化につながる。

 七つの大罪【憤怒】の【真理】は、他者の怒りの感情による力すらも自分の力になってしまう。

 つまりは戦場という場所で一番力を発揮できる能力になる。


 俺はハヤイに剣を突き付ける。


「ハヤイ、本気を出さないのであればそれでいい。何もできずにそのまま死ね!!」

「よかろう……。お前に見せてやろう……魔神の力を!!」


 ハヤイの体が黒い霧に飲まれていった……。

 ……それが俺の狙いだとも気付かずに……。


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