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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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41話 シェン


 箱に入っていた頭は、若い男性のモノでした……。

 この顔……、見た事のあるような気がします。

 確か……、グローリアさんが最も信頼している部下の一人でしたかね?

 名前は……、何でしたっけ? いえ、そもそも聞いていましたかね?


「グローリアさん、この人は……」

「あ、あぁ……。俺の部下だ……。秘密裏にグランドマスターの事を調べさせていたんだ……。シェン……」


 ふむ。

 この人の名前はシェンというのですか……。

 箱の下の部分が血に染まっているところを見ると、殺されてそう時間は経っていないのでしょう……。

 でも、この死体……、何か気になるのですが……。


「グローリアさん。この箱は、いつ、誰から届けられたのですか?」

「あぁ、俺達がマイザーの事を話し合っていたら、突然現れたんだ。箱を開けてみたら、シェンの頭が入っていた」


 憔悴するグローリアさんを見る限り、よほど信頼していた人なのでしょう。

 私がグローリアさんに慰めの言葉でも言おうとした時、ジゼルに止められてしまいます。


「忌み子ちゃん、ちょっと……」

「はい?」


 ジゼルもシェンという人の事を知っているらしく、詳しく教えてくれました。

 シェンはエラールセで代々暗部として暗殺業を生業にしていたそうです。

 グローリアさんとは、シェンが幼い頃からかわいがっていたそうなのですが、そんなシェンが死んで憔悴しているから、そっとしておいた方がいいと言います。


 しかし、やはり気になる事があります。


「シェンは、幼い頃から俺が鍛えていた。エラールセの軍の中でも俺に次ぐ強さを持っていたはずなのに……」


 グローリアさんに次ぐ……ですか。

 確かに、グローリアさんの強さは、私の知る人達の中でも上位の強さを持っています。

 しかし、グローリアさんに次ぐと言われても、冒険者の普通のAランク程度であれば、ベアトリーチェの取り巻き共には勝てないでしょう。

 もし、ラロと同等の力を持っていたのであれば、話は別なのですが……。

 そんな事を考えていると、ジゼルが小声で「タロウが戦ったレギールを覚えているかい?」と聞いてきました。


 レギールと言えば、学校で「教会の勇者」と言っていたCランクの冒険者でしたっけ?

 

「覚えていますよ。私の知っているレギールは糞雑魚でした。今のタロウが命懸けで倒せたというくらいですから……、ベアトリーチェに強化されていたんでしょうね」

「私もそう思う……。今のタロウの実力は、どんなに低く見積もっても、並みのAランクの冒険者よりも強かった……。もし、シェンが戦った相手がそのレベルならば、シェンが強くてもどうにもならない……」


 はて?

 それはたいして強くないのでは?

 そう聞いてみると、ジゼルは首を振り、「並みのAランクでもこの世界では強者の類になるんだ。君の周りには、異常なほど強い者が揃いすぎているから、弱いと誤認してしまうんだ……」と言います。

 確かにそうかもしれませんね。


「ジゼル。シェンの死因や、ここに首が送り込まれた目的を調べてくれないか?」


 グローリアさんからそう言われたジゼルはシェンの首を調べ始めます。

 どうやら魔法で調べるんじゃなく、お医者さんとして調べるみたいですね。

 ならば、私は魔法視点でシェンの事を調べてみるとしましょうか……。


 さて、どう視ましょうか。

 そもそも、死人の記憶を視る事は可能なのでしょうか?

 まぁ、何事もやってみないと分かりませんね。


 私はあの力(・・・)を使います。

 死体からでも過去を視る事が出来るといいのですが……。


 ……ふむ。

 視えます。

 シェンを殺したのは?


 案の定、ベアトリーチェなのは間違いないです。そして、もう一人は……。

 はて?

 どうして、コイツ(・・・)が生きているのでしょうか?

 ベアトリーチェが生き返らせたんですかね?

 しかし、死後数か月……ですか?

 はて?


 私がシェンを視ていると、ジゼルが私をジッと見ていました。


「忌み子ちゃん……。何を視た(・・)んだい?」

「は、はい?」

「……」


 もしかして、気付かれてしまいましたか?

 いえ、完璧に隠しきっているはずです。


「忌み子ちゃんも、持っている(・・・・・)んだろう?」

「何をですか?」

「【神の眼】をだよ」


 やはり気付かれていましたか。

 エルジュ様やアブゾルには、気付かれなかったというのに……。


 私がエルジュ様を見て覚えたのは、次元を越える転移魔法と、【神の眼】なんです。

 しかし、私の【神の眼】では、エルジュ様やラロの様に未来は視えません。ただ、リディアさんやアブゾルと同じ過去を視る事は可能です。

 しかし、死体に対し【過去視】が使えるとは思いませんでした……。

 と思っていたのですが、ジゼルからとても不思議な事を言われました。


「忌み子ちゃん……。アブゾル様に聞いたのだけど、【神の眼】は死体の過去を視る事は出来ないらしい。死体は、物として視る事が出来るそうで、あくまで【死体】としか視る事が出来ないそうだ」

「はて? でも、視えましたよ?」

「あぁ……。忌み子ちゃんが視えたという事と、この死体(・・)の状況を考えれば……」


 ジゼルは、首に何かを刺します。


「それは?」

「あぁ……。忌み子ちゃんから教えてもらった麻酔草から作った麻酔薬(・・・)だ」


 麻酔薬?

 シェンは死んでいるんではないのですか?


「忌み子ちゃん、あまり時間がない。今すぐにエレンちゃんを呼んできておくれ」

「はい?」


 ジゼルが言うには、シェンにゴスペルヒールを使ってみたいそうです。

 死体に治療魔法を使ったとしても、意味がないと思うのですが……。


 ジゼルに急ぐように言われたので、私は転移魔法でエレンを連れてきました。

 一応、エレンに事情を説明しましたが、やはり死体にゴスペルヒールを使っても意味はないそうです。

 では、甦生魔法ですか? と聞いたのですが、死後何日も経てば、生き返らせるのは不可能だそうです。


 エレンはシェンを見て「もう死んでいるように見えるけど……」と困った顔をします。

 しかしジゼルは「もう少し詳しく見てくれないかい?」と言いました。

 エレンはそう言われて、シェンの首をジッと見て、慌て始めます。


「はて? エレン、どうしたのですか?」

「こ、この人……。生きている!?」


 そう言ったエレンは急いでゴスペルヒールを使います。

 するとシェンの首から下が光り始めます。


「おっと……」


 ジゼルが手でエレンの目を塞ぎます。


「え?」

「嫁入り前のエレンちゃんに、男性の裸を見せるわけにはいかないからね……」


 はて?

 エレンは私のお嫁さんになるのですから、嫁入り前なのは仕方ありませんが、ジゼルもお嫁さんにはなっていませんよ?


 しばらくすると、シェンの無くなった体を包んでいた光が止み、無かったはずの体が復元? されていました。

 これは一体?


「う……」

「な!? しぇ、シェン!!」


 グローリアさんは、自分のマントを破りシェンの股間部分を隠します。

 どうやら、シェンは生きていたみたいです。


 しかし、股間がむき出しになっているからと言って、恥ずかしがる事ではないと思うのですが……、いえ、嫁入り前のエレンがいるので隠してもらった方がいいですね。


 え? 私ですか?

 私には、どう使うかも知りませんし、汚い物にしか見えません。

 それに、ここを潰せばどんな大男でも泣き叫んで苦しんで無力化するので、襲ってきた盗賊のモノを何度も潰してきましたからね。


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