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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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59話 決断

≪ブレイン視点≫


 はぐれ魔族の軍勢がエスペランサに侵攻してきたのを確認してから三日が経った。


 国境付近で迎え撃つ為に出撃したマジックから、マジックの部隊とはぐれ魔族との戦闘が始まったという報告もあった。

 マジックならば負ける事は無いと思うが、はぐれ魔族達を指揮しているのがハヤイという事を伝えておいた。

 もう確認した後かと思って聞いてみたが、マジックはハヤイを見ていないようだった。

 前線に出ていないという事は、侵攻の時は堂々と先頭を歩いて、戦闘が始まったと同時に逃げたのか? まぁ、四天王時代のハヤイを知っている私達からすれば、変わっていないという事か?


 しかし、ハヤイの事よりも実は気になっている事がある。


「ベアトリーチェが本気でエスペランサを落とすつもりなら……、ハヤイよりも、はぐれ魔族共を強化した方が効率がいいんではないか? 私なら、迷わずそうする」


 どちらにしても、用心に用心を重ねておいた方がいいだろう……。私もいつでも前線に出れる準備をしておいた方がいいだろう……。

 それに、ゴブリン魔王との戦いのケンの報告を聞く限り、ハヤイを殺そうとした時、異常に強いゴブリンがハヤイを助けたそうだ。

 もし、そんなゴブリンがはぐれ魔族の中に居たら……、マジックだけでは手に負えないかもしれない。

 さらに、ケンの言う通りハヤイが大罪の力を持っていたら……、マジックですら危険かもしれない。


 大罪……。

 私もレティシアから大罪の事を聞かされ研究をしてみたが、大罪の力を得る事は出来なかった。

 ケンとも何度か模擬戦をしたのだが、ケン自身の強さは当然の事……、大罪【憤怒】の力が特に強かった。

 それと同じ様に、大罪と反属性にあたる美徳の力を持っているクランヌ様も強い。この二つと同等の力を持っているのならば、四天王全員で倒した方がいいかもしれん……。


 私は最悪を想定して念入りに準備をする。すると、ノックの音が響き、ケンが入ってきた。


「ブレイン様。今、アブゾルと名乗る爺が「ベアトリーチェの部下がエスペランサに攻め込んでくる」と頭に直接言ってきました」

「あ、アブゾルだと!?」

「ブレイン様は、アブゾルという爺を知っているのですか?」


 こ、こいつマジか……。

 我々魔族は教会にとって敵だったとはいえ、神であるアブゾル様を知らぬ者はいないと思っていた。特に私達の場合はクランヌ様も神族の末裔だから、神アブゾル様を知っていて当然だ……。それなのに……こいつ……脳の病気か?

 私は呆れながらため息を吐き、ケンにアブゾルの事を話してやる。


「あ、きょ、教会の神でしたか……」

「いくら接触がないからと言って、この世界の神の名くらい覚えておけ」

「神……、普段からレティシア達と関わっていると

神という存在が軽く見えてしまいますね……」


 ケンの言いたい事も理解ができる。それくらいレティシアという存在は異質だ。


「まぁな。それよりも、アブゾル様から神託が下りたのなら確定したみたいだな」

「神託? あぁ、教会の上位の神官に下りると言うあれですか……。しかし、そうですね。神アブゾルの言う部下というのがハヤイであれば、あの軍勢もベアトリーチェの手が加えられていると考えた方がいいです」


 アブゾル様が元リーン・レイであるケンにまで神託を下ろすくらいだ、ハヤイがベアトリーチェの部下で間違いないだろう……。

 

「となると、私達も早く戦場に向かった方がいいかもしれないな……。ケン……」

「はい!! 俺とシーラで先行します」


 ケンが一人で行くと言っていたら私の準備ができるまで待たせておくつもりだったが、同じ四天王のシーラを連れて行くと言うのなら問題ないだろう。


「何かあったらすぐに私に報告しろ」

「はい!!」


 ケンは私の部屋を出ていく。ケンとシーラならば殺されるという事もないだろう……。

 

 さて、これから忙しくなりそうだ。私もクランヌ様の執務室へと急いだ。



≪ケン視点≫


 まさか、ハヤイが大罪の力を持ってくるとは……。正直な話、大罪を持っているハヤイを相手にするんだ……。シーラを連れて行きたくはないのだが、俺一人で行くと言ってもブレイン様は納得してくれないだろう。

 それにシーラは条件次第では俺よりも強い。これはレティシアのお墨付きだから間違いないだろう。


「シーラ。準備は出来ているか?」


 シーラには、あらかじめ戦闘の準備をしておくようにと伝えておいた。ハヤイがベアトリーチェの部下だった場合の事を考えて、すぐに出発する為だ。


「あぁ」

「じゃあ、急ぐぞ」


 俺とシーラはマジック様の下へと駆ける。

 部下を連れて行っていれば時間がかかるかもしれないが、【身体超強化】が使える俺達なら、数時間で到着できる。


「ケン、マジックさんから戦闘に入った事を報告されたぞ。ケンやブレイン様とは繋がらなかったそうだぞ」


 話し込んでいたから気付かなかったか……。


「それで、今の戦況は?」

「今のところは優勢だそうだ」


 今のところは……か。

 その言い方だと、マジック様もハヤイの軍勢がおかしい事に気付いているんだろう。


「シーラ、連絡用の魔法玉で、お前の部隊をマジック様の部隊へ合流させることが可能か?」

「え?」

「いくら俺達でも、軍勢相手には多勢に無勢だ。俺達がレティシアなら可能かもしれないが、俺達には無理だ」

「うん……」


 エスペランサ四天王の中で、レティシアから一番目を掛けられていたのはシーラだ。だからこそ、レティシアの理不尽さに気付いている。

 そう言えば、レティシアの本当の能力は【成長力】とジゼルが言っていたな。俺達もその力の一端を見せつけられた。


「で、でも、今から指示を出したとしても、マジックさんの部隊とは合流は出来ないぞ。時間が足りなすぎる。それこそ、レティシアちゃんみたいに、大規模な転移魔法ができるのならともかく……」


 その通りだ。

 レティシアならば、そのうち次元や時間を越えて転移しそうだな。

 だが、俺達ではそこまでは出来ない。


「そうだな……。もしもの時はレティシアに加勢を頼もう。そうならないのが一番いいがな……」

「そうだな……」


 できる事なら、魔族の問題は魔族でつけたい。それにシーラを呼びに行く途中でレティシアにも連絡しておいたのだが、反応がなかった。

 アイツが死んだりするとは考えられないが、もしかしたら、加勢は不可能かもしれないな。

 どちらにしても俺とシーラだけでも早くマジック様のところへ到着しないとマジック様が危ないかもしれない。


「急ぐぞ!!」

「あぁ!!」


 俺達は【身体超強化】を使い、一気にマジック様のところへと向かった。



≪ブレイン視点≫


「……というわけです。一刻も早く、マジックに援軍を送る必要があります。今、私の部隊の者に転移魔法陣を設置させ、進軍の準備をしています。後二時間ほどで大規模転移できるでしょう。それにケンとシーラはもう向かっております」


 私の部隊とマジックの部隊がいれば多少格上の軍勢でも、多少の被害は目を瞑るとしても、負けはしないだろう。


「しかし、ハヤイがベアトリーチェの部下になるとはな……。ブレイン、ハヤイの弟達には……」


 クランヌ様があの二人(・・・・)を心配するのは当然だ。あの兄妹はハヤイの弟妹と思えない程優秀で責任感を持っている。今回、ハヤイの事を知ってしまえば、覚悟が出来ているとはいえ、その責任感から心病むかもしれない。


「……大丈夫です。私のところにいる弟もシーラのところにいる妹も、覚悟はできていると言っていました。ですが、あえてあの二人には伝えるつもりはありません。この世界には知らなくていい事もありますからね」


 現にあの二人はハヤイが再び現れた時、自分達で始末をつけると言っていたが、そんな事はさせられない。それに、ハヤイは元四天王だ。同じ立場だった私達が始末をせねばなるまい。


「あぁ、そうだな……」

「クランヌ様。もしかしたらケン達だけでは手に余るかもしれません。私達も出ましょう」

「あぁ……。私もいつでも……」


 クランヌ様と共にマジックのところへと向かおうとした直後、連絡用の魔法玉が光り始める。

 これはケンか?


「ケン、何かあったのか?」

『一応確認しておきたい事があるんですが……』

「なんだ?」

『マジック様の部隊には援軍を送ってくれましたか?』

「もちろんだ。私達もそちらに……『いえ、クランヌ様とブレイン様はそちらに残ってください』……なぜだ?」

『ベアトリーチェが、もしエスペランサを欲しがっているのであれば、お二人まで前線に出てしまえばエスペランサが無防備になってしまいます。だから、こちらは任せておいてください』


 ケンがそこまで言ってくれているんだ。私はクランヌ様と頷き合う。


「分かった。そちらは任せたぞ。ただし、身の危険を感じたら逃げてこい。兵を引かせるのも忘れるなよ」

『はい!!』


 ……心配だが、ケンとシーラの二人がいる上にマジックもいる。問題は無いだろう……。


 ……っ!?


 それに、こちらはこちらで、お客さんが来たようだ……。


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