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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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60話 大罪魔王ハヤイ


 レティシアから鍛えられた【身体超強化】は予想以上に強化されていたらしく、一時間ほどで国境付近の戦場に到着した。


「ケン!? それに、シーラまで……」


 戦場を見渡せる崖の上にいたマジック様に声をかけると、俺達が来るとは思っていなかったのか、とても驚いていた。


「おいおい……。四天王が二人も……。そんなに俺は信用がないか?」


 マジック様は困ったように笑う。こんな顔をしているが、この人は良くこんな顔をして俺達をからかう。だから、この言葉も本心ではないのだろう……。


「はは。何を言っているんですか。マジック様は俺達四天王の筆頭でしょう? レティシアに鍛えられて俺よりも強くなったじゃないですか。それよりも、今の戦況はどうですか?」

「あぁ、見ての通りだ……」


 俺は眼下の戦況を見る。

 これはどういう事だ? 一見、マジック様の部隊が優勢なように見える。ただ、それは、はぐれ魔族共が全くの抵抗を見せる事もなく、こちらの兵に殺されていっているからだ。


「マジック様。はぐれ魔族共はどうして無抵抗にただ殺されているだけなんですか?」

「ケン。それは間違いだ……。アイツ等は無抵抗だが、殺されていない」

「え?」


 マジック様の言葉を聞いて俺は再びはぐれ魔族共に注視する。すると、斬られたはぐれ魔族は十数秒で何事もなかったかのように立ち上がる。


「ば、馬鹿な……。再生能力でもあるのか? いや、それ以前にどう考えても死んでいる状態なのに……生き返っているのか?」


 まさかと思うが、これがレティシアの言っていた物理攻撃耐性ってやつか?

 レティシアが前の地獄(特訓)で「物理攻撃に対する耐性が出来れば斬られても死なないのですかねぇ……、紫頭、貴方で実験してもいいですか?」とトチ狂った事を言っていたが、まさかベアトリーチェはそれを実現したのか!?


「物理耐性……」


 俺がそうボソッと呟くと、マジック様は首を横に振る。


「いや、物理耐性とかそう言うのではないと思う。ここから見ている限り、死霊系の魔物を相手にしているような感じなんだ……」


 マジック様がそう呟くので、俺は眼下のハヤイの軍勢を見る。そう言えば、指揮をしているハヤイはどこだ? 


「マジック様……、ハヤイはどこにいるんです?」

「あぁ、先ほどから姿が見えない……「俺が何だって?」……っ!?」


 俺達が振り返ると、そこには下卑た顔で笑うハヤイが立っていた。


「は、ハヤイ!?」

「あぁ、ハヤイさんだぜ」


 ハヤイは俺達を見て軽く溜息を吐く。


「ベアトリーチェ様からは四天王全員とクランヌを殺せと言われてきたが、ブレインとクランヌがいないじゃねぇか。まったく、お前ら四天王がいなくなりゃエスペランサくらいアイツ一人で手に入れられると思ったんだがなぁ……」


 ハヤイはわかりやすく俺達を挑発してくる。いや、これは挑発じゃなくて余裕なのか?

 それに、アイツって誰だ? ゴッドゴブリンか?


「それよりも、お前達がこんなところで高みの見物をしているが、マジック、お前の部下だが……いつまでもつかねぇ……。げひゃひゃひゃ……」


 いつまでもつ?

 やはり、あのはぐれ魔族共は特別な処理でもされているのか!?


「あぁ? 何を焦ってやがる? うちの軍勢は無抵抗だろう? 種を教えておいてやるよ。アイツ等は、ただ死なないだけさ。どうやら、アイツ等は新人類に選ばれなかったらしい。だからこそ、ただの人形になっちまったのさ」

「人形だと? それに新人類って何だ!?」

「あぁ、アイツ等はどれだけ斬られても死にやしない。元々死んでいる。ただ、敵に向かって歩くだけだ!!」


 ハヤイは崖を覗きながらそう言って笑う。

 こいつ……、同じ魔族をあんな目に遭わせて……。


「ゲスめ……」

「何を言っている? てめぇ等は敵。はぐれ魔族(アイツ等)は道具でしかない。だからこそ、俺に使われているんだろうが……」


 こいつは四天王の頃から……、いや、何も変わっちゃいないな。


「で? お前はこんなところにお喋りしに来たのか?」


 俺がそう言うと、マジック様とシーラが構える。例えハヤイがベアトリーチェに大罪の力を与えてもらったとしても、レティシアに鍛えられた俺達三人に勝てると思っているんだろうか……。

 しかし、ハヤイは口角を吊り上げていやらしい顔で笑う。


「お前の耳は腐っているのか? ベアトリーチェ様からお前等を殺せと命令されたと言っているだろう。あの生意気なブレインとクランヌがここにいないのは残念だが、あの二人の始末はアイツ(・・・)に任せよう」

「アイツ?」

「あぁ、この人形共の本当の主だよ。俺はベアトリーチェ様に新たな力を与えていただき、アンスタンの野郎を目の前でボコボコにしてやったんだよ。そして、俺のよき理解者である相棒(・・)に肉体をくれてやったんだ」

「な、なんだと!? お、お前がアンスタンを倒しただと!?」


 アンスタンという名を聞いて、マジック様は顔を青褪めさせていた。俺はシーラに視線を送るが、首を横に振っている。


「ケン。こいつの話が本当であるなら、ハヤイをハヤイと思わない方がいい……。はぐれ魔族の主である魔王アンスタンはクランヌ様に匹敵する力を持っている」

「っ!?」


 クランヌ様に匹敵する魔王をハヤイ如きが倒した? こいつは一体何の大罪を……。

 いや、現実から目を逸らすのは止めた方がいいだろう。


「お前……」


 俺は大罪を発動させる。俺の大罪は【憤怒】ただ一つ。ただし、浅いモノじゃなく、【大罪の深層】に到達している。しかし、ジゼルは大罪をすべて集めて魔神サタナスを研究していたと聞く。という事はそんなジゼルを操っていたベアトリーチェは【大罪の深層】じゃなく、七つの大罪全てを埋めこんでいると思った方がいいかもしれないな……。


 俺の大罪の力を見て、ハヤイは口角をさらに吊り上げる。


「この力は素晴らしい。お前もそう思うだろう?」

「いや、大罪の力は忌み嫌われた力だぜ」


 俺は魔剣キマリスを取り出す。真っ黒なレティイロカネの剣身が光る。キマリスは俺の大罪の魔力を餌にする。


「くくく……。まずは貴様から血祭りにあげてやろう」


 ハヤイは大きなランスを空間魔法から取り出す。


「さて、見せてやろう。我が魔神の力を!!」


 そう言ってハヤイは紫色の鎧をどこかから召喚し着こむ。まるで本物の騎士の様だ。


 しかし……。


「上澄みの力だけで俺に勝てると思うなよ!!」


 俺は大罪の力を喰ったキマリスを構えた。

 

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