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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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38話 無血落城


 私達は、グローリア陛下に指定された時間に冒険者ギルドに集まっていた。

 中には緊張している冒険者もいるけど、マイザーの兵士なんて所詮は雑魚の集まりだからね。

 それに、ギルドの受付の子達も、裏切ったギルマスに対し怒りを持っているらしく、非常に協力的だったから、後ろから刺される事もなさそうで良かったわ……。


 しかし、城からの反応が気持ちの悪いくらいに無いわね……。

 なぜかしら……。

 それに、何もしなくてもクーデターが成功するような気がするわ……。


「そう言えば、レティシアちゃんが受けた依頼って何だったのかしら……。非常に気になるわね」


 あの笑顔を思い出す限り碌な事じゃないと思うけど、決して悪い結果にはならないと思うけど……。


「レティシアちゃん? あぁ、テリトリオの町を滅ぼしたって言われている幼女だろう? あれって本当なのか?」


 私の近くにいた冒険者が、そう私に聞いてきた。

 あぁ、そう言えば、レティシアちゃんとエレンちゃんは、一度マイザー王から指名手配されていたわね。

 テリトリオの件も調べてみたけど、あの町が滅びたのは、町の人間の自業自得だったからね……。


「私が調べた限りはレティシアちゃんが原因ではないわよ。だけど、私達よりも遥かに強いのは間違いないわよ」

「な!? ら、ラロ姐さんよりも強いってのか!?」

「そうよ……」


 冒険者は絶句している。まぁ、普通はそう思うわよね。

 でも、現実なのだから仕方ないわ。

 レティシアちゃんの本当の強さは、あの【成長力】。一度見た事や聞いた事を、一瞬で学習して自分のモノにしてしまう。

 しかも【創造】の力により、ほぼ出来ない事は無い。

 そんな子に、どう勝てばいいのでしょうね……。


 私は冒険者達を引き連れて、マイザー城に向かう。

 昨日のうちにクーデターの話が町の人間にも広まったらしく、城に向かう道を歩いていると、「がんばれよー」などと声を掛けられる。

 だからこそ、気になる事もある……。


「どうして、兵士は私達を止めに来ないのかしら……」

「そうだな……。いくら何でも、変だよな……」


 城の入り口まで堂々と歩いてきたのだが、ここまで来ても兵士に何もしてこないし、何も言ってこなかった。

 いや、いつもは町の至る所にいるはずの兵士が一人もいなかった……。

 いくらなんでもおかしすぎる……。

 城に一歩足を踏み入れた瞬間、鼻を衝く……血の臭い?

 どういう事?


 城の奥から誰かが歩いてくる……。

 こ、この魔力……。


「おや? 予定の時間より、少しだけ遅かったですねぇ……」


 え?

 どうして、レティシアちゃんがマイザー城から出てくるの?

 そして、レティシアちゃんの体から血の臭い……。

 ま、まさか!?


「あ、大丈夫ですよ。マイザー王と護衛兵士はまだ生かしてあります。あくまで貴方達が進行する邪魔になる兵士は始末しておきました」


 や、やっぱり!?

 グローリア陛下の依頼って……。


「れ、レティシアちゃん……。グローリア陛下はなんて……」

「え? あぁ、忘れるところでした。えっと……、『マイザー王を処刑するのは、新しい王であるお前の役目だ。今、お前の後ろにいる連中は、今後この国を守るべき騎士となる。そんなお前達に血を流させるわけにはいかない』だそうですよ?だから私が先に兵士を殺しておきました」


 レティシアちゃんにお城の兵士を始末させるために、一日空けたのね……。


「しかし、退屈でしたよ……。昨日の朝には兵士の大半を殺し尽くしていましたから……。あぁ、冒険者の中にも裏切り者がいたみたいですよ。一応、彼等は生かしてあります。今頃、王の間にでも立てこもっているでしょう……」

「そう……。そこに追い詰めたのね……」

「はい。まぁ、追い詰めたというよりは、勝手に逃げ込んだと言った方がいいでしょうね。あ、でも冒険者は痛めつけた上で、王の間に放り込んでおきましたよ。今も生きているかどうかは知ったこっちゃありませんけど……」


 放り込んだね……。

 まぁ、その冒険者は生きてはいないでしょうね……。

 マイザー王達からすれば、裏切ったとはいえ冒険者のせいで王の間に逃げ込む事になっている。

 だから、屈辱を与えたとして……生かしておくわけないわよね……。


「さて、王の間に向かいましょう」

「えぇ……」


 私達はレティシアちゃんに付いて行く。

 マイザー城の廊下には、何人もの兵士の亡骸が転がっていた。

 何か大きな鈍器で叩きつけられていたり、ナイフで喉を突かれていたり、消し炭に近い状態になっている兵士までいる。


 これをたった一人で……。

 タロウもこんな子に勝とうとしていたなんてね……。

 無理がありすぎるわね。


「さぁ、ここに愚かな王がいるはずです。準備はいいですか?」

「えぇ……」


 私が頷いた瞬間、レティシアちゃんが扉を蹴破った。

 この小さな体のどこにそんな力が?


「ひ、ひぃいいい!!」


 王の間には、マイザー王と護衛兵士、そして……。


「ぐ、グランドマスター……!?」


 一瞬だった。

 レティシアちゃんは、グランドマスターの姿を確認した瞬間、グランドマスターを叩き潰し、【破壊】した。

 グランドマスターはその場で塵と化す。

 あれが、魂が分かれた状態の最期……。そして、アレが死ねば死ぬほど、ベアトリーチェは強化される。

 でも……。


 レティシアちゃんの顔は狂気に満ちた笑顔だった。

 レティシアちゃんは、グランドマスターが完全に塵になったのを確認した瞬間、護衛兵士二人をアッサリと殺した。

 これで、この部屋にいるのはマイザー王と私達だけだ……。


「ひ、ひぃいいいい!? ら、ラロ、ワシを助けろ!!」


 マイザー王は股間を濡らしながら、部屋の隅でガタガタ震えていた。

 私はマイザー王に近づき、頬を思いっきり殴る。


「な、何をする!? ラロ、貴様、裏切るのか!?」

「ふふ……。裏切るも何も、私は貴方の味方じゃ無いわよ……。元々ね……」


 私は冒険者に指示を出し、マイザー王を牢に投げ入れた。

 彼の死に場所は……。

 この国の国民の前よ……。


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