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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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34話 屑勇者の意地


 チッ……。

 体が悲鳴を上げてやがる。

 さっさと決着付けねぇと、持たねぇな……。


 俺は一気にレギールに駆け寄り、レギールの頬を思いっきり殴る。

 レギールは殴られた事に反応できずに、吹っ飛ばされる。


 レギールは、派手に建物に突っ込んだので大きな音をたてる。

 これは、騒ぎになるかもしれねぇ……。騒ぎになる前にレギールを倒しきらなければいけないからな……。一気に首を狙う!!

 俺は倒れたレギールの首を斬り払うが、済んでのところでレギールに避けられてしまう。


「クソっ!! どうしてお前が【身体超強化】を使えるんだ!? その力はレティシアに破壊されたはずだろう!?」


 こいつもレティシアとサタナスの戦いを知っているようだな。

 まぁ、グランドマスターがジゼルを操っていたと考えれば、知らないはずがないか……。

 レギールは腕を伸ばして俺に攻撃を仕掛けてくる

 レギールの攻撃は、確かに速いが避けられないわけではない。だが、俺の後ろには民家がある。あの中には一般人もいるだろう。

 仕方ない……。受け止めるか……?

 身体超強化を使っている俺であれば、レギールの攻撃を受け止める事は簡単にできる。


 受け止めて一気に反撃するか?


 いや、それだと防戦一方になってしまう。

 なら、どうする?

 ……。

 そうだな……。一瞬だけ受け止めて、即座に腕を斬り落とすか……。

 そう考えた俺は、レギールの拳を受け止めた後、体を逸らし、腕を斬り落とす為に振り下ろす。

 しかし、レギールもバカではないらしいく、刃が到達する直前で腕を短くした。


 チッ……。

 避けられちまったか。


 俺はレギールを睨む。

 なんだ?

 レギールは何かに気付いたのか、ニヤケついていた……。


「くくく……。わかったぞ。お前が【身体超強化】を使える理由が……」

「なんだと?」

「てめぇの口元に付いている血が教えてくれたよ……」


 口元の血?

 俺は口を拭う。


 袖には血が付いていた。【身体超強化】の反動がもう体に出たのか?

 いや、まだ体は動く。苦しいわけでもない。

 ただ、口から血が出ているだけだ。


 しかし、俺に時間がない事にレギールが気付いた。

 つまりは、アイツは別に俺に勝つ必要はなくなった……。時間を稼げばいいだけだからな……。

 しかし……。


「へぇ……。お前は、俺にボコボコにされた挙句、このままじゃ手も足も出せずに半べそをかきながら、逃げ切ればいいと思っているんだな。随分とヘタレたモノじゃねぇか」


 あまりにも見え透いた挑発だったか?

 いや、俺の予想では、こいつは挑発に乗る……。


「ふざけんじゃねぇ!!」


 おいおい。

 見事なほど、予想通りだったな……。


 レギールは俺に殴りかかってくる。

 しかし、単調な攻撃であれば避ける事も容易いし、周りに被害を出す事もない。

 俺はさらに【身体超強化】を使いレギールを斬り付ける。

 しかし、レギールには再生能力があるようで傷がすぐに塞がってしまう。


 どれだけ傷つけても死なないレギール。

 それに比べ、俺の体も悲鳴を上げている。これは……間に合うか?

 その時、騒ぎを聞きつけた町の人間が家から出て来てしまった……。

 あの顔には見覚えがある。あれは治療師だ。

 レギールは治療師を見た瞬間、襲い掛かっていった。


「あははは!! 魔力を吸わせろ!!」

「な!? レギール止めろ!!」


 レギールは魔力を吸うために、治療師の頭を掴もうとしたが、俺はすんでのところで治療師を蹴り飛ばす事が出来た。


「あぅ!?」


 治療師は俺に蹴られた事で吹っ飛んだが、その代わりにレギールの手刀が俺の胸を貫く……。


「が……はっ!!」


 この位置……。

 は、肺か?


「ぎゃははは!! そのまま、お前の魔力を吸い尽くしてやるわ!!」

「あ、あぁ……、そ、そうかい?」


 不味い……。こ、このままだと……、レギールに俺の残り僅かな魔力を吸われちまう。

 それに……。俺自身も肺を貫かれているから、【身体超強化】に耐えられる時間も長くないだろう……。

 俺がレギールを倒すチャンスは今しかない……。

 俺は自分の体をレギールに密着させ、レギールの背中から自分ごと剣を突き刺す。

 

「ぎゃあああ!!」


 まだだ……。

 レギールは魔族化している。

 こんなモノじゃ、抑えきれないし殺しきれない。

 俺は隠し持っていたナイフで、レギールのこめかみを突き刺す。


「げふぅ!?」


 普通の人間であればこれで殺せるはずだが、レギールは魔族化している。これでは死なないらしく、俺の体を引き剥がそうとしている。


 逃げるつもりか?

 だが、逃がさねぇよ。


 俺は自分の中の全魔力を使い再び【身体超強化】を使う。

 おそらく、これが最後だろう。


 しかし、このままレギールを絞め殺せるか?

 いや、無理だ。

 俺の体力が先に尽きる……。

 何か手はないか?


「は、離せ!!」

「離さ……ねぇよ……」


 とはいえ、俺の力は徐々に抜けていく。

 ちくしょう……。

 このままでは、レギールに逃げられちまう。

 どうにか……。

 俺はナイフをレギールの首に突き刺す。


「ぎゃあ!!」


 しかし、死なない……。


「チッ……。こ、これだけやっても、まだ死なねぇのかよ……」


 不味い……。

 力が抜ける……。


 ここまでか?

 いや、諦めてたまるか。

 こいつを生かしておけば、ラロ姉様の障害になるかもしれねぇ……。

 しかし……現実は甘くない……。


 諦めかけたその時……、俺の中で懐かしい何かが蘇る。

 いや、今なら分かる。

 このスキルだけは、元々俺がこちらの世界に召喚された時に体現されたんだ……。


 サタナスはこの力(・・・)を使いこなせなかったみたいだが、今の俺ならきっと使える。

 だが……、これを使えば、もう俺は助からんだろう。それもなんとなくわかる。


 生に、未練があるのか?

 ……。

 いや、ねぇな。

 

 俺はスキルを発動させる。

 その瞬間、俺の体力が一気に回復し、レギールを殴り飛ばす。そして、俺はレギールの胸を貫き赤い塊を取り出した。


「ひ、ひぎゃああああああ!!」


 レギールも自分の何を取り出されたか理解したのか絶叫している。

 レギールは青褪めた顔で「俺の心臓を返せ!!」と叫ぶが、それは勘違いだ……。

 これは心臓じゃねぇよ。


「ざ、残念だったな……。これはお前の心臓じゃねぇえよ……。こ、これは……」


 お前の魂を具現化させたモノだ。

 魂は意志の強さで強度が変わるらしいぜ……。お前の魂は……。


「お前の()はガラス玉よりも脆いかもな……」


 俺はレギールの魂を握り潰す。

 レギールの魂は、ガラス玉の様に粉々に砕け散る。


「ひぎっ!?」


 魂を砕かれたレギールは、その場で塵となり消えた……。


 勝った……。

 だが、俺もここまでか……。

 最後の最後で、俺のスキルが戻ってくれたおかげで、レギールに勝つ事が出来た……。

 しかし、俺の肉体は真の【強欲】の力に耐えられないみたいだな……。


 俺はその場に倒れる。


 あぁ……。

 もう目も霞むし、声も出せないか……。

 ここまでか……。


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