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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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55話 新人類 ゲローン

誤字報告いつもありがとうございます


『……フィーノの村にもベアトリーチェの部下が迫っている……備えよ……』


 今の声はアブゾル様?

 しかし、一体どこから?


 今、私はフィーノの村に戻りいつも通り医者としての生活をしていた。

 今のアブゾル様の声が本当なら、この村が危険になる。

 私は手伝ってくれている看護師に声をかける。


「ロージさん、嫌な予感がする。今すぐに長老のところに行って、安全な場所に避難するよう言ってきてくれないかい?」

「はい。ジゼル様は……」

「私はしばらく様子を見るよ」


 ロージさんは私を心配してくれている。


「大丈夫だよ。私もAランクパーティであるリーン・レイだからね」

「は、はい……」


 うん。

 リーン・レイの名は本当に便利だ。他のメンバーが頑張ってくれているおかげで、こんな辺境の村にまでリーン・レイの名は届いているからね。

 私の説得にロージさんも納得してくれて、村長の家に行ってくれた。


「はぁ……、ベアトリーチェの部下か……」


 私は診療所の外に出る。

 聞こえた襲撃ポイントは四か所。そのうちの一つがここ、フィーノの村だ。

 確かにアブゾル様の言う通り、巨大な魔力がこちらに向かってきている。


「無限の魔力というほどではないが、かなり大きい魔力だね」


 今の私に勝てるかねぇ……。というよりも、こんなところで死ぬわけにはいかない。

 私には、今は死ねない理由がある。

 まだ、この村の村人に亜人化を戻す治療は行っていない。

 理由の一つは、今回の様にベアトリーチェの部下が攻めてくる事を警戒していたんだ。それに、村人達の中には、このままの姿が良いという者もいる。

 元の姿に戻れると言うのに、なぜそのままが良いと言うのだろうね?


 私が空を見ていると、村人が数人駆け寄ってくる。


「ジゼル様、私達も戦います!!」


 村人の一人がそう言ってくれているが、私は断る。

 確かにこの村の亜人達はBランクの冒険者程度なら簡単に倒せるだろう。だが、ここに向かっているのはベアトリーチェの部下だ。

 彼らが戦えば、無駄に被害が出てしまう……。ここはハッキリ言った方がいいだろう。


「気持ちはありがたいが、今ここに来ようとしているのは君達の手に負える相手ではない。だからこそ、もしもの時の為に村の人達を守ってほしいんだ」


 私がそう言うと、村人達も納得してくれたみたいで、年寄り達を村長の家に避難させてくれる。


 

 魔力がだいぶ近づいてきた。私一人で戦う事になるが……。まともな戦闘は忌み子ちゃんと戦った時以来だね……。


「さて、今の力でどこまで戦えるかだが……」


 私は魔力を練り始める。まったく、私にもエレンちゃんの様に無限の魔力があれば良かったんだけどね。


 しばらくすると、一人の男が空から下りてきた。


「くくく……、ジゼル一人か、拍子抜けだな。そんな事よりも、久しぶりだな」

「ん?」


 この男、私を知っているのか? いや、確かに見覚えがある……。


「お前は誰だい?」

「おいおい。元上司に向かって随分な口を利くようになったじゃないか」


 元上司だと?

 ……。


「そうか……。お前はファビエの宮廷魔術師長だったゲローンだな。しかし、おかしいな。私の記憶ではもっと歳を取った老人だった記憶があるのだが? 面影が無かったら、分からなかったぞ」

「くくく……。ベアトリーチェ様のおかげで若返ったのだ。ベアトリーチェ様は俺の願いを叶えるチャンスをくれたのだ!!」

「願い?」

「そうだ……。お前が宮廷魔術師だった頃、俺はお前を抱きたかった。だが、宮廷魔術師長という立場がそれをさせてくれなかった」


 ゲローンの言葉に私は思わず吹いてしまった。


「何がおかしい?」

「立場がどうとかじゃなくて、歳だからアレ(・・)が起たなかったんだろ?」


 私がゲローンの股間を指差しそう言うと、ゲローンの顔が怒りの表情に変わる。しかし、顔は赤くならないな……、いや、それどころか顔色が悪い。


 これは……。


「そうか、お前は新人類だな。ベアトリーチェに研究させられていたモノの中にあったな……。確か、生命活動を止めた人類だったか?」

「そうだ。そして、新人類を作る為に貴様はファビエでネクロマンシーを使った」


 あの時の事か……。

 アレは私の最大の罪で、決して許されない事だ。


「そうだ、新人類について、詳しく教えてやろう」

「なに?」

「まず、新人類に物理攻撃は通用しない。それにレティシアが得意としている炎熱魔法も耐性が付けられている。さらに、【神殺し】の力も私達新人類には通用しない」


 私達か……。

 つまり、今各地を攻めているベアトリーチェの部下も新人類という事か……?

 これは……。


 いや、ギルガ殿なら抜かりなく各地にリーン・レイのメンバーを配置しているはずだ。


「それで、お前はここに一人で攻めてきたのかい? あの当時でも、私よりも劣っていたというのに、一人で私を倒せるとでも?」

「くくく……。強がるではない。お前はレティシアに一度殺されてから「間違えないでもらおうか。私にとどめを刺したのはタロウだ」……そうだったな。あの色ボケ勇者殿に殺されたんだったな」


 色ボケね……。

 そこは否定しないけど、アイツを容認していた国王派のこいつには言われたくないな。


「それに、お前は生き返ってからは、昔のような魔力は無いのだろう?」

「さぁ……。どうかな?」


 チッ……。

 ベアトリーチェは、私の事を調べていたみたいだな……。前の様に魔力を扱えなくなっている事に気付かれているとはね……。


 私の今のクラスは【鬼神魔導士】。忌み子ちゃんの眷属になっているとはいえ、特別な力があるわけではない。


「くはははは。安心しろ。お前は殺さん。お前には俺の女になってもらうからな」

「気持ち悪い事を言わないでもらおうか。それに……」


 私は魔力弾をゲローンに撃ち込む。しかし、ゲローンは片手で魔法を弾いた。


「くくく……。このひ弱な魔法で俺を倒せると思わぬ事だ……」


 ゲローンの背中が不自然に盛り上がり始め、骨のようなものが生えた。

 いや、それだけじゃなく肌も浅黒くなっている。


「くははは!! これが新人類の力だ!!」


 チッ……。

 ゲローンから強大な魔力を感じる。

 勝てるか……?

 いや……勝つ!!

 

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