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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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56話 鬼の眷属の覚醒


 ゲローンは、背中から伸びた骨のようなもので私が放つ魔力弾を叩き落としていく。どうやら、先ほど言っていた通り私を殺すつもりがないのか、直接攻撃を当ててくる事は無かった。


 くそっ。

 ゲローンは私を殺すつもりはない。だが、私の攻撃はゲローンには当たらない。これでは無駄に時間が過ぎるだけだ。

 こいつ……、私の魔力が尽きるのを待っているのか!?


 それに……!?


 不味い。私は徐々に長老の家に近づかされている。

 こ、こいつ……、もしかしたら、長老の家に村人を避難させているのに気付いているのか!?

 くっ……。

 私は長老の家に結界を張る。しかし、その瞬間に足に激痛が走る。


「くぁ!?」


 太ももにゲローンの骨が刺さっていた。

 チッ……。避けきれなかった!?


「くははは。なぜその家に結界を張ったんだ? まるでそこに誰かがいるみたいだなぁ!! そいつ等に気を取られて避けきれなかったかぁ!?」


 ……!?

 し、しまった!?

 私とした事が軽薄だった。ゲローンは知っていただろうが、これでは私がここに村人がいる事を教えたようなモノだ。

 ゲローンは背中の骨で長老の家を襲う。しかし、結界魔法を重複させたおかげでゲローンの攻撃を弾く事が出来た。

 よし。これでもう少しは時間を稼げるはずだ。


「ゲローン!!」


 私は雷魔法のレールガンでゲローンの太ももを打ち抜こうとした。

 レールガンは雷を纏わせた極小の魔力弾を超高速で撃つ魔法だ。だが、超高速だと言うのに、ゲローンは簡単に避けてしまった。

 しかし、私の狙いはソレじゃない!!


 私は幻影魔法を混ぜたレールガンをゲローンに撃つ。そして、私の狙い通りゲローンの額を撃ち抜く事が出来た。


「よし!!」


 ゲローンは力を無くしたように、膝から崩れ落ちる。

 さすがに新人類とはいえ、額を撃ち抜かれたら死ぬだろう。


 よしっ……。勝った……とそう思ったのだが、ゲローンは私を睨む。


「やってくれたな……。ベアトリーチェ様が与えてくれた素晴らしい体を傷つけるとは……。貴様は綺麗な体で手に入れようと思っていたが、もういい!!」


 ゲローンは背中の骨で私を襲う。

 結界魔法で防ごうとするが、防ぎきれない!!

 さっきのゲローンの攻撃で大きく動く事も出来ない私は徐々に傷つけられていく。


「チッ。泣き叫ばないのは面白くない。そうだ、お前を殺すのは簡単だが、お前が最も嫌がる方法を思いついたぞ」

「な!?」


 こ、こいつ、まさか!?


「お、お前の相手は私だろうが!?」


 私は自分が使える最大にして最強の魔法を使う。

 今の魔力が少ない私にアレが使えるかどうか……。だが、使うしかない!!


「爆縮、クリムゾン!!」


 爆縮は魔力を急激に圧縮させて、魔法を強化させる技法だ。これを使うには人間が使用できる限界値の魔力を使う必要がある。だからこそ、魔導書には爆縮魔法は無限の魔力を持つモノ専用と書かれていたのだろう。

 だが、無限の魔力を持たない私でも、本来の魔力があれば数発程度は撃てる。しかし、残りの魔力では一発が限度だろう。


 しかし、ゲローンに炎熱耐性があるのを失念していた私は絶望する事になる。


 ゲローンは爆縮クリムゾンの炎に焼かれていても、まったく苦しむ素振りを見せない。


「忘れたか? 俺にはレティシアの炎魔法を耐えられるように作られているんだ。さて、お前の絶望した姿を見る為に……」


 そう言ってゲローンは避難していた村人を襲い始める。私はゲローンの骨を結界で必死に防ぐが、結界も限界を超える攻撃で砕け散る。

 私は残りかすのような魔力で結界を張る。だが、もう一瞬も防ぐ事は出来ずに、村人が傷ついていく。

 村人の中にはゲローンと戦おうとする者もいたが、所詮は村人の攻撃。ゲローンは軽くあしらう。


 クソっ!!


 私は、尽きかけた魔力を必死に練り上げる。

 その時、ゲローンの視線が私に向けられた。


「余計な事をせずにそこで大人しくしておけ!!」


 ゲローンが私に魔力弾を撃ってきた。

 こ、これは……防げない。


「たとえボロボロになろうとも、後で治療魔法を使えばいいだけだ。今は大人しくしておけ!!」


 ゲローンの魔力弾が着弾する直前に、誰かが私を庇うように覆いかぶさった。


「な、何をしている!? は、早く逃げろ!!」


 そう言ったが、覆いかぶさった者は逃げようとしない。その直後、私に覆いかぶさった者に魔力弾が着弾した。

 私に覆いかぶさった者は、一度痙攣をした後、私にもたれかかった。

 血塗れになっている!? これは……!?

 私は力がない腕で覆いかぶさった者の顔を見る。

 ちょ、長老!?


「な、なんて馬鹿な事を……」


 長老はすでに息をしていなかった……。

 な、なんで……。


 私は必死に立ち上がろうとする……。しかし、足に力が入らない。

 目の前では、村の老人達が必死にゲローンを攻撃している。

 な、なぜ老人達が……。

 老人達は、ゲローンの攻撃に吹き飛ばされながらも何度もゲローンに襲い掛かる。


 だ、ダメだ……。

 私は止めようと立ち上がろうとする。だが、一人の老婆に止められた。


「ジゼル様、お逃げください。村は若い者達がいればまた作り直せます。ここで死ぬのは、わし等老人だけでいい」

「ば、馬鹿を言うな!!」

「わし等は先がない老人……。ジゼル様や村の若者がいれば村は滅びない。だから、お逃げください」


 そう言って、老婆はゲローンに襲い掛かっていく。


「だ、ダメだ!!」


 ふ、ふざけるな……。

 せめて私に以前の魔力があれば……。

 いや、目の前のゲローンを見ていたら、以前の私でも勝てなかったかもしれない。

 でも……でも。

 私は目の前で傷つけられる老人達を見て、怒りで気が狂いそうになる。

 その瞬間、体が熱くなった。


『ようやく、お前も覚悟をしたようだな……。どちらにせよ、間に合ってよかったよ』


 こ、この声は?


 私の体の傷が癒えていく……。何が起きている?


『お前は鬼神の眷属なんだぞ。お前だけ覚醒していなかったんだ……』


 私の目の前に、かわいらしい人形が立っていた。そして、そいつが私の肩に乗る。


『もう立てるだろう。ジゼル……』

「あぁ……」


 私は立ち上がりゲローンを睨みつける。そんな私を見てゲローンが驚愕した顔になっている。


「な、なんだ? その激しいほど放出している真っ赤な魔力は……。それにお前の目……」


 目?

 私は近くに落ちていた割れたガラスに映った自分の顔を見た。

 

 あぁ……。これが鬼の眷属の証か……。

 私の黒目が血の様に真っ赤に染まっていた。

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