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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
2章 レティシア、ファビエ王都で暴れる。

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4話 ファビエ王都のギルドマスター

誤字報告、いつもありがとうございます。


 ヘグドを殺そうとした私を止めたのは、見た事も無いお爺さんでした。

 歳は六十代後半でしょうか、温厚そうな見た目で、冒険者ギルドにいるのが不相応な小さく痩せたお爺さんでした。


「貴方は何者ですか?」


 私はこのお爺さんに対して軽く殺気を放ちます。普通のお爺さんであればこれで黙っていただけると思うのですが。


「これこれ、人と話すのに殺気を放つとは些か度量が小さいのではないか?」


 おや?

 私の殺気に全く動じていませんねぇ。

 私の目には、弱弱しい体で一発殴れば殺せてしまいそうなお爺さんに見えます。とても凄そうな人には見えませんがただ者ではないのでしょうか?

 正直困惑してしまいましたが、お爺さんは私の様子を気にせずに話しかけてきます。


「そいつはソナリズ家のボンボンじゃ。殺させるわけにはいかん」

「知っていますよ。先程、こいつ自身が名乗っていましたから」

「じゃあ、ソナリズ家については知っておるのか?」

「先程テレーズさんにお聞きしました」

「そうか……」


 お爺さんはテレーズさんを一瞥し、テレーズさんはお爺さんに頭を下げます。

 まさか偉い人なのですか?

 

「知っているのならば、こ奴を殺してはいけない事も理解できるじゃろうて」

「いいえ、理解はできません。ソナリズ家というのは自分達が気に入らない事があると、すぐに処刑するような貴族なのでしょう? そんな家の息子に生きる価値があるのですか?」

「そう言われると、生きる価値はないかもしれんが、こ奴には利用価値(・・・・)がある」


 利用価値?

 先程聞いた交渉材料という奴ですか?


「コレは何も知りませんでしたよ。情報も聞けないのに何の価値が?」

「何故お主がそこまでこ奴を殺したがるのかよく分からんな」


 なぜ殺したがるですか……。

 エレンを傷付けた。それだけですが?

 しかし……。


「貴方に理由を話すわけにはいきませんねぇ……」


 そもそも、いきなり現れてヘグドを助けようとしている時点で、この人も国王寄りの人ではないかと疑っているのですよ。

 もし、エレンを傷付けたのを理由に殺した事が国王派にバレてしまえば、エレンが執拗に狙われるかもしれません。

 もしそうなっても守り切る自信はありますし、それと引き換えにこの国を滅ぼす事も可能だとは思いますが、エレンを危険に晒すわけにはいきません。

 あ、ヘグドにここまで固執するという事は、この人も貴族なのですか?

 しかし……。


「貴方の服装からは貴族という感じがしませんねぇ……」

「いきなり失礼なお嬢ちゃんじゃな。そもそも、わしは貴族ではないよ」

「貴族ではないのに、コレを助けようというのですか?」


 ますます怪しいですねぇ……。

 いっその事、このお爺さんも捕まえましょうか。

 いえ、それでは目的が変わってしまいます


「コレの価値を教えてくれないのなら、私にとっては無価値なモノです。殺します」

「だから待て。こ奴は国王側との交渉に使いたいから殺すな。別にこ奴を助けようとしているわけではない。もし交渉の役に立たんかったら見せしめに殺すだけじゃ」

「はぁ? こんなろくでもなく、価値もないただのゴミのような貴族の三男が交渉の役に立つと? 聞いたところによると、コレの父親は交渉に応じるような貴族とは思えませんでしたよ」

「確かに話だけ聞けばそう聞こえるかもしれんな。だが、ソナリズ侯爵は自分の身内には底なしに甘くてな。普通は役に立たないこ奴でも役に立つのじゃ」


 成る程。

 身内には優しいという人なのですか……。

 それならば価値があるかもしれませんね。

 

「……分かりました」


 殺せないのは残念ですが、ここで無理に揉めてまで殺しても気が済むわけではありませんし……。

 そうです。

 エレンを傷付けた代償はこの国に払ってもらいましょう。

 このお爺さんに舌戦に負けた感じはしますが、今は大人しく従っておく事にしましょう。


「しかし、いくつか魔法を使っているのを見たが、お嬢ちゃんは便利な魔法を使うものじゃな」

「そうですね。〈睡眠魔法〉と〈自白魔法〉は便利ですよ。ところであなたは何者ですか?」

「わしはこの冒険者ギルドのギルドマスターのヘラクじゃ。今日は国王派の貴族と交渉に行くつもりだったのじゃが、先ほど起きたいざこざがいつもと違うと報告を受けてな。急いで戻ってきたのじゃ」


 ギルドマスターでしたか……。

 どう見ても元冒険者には見えませんが、周りの冒険者が逆らっていないところを見ると本当なのでしょう。

 しかし、こんな少し叩けば殺せるようなお爺さんがギルドマスターをしていて冒険者はついて行くのですかねぇ?

 まぁ、私には関係ありませんし、どうでも良いです。

 

「国王側と交渉とは何を交渉するのでしょうか?」

「流石にそれを話すわけにはいかぬよ。お主がわしを知らなかったように、わしもお主を知らぬ。お主が国王派とつながっておらぬとは限らんのじゃからな」


 確かにその通りです。

 私もこのお爺さんをまだ、こちら側(・・・・)とは思っていません。

 だからこそヘグドをまだ(・・)渡すわけにはいきませんね。

 私はヘグドの体をギルガさんに向け蹴ります。


「ほっほ。随分と手荒な事をしよる」

「別に死んでも構わないと思っていますので。今死ねば事故でしょう?」

「そうじゃのぉ。わしも同じ気持ちじゃぞ。わしはこの国の国王派の貴族など滅べばいいと思っておる。だが、それをするのはわし等ではなく、国王と同じ王族のネリー様じゃ。わし等は後ろからコッソリとネリー様の後押しをするしかできん」

「なぜですか?」

「勇者タロウという存在がいるからじゃ」


 ここでも勇者ですか……。

 まぁ、良いでしょう。


「分かりました。ヘグドの身柄を貴方に渡しましょう。貴方が国王派であっても別に私が困る事もありませんし、もしそうだったとしても後で殺せばいいだけです。それに、ここの冒険者ギルドが国の兵士に潰されようが興味がありません」

「ほほほ。怖い事を言うお嬢ちゃんじゃな。まぁ、奴の身柄を渡してくれるのならありがたく受け取っておこう。マルロ、デスペラ。ソナリズのお坊ちゃんを拘束して地下牢に入れて置いてくれ」

「「はい!!」」


 マルロとデスペラと呼ばれた二人の冒険者がぐったりしているヘグドを両脇に抱え地下へと下りていきました。

 拷問室はなくても地下牢はあるのですね。

 しかし、冒険者が言う事を聞くという事は本当にギルドマスターの様ですね……。

 ここで今まで黙っていたギルガさんが口を挟んできました。


「お久しぶりです。ヘラク殿」

「やはりお主じゃったか。ギルガ、久しいのぉ。テリトリオが魔物に滅ぼされたと聞いて死んだと思っておった。お主を無理矢理にでもあの腐った町から連れ出しておけば良かったと後悔しておったのだが、逃げ出せていたか……本当に良かった」

「はい。ここにいるレティシアのおかげです」

「なに? この小さいお嬢ちゃんの?」

「はい。テリトリオに魔物が寄り付かなくなったのはレティシアが原因なのです」

「どういう事じゃ?」


 ギルガさんは自分がここにいる理由を事細かく説明しています。

 このお二人お知り合いだったのですね。

 私はエレンの下へと戻ります。


「エレン。腕は大丈夫ですか?」

「うん。ちょっと赤くなったけど痛くはないよ」

「そうですか。ヘグドを殺せなかったのは残念ですが、まぁいいです。この怒りは国王にでもぶつけましょう」

「え? ファビエ王に?」

「そうです。あんな腐った貴族を作ったのはこの国です。この国という事は全ての責任は国王にあります。だからこそ、国王には死んでもらいましょう」

「そ、それは……ちょっと……」


 エレンは少し複雑そうな顔になります。

 アレ?

 反対ですか?


「ダメですか?」

「……うん。王様というのはそう簡単に殺しちゃダメなんだよ。勝手に殺しちゃうと後々問題になると思うし、意味のある殺し方をしないとレティが悪者になっちゃうよ」

「そうですね……反省します」


 悪者になるのはどうでも良いのですが、エレンが忠告してくれているのでここは従います。

 しかし、意味のある殺し方ですか……。

 

補足です。

最後のエレンのセリフですが、何かを突っ込まれる前に「エレンは良くも悪くもレティシアの親友です」とだけ言っておきます。


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